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今時の若い子たちは名前すらもう知らないかも知れない、
下北沢にあった伝説のクラブ"SLITS"の、
130名を越す関係者の証言で綴った同クラブの軌跡です。
タイトルになった"LIFE AT SLITS"は、
以前ここでも紹介した事がある、
ジャパニーズヒップホップとしての初のライブ盤、
"LIVE AT SLITS"から引用したものだと、勝手に解釈してます(多分)。

去年の年末に発売されてたらしいんですが、
オレの周りの何人もの友達から、
「SLITSの山下さんの本が出てるんだけど知ってる?」
って聞いてて。
基本的に本って全然読まないんですよ。
よっぽど興味のあるモノしか。
読まないっていか、読めないっていう方が正しいかも知れませんね。
なんか、読んでると違う事をすぐ考えちゃうんで、
なかなか進んでいかないんですよ。
読んでる途中で、
「やべっ、また空読みしてる・・・」
って読んでは戻り読んでは戻りしちゃうんで。

そんなオレでも、
色んな人からの話しを聞いてると、
同業者ってのもあって凄く興味が沸いてきて。
で、月曜日に渋谷に出掛けたついでに、
本屋行って早速買ってきました。
そして即、読み始めました。
まだ50ページぐらい読んでない所があるんですが、
主要箇所はほぼ最後まで読み終えました。
オレが本を読むペースとしては有り得ないぐらい早いペースでした。

SLITSは、
多分ZOO時代にラブタンバリンズのライブを観に一度、
あとはROOM時代の同僚がDJをしてるって事で、
SLITS時代に一度だけ行ったと記憶してます。
今ふと思い出しましたが、
ラブタンの日はめっちゃ混みで、
ライブ観たらすぐに帰ろうとしたんですが、
店の外に出たら雨が降ってきてて。
その日は当時の彼女と蒲田の家からベスパで来てたので、
危ないしバイク置いて電車で帰ろうとしたのですが、
彼女が電車嫌いだからバイクで帰ろうよおって言って、
ムリムリ雨の中バイクで帰ったんでした。
そしてその次の日の朝に、
悪夢のバイク事故を起こす事になったんでした。。。

SLITSの前身でもあるZOOの頃から勿論名前は知っていて、
この業界に入る前に、
とりあえずどこかのクラブでバイトしたいと思って、
当時の主要クラブに片っ端から電話した事があったんですが、
勿論ZOOもその電話した店の一つでした。
確かその時は、
「うちは常連からしかスタッフを取らないんだよねえ。」
ってあっさり断られましたかね。
で、結局そん時は最終的にCAVEに拾って貰う事になるんですけど。
ちなみに未だに、
何故かうちにはZOOのドリンクチケットが保管してあります。

余談はさておいて、
本を読み始めた途端に、
なんか気が付くと当時のその世界に引き込まれてたんですよね。
二回しか行った事はないし、
オレがクラブ自体に行きだしたのは90年頃からだったし、
80年代後期のクラブ業界の事も、
人づてに話しを聞いたぐらいなもんでしたけど。
でもクラブ創生期の頃ってこうだったんだなあとか、
あ、これってこういう事だったのかとか、
全てに於いてとても興味深い内容でした。

この本の監修をした山下さん(元SLITS店長)とは、
SLITS当時は確か面識なかったんですが、
何年か前にWebに遊びに来た時に確か初めて(多分)話し掛けられて。
その時は少しの時間でしたが、
山下さんってSLITSの頃はなんか話し掛けづらい雰囲気だったんですが、
こんな気さくな人だったんだ?って驚いたのを憶えてます。
あとちょうど10周年前辺りだったので、
未だに載せてるWebのホームページのワンコーナーの、
10周年記念のお祝いコメントも、
その時の勢いでお願いしました。

本を読んでて思ったのが、
まずはやっぱり同じクラブの店長という立場なので、
そのちょっとした部分凄いわかる!って所が幾つか出てきて。
いや、それってその立場じゃないとわかんないっすよねーって、
独り言の様に心の中で何度も呟いてました。
だって友達もDJも客も、
やっぱりどうしても理想論でしか語らないもんですから。
店を任されてる以上、
理想と現実とのせめぎ合いですよ、常に。
でも現実論なんて第三者からしたら、
そんなの知ったこっちゃねえしで終わっちゃうというか。
親の気持ちは親にならないとわからない様な事と近いんでしょうね。
でも運営する立場からすると、
理想も勿論大事だけど、
一番の使命は店を続けていく事なんですよね。

あと読んでて随所に、
山下さんには共感する部分を感じてしまいました。
あ、勝手にですけど。
一番ビックリしたのが、
ZOOのオーナーが、
オレが昔働いていたCAVEの親会社の"サイプランニング"と繋がってて、
ZOOの内装もそのサイプランニングがやっていたという事実。
ちなみにサイプランニングって、
これまた西麻布の伝説のクラブ"ピカソ"(後にNEXT)を手掛けた会社で、
ピカソの後にCAVE、その後にはイエローも作った会社なんです。
まさかZOOがサイプランニングと繋がってるとは夢にも思いませんでした。
と同時に、そこにバイトとは言え在籍してたオレからすると、
一気に親近感を感じてしまいました(勝手に)。

それを筆頭に、
最初は腰掛け程度に入店したつもりが、
ひょんな事から店長になった経緯。
既存のクラブの概念を壊そうとする姿勢や、
壊してしまった事によっての成功と苦悩。
意志の疎通が上手く伝達出来ずに、
影で出演者から悪く言われたエピソード。
DJ及びイベンターへの単純明快なフランクな誘い方。
あと決定付けたのは最後に書いてある、
「商売なんだからもっと貪欲に利益を追求すべきなんだけど・・・」とか、
「山下さんビル建てられましたよ!」っていう下りとか、
意味合いは微妙に違えど、
うわー、オレと感覚的にやっぱ一緒だわこの人って、
これ又勝手に思っちゃいました。
きっとお金儲けとか下手なタイプなんだろうなあとかね。

まあでも、音楽やカルチャーに対するストイックさやハングリーさ、
そしてそれに対するバイタリティーとかは、
山下さんに比べたらオレなんか全然足元にも及びませんけどね。
ほんと読んでて凄いなーって思いましたもん。
山下さんってほんと凄い人だったんだなーって。
同時に自分のちっちゃさを改めて痛感しましたね。
Web閉店したってこんな立派な本出せませんもん、オレは。

SLITS無き後に、
当時SLITSに出入りしてた人とか何人かに、
「SLITSのスピリットを受け継いでるのはWebですよね!」
って言われた事があるんですが、
恐らくそれって、
同じ世田谷にあるクラブだとか、
ミュージシャンとかの人にDJして貰ってる事とか、
あの狭いキャパで(SLITSよりもうちは5坪ほど更に狭いですが)、
昔はライブメインの曜日があったぐらいライブとか結構入れてた事や、
基本何でもアリの精神の部分も
そう言われた要因なのかもなとか思います。
当時はどの辺を指して言ってるのかは全然理解は出来ませんでしたが、
個人的には言われる度に、
ちょっと、でもなんか嬉しいなあとは思ってたのは記憶してますけど。
まあでもこの本を読んでみると、
そんなそんなとんでもない、SLITSに比べたら全然足元にも及びませんよ、
とは思いましたけどね。

今回も長くなりましたが、
今や蒼々たる著名な証言者の、
クラブ創生期の生の証言はとても貴重なものだと思います。
当時ZOOやSLITS(もしくは他のクラブでもいいですけど)に、
出入りしてた人たちには勿論ですが、
こんな時代もあったんだよ?こんな時代ってどう思う?
こんな凄いクラブが下北にあったんだよ?
そんな、色んな事を問い掛ける意味でも、
今のクラブで遊んでる若い子たちや、
DJやシンガー、アーティストを目指してる様な若い子たちには、
是非とも読んで欲しいスーパー大プッシュな一冊です。
日本のクラブシーンを語る上で、
間違いなく絶対外せない永久保存版です。