Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

USBM

Liturgy 『H.A.Q.Q.』

Artist Liturgy
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Album 『H.A.Q.Q.』
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Tracklist
01. HAJJ
02. Exaco I
03. Virginity
04. Pasaqalia
05. Exaco II
06. God Of Love
07. Exaco III
08. HAQQ
09. . . . .

いきなりだけど、当ブログのレビューが完成するまでの工程というか仕組みについての話。ほとんどの読者はお気づきのとおり、自分には文章を書く上で定型的な型という型がないので、全て一から、基本的には音源を聴いて閃いた言葉=Wordを接続詞で半ば強引に繋いで文章にしていく(もはや文章の体をなしていない)スタイル。例えば本文として書く前にiPad Proのメモに閃いた言葉=Wordや書きたい短文から、一度頭の中でレビューの全体像をイメージして一つずつ構築していく形、それをパズルのように組み立てていく感じ(なお、一度もイメージ通りに書けたことはない模様)。

とはいえ、そのiPadのメモの中には様々な事情でお蔵入りとなったメモ書きが現在100本以上あって、その中の大半は書けそうなネタが見つからなくてボツになったパターンなんだけど、しかしその逆に書けるネタがあり過ぎて、メモ書きの状況から本文の文章(文字数)を想定した結果、推定1万文字を優に超える可能性があるレビューも数本かはあって、その「書け過ぎて逆に書けない」案件の記事を書くか書かないかは、その時の自分のモチベーションや気分次第、あとはタイミングが全て。(ちなみに、2018年末のBTSの記事は初めてiPad Pro+Smart Folioで記事を書いた記念日)(そっからはもうPCじゃなくてiPadがメイン)(微妙な変化に気づいた読者おる?)

このニューヨークはブルックリン出身の4人組で、爽やか変態イケメンことハンターハント・ヘンドリックス率いるLiturgyも決して例外ではなくて、彼らの名を一躍アンダーグラウンド・メタルシーンに轟かせる事となった2011年作の2ndアルバム『Aesthethica』がリリースされた時は、その音源を聴いた瞬間にこいつらはデフヘヴンと共にシーンの最重要バンドになる!と確信した。しかし、いざ張り切って記事にしようとしても一体何を書いたらいいのか分からない、事実その時(当時はiPad mini)に書いたメモには何がなんだか分からない・・・の14文字、たったそれだけだった。そんな風に一度は書くことを断念した僕が、何故またしてもこのLiturgyについて書こうとしているのか?その理由こそ、このアルバムだけは、これだけは何としても書ききらなきゃいけないと、そう心の底から思わせる傑作だからなんです。

2011年に『Aesthethica』がリリースされた当時は、同年に発表されたDeafheavenの1stアルバム『ユダ王国への道』とともに、いわゆるスクリーモや激情ハードコア側からブラック・メタルというジャンルを再解釈した、それこそ“全く新しいブラックメタル”=“New Black”の登場に、当時の音楽シーンはピッチフォークを筆頭に歓迎ムードもあれば、その一方で“ピッチ・ブラック”と揶揄する批判と戸惑いの声が飛び交っていた。2011年はその2枚のアルバムと、その(2年)後に歴史的名盤『Teethed Glory and Injury』を遺して“ポスト・ブラック界の伝説”となるアイルランドのAltar of Plaguesの2ndアルバム『Mammal』も重なって、まさにポスト・ブラックという新興ジャンルの「これからの10年」を運命づける、それこそポスト・ブラック時代の始まりを告げる金字塔という名の教典と呼ぶべきものだった。

中でもLiturgy『Aesthethica』は、その三強に次ぐUSBMのKralliceに肉薄する猟奇的なトレモロ・リフやマスコア的な変拍子を駆使した気狂いじみたカオティックな動きで、常に躁状態で精神異常をきたしたような「イッチャッテル」アルバムだった。そして2015年作の3rdアルバム『The Ark Work』では、そのイッチャッテル2ndアルバムより更にバグ感マシマシにイッチャッテル、全編クリーンボーカルでグリッチやIDMに精通する電子音を多用した、もはや実験的だとかエクスペリメンタルだとかそんな次元の話じゃない、言うなれば“ブラック・メタル化したエイフェックス・ツイン”さながらの頭のおかしな怪作で、ポストブラ界隈のファンを失意のドン底まで叩き落とした事が記憶に新しい。

そんなイッチャッテル彼らの音楽性を、仮に、仮に90年代に一大ブームを巻き起こしたミニ四駆のモーターで例えるなら、公式大会では使用禁止の価格もクソ高いゴールドチャンプや覇王ばりにぶっ飛んだ回転数を搭載するカッ飛びメタルで、それこそおもちゃ屋に設置された屋外コースのレース中にコーナーリングで場外にぶっ飛んで、そのまま車にぶっ潰されるシュールな最期を遂げる、ちょっとした“破壊の美学”すらある音楽性(やっぱわけわかんねぇ)。

ここで、この2000年代後半から2010年代初頭のポスト・ブラック黎明期を支えた三強を映画監督で例えると、まずDeafheaven『ミステリアス・スキン』『13の理由』グレッグ・アラキ監督Altar of Plagues『アンチクライスト』の鬼才ラース・フォントリアー監督、そしてLiturgy『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』の奇才アリ・アスター監督で、その流れで三強をキ◯ガイ度で例えると、Deafheavenが「ファッション・キ◯ガイ」、Altar of Plaguesが「キ◯ガイのフリをした健常者」、そしてLiturgyが「ガチモンのキ◯ガイ」って感じ。

主にキリスト教(カトリック)で常用される礼拝や典礼を意味するLiturgyという名を冠し、それこそ2ndアルバムのアートワークには十字架と逆十字を掲げているように、宗教的および哲学的な思想やスピリチュアリズムをバックグラウンドとする音楽性と、長編映画デビュー作の『ヘレディタリー』が世界中で話題を呼んだホラー映画界の新星アリ・アスター監督が描く通常のホラー映画とは一線を画する悪魔崇拝的な世界観は、音楽界と映画界という違いはあれど互いに共振するものがあって、事実この約4年ぶりの3rdアルバム『H.A.Q.Q.』は、アリ・アスター監督の新作映画『ミッドサマー』の題材=スウェーデンの田舎で催される90年に一度の真夏の祝祭の裏サントラなんじゃねえかぐらいに共振する、例えるならクラシック音楽の公式でブラックメタルやグラインドコアやマスコアやアヴァンギャルドやグリッチの数式を用いて強引に解いちゃったようなイカレ具合。

突如として怪作だった前作をフラッシュバックさせる、IDM風のゲーム音楽みたいな幕開けを飾る#1“HAJJ”から、日本の伝統芸能であり様々な公的な行事や神聖な催しの際にお目にかける雅楽でもお馴染みの龍笛や篳篥、そしてハープと奇怪なトレモロが織りなす神々しいまでに美しい音色が“和製Kayo Dot”の装いで俄然アヴァンギャルドな世界観を形成し、例えるなら子供の頃に友達とスーパーマリオやってて誰かがスーファミの角に足をぶつけた瞬間にゲーム画面が止まってスーパーマリオがイヤッフゥゥゥウウウウアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ババ゛バみたいにバグって、さっきまでワイワイ楽しかったのが急にちょっと怖くなる現象に近いバグ音が瞬く混沌の中で、まるでカタワの道化とそのワッパみたいな龍笛と篳篥が奏でるピロピロピ~と和ホラー的な恐怖を誘発する素っ頓狂な不協和音のシュールな絵面がもうアリ・アスター映画そのもので、この曲のクライマックスはまさに祝祭と言わんばかりのド派手で過激なカ(ー)ニバルが執り行われているかのような惨劇(文章もバグってる)。

衝撃的な幕開けからギャップレスな流れでクラシカルなピアノのインストに繋ぐ構成もポスト・ブラックの王道的な常套手段だし、ハープの美しすぎるイントロからブラゲ然とした幕開けを飾る#3“Virginity”では、それこそDeafheavenの1stアルバムを想起させる、ちょっと意外過ぎて軽く引くぐらい王道的で扇情的なUSBMを展開する。一転して鉄琴やビブラフォン、そして荘厳なストリングスをフィーチャーしたポストメタル系の#4“Pasaqalia”、それこそ90年に一度の祝祭が始まる夜明けの如し不気味な鐘とピアノが鳴り響くインストの#5を挟んで、そして名作ヒューマンドラマ映画のサントラばりに感動的なストリングスで始まる#6“God Of Love”は本作のハイライトで、その『愛の神』というタイトル通り、『愛』『愛』でも異常な『愛の暴力』を受けているような、まさに映画『ミッドサマー』を音像化したような、まるで気分は謎の怪奇現象に襲われてダメだダメだダメだ、こいつダメだ、こいつ怖い、こいつ危ないと口走る稲川淳二。

再びピアノのインストを挟んでからの表題曲の#8“HAQQ”は、まるで納期間近にデバック作業に追われるゲーム会社の末端社員とばかり、しかしバグがガン細胞のように増殖して頭バグリマクリスティとなり、遂にはデバッカーの頭もバグってバグったマスオさんばりに「びゃあ゛ぁ゛ぁ゛う゛ま゛ひ゛ぃ!」と発狂不可避の“バグソング”で、最後のエンディングへと繋がるアウトロも祝祭の儀式が終わった事後みたいな、それこそラスボスの『神』を倒した後に出てくる裏世界の裏ボス登場みたいなピアノと教会の鐘が不揃いに鳴り響く...それはまるで日常が手のひらからこぼれ落ちていく恐怖。そして日本のシューゲイザーアイドルの・・・・・・・・・リスペクトな#9“. . . .”はまさに無の境地で、そこに残されたのは純粋な悪意が込められた剥き出しの暴力と『神』への信仰心という名の狂気だけ。この表題曲を筆頭にグリッチ要素が今作最大のキモとなっていて、曲展開のギアチェンというかトリガーの役割を担っているのが電子的なバグ音で、いわゆる“プログレッシブ”という音楽概念に対してこんな狂った手法を用いた解釈は生まれてはじめて見た。このイカレサイコ具合を例えるなら、これはもう“ブラック・メタル化したデス・グリップス”だ。

なんだろう、ザックリと言ってしまえばクソプログレッシヴかつクソアヴァンギャルドかつクソグリッチーかつクソカオティック、そしてクソドラマティックなアルバムで、それはまるで喜劇的な舞台を観劇しているような、それはまるでシェイクスピアの名作『マクベス』『音』で観劇している気分。それこそ前作は全編クリーンボーカルで、ラップみたいな要素も取り込んだあまりにも前衛的な、それこそブラック・メタルという概念を超越(Transcendental)してアヴァンギャルドにし過ぎてヒンシュク買ったから、仕方なく2ndアルバムのマス系USBMをぶっ込んで、つまりヤベーやつとヤベーやつを光の速さでネルネルネルネしたらもっとヤベーのできた感、歪んだ畸形の音が生まれちゃった感。事実、アートワークにある今作を構成する元素のフローチャートにも記されているように、前作を中心に過去作のメロディやアレンジを引用している部分もあって、それこそ2ndアルバムと3rdアルバムがモノの見事に融合した感じ。極端な話、前作のクリーンボイスがバグったスーパーマリオに替わっただけと考えたら、むしろ逆にやってることは案外シンプルで単純明快かもしれない。それぐらい、一見破綻しているようで実は恐ろしいほど綺麗にまとまっている。あと、めちゃくちゃ音のスケールがデカくなったのも確か。

このアルバムの何が凄いって、ポスト・ブラック界の二大名盤と名高いAltar of Plagues『Teethed Glory and Injury』における儀式(リチュアル)的なアンチクライストな精神性と、Deafheaven『サンベイザー』におけるまるで気分はアガってんの?サガってんの?皆んなハッキリ言っとけ!アガッテーーーール!なイキスギたパリピ・ブラゲ、そしてその双方が持つモダンなポスト・メタル的な側面を喰らって“ポスト・ブラック界の神”となっている点。もはや神降臨してOMGって感じ。

相変わらず、このバンドの音楽を一言で表すと何がなんだかわからない・・・し、何も答えがわからないまま時間だけが過ぎて最後にはカルト宗教に洗脳された気分になるのだけど、少なくとも本作は10年代の最後にポスト・ブラックを総括するような、それこそポストブラ界の伝説的な2大名盤と肩を並べる歴史的名盤であることは確か。しかし前作の3rdアルバムで死んだフリしてる間にキチゲ溜めまくって、そして10年代の最後の最後にキチゲ放出してバグリマクリスティな大名盤ぶっ放してくるあたりガチで頭おかしいし頭バグってると思う。もはや【Explicit】どころじゃない。間違いなくレイティング【R18+】の音楽です。

それこそ、アリ・アスター映画の映像を音像化したアルバムと言っても過言じゃあなくて、そんなアリ・アスター監督の新作であり、ある種の“ペイガニズム”をテーマにした『ミッドサマー』はトレイラーを観ても明らかにヤバい映画なので、劇場公開前にこのLiturgy(典礼)のアルバムを聴いて耐性をつけておきたい。しかしこの『音』だけでも超怖いのに、それ+映像ありの映画になったら怖すぎて館内で失神するかもしれん・・・。そんなホラー映画好き待望の映画『ミッドサマー』は2月21日公開!(ただの宣伝)

Vattnet Viskar 『Sky Swallower』 レビュー

Artist Vattnet Viskar
Vattnet Viskar

Album 『Sky Swallower』
Sky Swallower

Tracklist
01. New Alchemy
02. Fog Of Apathy
03. Monarch
05. Ascend
06. Mythos
07. As I Stared Into The Sky
08. Apex

【VV】・・・チェコの新星██████、またの名をnicも今年のポストブラック界隈では要注目のバンドだったが、USはニューハンプシャーにも、かの老舗レーベルCentury Mediaから1stフル『Sky Swallower』をリリースした、その名もVattnet Viskarという四人組が存在する。先に言っておくけど、映画のV for Vendettaでもサブカル御用達のVillage Vanguardでも、もちろんVやねん!でもないよ。ちなみに、今作のジャケはWhirrのシングル『June』を手がけた人らしいよ。

【持ち味】・・・その音楽性としては→初期のAltar of Plagues直系のATMS系ポストブラックや、NeurosisUlcerateを連想させる渦々しく蠢くスラッジーな轟音を織り交ぜた激動パートから、今はなきIsisや初~中期Cult of Lunaを連想させるポストロッキンな静寂パートへと、あくまでも自然な流れで緩やかかつ靭やかに交錯していく、いわゆる”ポスト”スタイルで、もはやこのVattnet Viskarの本質や曲作りに対する意識の比重は9割方静寂パートにあると断言できるほど、今はなきIsisなどの王道的ポストメタルがウリとしている”静と動”の対比およびコントラストを持ち味とした、一言でいえば意識の高いポストブラックをやってるんだ。

【意識の高い静寂パート】・・・彼らの”静寂”に対する異常なまでの執着心は、幕開けを飾る#1から顕著だ。再生すると同時に、雄々しい勇壮成分配合のトレモロンDと猛獣じみた凶悪な咆哮を乗せた粗暴なブラストで疾走し、そして全てをなぎ倒すようなスラッジーな轟音から、寂寥感を煽るポストロックライクな静寂パートへと移り変わっていく。この、まるでIsis顔負けの静から動へと美しく流れるようにスムーズな場面の切り替えから、彼らのATMS空間作りに対する意識の高さが伺えると同時に、このVVが決して並みのバンドじゃあないという事が理解できる。次の#2は、イントロからアンビエンス効果を加えたエモーショナルな静寂を生み出し、そして突如トレモロリフと共に凶暴な咆哮から、再び寂寥感を煽る儚いメロディが織りなす静寂パートへと交互に交錯していく。彼らの”持ち味”が冴えわたる#4は、中盤からのニューロシス直系のダーティな静寂パートから、突如破天荒な轟音をブッ放す混沌とした音塊に飲み込まれる。

【インストも聴きどころ】・・・今作では、#3,#5,#7に短いインストを挟んで作品に小気味よいメリハリを与えている。Jesu風の#3をはじめ、#5ではリバーブを効かせた儚くも美しいメロディを聴かせ、次のブラゲ然とした#6へと繋ぐ重要な架け橋となっている。そして、和楽器の琴を使った#7の聞き手の意表をつく和風な演出に、そこはかとないファッションセンスを感じさせながら、メロドゥーム風のメロディをフューチャーしたラストの#8を迎える。この曲はアウトロの荒涼としたアコギをはじめ、終始ドゥーミッシュな音の感触はUSBM界のレジェンドことAgallochさんを彷彿とさせる。

【俺は今、最高の静寂の中にいるんだ...】・・・要するに→Isisやニューロシスがブラックメタル化したのがこのVVで、ポストブラックというよりはATMSブラック寄りのスタイルだが、そのわりに存外シンプルに聴かせる。ヘタに10分を超えるような長尺曲がないのは、かの大手メタルレーベルCentury Media所属だからなのかと邪推。兎にも角にも、けたたましい轟音から限りなく無音に近い静寂の隙間に入り込む、いや溶け込む瞬間の意識の高さが異常なんで、一度だけでも聴いてみる価値はあります。

 
Sky Swallower
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Vattnet Viskar
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Castevet 『Obsian』 レビュー

Artist Castevet
Castevet

Album 『Obsian』
Obsian

Tracklist
01. The Tower
02. Cavernous
03. The Curve
04. As Fathomed By Beggars And Victims
05. Obsian
06. The Seat Of Severance

【USBM】・・・いわゆるアメリカのブラックメタル、すなわちUSBMの代表格にKralliceというニューヨーク出身のバンドが存在する。彼らと同じNY出身の三人トリオ、その名もCastevetというバンドは、そのKralliceの言わば弟子にあたるバンドで、その音楽性としても→師匠のトレモロマスターことKrallice直伝の時として勇壮ですらあるトレモロ成分配合のデスラッシュなリフ回しを主体に、Trap Themなどのブラッケンド・ハードコアばりの泥んこにまみれた怒涛な勢い、フロントマンAndrew Hockによるヘドロを吐き捨てるような咆哮、そして何といっても”Progressive”に対する意識の高さ、その確かなセンスに裏打ちされたエクストリームメタルをウリとしている。

【ファッションブラック化】・・・2010年にリリースされたデビュー作の『Mounds of Ash』といえば→全編に渡ってトレモロがフューチャーされた、わりとブラックメタル色の濃ゆい作風で、それこそKralliceの後継者を名乗るに相応しい、文句のつけようがない内容だった。では、その前作から約3年ぶりの通算二作目で、驚くなかれ元KralliceのベーシストNicholas McMasterが加入した今作の『Obsian』はどうだろう? デビュー作ではProfound Lore然としたKrallice直系のアンダーグランドなヘヴィミュージック、そんな泥臭い土臭い匂いを醸し出していたが、今作の『Obsian』ではMastodonなどのメジャー界隈に属するプログレッシヴ・ヘヴィに歩み寄った、一言で言っちゃえば→まるでファッションサブカル系男子のアイドルことDeafheavenの名盤Sunbatherに続け続けと言わんばかりにファッションブラック化している。

【インテリ系ポストブラック】・・・幕開けを飾る#1こそ、持ち前のトレモロリフや変拍子を駆使した変幻自在かつ複雑怪奇なリフ回しに、初期MastodonやカナダのAnciientsを連想させる、まるで猛獣が獲物に襲いかかるようなキザミリフをエクストリームに交錯させた、それこそ”らしさ”に溢れたProgressive-Black的な曲だが、次の#2では終始焦燥感を煽るポスト・スラッシュ風のキザミリフでブルータルにゴリ押す曲かと思いきや、終盤からのインテリ気取りの”知性”を感じさせるアコースティックなパートに→「なんて、なんてファショナブルな野郎なんだ・・・ッ!!」と度肝を抜かれ、決して一筋縄ではいかない彼らのシャレオツなプログレイズムを目の当たりにした瞬間だった。

【オペにゃん】・・・#3はKrallice直伝の狂気的なトレモロリフをフューチャーしながら、プログレスなアプローチをもってブルータルに展開していき、後半からは初期のOpethを彷彿とさせるウニョウニョとウネるベースが、まるで宇宙空間のようなATMSフィールドを形成していく。その流れで再びオペにゃんの2ndを思わせるダーティなアコギを駆使した#4でも、後半から近年EnslavedMastodonの名盤Crack The Skyeを彷彿とさせる知的なプログレを聴かせる。この#2~#4までの流れは、まさにファッションブラックとしてのピークと言える。

【アガロッチさんリスペクト】・・・そして、このCastevetが今作で完全にポストブラック化したことを確信付ける、まるでUSポストブラック界の長ことAgallochさんリスペクトなATMS系インストの#5、からのJohn Haughm顔負けの幽玄なクリーンボーカルと繰り返される魅惑のメロディが、幻想と幽玄の間を彷徨い続けるような#6までの流れは今作のハイライトで、ここまで全6曲トータル約36分に凝縮された、一切のスキと無駄のない完成度を誇っている。

【意識高い系プログレ】・・・今作のポイントとしては→やっぱり#2~#4で聴けるような、オペにゃんやマストドン並みの”Progressive”に対する意識の高さで、基本はオドロオドロしく混沌としたアヴァンギャルド系エクストリーム・ミュージックでありながらも、ある種の”ポップ”なアクセントの効かせ方が絶妙に上手く、その絶妙な”ポップさ”と”聴きやすさ”に確かな知性と確かなファッションセンスを感じる。だから、自分みたいにトレモロマスターのKralliceはガチ過ぎてちょっと・・・っていう人に打ってつけだし、ガチのブラックメタルというよりは、特にOpethの2ndやMastodonそしてEnslavedらのメジャー界隈の大御所に親和性を見いだせるバンドなんで、その手の好きものは要チェックだと思う。と同時に、今年ではVauraと並んでピッチフォークが推奨する通称ピッチブラックの良作としてマストな一枚と言える。

Obsian
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Castevet
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Vaura 『The Missing』 レビュー

Artist Vaura
Vaura

Album 『The Missing』
The Missing

Tracklist
01. The Missing
02. Incomplete Burning
03. The Fire
04. Mare Of The Snake
05. Pleasure Blind
06. Passage To Vice
07. The Things That We All Hide
08. Braced For Collapse
09. Abeyance
10. Putting Flesh To Bone

【Kayo Dot×Gorguts×Blacklist・・・このUSはブルックリン出身の四人組、その名もVauraといえば→新譜が好評のGorgutsと新譜でブラックメタル化したKayo Dot、そしてBlacklistのメンバーからなるプロジェクトで、その音楽性としては→自身のバンドでやってるデススペルお兄さん系ブラックやポストパンク、ポストハードコアやゴシック、そしてエクスペリメンタルやポストロックなどのスタイル、それらの特徴をそれぞれ持ち寄って生まれたのがこのVaura、というわけ。で、デビュー作となった前作のSelenelionを聴いた時は→例えるならCynicのEPもしくはIsisがサイケ/プログロック化した感じのアレで、なんだこの気色悪い”ポスト”ミュージック・・・とか思いつつも、しかしその内容は思いのほか俺好みで、決して悪いものではなかったし、むしろクセになるほどだった。

【Post-Punk×Blackgaze=Post-Black】・・・そんな、イマイチ焦点が定まらない音楽性だった前作から、約一年ぶり通算二作目となる今作の『The Missing』は、かのProfound Loreに移籍して第一弾なんだけど、まずはオープニングのタイトル曲を聴いた瞬間に俺たちポストブラ厨をアヘ顔デフヘヴン状態にさせる。まるで、ファッションサブカル系男子御用達ミュージックことDeafheavenに対抗するかのような、実にブラゲ然としたMy Heart is epicッ!!な胸の高鳴り即ち昂揚感と激情的なエモーションを撒き散らしながらひた走るイントロから、俺たちのポストブラ魂に火をつける。次の#2は、中期KATATONIAもしくはLes Discretsを連想させるデプレ感を醸し出すゴシックロック/ポストパンクの名曲で、特にクライマックスを飾る泣きのギターソロは大きな聴きどころ。そして、もはやお馴染みの密教的なポスト空間を形成するイントロから、突如Krallice顔負けのトレモロリフが容赦なく襲いかかる#3を聴けばわかるように、つまり今作ではボーカル&ギター担当のJoshua Strawnが在籍する、Blacklistライクなゴシックロック/ポストパンクへのアプローチを著しく強めた耽美派ポストブラック、そんな明確かつ焦点の定まったスタイルを確立している。とにかく、ここまで#1~#3の異様な展開力の高さに、確かな”Progressive”を感じざるをえなかった。

【ポストパンクリバイバル】・・・トレモロをフューチャーした圧倒的なポストブラっぷりを見せつける序盤以降は→マイケル・ジャクソンのスリラーっぽいイントロが面白い#4、ナルシズム全開の妖麗なボーカルをはじめリズムからアレンジまで全ての音使いから往年のポストパンクリバイバルを感じる#5、そして前作の”Drachma”の続編にあたる#6あたりから、Kayo Dot直伝のネットリとまとわりつくようなサイケデリック/エクスペリメンタル色を強めていき、気づいたら密教の世界に迷い込んでいた。まさに、Kayo Dotの中心人物でありマルチプレイヤーのToby Driver、すなわちVauraの本領発揮ってやつだ。次の#7では、Cynic『The Portal Tapes』ライクなATMSフィールドを展開し、トビーによる肉厚のベースラインが主導権を握るドリーミーかつポストロッキンな#8では、ボーカルのジョシュアが今作で初めて荒々しい咆哮を披露している。特に轟音と轟音がけたたましくぶつかり合う終盤の展開はハイライトと呼ぶに相応しい。

【ポストブラ界のパラロス】・・・そんな、80sゴシックロックやらサイケロックやらポストパンクリバイバルの中盤の密教空間を抜けると→言うなれば【デススペルお兄さん×インダストリアル】な#9、ラストの#10は今作で最長の7分半ある曲で、Cult of Luna”Passing Through”を彷彿とさせる仄暗いイントロから、優雅なアコギとウネるようなベースがフェミニンなムードを漂わせながら、マッタリとした幻想的な空間を形成していく。終わりが近くなると、ゴシックスタイルにギアチェンジしてからepicッ!!なリフで徐々にキモチを高めていき、そして(おいおいパラロスのオマージュか)とツッコミたくなるボーカルの”ゴシック”なフレーズが飛び出す驚きのラストまで、最後の最後まで聞き手を楽しませる。

【化けた】・・・そんな感じで、イマイチ何がしたいのかよくわからなかった前作とは違って、今回は”ポストパンク”という明確なコンセプトがあって、しかし前作同様に若干のチープさは否めないが、その内容その完成度は前作を優に上回っている。あのProfound Loreに移籍した影響もあるのか、まさかここまで俺たちポストブラ厨をアヘ顔デフヘヴン状態にさせるアルバムを出してくるなんて・・・いやはや全く予想してなかったし、何かわからんが自分の審美眼を褒めてやりたくなった。これはもう”化けた”という表現を使っても問題ないんじゃあないか。なんか次作あたりでピッチフォーク厨が食いついてきそうな予感がプンプンしてる(あっ、既にか・・・)。ちなみに、このピッチ厨が大喜びしそうなジャケのレインボーおっぱいを手がけたのはレーベルメイトのLocrianTerence Hannum氏です。

Post-Black is DEAD・・・近頃のポストブラック界隈といえば→この手の界隈の皇帝ネージュAlcestを代表としたシューゲイザーブラックなるスタイルが流行っている・・・のかはいざ知らず、それを横目にPost-PunkとBlack-Metalの親和性の高さを見出し、実際に調和を試みるバンドもポツポツ出てきている。恐らく、ブラック(ブラゲ)にポストパンクっぽい音を初めて持ち寄ったバンドって、フランスのAmesoeursもしくはLes Discretsあたりだと思うんだけど、これからのポストブラ界隈は、このVaura『The Missing』を先駆けとしたPost-PunkにBlackをブチ込んだ耽美派ポストブラックが流行りそうな気がしないでもない(適当)

【ファッションブラック】・・・新曲のオパーイで、自らが生み出したポストブラックの歴史に自らの手で終止符を打ったAlcest。彼らの後継者は腐るほどいそうだが、Les Discretsの後継者って意外と少ないというか、このVauraしかいねーんじゃねーか?って。さすがに褒め過ぎかもしれないが、地味に今年のポストブラ系ではレーベルメイトのCastevetと並んでマストだと思う。もちろん、惜しくも解散してしまったAoPエクストリームエビ反りは言わずもがな、今やファッションブラック界のNo1,アイドルことデフヘヴンもね☆ でも正直、今年はデフへの新譜よりもコレ推したほうがドヤ顔できるんじゃねぇ~?
 
Missing
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Vaura
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Deafheaven 『Sunbather』 レビュー

Artist Deafheaven
deafheaven

Album Sunbather
Sunbather

Track List
01. Dream House
02. Irresistible
03. Sunbather
04. Please Remember
05. Vertigo
06. Windows
07. The Pecan Tree

Sunbather=【ファッションサブカル系男子

昨年、奇跡の来日公演を果たした、ゲルマン風大型巨人ジョージ・クラークとアニヲタ系ギタリストケリー・マッコイによるUSはサンフランシスコ出身のUSBM、Deafheavenの約二年ぶり通算二作目『Sunbather』なんだけど、2011年作の1stフルRoads To Judahで衝撃的なデビューを飾り、一気にこの手のポストブラック界隈およびヒップスター・ミュージック界の貴公子的な地位まで成り上がった彼らだが、本作はその伝説的な1stを超えるか超えないか...そんな期待と不安が入り混じりながら、プロデューサーには前作同様にJack Shirley氏を、#4には界隈の始皇帝ネージュをゲストとして迎えた最新作。で、オープニングを飾る#1”Dream House”を耳にすれば理解ッできるように、元デフへのニック・バセット率いるWhirrの傑作EPDistressor直系の淡く甘美な【ATMSフィールド】を展開しつつブラビでブッ飛ばしまくる1stとは一味違い、(ここはいつも通り)Voジョージのワガママ絶叫を搭載したブラビで1st以上にカッ飛ばしながら、まるで津波のように何重もの束となって波状攻撃の如く襲いかかる轟音ノイズ、(なんか夏っぽいスゲー夏っぽい...)感じのリア充大学生オーラに満ち溢れたヌクぃ美メロ、そしてモグワイやGY!BE直系のポストロック成分をダイレクトにクロスオーヴァーさせた、それこそブルックリン出身のLiturgyを彷彿とさせる常に躁状態の超絶epicッ!!で至極至幸なサウンドスケープ、その超ハイブリッドな音エネルギーをズキュゥゥゥンと体全身に浴びて心の真底からグワアアアアアアアアアアアアアア!!っと湧き上がる謎の勇壮感と昂揚感そして開放感・・・これには流石のピッチフォークすなわちピッチフォーカーもアヘ顔デフヘヴン状態で→(やっべw 1stの時に乗り遅れたから今度こそマンセーしてドヤ顔で通ぶっちゃおwww)とキョロ充に。そしてお次のインスト”Irresistible”であからさまに北欧系ポストロック大好きアピールしてくる辺り、やっぱデフへの音のルーツって”ブラック”ではなくてソッチ系なのン?と再認識させる。確かに、Voジョージのスクリーモ大好き♥なダダコネ系スクリームや、あざといぐらい激情系/刹那系ハードコア大好き♥な激しくエモーティヴなメロディを聴く限りでは、無骨さと粗暴さを兼ね備えた、それこそ”初期衝動”が込められたイイ意味で荒削りな作風だった1stRoads To Judahのような”ブラックゲイズ”然とした荒涼感や混沌とした退廃的な世界観は気薄となり、今回はEnvyDefeaterなどの激情系スクリーモ/ポストHC/ポストメタル/ポストロック的な意識を高め(今作は音からしてスクリーモっぽいというか、EP『Libertine Dissolves』寄りの乾いたような質感)、そして実にヒップスターらしい”ブラック(ゲイ)ズム”が過去最高に発揮された結果→言うなれば”意識高い系オサレ男子”が集うサークル【青春ブラックメタル】やってる、というわけ。なんつーか、こんなにスクリーモっぽかったっけ?って思うほどエモいっつーかラヴい。で、フロントマンのジョージがそのアツいキモチ、アツいエモーションを激エモな歌詞に乗せて、(ブラックではなく)エモ/スクリーモの立ち位置からすなわちLoveを叫んでいる。そしてAlcestのネージュが語り役で参加してる#4”Please Remember”、いわゆる【俺の界隈】【ATMS自治区】に棲む住人なら絶頂必須のタンビでユウゲンな「ATMSフィールド全開ッ!!」のイントロからスデに名曲の匂いを放つ約15分の大作”Vertigo”では、AgallochさんスキーなGソロや1stを思わせるドスの利いたジョージの歌声をもって、おぼろげに蠢く『黒』い渦に聴き手を引きずり込む。で、露骨にGY!BEリスペクトな#6、そしてEP譲りの暴虐性を垣間見せる#7”The Pecan Tree”の中盤からのあまりにも美し過ぎるピアノを聴いたら、何かわからんがフト気づいたら謎の多幸感に包まれていた・・・。ここまで全7曲トータル約1時間、兎にも角にもキモティィィイ!!轟音ノイズを頭から洪水を浴びるようにザッバーン!!とブッカケられたような、何とも言えないようなセクシャルでハラスメントな気分にさせる。そう、それはまるでジョゼフ・ゴードン=レヴィット君主演の映画『ミステリアス・スキン』を観ているかのような錯覚を憶えるほど(歌詞カードなんかモロにそんな雰囲気)。冗談じゃなしにマジで超ラヴいんですけどこれ。もはやある意味”ラヴ・メタル”だな、って。あと全体的にポストメタル特有の間の取り方だったり、まさかのGソロだったり、単純に音のバリエーションが広がった感ある。

「I Love Hipster 私はヒップスターを続けるよ」

 結論として、いわゆる【ファッション・サブカル系男子】として今を生きる俺たち界隈が探し求めていた、【ヒップスター・ミュージック】あらため【オサレ・ミュージック】の究極系がこの『Sunbather』というわけです。もうなんかジャケ絵のオサレなTシャツ着てサンバイザー被って日光浴しながら、極めつけに能年玲奈ちゃんとnkskを推しメンにしてドヤ顔で(ファッション感覚でブラックメタル聴いてるオレかっけええええええええええええええ)すればいいと思うよ。これでキミも立派な【ファッション・サブカル系男子】の一員さッ!とかなんとか言うても、確かに1stを超える体を突き抜けるような”初期衝動”というのはないし、過去最高にポストロッキンなアプローチを強めた作風ではあるが、一筋縄ではいかない予測不可能な曲展開や多彩な表情を見せる音のアレンジなど、あらゆる面で著しい成長を感じさせる、まるでAltar of Plaguesよ、これがファッションブラックだ」と言わんばかりの、あの1stの”衝撃”は決して偶然なんかじゃなかったと、あの来日公演は決して夢なんかじゃなかったんだということを証明するかのような年間BEST確定作品。

俺の界隈の再構築...フェーズⅧ...完了
 
Sunbather
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