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ジムニー
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ジムニーシエラ。今回はこちらの方がしっくりくる

どんな車
車名の由来はジープミニと聞く。道なき道を走る軍用車にルーツを持つ車を軽自動車としてオマージュ(パクリ?)したものといったところ。
現在では、そんな使い方への需要もないし、車自体も全く普通の車として扱えるようになっているが、基本構成(FRベースのパートタイム4駆+ラダーフレーム+オフロードサイズのタイヤ)は変えず、うまく遺産を引き継いでる。もともと大きなマーケットは無いのでライバルは消えていきこの車だけが残った。
今は、物が売れない時代(身の回りに物があふれているので当たり前だ)であるため、高付加価値を生むにはモノではなくコト消費が大切と言われているが、この車はモノでありながらうまくコト消費商品になっている。だからデビュー時には納車まで2年以上とか言われる人気となったのもうなづける。

内外装
初代、2代目のイメージをうまく取り込み消化したデザイン。直線的でシンプルなその形は、今や奇形化したとしか言いようのない車が多い中で逆に新鮮であり、落ち着ける形。3代目は近代的であれはあれでなかなか良かったが今回は少し時代を戻したようなデザインチェンジ。未来志向に突き進むだけが進化であるかのような現代の潮流に対するアンチテーゼとして多分野で注目されると面白いかも。

サイドシルが低く高めの床によじ登り乗り込むのはフレーム車特有のもの。着座位置は高いが床も高く床とシートとの段差が思ったほどでもないのもフレーム車によくあること。ポジションを合わせようとするが、ハンドルのテレスコ機構やシートのリフターはない。そうではあるものの十分視点は高いし、着座姿勢も違和感の無いもの。ハンドル位置はやや遠く感じる(私の好みは一般よりも近い位置)ものの、ポジション的には問題ない。
幅方向はさすがに狭く左足の置き場にミッションが潜入していたり、ドアとの間隔に余裕が無かったりするが、運転していて気になることは無い。トランスミッションの侵入のため助手席との距離は保たれる。
リアシートは座れないことはないどころか思ったよりも広いが通常は使わないのが前提だろう。リアシートを使うと荷物の置き場がほとんどなくなるし。リアシートを畳めばフラットな床が現れるが、それでもさほど広いわけではない。荷物の固定にはもう少し配慮がほしい(固定用ネットやそれを掛けるフックなど)と思ったが、ディーラーオプションで対応できるのか?
インテリアもシンプル。クラス的なものもあるが、液晶パネルやLED加飾、メッキの縁取りなど余計なものが無く好ましい。

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この使い方がメインだろう。床が硬質で滑りやすいため固定は必要。
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シンプルで機能的なインテリア。ちょっと安っぽいが悪いことは無い。

走り
ジムニーシエラ
細かなことはさておき、とにかく気楽に安心して運転できる。この心地よさはちょっと印象的。
動き出しから違う。アクセルペダルやハンドルは重めで急な操作は受け付けないようにしてあるのだろう。ATのクリープが弱く勝手にスピードが上がって行くこともない。重めのアクセルをジワリと踏み込んでようやく走るくらいの速度に。単に車重に対してトルクが細いだけなのかもしれないが、極低速域での操作のしやすさを考慮したセッティングだと感じた。道路に出て加速するがのんびりとしたもの。ややエンジンが先行するきらいがあるがギリギリOK。上り坂でもむやみにギアを下げずそのまま粘ってくれるのも良い。もう少しトルク感や直結感がほしいが。エンジン音は比較的静かで4000rpmくらいまでスムーズに回る。トランスミッションだと思うがヒューンというジェット機のような音が小さく出ていたのが気になった。
乗り心地はしっかりとしたもの。沈み込みは少なくバンっと張ったような感じがある。当たりは角が丸められているし、ストロークした時の加速度も小さく上下動も少ない。60km/hを超えるとピッチング系の動きが若干気になるが不快さを伴うものではない。ボディもしっかりとしており、突き上げを受けた時に音が響いたり、細かな凸凹できしむようなことも無い。
ハンドルはしっかりとした感触で重めだがスズキによく見られる渋さや固着感は無い。中立付近はブラブラ感はそれほどないものの、急に横方向の力が立ち上がるとか鼻先が動き出そうとなすることは無く、まあまあ気楽。ちょっとねばい感じが付きまとったり、戻りにやや癖を感じるが。ライントレースもきれいで、変にふらついたり、勝手に切れ込んだり、タイヤの位置が定まらず不安やイライラを感じるといった事が無い。下手な乗用車よりもはるかに安心して快適に乗っていることができる。

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ジムニーの証?操作は硬くやりづらい。
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リジッドアクスルと長いアームが走りの安心感に繋がっている?
ジムニー
シエラとの差は思ったほどないものの、試乗を進めるにつれ落差を感じたのは事実。シエランの方が余裕があるし若干上質。とはいえ、ベースは同じ車なので乗り味はほぼ共通。
アイドリングは静か。3気筒であることは感じるが、ネガは無い。今どき軽自動車だからと言って、エアコンONでボディが震えることももちろんない。極低速での扱いやすさはこちらもある。加速していくと思ったほどエンジン回転は上がらない(4000rpm以下で事足りることがほとんど)し、エンジンが吠えることも無い。NAエンジン+CVTの普通の軽自動車の方がよほどうるさくせっかち。案外平穏に加速していく。たいした加速でもないし、速度が上がるとかったるく感じることは事実だが。
乗り心地やハンドルのしっかり感もこちらにもしっかりとある。トレッドが狭いからといって、ひょこひょことした動きは出ない。もっとも、この車のシャシーは車軸を車体中央付近から伸びた長いアームで持つという構造だから横方向にひょこひょことした動きは出にくいと思われる。理にかなった構造。
足回りで気になったのは伸び側の動き。シエラに比べて動きが悪いのか、凹部で車体ごとズトンと落ちる感触がでる。
ブレーキも軽自動車によくある頼りなさはなく不安なく普通に扱える。
燃費は予想に反しシエラとあまり変わらない。ちょっと悪い程度。11km/lには届かないといったところ。

バリューフォアマネー
この車、以前から冷静に考えると選ぶ余地のない車。高価で燃費が悪く、狭くて乗り味に癖があり、長所のオフロード性能など使うことも無い。物好きが買う車。
ではあるが、それで済ませるのはもったいない内容。自動車の本質的な部分がきちんとしており、それが何とも言えない安心感や扱いやすさ、心地よさに繋がっている。
現在では、他の軽自動車や小型車も高くなってしまったので、高価というネガは気にしなくても良くなったし。