Welcome To My ”俺の感性”

音楽のレビューというか感想をてけとーに書き殴るブログです。

Ulver

Ulver 『The Assassination of Julius Caesar』

Artist Ulver
new_eb793a4ca01287ce895ab6775879270f

Album 『The Assassination of Julius Caesar』
a2575559421_10

Tracklist

02. Rolling Stone
03. So Falls The World
04. Southern Gothic
05. Angelus Novus
06. Transverberation
07. 1969
08. Coming Home



1997年8月31日は、その年のパリの中で最も熱い夜のうちの1つであった。ちょうど夜半過ぎ、黒いメルセデスベンツは執拗なパパラッチの大群を牽引し暗い通りを急いで行く。車は猛スピードでアルマ橋トンネルに突入、直線の進行方向から大きくそれて13番目の支柱に衝突、金属のうなる声とともに、ウェールズ公妃ダイアナはその短い生涯を終える 。世界はその最も大きい象徴のうちの1つを失った。物語は、ギリシャ神話に登場する狩猟・貞潔の女神アルテミス(ローマ名ダイアナ)のエピソードに共鳴する。ある日のこと、猟師アクタイオンは泉で水浴びをしていたアルテミスの裸を偶然に目撃してしまい、純潔を汚された処女神アルテミスは激怒し、彼を鹿の姿に変え、そして彼自身の50頭の猟犬によってバラバラに引き裂かれる。この写真は、Ulverの13枚目のアルバム、『ユリウス・カエサルの暗殺』を描き映す。

『ディアナとアクタイオン』
Tizian_Diana_Aktaion

初期の頃はブラック・メタルとしてその名を馳せるが、今では一匹狼的の前衛集団として孤高の存在感を誇示し続ける、「ノルウェイの森の熊さん」ことガルム率いるUlverが、同郷のTromsø Chamber Orchestraとコラボした2013年作のMesse I.X–VI.Xや2014年にSunn O)))とコラボしたTerrestrialsなどのコラボ作品を経て、ミキシング・エンジニアにKilling JokeMartin Gloverを迎えて約3年ぶりに放つ通算13作目となる『The Assassination of Julius Caesar』は、それこそ80年代に一世を風靡したイギリスのDepeche ModeKilling Jokeに代表されるニューウェーブ/ポスト・パンクに対する懐古主義的な作風となっている。

Nero lights up the night 18th to 19th of July, AD 64

ブルータス、お前もか来た、見た、勝った。など数々の名言でもお馴染みの、古代ローマの象徴であり民衆のアイコンである英雄「ガイウス・ユリウス・カエサル」「暗殺」というキラータイトルの幕開けを飾る一曲目の”Nemoralia”は、別名”Festival of Torches”とも呼ばれ、8月13日から15日にかけて古代ローマ人が定めた、8月の満月にローマ神話の女神ダイアナに敬意を示す祭日である。上記の歌詞は、西暦64年7月19日、皇帝ネロ時代のローマ帝国の首都ローマで起こった大火災『ローマ大火』を指しており、「ネロは新しく都を造るために放火した」という噂や悪評をもみ消そうと、ネロ帝はローマ市内のキリスト教徒を大火の犯人として反ローマと放火の罪で処刑したとされる。この処刑がローマ帝国による最初のキリスト教徒弾圧とされ、ネロは暴君、反キリストの代名詞となった。ここでは、その女神ダイアナにまつわる祝い事とキリスト教徒弾圧、そしてThe Princess of Walesことウェールズのプリンセス「ダイアナの悲劇」を共振させ、歌詞中にあるHer sexual driveは1997年8月31日に起こったロマンスの都パリで恋人との官能的なドライブをほのめかし、彼女のBodies of the modern age(現代の洗練された肉体)」Flowers crown her head(彼女の頭にある花冠)」Ancient goddess of the moon(月の古の女神アルテミス)」であると語りかける。もう既にお気づきの方もいると思うが、今作のタイトルの『ユリウス・カエサルの暗殺』、そしてエマニエル夫人のように艶めかしい肉体、その女性特有の曲線美を映し出すアートワークは、他ならぬ「ダイアナ妃の暗殺」を暗示している。

『ローマ大火』
Robert,_Hubert_-_Incendie_à_Rome_-

約10分の長尺で2曲目の”Rolling Stone”は、民族的なパーカッションとゲストに迎えた同郷Jaga JazzistStian Westerhusによるノイジーに歪んだギターのエフェクト効果とUSのPhantogramを彷彿させる重低音マシマシのエレクトロが織りなす、ダンサブルかつグルーヴィな打ち込み系のリズム・サウンドで幕を開け、その重心の低いダーティなビート感を持続させながら、Rikke NormannSisi Sumbunduという二人の女神とガルムによる古き良きムード歌謡風のデュエットを披露する。そして、後半に差しかかるとピコピコ系のエレクトロニカにバグが生じ始め、ドラムの粗暴なブラストとサックス界の生ける伝説ことニック・ターナーによるサックスが狂喜乱舞し、例えるならJaga JazzistKayo Dotを一緒にブラックホールにブチ込んだような混沌蠢く、とにかくアヴァンギャラスに暴走して化けの皮が剥がれ落ちて、遂には出自そのものが顕になって笑う。

3曲目の”So Falls the World”は、繰り返し鳴り響くロマンチックなピアノとエレガントなシンセが情緒的かつ優美な音世界を描き映す曲で、しかし終盤に差しかかると場面が一転する。それはまるで、Chvrchesローレン・メイベリーとガルムが互いに手を取り合って、それこそ映画『美女と野獣(熊)』の如く今にも踊り出しそうな、官能的かつダンサブルなビートを刻むダンス・ミュージックが、まるで「闇へと踊れ」とばかり聴く者の心を暗躍させる。まさか同郷のSusanne SundførRöyksoppとツルんでエレクトロニ化したのはこの伏線だった・・・? この曲に関連してちょっと面白いと思ったのは、ギリシャ神話ではアルテミスは古くは山野の女神で、野獣(特に熊)と関わりの深い神とされているところで、いやそれもう完全にガルムのことじゃんwって笑うんだけど、だからこの曲はそのギリシャ神話および女神アルテミスとUlverの関係性を密に表していると言っても過言じゃあない。

Depeche ModeKilling Jokeをはじめとした往年のニューウェーブ/ポスト・パンクを彷彿させる、過去最高にポップテイストに溢れたガルムのボーカル、ダイナミックなリズム&ビートを刻むドラム・サウンド、そしてギタリストDaniel O'Sullivanによるオルタナ然としたギターが、クラップやストリングスおよび打ち込みを交えながらキャッチーに展開する4曲目の”Southern Gothic”は、”80s愛”に溢れた今作のカギを握るキラートラックであり、中期の傑作『Shadows of the Sun』を彷彿させるガルムのダンディボイスとトリップ・ホップ風のトラック、そしてミニマルでリリカルなメロディが静かに気分を高揚させていく5曲目の”Angelus Novus”、往年のシンセ・ウェーブ然としたゆるふわ系のイントロから、再びDaniel O'Sullivanによってかき鳴らされるオルタナ然としたギターをフィーチャーした6曲目の”Transverberation”、ここまでの中盤はキャッチーなポップさとオルタナ的なアプローチを強調した流れを見せる。

再び女神を演ずるSisi Sumbunduとガルムがムード歌謡的なデュエットソングを披露する7曲目の”1969”、そしてDag Stibergによるサックスと時空の歪みで生じるヘヴィなエレクトロニカをフィーチャーしたSpoken wordを繰り広げる8曲目の”Coming Home”を最後に、Ulverという名の狼は強大なワームホールを形成し、人類の新たなHOMEとなるシン・次元へと導き出す。

同郷のTromsø Chamber Orchestraと共演した前作の『Messe I.X–VI.X』というクラシカルな傑作を出した彼らが、一転して今度は「踊らせ系」のシンセ・ウェーブへと様変わりし、とにかく「ポップ」で、正直ここ最近のアルバムの中では最も分かりやすいキャッチーな作風となっている。しかし、その裏に潜む作品の「テーマ」は極めて複雑怪奇となっている。確かに、この手のエレクトロニカ/インダストリアル系というと、初期メンバーから一新して生まれた中期の傑作『Perdition City』辺りを彷彿させるかもしれないが、しかしそれとは近いようでいてまるで別モノで、どっちかっつーとムード全振り感は同じく中期の傑作『Shadows of the Sun』に通じるモノがあるし、極端な話その『Shadows of the Sun』を豪快にポップ・サウンドに振り切った感覚もなきにしもあらずで、そして『あの時代』と『音』と『文化』を身をもって知っているKilling JokeMartin Gloverをエンジニアとして迎えている所からも分かるように、その音自体はコッテコテなくらい80年代のUKサウンドをリバイバルしている。そのポスト・パンク/ニューウェーブ的という意味では、ギタリストDaniel O'SullivanのユニットMothliteの2nアルバムDark Ageの方がイメージ的に近いかもしれない。

あたらめて、このアルバムは今からちょうど二十年前の『8月』に起きた「ダイアナの悲劇」をギリシャ神話の女神アルテミスと重ね合わせ、そして二人の『魂』を時空を超えて共鳴させた芸術的な作品だ。もっとも面白いのは、狼は女性神に支配される属性とされ、月が女神として信仰されているところで、今作で例えると狼は他ならぬUlverであり、月の女神はアルテミスに他ならない。つまり、”Nemoralia”が開かれる『8月』の満月の夜にUlver「月の犬」である狼マーナガルムへとその姿を変え、『現代(modern)』を司るダイアナ妃という『大衆(popular)』のシンボルを通して、すなわち「月の女神」であるアルテミス(ダイアナ)と誓約を交わし、そして古代ローマの偉人『ユリウス・カエサルの暗殺』を経由して『ダイアナの暗殺』を暴き出している。狼は『音楽』という名のワームホールの中で、『絵画』の中で描かれる『神話』『過去』『歴史』『現在』『大衆文化』を一つに結合するという、月の女神に従える化身としての使命を果たしているのだ。これらの衝撃的な事実に気づくと、この作品がただの懐古主義の一言で片付けられるアルバムではなく、いかにトンデモナイことしでかしてる『歴史』的名盤なのかが分かるハズだ。これぞ「オルタナティブの極地」だし、ガルムは間違いなく熊界最強の熊だと思う。

The Assassination Of Julius Caesar
Ulver
House Of Mythology (2017-04-07)
売り上げランキング: 53,552

Sunn O))) & Ulver 『Terrestrials』

Artist Sunn O))) & Ulver
Sunn O))) & Ulver

Album 『Terrestrials』
Terrestrials

Tracklist
01. Let There Be Light
02. Western Horn
03. Eternal Return

【あたしサンドラ・ブロック、ガチで宇宙空間を漂流中】・・・ここ最近、ANATHEMAの10thアルバムDistant Satellitesの影響で映画『ゼロ・グラビティ』を再度観る機会があって(観るのは三回目)、何気なく劇中の音楽にふと耳を傾けてたら→「これって近年のUlverじゃん!」とか閃いて、でも改めて考えてみるとそのUlverSunn O)))がコラボした『Terrestrials』のがソレっぽくね?って感じた今日この頃、皆さんいかがお過ごしですか?

【Sunn O))) & Ulver】・・・いわゆる”俺の界隈 O)))”の立ち位置からだと、このSunn O)))は手に届かない秘境に生息する幻のユニットで、だから興味もないし、正直な話ほとんど聴いたことがないアーティストなんだけれど(なんとなく音楽性は知ってるレベル)、そんなSunn O)))とノルウェイの森のクマさんことKristoffer Rygg率いるUlverの珍妙なコラボレーションが実現したってんだから、これは四の五の言わずに聴くしか!みたいなノリで、しかし実際のところ、いわゆる”俺の界隈”からSunn O)))に接近できるバンドって唯一このUlverしかいないと思ってたから、今回のコラボは本当に僕が待ち望んでいた出来事だった。そしてこの『Terrestrials』を聴いて、いわゆる”俺の界隈”の立ち位置というのを改めて再確認できた事を、ここに報告したい。

【Sunn O))) & Ulver=Terrestrials】・・・最近のコラボで印象的なプロジェクトといえば→DeftonesのVoチノとポストメタルレジェンドIsisFarのメンバーによるPalmsCrossesなどが思い浮かぶ。特にIsisメンバーとコラボしたPalmsは→”ぼくがかんがえたあいしすとでぶぶたががったいしたさいきょうのばんど”を、文字どおり素直にやってみせた。それと全く同じで、そもそも今回のUlverSunn O)))自体が似たようなスタイルを特徴としたアーティスト同士のコラボで、正直それぞれ本家でやってるスタイルと大差ないんじゃねーか?って予想したとおり、それこそ【Sunn O))) & Ulver=Terrestrials】という至極わかりやすい作風となっている。ちなみに、今作はSunn O)))ステファンUlverのクマさんことガルムの共同プロデュース、マスタリングにはAltar Of Plaguesや近年Ulverの作品で知られるJaime Gomez Arellanoを迎えている。そして、ゴースト佐村河内もとい幽霊奏者(Ghost Appearances)としてドラムやトランペット、ヴィオラやヴァイオリンにゲスト・ミュージシャンを迎えている。

【Ulver+Sunn O)))=Let There Be Light】・・・その”わかりやすさ”は、オープニングを飾る#1”Let There Be Light”から顕著だ。それはピピピピピピ...という往年のSF映画的なエレクトロニカが描き映す宇宙ステーションとの交信、すなわち『惑星ソラリス』との遭遇から始まって、その大気圏外で暗黒物質と化したトランペット/チェロ/ヴァイオリンのダーティでシアトリカルなメロディが織りなす、それこそSunn O)))の親戚にあたるKayo Dot直系の前衛的なアヴァンギャリズムを披露する前半部、しかし後半にさしかかると突然ドラムとギターが現れて→「デデーン!Sunn O)))様のお出ましだ!」と言わんばかりのアンビエント・ドローン空間を、それはまるでブラックホールのごとく広域に展開し、漆黒の衣装に身をまとった【黒の神々】が人類を暗黒時空の亜空間へと誘う。この曲は逆に驚くほどわかりやすくて、初めて聴いた時は→ぼく「フムフム...はじまりは近年うるばーみたいだな。おっ、後半はぼくがかんがえたさんおー)))っぽいぞ!うわぁ!これじゃあまるでうるばーとさんおー)))ががったいしたみたいじゃないかぁ!」 ってアホなこと言いたくなった。要するに→前半の超スペース音響パートがUlverのソレで、後半の圧倒的な重力を見せつけるドローンパートはSunn O)))のソレだ。

【ほぼSunn O)))=Western Horn】・・・黒装束の男たちが夜な夜な暗黒舞踏を繰り広げる様子が目に浮かぶような、終始Sunn O)))然とした魔空間を展開していく二曲目の”Western Horn”は、クライマックスへと向かうにつれてブラックホールが徐々にデカくなっていくような、その強大な圧縮力と圧倒的な展開力はスティーヴン・ウィルソン氏のソロ作『Insurgentes』”Abandoner”を思わせるエクスペリメンタリズムだったりする。この曲は”ほぼSunn O)))”と言っていい。

【ほぼUlver=Eternal Return】・・・その”Western Horn”のアウトロの流れを汲んだ三曲目の”Eternal Return”は、中期Ulverを彷彿とさせる喜多郎ばりの”人類の夜明け”感を醸し出す、艶かしいほどのエロスに溢れた艶美な音響空間の中でストリングスが妖艶に舞い踊り、そして静かに美しき狂気を奏でる、これはもう”ほぼUlver”と言っていい名曲だ。#1と#2はインストだったが、この曲は中盤からダンディズムの極みであるガルムの歌声でドラマティックに演出していく。そして僕は、ガルムが「『Messe I.X-VI.X』は『Shadows Of The Sun』の姉妹作」と語っていたのを思い出した。つまり、Ulverからの視点でこの『Terrestrials』を考察してみると→Ulverが地元のTromsø Chamber Orchestraとコラボした『Messe I.X-VI.X』のような、チェンバーなダーク・アンビエント路線を更に深く掘り下げた作風というか、その中~後期Ulverの哲学的ですらある精神世界に、EarthやKayo DotなどのUSアンダーグラウンドバンド的なエクスペリメンタリズムが意外性もなく素直に融合した結果でありながらも、むしろUlverの新作として普通に聴けちゃう、そんな作品。全3曲トータル約37分、濃厚かつ濃密な暗黒の底にある闇の世界を堪能させてくれる。

Terrestrials
Terrestrials
posted with amazlet at 14.07.03
Sunn O))) Ulver
Southern Lord (2014-01-30)
売り上げランキング: 69,176

Ihsahn 『Das Seelenbrechen』 レビュー

Artist Ihsahn
Ihsahn
Mixing/Mastering Jens Bogren
Jens Bogren

Album 『Das Seelenbrechen』
Das Seelenbrechen

Tracklist
01. Hiber
02. Regen
03. NaCl
04. Pulse
05. Tacit 2
06. Tacit
07. Rec
08. M
09. Sub Ater
10. See
11. Entropie [bonus]
12. Hel [bonus]
 
『皇帝の復活』・・・遂に来年のWacken Open Airで復活を果たす北欧ノルウェイの皇帝Emperor、その頂点に君臨するイーサン叔父貴のソロプロジェクト、Ihsahnの約一年ぶり通算で五作目となる『Das Seelenbrechen』なんだけど、これがまた玄人向け過ぎる内容な件について。

『レプラスよ、これがイーサンだ』・・・これまでのIhsahnといえば→Opeth直系のいわゆるプログレッシヴ・ヘヴィに、皇帝Emperor直系の血が通ったブラック成分とノルウェイ然としたジャズ/アヴァンギャルドなセンスをエクストリーム合体させたスタイルだった。しかし今作の『Das Seelenbrechen』は、これまでのスタイルとは明確に一線を画した作風となっていて、ブラックやプログレッシヴ・ヘヴィなどのいわゆるエクストリーム・ミュージックと呼ばれるジャンル/形式にとらわれない、まるでイーサンが「これが最終奥義...」と言わんばかりのエクスペリメンタリズムとアヴァンギャリズムを爆発させた結果→まるで「レプラスよ、これがイーサンだ」と弟子に向かって言い聞かせるような前衛劇『暗黒舞踏』を繰り広げている。その光景はまるで、ノルウェイの森の深淵の底でイーサンという名の孤島の巨人(奇行種)が『狂気』を吐き散らしながら、この世の全てを喰らい尽くすかのような・・・言うなれば→イーサン叔父貴が助演男優賞を受賞したLeprousの新作Coalの中でも異様な存在感を放っていた”Contaminate Me”の延長線上にある、まるで『漆黒の狂気』という名の”凄み”が作品全体の空気を支配していて、それこそイーサンとかいうインテリ系男子の本気、イーサンという『人間を超越』した人外に流れる黒い血および暗黒エネルギーがズキュウウゥン!!という擬音とともに、一滴残さず注入された作品と言える。

『ポイントはオーケストラ』・・・まず、この『Das Seelenbrechen』という名の『暗黒舞踏』、その幕開けを飾る#1の”Hiber”からして、ここ最近の作品とは明らかに一線を画す『漆黒の狂気』を放っている。というのは、オペにゃんやレプラスを連想させる70s風プログレ大好きなピアノとサスペンス風のオーケストラが織りなす、まるで一つのミュージカルを観ているかのような、謎の皇帝感を醸し出すスケール感のある演出から悲劇的な幕開けを飾り、今作のコンセプティブな世界観をより鮮明に掲示してみせる。特に中盤から独りでに暴れ狂うドラミングはDevin Townsend ProjectAddictedを彷彿とさせて面白い。その流れから、どう見てもマフィアもとい優しいイーサンの顔からは想像できない、まるで物語の語り部のようなクリーンボイスとピアノが静寂感を生む序盤、そして中盤から大仰なオーケストラとクワイヤを擁しながらスリリングかつドラマティックに展開していく#2”Regen”を聴けば理解できるように、今作はオーケストラを使ったクラシカルでシンフォニックなスケール感を全面に押し出した、とにかく”世界観”を重視した作風だという事がわかる。

『Ihsahn is Post-Progressive?』・・・序盤の流れとは一転して、浮遊感のあるイーサンのクリーンボイスと軽快なリズム&グルーヴを刻む楽器隊がプログレスに織りなす、それこそレプラスっぽい#3”NaCl”、繰り返される電子音と悲哀を奏でるピアノそして叔父貴の叙情的な歌声が織りなす、まるでNo-Manを聴いているかのようなトリップ感覚すら憶える#4”Pulse”までの流れは、ドス黒い狂気に包まれた今作の中では最もメロディを聴かせる貴重な場面となっている。しかし、これ以降はイーサン叔父貴による狂気を超えたコンテンポラリーなダンスを目の当たりにする事となるわけなんだが・・・。

『伏線()は”Contaminate Me”』・・・禍禍しいノイズが全てを支配するドス黒い暗黒空間の中で、まるでジャズ・ミュージシャンのように踊り狂うドラマーTobias Ørnes Andersenによる狂気的かつ人外なドラミングと『精神崩壊』したイーサンのヒステリックなスクリームが生々しく反響する#5”Tacit 2”、イーサン作品の常連で知られるShining (NOR)Jørgen Munkebyによるアヴァンギャルドなサックスが炸裂する#6”Tacit”までの流れは、イーサン関連作品史上最もexperimentalな本作を象徴するかのような、それこそ今作の伏線()となった”Contaminate Me”の世界観に直結する楽曲であると同時に、間違いなく今作のハイライトを飾る曲と言える。

『Ihsahn×Ulver=Contemporary-Black』・・・その一番の聴きどころである中盤以降は、デヴィンのDeconstructionライクな#7”Rec”から、ダークな音響とイーサンの語りで始まる#8”M”というPink Floydリスペクトな曲が続く。そして、同郷ノルウェイに棲むUlverという名の異形巨人(奇行種)やスティーヴン・ウィルソンという名のインテリ眼鏡巨人を連想させる、奇々怪々な音響を取り入れた#9”Sub Ater”や#10”See”をはじめ、それこそUlverさんの傑作『Perdition City』を彷彿とさせるボートラの”Entropie”と”Hel”などのエレクトロニカ/ダークアンビエント風の曲調を聴けば理解できるように、これまでのイーサンが表現してきた”Progressive”とは大きく意味合いが違って、この『Das Seelenbrechen』では本来の意味で使われる前衛的(Progressive)な、まさしくイーサン流の前衛劇『暗黒舞踏』を繰り広げていて、極端な話→これはイーサンがKscope的なPost-Progressiveやってみた結果というか、今のUlverさんがブラック・メタルっぽい事やったらこんな感じになると思う。つまり、この作品はある種のポストブラック、もはやコンテンポラリーブラックと言っても過言じゃあないわけだ。

『音の良さ』・・・さすが、傑作と呼び声高いAfter以降は、俺たちのイェンス・ボグレンがミキシング/マスタリングを手がけているだけあって、言わずもがなに今作も異常なほど音のプロダクションがいい。例えるなら→KATATONIANight is the New Dayに似た空間の広がり、空間の使い方というか、全体的にアンビエンス効果が施された黒い【ATMSフィールド】を展開している。特に#5のドラムの反響音とか、もはやドラムが一番の聴きどころなんじゃねーか?ってくらい、ドラムの音の粒が感じ取れるくらい抜けのいい音を聴かせてくれる。

『やっぱりアフターがナンバーワン!』・・・愛弟子Leprousのエイナルやデヴィン・タウンゼンド総裁をゲストに迎えた前作の4thEremitaと、傑作だった前々作の3rdAfterを比較してみると、完成度は言うことなしだが、やはりイーサンソロとして聴くと少し劣る内容だったのは確か。では、それとこの『Das Seelenbrechen』はどうかと言ったら、これまで一度も見せたことのなかった、イーサンとかいう人外の裏側に潜む本性をマザマザと見せつけるような作品で、前作から約一年ぶりのリリースなのにも関わらず、ここまで聴き手を置いてけぼりにする怪作を出してくるとか・・・さすが叔父貴といったところ。

『最高傑作』・・・なかなか難解なコンセプトを題材にしているだけあって、ボートラを含む全曲トータルで一曲という意識が非常に高く、まさにIhsahnという名の孤島の巨人(奇行種)が同族のUlverという名の異形巨人から、ある種のUKミュージック的な”知性”を学んだ結果→ヘタしたら”ポスト耳”には最高傑作に聴こえるんじゃあないか?ってほど、過去最高に奇妙な”凄み”に満ちた奇作となっていて、少なくとも前作よりは”やりたいことやった”、むしろやり過ぎた感すらある一枚。もはや来たる皇帝復活を目前にして、もうソロで思い残すことはないだろう・・・と確信できちゃうぐらい濃ゆい作品だから、皇帝信者はこのまま安心してエンペラー復活を待つことができそうだ。
 
Das Seelenbrechen
Das Seelenbrechen
posted with amazlet at 13.11.09
Ihsahn
Candlelight (2013-10-29)
売り上げランキング: 22,298

Ulver 『Messe I.X-VI.X』 レビュー

Artist Ulver
Ulver

Album 『Messe I.X-VI.X』
Messe I.X-VI.X

Track List
01. As Syrians Pour In, Lebanon Grapples With Ghosts Of A Bloody Past
02. Shri Schneider
03. Glamour Box (Ostinati)
04. Son Of Man
05. Noche Oscura del Alma
06. Mother Of Mercy

ノルウェイに棲む”森のクマさん”こと、奇才Kristoffer Rygg率いる異才音楽集団Ulverというのは、初期の頃こそネオフォークやいわゆるポストブラックとかいうジャンルの原点および先駆け的な存在としてその名を上げていたが、2000年作の傑作『Perdition City』以降はトリップ感のある電子音楽/実験音楽的な音楽性へとシフトし、その流れで映画のサントラを手がけたり、近年では映像作品のThe Norwegian National Operaを、更には60s/70sのサイケロックをカバーしたChildhood's Endをリリースしたりと、そんな異様異質異形な音楽変遷を辿っている彼ら。初期の頃から現在まで、ここまで音楽性の変化その振り幅が大きいバンドって、このUlverの他に居ないんじゃあないか?

 そのUlverと同国のTromsø Chamber Orchestraのコラボが実現した本作の『Messe I.X-VI.X』、気になるその作風としては→かのKscopeとの引かれ合いが実現した前作のWars Of The Rosesとは明らかに毛色が違って、中心人物のKristoffer Ryggガルムが前々作『Shadows Of The Sun』姉妹作だと語るように、確かに『Shadows Of The Sun』、その中でも”Like Music””What Happened?”を連想させるクラシカルかつアンビエーションな雰囲気を踏襲しつつ、近年Ulverが得意とするエレクトロニカとフルオーケストラによる重厚なクラシック音楽がクロスオーヴァーした、実にアヴァンギャルドかつアンニュイなモダンクラシカルを繰り広げている。また、日本人ヴァイオリニストの川見優子さんがオケの一人として参加してるのも一つのポイント。

 今思えば、ピッチフォークのレビューで散々こき下ろされた『Perdition City』って、あのKscopeが掲げるポストプログレッシブサウンドの先駆け的なアルバムだったんだな・・・って、あらためてUlverの先見の明、そのセンスに脱帽するばかり。で、このUlverが所属するKscopeというのは、いわゆるLOVEPEACEを思想/信条としながらも、一方で人間社会の非情さや無情さから目をそらさず、むしろ逆に人間の心に潜む『闇』すなわち負のエネルギーを儚くも美しい旋律に変えて、それこそ人間世界の悲惨の「線」を深裂に描き出していく、そんなKscopeが提唱スル音楽理念およびUlverの音楽に対する真意な姿勢に、あらためて僕は敬意を表したい。

 そんなKscopeの音楽的理念、そして本作のメインテーマである【Ulver×Tromsø Chamber Orchestra】が顕著に感じられる、オープニングを飾る#1As Syrians Pour In, Lebanon Grapples With Ghosts Of A Bloody Pastでは、小動物の鳴き声や小鳥のさえずり、銃撃戦や爆撃機のSEによって紛争地帯という名のダークサイドに引きずり込むような演出から、それはもはやオドロオドロしい暗黒を超えた漆黒...人間同士の争いで犠牲となった死者の霊魂が彷徨い続ける黒い小宇宙を生成しながら、いわゆる【ATMSフィールド】全開の不気味な音響亜空間、その奈落の底へと沈み込むような重厚なオーケストラと哀しい旋律を奏でるピアノの音色によって、まるで映画のサントラのような、それこそ人間の業と悲しみ...復讐が復讐を生む輪廻...絶えることなく繰り返される戦争の悲劇を描いた映画『ビフォア・ザ・レイン』の如し、人間の心に潜む『漆黒の狂気』を美しく静かに、しかし深裂に描き出している。この曲、初めて聴いた時は鳥肌たったというか、あまりにも生々しすぎてゾッとしたというか、おぞましいほどの恐怖を感じた。それぐらい、『人間の狂気』というものを内面から容赦なくエグり出している。なんつーか、Cult of Lunaの名曲”Vicarious Redemption”に匹敵する”凄み”すらあった。

 本作『Messe I.X-VI.X』を象徴するかのような、その素晴らしきオープニングに続いて、スウェーデンのCarbon Based Lifeformsを彷彿とさせるサイケ/トリップ感のあるヒーラー系エレクトロニカとクラシック音楽が現代的な出会いを果たす#2”Shri Schneider”、その流れからの#3”Glamour Box”ではミニマルなニカとピアノのカラミ、そしてスケール感を施すスリリングなオケが、クライマックスに向かうにつれて徐々に静寂のダイナミズムを形成していく。で、ここまで聴くと(本作はTromsø Chamber Orchestraを中心としたインストモノかな?)と思うが、本作のハイライトを飾る#4”Son Of Man”のオープニングで遂に森のクマさん...もといガルムの人類に語りかけるようなダンディなボーカルが導入され、教会の鐘や神々しい賛美歌、そして崇高かつ大仰なオーケストラが悲劇的かつ壮大な物語を演出していく、それこそ黒い旧約聖書を音で描き出すかのような、圧倒的なスケール感および展開力の高さを見せつける。この曲を聴いてしまうと、本作があくまでも”オーケストラ中心”の作風だという事がわかる。それぐらいオケの本領発揮ってやつだ。

 本作の中では一番サントラ風というか、曲の展開にあまり起伏のない#5”Noche Oscura Del Alma”では、Ulverらしいレトロ感を醸し出す老舗のレイトショー的なSEが鳴り響く。そしてラストを飾る”Mother Of Mercy”はと言うと、再びガルムのムーディな歌声とオケの優美な音色が聖地エルサレムで共鳴しながら、しかしふとした瞬間に#1と瓜二つのダークサイドに迷い込んでいる事に気づいてしまったら最後→これにて『輪廻転生』が完了する...。当然、いくら『Shadows Of The Sun』の姉妹作だと言っても、約6年前のUlverと今現在のUlverが別物である事と同じように、コレとソレは全てにおいて別物であるのは確かで、本格的なクラシック音楽と電子音楽がUlverという名の数奇な運命を辿りし巨人(奇行種)の体内で出会った結果→まぁ、一言でいっちゃえばヤケに洗練されたヒーリング音楽です。さすが、本作のマスタリングを担当したのが、惜しくも解散したAltar of Plaguesの新作を手がけたJaime Gomez Arellano氏というだけあって、とにかく”音”がいい。

 そんなわけで、ANATHEMAUniversalでオーケストラとの共演を成功させたように、Ulverもこの『Messe I.X-VI.X』で成功させた。ANATHEMAのダニー・キャバナーが出演したシリアのラジオ番組『Souriali』のインタビューを筆頭に、最近のKscope界隈の流行りはシリア問題すなわち中東問題らしく、もうなんか【オーケストラ×中東問題=Kscope】という認識でエエんちゃうの?ってくらいの中東ブームで、これにはダニー・キャバナー「I LOVE Cyria!! I LOVE Cyria!!」と子供のように大喜びしているハズ。当然、本作も流行りの中東問題に対する痛烈なメッセージや祈りが込められた作品で、つまり彼らが『Shadows Of The Sun』で描き出していた『人類の創始』および『人類の夜明け』を、今現在のUlver流の解釈をもって輪廻(一巡)させた先の世界がこの『Messe I.X-VI.X』、というのが僕の見解。

Messe I.X-VI.X
Messe I.X-VI.X
posted with amazlet at 13.10.20
Ulver
Kscope (2013-09-19)
売り上げランキング: 9,694

Ulver 『Childhood's End』 レビュー

Artist Ulver
new_Ulver

Album(Compilation) 『Childhood's End』
Childhood's End

Track List
1. Bracelets Of Fingers
2. Everybody's Been Burned
3. The Trap
4. In the Past
5. Today
6. Can You Travel in the Dark Alone
7. I Had Too Much to Dream (Last Night)
8. Street Song
9. 66-5-4-3-2-1
10. Dark Is the Bark
11. Magic Hollow
12. Soon There'll Be Thunder
13. Velvet Sunsets
14. Lament of the Astral Cowboy
15. I Can See the Light
16. Where Is Yesterday

北欧ノルウェイに凄む生きる伝説ことUlverの昨年リリースされたWars Of The Rosesから約一年ぶりの最新作で、ベトナム戦争で有名な”あの一枚”をアートワークとして掲げた『Childhood's End』は、主に60年代に活躍したバンドの楽曲を今のUlver流の解釈で再構築したコンピレーション・アルバムで、その内容は実にサイケデリックかつフォーキー、レトロでダンディな温かいムードに満ち溢れたexperimentalな聖域へと聞き手をトリップさせるんだけど、これが想像した以上に心地よい件。今なお流動的な音楽を創造し続けるUlverと、その中心人物であるノルウェイの森のエロぃクマさんことKristoffer Ryggという人物の頭の中に秘められたユニークな感性の一部を覗き見してるかのような一枚。で、恥ずかしながら原曲を一曲も知らないぐらいクラシックな音楽には疎いおいら、今回のような機会がなかったら60sの音楽を聴くチャンスは今後一生なかったかもしれない。少し大袈裟だが、それほどまでに、かなり貴重な音楽体験だと思う。この場を借りて、このような機会を与えてくれたUlverには素直に感謝したい。で、個人的に気に入ったのは、奇想天外でポップな場面と東欧風味の暗鬱感を醸し出すメロディとのギャップがイカす#1”Bracelets Of Fingers”、トリップホップ/ポストロック的な穏やかな音使いでシブくてジャジーなエロいムードを形成する#2”Everybody's Been Burned”、エレクトリカルな#3、ポップ&フォークな#4、そして特に#5” Today ”なんかを耳にすると、Opethのミカエル・オーカーフェルトが如何にクラシック・ロック・ヲタクなのかを理解ッできる気がする。それほどまでに、この曲からは名盤『Still Life』のような”オトコの哀愁”を感じざるを得なかった。で、プログレ~サイケな音階を交互に行き来する#6、オトコのフォーク・ロック的なシブい#7、アコギ主体の#10” Dark Is the Bark ”の中盤からの展開とかマジで壮麗優美ニキ。他にもアコギ/サイケ/フォーク/トラッド調の楽曲が最後までムーディな雰囲気を演出している。しかしながら60年代の曲が原曲なのにも関わらず、あまり60sという古臭い印象を受けないのは、やはりクリストファーのセクシャル&ダンディズムに満ち溢れた深みのある歌唱法のお陰だったり、いわゆる”俺の界隈”に属するバンドを連想させる音が自然な形で耳に馴染んでくれたお陰か、全体的にポップでキャッチーなテイストがあって思いの外聴きやすかった。少なくとも聴きづらさは一切なかった。そんな感じで、ミカエル・オーカーフェルトがアヘ顔しそうな楽曲ばかりなんで、特にOpethの最新作Heritageとか、その手の界隈のリスナーは聴いてみるといいかもしれない。なかなかに面白い発見があるかも!?

Childhood's End - deluxe rigid digibook
Ulver
K-Scope (2012-06-11)
売り上げランキング: 52855
記事検索
月別アーカイブ