Welcome To My ”俺の感性”

音楽のレビューというか感想をてけとーに書き殴るブログです。

US

Junius 『Eternal Rituals for the Accretion of Light』

Artist Junius
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Album 『Eternal Rituals for the Accretion of Light』
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Tracklist

01. March Of The Samsara
02. Beyond The Pale Society
05. All That Is, Is Of The One
07. Telepaths & Pyramids
08. Masquerade In Veils
09. Heresy Of The Free Spirit
10. Black Sarcophagus

USはボストンが生んだ”天才バンド”ことJuniusといえば、ポストロックやポストメタルやポストパンクなどのPost-系をはじめ、同時にシューゲイザーやオルタナティブ・ロックやら幾多のジャンルを経由した、いわゆる”ごった煮”系の音楽性を特徴としたバンドで、俺的年間BESTの一枚に選んだ2011年作の2ndアルバム『Reports From the Threshold of Death』では、崇高かつ神々しいクワイヤを擁したエピカルでコンセプティブな”ヘヴィ・シンフォニー”を繰り広げ、その天才的な才能が高く評価された天才バンドは同年にAlcestとのカップリングツアーにも参加し、2014年にはEPの『Days of the Fallen Sun』をドロップする。この勢いのまま、恵まれた環境でエリートコースまっしぐらのキャリアを積み上げ、さてそろそろフルアルバム!と周囲が期待するなか、今年に入ってから急遽ギタリストが脱退、気づけば中心人物のJoseph E. MartinezとドラマーDana Filloonの二人組バンドになっていた。そんな苦難に見舞われた天才バンドが、約6年ぶりに放つフルアルバムがこの『Eternal Rituals for the Accretion of Light』だ。

天才バンドといえば、曲タイトルに()のついたSEをアルバムの中に組み込み、そのスピリチュアルでコンセプチュアルな作品の世界観をより深めるギミック的な演出を設けていたが、しかし今回の曲目を見れば分かるように、本作には天才バンドのキモである()が付いた曲が見当たらない。確かに、ほんの些細なことかも知れないが、これは一体ナニを意味するのだろうか?

EPの延長線上にある、原始的な未開の部族の遠吠えとパーカッションによる儀式的な幕開けを飾る一曲目の”March Of The Samsara”から、変拍子を効かせたシューゲイザーライクなアトモスラッジ系のヘヴィネスと荘厳かつ神聖な世界観を構築するゴシック/シンフォニックなシンセサウンドが織りなす、天才バンドらしいスケール感溢れる壮大なサウンド・スケープは不変で、よりヘヴィに、よりダークに、そしてよりモダンなサウンドを展開し、少なくとも二人組になった影響は音からは微塵も感じさせない。



天才バンドらしいポストパンク風のボーカルワークとまだDeftonesが「シューゲイザー」と呼ばれていた初期の頃を彷彿させる2曲目の”Beyond the Pale Society”チノ・モレノのモノマネ芸人名乗れるレベルのチノ声やモダン・ヘヴィネス然としたグルーヴィにウネるギターまで全てがデブ豚リスペクトな3曲目の”A Mass for Metaphysicians”、そしてCircle Takes The SquareDrew Spezialeをゲストに迎えた曲で、近年のDIR EN GREYを彷彿させるリフ回しを垣間見せる4曲目の”Clean The Beast”を聴けば、今作がいかに「オルタナティブ・メタル」という特定のジャンルに歩み寄った作品なのかが分かる。

そして、本来は()が付いているはずの今作唯一のSE曲となる5曲目の”All that is, is of the One”から、イントロからエレクトロポップが始まったかと勘違いするポップなメロディをフィーチャーした6曲目の”The Queen's Constellation”を皮切りに、神聖なクワイヤを駆使した暗黒スロウコアみたいな7曲目の”Telepaths & Pyramids”、ミニマルでオリエンタルなシンセの妖しげなメロディをフィーチャーしたアコギチューンの”Masquerade in Veils”、一転して再びデブ豚ライクなサウンドを聴かせる9曲目の”Heresy of the Free Spirit”、そしてスロウコアな幕開けから徐々にスケール感を増していく10曲目の”Black Sarcophagus”まで、後半からは非メタル的な曲調を中心に、近未来感のあるモダンなアレンジやオリエンタルな側面を垣間見せる、それこそ天才バンドとしての異質な才能を遺憾なく発揮する。

音の面で言うと、前作みたいな盟友Rosettaライクなごった煮ポストメタル感は希薄で、今作はメタルはメタルでも往年のDeftonesリスペクトな、あくまでもモダンなヘヴィネスに振り切ったオルタナティブ・メタルだ。正直、ギタリスト脱退という窮地に追いやられたにも関わらず、ここまでの作品を出してくるなんてもはや天才バンドたる所以としか言いようがない。

Eternal Rituals for the Accret
Junius
Prosthetic Records (2017-03-03)
売り上げランキング: 608,668

Darkest Hour 『Godless Prophets & The Migrant Flora』

Artist Darkest Hour
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Album 『Godless Prophets & The Migrant Flora』
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Tracklist

01. Knife in the Safe Room
02. This Is the Truth
03. Timeless Numbers
04. None of This Is the Truth
05. The Flesh & the Flowers of Death
06. Those Who Survived
07. Another Headless Ruler of the Used
08. Widowed
09. Enter Oblivion
10. The Last of the Monuments
11. In the Name of Us All
12. Beneath It Sleeps

hjっh

現代メタル界を代表する「秋葉系男子」と言えば、今をトキめくDEAFHEAVENのギタリストことケリー・マッコイだが、その「秋葉系男子」の先駆者的な存在である「元祖秋葉系キモロンゲメガネ」ことジョン・ヘンリー率いる、1995年に結成されたワシントンDC出身のDarkest Hourは、初期の頃こそデスラッシュ系のバンドとして活動するが、2005年作の4thアルバム『Undoing Ruin』と2007年作の5thアルバム『Deliver Us』では、「秋葉系DT男子」だけにdtことDark Tranquillityなど北欧メロデスからの影響を色濃く受けた、いわゆる「メロディック系メタルコア」の金字塔となる作品を立て続けにドロップし、As I Lay DyingKillswitch Engageと並んで00年代のメタルコア繁忙期を支えたバンドとしてその地位を確立する。しかし、2013年にアズアイのボーカリストことランベシスが元嫁に対する殺人教唆罪で逮捕されて以降、メタルコアというジャンルはメタル界の黒歴史として闇へと葬り去られ、その煽りを受けたメタルコアバンドたちは露頭に迷うこととなる。メタルコア全盛を支えたこのDHも例外ではなく、代表作となる4thと5th以降はアルバムを出す毎に、ジョンのトレードマークだったメガネやキモロンゲやオタファッションをやめて徐々に「脱オタ」していく。それに伴って、バンドの音も脱メタルコアを図るようにして徐々に垢抜けていき、そして2014年にSumerian Recordsから発表されたバンド名を冠した表題作のDarkest Hourでは、「ポスト・メタルコア」として10年代のメタルシーンにムーブメントを起こした「Djent」とかいう、それこそPeripheryを代表とするスメリアン仕様のエモくてモダンな流行りのスタイルへと様変わりしてみせ、つまり「メタルコアバンドとしてのプライド」を捨てて、逆に開き直って「流行り」に媚を売ることで、一時期の迷走期間から「脱童」することに成功する。

アルバムを出す毎に変化していく彼らの多彩な音楽性、その幅広さに習って、ここ最近は1作ごとに違うレーベルから作品を発表してきた彼らが、約三年ぶり通算9作目となるアルバムをリリースするにあたって選んだレーベルこそ、アンダーグラウンド界の名門レーベルで知られるSouthern Lordだった。そのSouthern Lordといえば、レーベル創設者であるグレッグ・アンダーソン率いるSunn O)))をはじめ、最近では新世代スラッシュのPower Tripが在籍している事でも有名だが、それというのも、実はPower TripのフロントマンRiley Galeの歌い方を初めて耳にした時に真っ先に思い出したのが、他ならぬDarkest Hourのキモロンゲで、まさかこのタイミング、こんな形で両者が繋がるなんて思いもよらなかった。

その作風も、約17年前のデビュー当時に立ち返ったようなハードコア路線へと回帰するかの如く、エモいクリーンボイス中心だった前作に対して今作は極悪なスクリーム中心、かつ北欧メロデス特有の叙情的なフレーズも皆無に近く、あくまでもオーガニックなアメリカン・ハードコアを最後まで貫き通している。それは幕開けを飾る一曲目の”Knife in the Safe Room”から顕著で、キモロンゲによるブラッケンド・ハードコア直系の極悪ボイスを筆頭に、同じくSouthern Lord所属のBlack BreathTrap Themを連想させるクラスト/ハードコア・パンク直系のカオティックなサウンドを展開し、挨拶がてら咆哮高らかにサザンロード入りを宣言する。そして、後半のハイライトを飾る9曲目の”Enter Oblivion”では、それこそサザンロードの専売特許であるドローンドゥーム然としたダーティかつヘヴィな、実にアンダーグラウンドな本格サウンドを繰り広げる。

流行りのオーバーグラウンドな作風から一転して、今作では流行りとは程遠いアンダーグラウンドな作風に様変わりする、こんな落差あり過ぎな事やっちゃう、やっても許されるのはDHの特権だし、そのあらゆる音楽ジャンルに精通し適合(適応)する柔軟性こそDHの真骨頂だし面白さでもあり、とにかく今作でも毎作違った目線(アプローチ)から曲作りする「オタク」ならではの繊細さと器用さを垣間見せている。メタルコアブームが去って、メタルコアという過去のジャンルに囚われることなく、自らの音と真意に向き合い、プライドを捨ててバンドの可能性と未来を探求し続け、数々の修羅場をくぐってきたベテランとしての貫禄を帯びた今のDHの格好良さったらない。今の彼らには、童貞だった「秋葉系男子」の面影はない。
 
GODLESS PROPHETS & THE MIGRANT FLORA (ゴッドレス・プロフェッツ & ザ・マイグラント・フローラ: +2 bonus tracks)
DARKEST HOUR (ダーケスト・アワー)
Daymare Recordings (2017-03-22)
売り上げランキング: 94,562

Pallbearer 『Heartless』

Artist Pallbearer
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Album 『Heartless』
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Tracklist

01. I Saw The End
02. Thorns
03. Lie Of Survival
04. Dancing In Madness
05. Cruel Road
06. Heartless
07. A Plea For Understanding

いつぞやのFallujahといい、メタル最王手レーベルで知られるNuclear Blastがここ最近積極的にやってる、「今キテる若手バンド」に対する節操のない「青田買い」ってどうにも好きになれなくて、それこそ一時期のCentury Mediaを思い出して余計に好きになれないんだけど、2015年に初来日公演が実現した”クマラー”ことアーカンソー州はリトルロック出身のPallbearerも、そのNuclear Blastによる「青田買い」に巻き込まれたバンドの一つだ。

2012年作の1stアルバムSorrow and Extinctionでは、ブラック・サバス直系の伝統的(トラディショナル)なドゥーム・メタルを現代に蘇らせたような音楽性で、かのピッチフォークをはじめ数多くの音楽メディアから賞賛され話題を呼び、続く2014年作の2ndアルバムFoundations of Burdenでは、その伝統的かつ叙情的なドゥーム・メタルという強固な地盤を維持しながらも、IsisAgallochをはじめとしたポストメタル勢からのモダンな影響とアンニュイなセンスを垣間見せ、よりアトモスフェリックでプログレッシブ、そしてより現代的なドゥーム・メタルへと化けてみせた。

その前作の「現代的」すなわち「Post-系」のアプローチを踏襲し、IsisToolなどの作品を手掛けた名エンジニアのジョー・バレーシがミックスを担当した、約三年ぶりとなる3rdアルバムの『Heartless』は、前作のモダンで現代的な方向性を更に推し進め、よりエピカルに、より叙情的な泣きのメロディやフロントマンBrett Campbellのキャッチーな歌メロを全面にフィーチャーし、そして全編に渡って「お前はどこのギターヒーローだよ」とツッコミ不可避な流麗なソロワークを披露した、過去最高に挑戦的で広大なスケールに溢れた作品となっている。



まず本作を聴く前に妙な違和感というか一つ気づくことがあった。それは、10分超えの大作が全6曲中4曲あった前作に対して、今作には10分超えの大作は全7曲中2曲しかないことだ。さっそく一曲目が6分台、続く二曲目が5分台という、前作の”Ashes”を例外として除けば実質最短を記録する冒頭の二曲の存在が、本作の「異質さ」を物語っていると言っても過言じゃあない。まず6分台の#1”I Saw the End”から、今作が過去最高に「メロディ重視」のアルバムであることを裏付けるような、フロントマンBrett Campbellの感情表現豊かなボーカルとツインリードの叙情味溢れるメロディを中心に、ドラムの手数の多さは言わずもがな、モダンに洗練されたプロダクション、いわゆるプログレ・メタルと言うより、もはや様式美メタルと呼ぶべきベッタベタな構成とダイナミックな展開力を発揮する。続く5分台の#2”Thorns”でも、もはやドゥームと呼んでいいのかすら分からないソリッドなリフ回し主体で、そして中盤にスロウコアパートを織り込んだ、いわゆる「静と動」のコントラストを効かせた非常に分かりやすい楽曲となっている。その冒頭の二曲の次に短い5曲目の”Cruel Road”や表題曲となる6曲目の”Heartless”でも同様の事が言える。前作のようにスロウコアにも精通するミニマルなフレーズやドゥーミーなリフで曲を構成するのではなく、過去最高に感情を込めてエモーショナルに歌いまくりなボーカルに負けじと、それこそ「ドゥーム・メタル」とは一線をがした、キザミ系のリフやスラッジーでメタリックなリフを駆使して曲を上下左右に動かしまくる姿は、初期のMastodonBaronessを連想させなくもない。

それ以外の、いわゆる「大作」と呼べる3曲目の”Lie of Survival”では、イントロから哀愁を帯びたATMS系のシンセとゲイリー・ムーアばりにブルージーな泣きのギターをフィーチャーしている。4曲目の”Dancing in Madness”は、イントロからElsianeを彷彿させるジャジーでアンニュイな雰囲気を漂わせながら、ムード歌謡ばりにクサいムードを醸し出すシンセと超絶怒涛の泣きのギターソロをあざといくらいにこれでもかとブッ込みつつ、その長いイントロが終わると、中盤以降はまるで「山の神」である岩人間デイダラボッチが深い眠りから目覚めて必殺ローリングアタックをブチかますような、暴力的かつ粗暴な、ソリッドかつアグレッシヴなリフを駆使しながら壮大なプログレッシヴ・ドゥーム地獄絵巻を描き出していく。ラストを飾る歴代最長作となる#7”A Plea for Understanding”は、40 Watt Sunの1stアルバムを彷彿させる泣きのスロウコアナンバー。

サザンロックばりに、それこそ映画『ダーティ・ハリー』のクリント・イーストウッドばりに泥臭くて男臭い、すなわち土葬不可避な死臭漂う淀んだ空気感というか初期のフューネラル・ドゥーム感は皆無に近い。従って、本来のウリであるトラディショナルでサイケデリックなドゥームっぽさも希薄で、とにかく本作ではドゥームならではの「遅さ」やスラッジにも精通する「重さ」よりも、アイアン・メイデン顔負けのツインリードによる叙情的な旋律とハーモニーが織りなす「泣きメロ重視」の作風に路線変更している。

「君もピッチフォーカーかい?」

元々というか、どっちかっつーと、ドゥーム・メタルの開祖であるブラック・サバスからの影響は元より、それ以前に初期ANATHEMAType O Negativeなどのゴシック系への強い憧れを持っていたバンドでもあって、それらのベアラーを司る音楽的嗜好、その根幹部にあるインフルエンサーが顕著に現れた結果と言えなくもない。そう考えてみると、この度のNuclear Blastへの移籍は至極納得できるというか、つまり完全にピッチフォーク路線からは外れた方向性である。

「はい、私はピッチフォーカーです。」

本作がピッチフォークで低評価(6点)となった理由はそこにある。ピッチフォークが大好きなヘヴィロック系のドゥーム/ポストメタルではなく、いわゆるヘビメタチックなリフ回しをはじめ、それこそシンセのクサい鳴らし方を筆頭に、本作にはピッチが毛嫌いしている欧州のクサメタル的な「ダサさ」、そう「メタルにダサいは褒め言葉」でお馴染みのその「ダサさ」が作品全体を支配している。それこそIsisがドゥーム化したというよりは、誤解を恐れず端的に言っちゃうとメイデンがドゥーム化したみたいなイメージ。確かに、前作が高評価だったピッチフォーク目線で見ると、本作はただのクソダサいヘビメタにしか聴こえないし、ピッチ目線だとベアラー本来のウリや持ち味の全てを失ってしまったように感じるかもしれない。だから、自身がピッチフォーカーorメタラーかで今作の評価がガラッと変わってくるだろうし、逆にUKゴシック御三家をはじめとした、その手のメロドゥーム系が好きな人には間違いなく最高傑作として聴こえる代物ではある。

ベアラーの良さって、あくまでもトラディショナルなドゥームを下地にさり気ない泣きメロが入ってくる絶妙なバランス感覚で、でも今作みたいに泣きメロが主役になっちゃうと、「いや、そうじゃない」と感じる人が出てくる。その露骨な「あざとさ」が癪にさわるみたいな感覚。初期のインディ/アンダーグラウンドな香りから一転して、鮮明かつクリアに、悪く言えばチープに聴こえるプロダクションも相まって、良くも悪くも聴きやすいキレイでクリーンな普通のメロドゥームだ。もはや別バンドと言われても納得するほど。

確かに、1stアルバムから2ndアルバムまでは正統な「進化」と呼べるが、2ndアルバムからこの3rdアルバムまでは「進化」というより「変化」の部分の割合の方が大きい。これまでの「求心力」や「オリジナリティ」の面では前作に遠く及ばないが、その「進化」と「変化」が上手く調和したドゥーム・メタル界の新たなる傑作の誕生だ。しかし、僕のように前作を年間BESTに選んだピッチフォーカーは、本作を今年の年間BESTに選んじゃアカンやつなのは確か。それくらい、ちょっと、というか、だいぶ変わっちゃってる。
 
HEARTLESS (ハートレス: +bonus disc)
PALLBEARER (ポールベアラー)
Daymare Recordings (2017-03-22)
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Power Trip 『Nightmare Logic』

Artist Power Trip
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Album 『Nightmare Logic』
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Tracklist

01. Soul Sacrifice
04. Nightmare Logic
05. Waiting Around to Die
06. Ruination
07. If Not Us Then Who
08. Crucifixation

このテキサス州はダラス出身の五人組ことPower Tripは、なんかもう元メガデスのギタリストマーティ・フリードマンSpotifyで毎月やってるメタルジュークボックス企画のプレイリストにブッ込んできそうなくらいの極悪非道なスラッシュ・メタルで、それこそエクソダススレイヤーを筆頭に、スラッシュ全盛だった頃の”パンク”をルーツとする80年代の伝統的なスラッシュ・メタルがそのまま現代に蘇ったかのような、かつConvergeにも精通するハードコア・パンクやメタルコアあるいはメタリックハードコアやら、その手のハードコア/パンク成分がクロスオーバーした、最高に頭悪くて最強最悪のスラッシュ・メタルだ。

まず一曲目の#1”Soul Sacrifice”から、稲川淳二ばりに「ダメだダメだダメだこいつダメだ。こいつ危ない。こいつ怖い。」ってなる。そんな荒廃したスラム街に立ち込む淀んだ空気漂うイントロのSEから、ミョ~ンと唸るギターや「ヴァ゛ッ゛!!」と吠えるボーカルを交えながらリズミックなキザミに乗せてミドルテンポで進み、そしてボーカルの「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛ッ゛!!」という叫び声を合図に、それこそクソ頭の悪いスラッシャー親父とクソド低脳なパンクスが今にも殴り合いおっ始めそうな、それこそサークルモッシュヘドバンを誘発するかのような、それこそスプラッター映画ばりに極悪非道かつ鋭利な刃物の如し切れ味抜群のスラッシーなキザミと共に猪突猛進し、その猛烈な勢いのままノンストップでギターソロに突入する姿は、まさに全盛期のスレイヤーさながらの猟奇的なシリアルキラーだ。



今話題のあんな人やこんな人も登場する、このアングラ感全開のMVも最高だ。そのMVからタイトなキザミリフまで全てが80年代仕様で最凶にカッコ良ければ、ボーカルのSwing of the Axe!という雄叫びやむさ苦しい歌い方もクソカッコよくてハゲあがるかと思った。イントロからV系好きのバンギャが拳を上げてプルプルさせそうなハードコア・パンク然とした暴れ曲で、それこそDIR EN GREY(中期)のが好きそうな#3”Firing Squad”、唸るようなギターとグルーヴィなリフで始まるイントロからタイトなキザミ主体の曲で、後半からテンポが変わってフロントマンRiley Galeの暴力的なボイスパフォーマンスが炸裂する表題曲の#4”Nightmare Logic”、現代的なイントロから往年のメタリカを彷彿とさせるリズミックなリフでデレッデレと展開する#5”Waiting Around To Die”、初期のマストドンにも精通する獣性むき出しのソリッドかつヘヴィな#6”Ruination”、中盤以降の怒涛のキザミ祭りがとにかく気持ちよすぎてトリップできる#7”If Not Us Then Who”、ラストの#8”Crucifixation”まで、超絶怒涛のキザミに次ぐキザミ、バリエーション豊かなリフからリフの応酬で、休む暇もなくノンストップで約32分間を一気に駆け抜ける。
 

もちろん、「速い」ところは全盛期のスレイヤーばりにトコトン「速い」のは確かなんだけど、「ただ速い」だけじゃないのがこのバンドの魅力の最もたる所で、そこは80年代スラッシュのリバイバルバンドと呼ばれるだけあって、「速さ」よりも往年のメタリカを彷彿とさせるグルーヴィなリズムおよびテンポやノリを重視したスタイルで、それこそミドルテンポのリフで聴かせられるバンドこそ本物のスラッシャーだと証明するかのような、彼らはミドルテンポの時にその類まれなるスラッシャーとしてのセンスを発揮する。だから、「速い(ファスト)」からミドルへの繋ぎ方と曲展開が凝っていて、最後まで全く飽きさせない。「キザミ」のキレ味と鮮度抜群に調理する凶悪なプロダクションも相まって、その「音」からしてメタクソ気持ちがいい。

元々は、アングラ界隈の名門レーベルで知られるSouthern Lord出身のエリート集団で、既にDEAFHEAVENとの対バンも経験し、その実績も十二分にあって、後はブレイクするだけみたいな状況、このタイミングでこの傑作をブッ込んできた。そろそろ某Nuclear Blastに引き抜かれないか心配になるくらい、とにかく今年のスラッシュ・メタルではマストバイです。とりあえず、デフヘヴンと一緒に来日したら神!デフヘヴンと一緒に来日したら神!
 
NIGHTMARE LOGIC (ナイトメア・ロジック)
POWER TRIP (パワー・トリップ)
Daymare Recordings (2017-02-22)
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Mastodon 『Emperor of Sand』

Artist Mastodon
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Album 『Emperor of Sand』
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Tracklist

03. Precious Stones
04. Steambreather
05. Roots Remain
06. Word To The Wise
07. Ancient Kingdom
08. Clandestiny
09. Andromeda
10. Scorpion Breath
11. Jaguar God

確かに、ことマストドンって、2012年に突如として現れメタルシーンに衝撃を与えたデビューアルバムの『Remission』から、Rushなどのクラシック・ロックや70年代のプログレヲタクを唸らせた歴史的名盤と名高い2009年作の4thアルバムCrack the Skyeまでは、確かに「神がかり的」な勢いで「神がかり的」な名盤を立て続けにリリースし、瞬く間にアメリカの現代メタルシーンを代表する「レジェンド」と称されるまでの地位へと上り詰めた。しかし、その歴史的な名盤の次に発表された2011年作の5thアルバムThe Hunterでは、玄人向けだった前作から一転して、パーリーピーポーみたいなチャラくてポップでポストハードコア的な、「売れ線」というよりは「キッズ向け」のパリピ・サウンドを展開し、これまでのフアンから総スカンを喰らってしまう。しかし、この玄人向けのクラシックなスタイルから一転してティーンエージャー向けのポップなスタイルへと様変わりする、様々なスタイルに変幻自在なところもマストドンの魅力であり、そこがマストドンというバンドが高く評価される理由、マストドンというバンドの「面白さ」たる所以でもあった。

そんなパリピアルバムの次の作品として、ある意味で注目された2014年作の6thアルバムOnce More 'Round the Sunは、十分に「良作」の部類に入る作品ではあったものの、あくまでも「全盛期のマストドンを彷彿とさせるレベル」の、しかしどこか「パチモン」っぽい感じが拭えなかったのも確かで、事実その曲構成からリフ回しをはじめとしたソングライティングの面から、そしてマストドンの生命線であるオリジナリティの面でも全盛期からはほど遠い内容で、やはり「神がかり的」だった彼らの求心(神)力は、歴史的名盤および最高傑作と名高い4thのCrack the Skyeを最後に綺麗サッパリ消失してしまった、その事実を皮肉にも裏付けるような作品でもあった。なんだろう、ただ過去作の美味しいところを寄せ集めただけの、言うなれば全方位中途半端なアルバムというか、単純にアルバムの核となる「コンセプト」の部分が脆弱的で、そういった「コンセプト」という点ではまだ『The Hunter』の方がトガッた作風だったと言える。それこそ、超絶テクいドラム叩きながら歌っちゃう俺かっけーみたいな、単にブラン・デイラーが自己主張し過ぎた結果とも言えなくもない。そのブラン・デイラーによるワンマンバンド化が著しく進行し、それにウンザリしたベスボのトロイ・サンダースとギタボのブレント・ハインズ、そしてリード・ギタリストのビル・ケリアーの3人は、それぞれ個々でサイドプロジェクトに手を伸ばし始め、終いにはフォロワーであり盟友のBaronessにまでブチ抜かれたマストドンは、いよいよバンド崩壊の前夜を漂わせていた。

それらのネガティブ要素が取り巻く今のマストドンが放つ、約三年ぶり通算7作目となる『Emperor of Sand』『砂の王』は、いわゆる「神がかり的」マストドンを象徴する歴史的名盤Crack the Skyeを手がけた名プロデューサーブレンダン・オブライエンとの再タッグが実現、彼と同じアトランタ出身のマストドンの相性は今作で更なる飛躍を遂げている。



今作は死刑を宣告された人が舞台となる神話をモチーフにしたコンセプトアルバムで、それこそPain of Salvationダニエル・ギルデンロウじゃあないが、『死』を宣告された人間の限られた時間と余命を『砂の王』という名の死神が独断でジャッジメント!する、そのコンセプティブな世界観を司るようなイントロで幕を開ける1stシングルの#1”Sultan's Curse”から、マストドンらしい怒涛の砂波が押し寄せるソリッドなキザミ系のヘヴィネス、トロイの獣性むき出しの遠吠え、ブレントの爺猫ボイス、そしてブランの歌によるトリプルボーカルの掛け合い、そして歴史的名盤『Crack the Skye』を彷彿とさせるキーボードがスペース/サイケデリックな世界観を構築し、まさしくそれは『高い砂の城の男』を築き上げるかの如しだ。開幕と同時にShow Yourself Show Yourselfとコマーシャルかつキャッチーに歌い上げるブランと「はざまけんじ」でお馴染みのビートルズの”Eleanor Rigby”のサビを彷彿とさせるトロイの歌メロでとことんキャッチーに展開する2ndシングルの#2”Show Yourself”、タンバリンを抱えながら疾走する#3”Precious Stones”、そして盟友Baroness”Shock Me”に対するからの答えの如しトロイのキャッチーなボーカル・メロディをフィーチャーしたサビをはじめ、オルタナ系のモダン・ヘヴィネスを通過した重厚なリフとキーボードのサイケデリックなアレンジで妖しさを醸し出す#4”Steambreather”まで、ここまでの序盤は比較的モダンなエッセンスを効かせた「いつものマストドン」と言った感じの、ツカミとしては決して悪くないシンプルかつキャッチーな流れで聴かせる。

しかし、今作のハイライトを飾る5曲目の”Roots Remain”では、妖しげにフェードインしてくるアコースティックなイントロから、重圧のようにのしかかるヘヴィなリフとオルタナ系のモダンなリフで骨太な地盤を組み立てながら、名盤『Crack the Skye』を象徴する名曲”The Czar”の続編あるいは延長線上にある深淵な世界へとトリップさせる、キーボードやトライアングルを駆使したサイケなサウンド・アプローチをもってプログレッシブに展開し、そして「DON is Back...」を高らかに宣言するブレントの超絶怒涛のGソロからアウトロのピアノまで、それこそ「神がかり的」な時代のマストドンにしか書けないような楽曲だ。

初期の頃を彷彿とさせる変拍子を交えたリフ回しと、トロイとブレントによる攻撃的なボーカルワーク、そしてけたたましく鳴り響くサビの轟音ヘヴィネスへと繋がる#6”Word to the Wise”、名盤『Crack the Skye』の系譜にあるキザミ系のリフとタンバリン主体で聴かせる#7”Ancient Kingdom”、3rdアルバム『Blood Mountain』”Circle of Cysquatch”をフラッシュバックさせる宇宙人ボイスとテレサ・テンばりの哀愁よろしゅうな間奏パートが目玉の#8”Clandestiny”、2ndアルバム『Leviathan』をフラッシュバックさせるスリリングなインストとブレント&トロイのハードコア然とした咆哮が炸裂する”Andromeda”、その猛烈な勢いのまま、最初期の頃の混沌蠢く破天荒かつカオティックなマストドンへと回帰した#10”Scorpion Breath”、そして約8分ある大作の#11”Jaguar God”では、シブいアコギのイントロから優美なピアノとA7X風のブレントのムーディな歌声で哀愁よろしゅうな幕開けを飾り、今度はギアチェンしてタイトなビートを刻むベースラインにブランの歌を乗せて進行し、再びギアチェンしてトロイの咆哮とスラッジーなリフで大胆不敵に展開し、トドメは2ndアルバム『Leviathan』の名曲”Megalodon”のスリリングな展開とリフのセルフオマージュをやってのけ、そのまま最後までテクニカルなリフの波状攻撃、そしてブレントによる名曲”The Czar”の血が通った泣きのGソロを最期に、『高い砂の城の男』である『砂の王』との契約により、マストドンは再びNWOAHMの頂点に君臨する。

あの名盤『Crack the Skye』というのは、鍵盤をフィーチャーしたスペース/サイケ・ロックにはなり切らない絶妙なサイケ風アレンジがキモであり、『Crack the Skye』を歴史的な名盤たらしめた最もたる要素、その所以でもあって、今作でも名曲”The Czar”の世界観を更に深く掘り下げるような鍵盤が全編にわたって鳴り響いている。とにかく、アルバム前半はバロにゃんことBaronessに「格の違い」を見せるけるようなバロにゃん煽りでキャッチーに展開し、しかしアルバム後半からは往年のマストドン、それこそ「神がかり的」だった頃=1stアルバム~4thアルバムまでのマストドン全盛をフラッシュバックさせるような、リフメーカーことビルの『Crack the Skye』直系のキザミ系のリフを筆頭に、2ndアルバム『Leviathan』や3rdアルバム『Blood Mountain』を連想させるテクニカルな怒涛のリフ攻め、最初期のスラッジ/ハードコア然とした獰猛なヘヴィネス、名曲”The Czar”をルーツとするブレントの超絶epicッ!!な泣きのGソロとトロイのハードコア然とした咆哮、そして何よりもタンバリンとトライアングルという最強装備を身につけたマストドンに敵なしだ。とにかく、3人のボーカル面とインスト面のガチっぷりは近作にはない、それこそ「神がかってた」時代の初期衝動が『砂の王』の力によって現代のマストドンに憑依したかのような、久々に年間BESTの可能性を大いに感じさせる怪作、というより「復活作」と表記した方が的確かもしれない一枚だ。

正直、全7曲の大作志向というガチなプログレやってた『Crack the Skye』とは打って変わって、今作は全11曲で曲尺も至って普通の長さで、となるともう聴く前からその内容が全く想像できなかった。しかし、久しぶりのコンセプト・アルバム、そして初めて過去作と同じプロデューサーを起用したことで危惧していた、いわゆる二番煎じに陥ることもなく、クラシック・ロックというよりはモダンな音を多用した実に現代的な『Crack the Skye』とでも言うんだろうか、とにかく彼らが求心(神)力を失った『The Hunter』のウェイ!系のパリピ感が完全に消え去ったことが何よりの進歩で、小細工なしの基本的なリフとメロディ、そして複雑な展開/構成力で聴かせる、言うなればオーガニックなマストドンに回帰したことが何よりも嬉しい。あと、やっぱりって事前にガッチリコンセプト決めて曲書いたほうがいいバンドだと再認識させられた。じゃなきゃこいつら5thや6thみたいに好き勝手やり過ぎるからなw
 
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