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※さて予告通り、昨日に引き続き後編です。
まあでも前編と後編と言っても、
一つの文章をただ単に二つに分割しただけなので、
起承と転結的な風情ではありませんので、
くれぐれもご了承の程。



武士道の精神や思想って、
個人的には非常に共感を憶える倫理ばかりで、
非常に感慨深く感じました。
ほとんどの事が日々生活していく上で、
常にテーマにしてる事や、目標にしてる事ばかりでした。
まあでも、武士道だけにとどまらず、
"人として"っていう部分での理想的な生き方って、
どんな宗教的理念や、道徳的理念に於いても、
さほど変わらないんじゃないか?というのは、
個人的な見解ではあるんですけどね。
でも武士道って元々男にとっての倫理観だった事もあり、
人としてっていう部分プラス、男としてっていう部分が、
非常に強い精神倫理だとは思いました。
そこがまた、日本に生まれた男として、
武士道に惹かれる要素でもあるんでしょうけどね。

昨今の凶悪事件や凶悪犯罪は元より、
ちょっとした事ですぐに切れる奴や、
思い通りにならないとすぐに暴力を振るう奴って、
もうそれこそ身近にも溢れてるじゃないですか?
いやもう日常茶飯事レベルだと思うんですよ。
そういう状況って、個人的にはもうほんとに悲しくて。
オレってしょっちゅう、友達からでさえ、
昔ヤンキーだったでしょ?とか、
相当やんちゃだったでしょ?とか、
すぐ切れそうとか喧嘩っ早そうとか、
挙げ句の果てには殺されるかと思ったとか(笑)、
外見からの勝手な判断で、誤解される事が非常に多いんですが、
学生の頃なんて、
悪い事は一切しない華奢で気弱な優等生でしたし(多分)、
自分の意識の中では今まで一度も切れた事もなければ、
人を殴った事も無いんですよ。
殴りたいと思った事すら無いですし(多分)。
勿論殴られた事は何度もありますけどね。
あ、付き合ってた彼女とかにも。
でもやり返した事とかもないんですよ。
まあこんな顔付きで、
腕と脚にはでっかい入れ墨も入ってますが、
ほんと、こんな平和主義な奴滅多にいないでしょ!ってぐらい、
自分では常々思ってるんですけどね。

やれ見た目だけでの男らしさを表現してる奴とか、
腕力や強さこそ男らしさの象徴だと思ってる奴って、
周りを見渡してもほんといっぱいいると思うんですが、
個人的には、全くもってそういう部分から、
ほんとの男らしさって感じないんですよね。
オレが、こいつカッコええ男やなあ!って思う奴って、
一様に、格好でも力強さでもなく、
ハートの部分がとてもカッコいい奴です。
如何に男気があるかどうかって部分。
おまえ、喧嘩は強そうに誇示してるし、
如何にも男っぽい格好や行動や言動してるけど、
ぜんっぜん男気ないやんけ!って奴いっぱいいますよ。
まあそんな奴は、個人的には絶対友達になりませんけどね。

これは結構前から思っていたんですが、
今格闘技やってる人口って、
一昔に比べると圧倒的に増えたと思うんですが、
格闘技やってるどれだけの数の人間が、
武士道の精神を持っているか?理解しているか?という事。
昨今のプロ格闘家を見ると、
武士道の精神とは掛け離れた素行の選手が、
悲しいかな多く見られます。
まあエンターテイメントの部分で考えると、
相手をののしったり挑発したりという部分は、
無論わからなくもないんですが、
戦い終わった後でさえ尚、
相手を小馬鹿にする様な態度とかを見ると、
非常に腹立たしい気持ちになります。
一時期のヒョードル・ミルコ・ノゲイラなんて、
どんな対戦相手でも必ず、
リスペクトの精神で戦ってたじゃないですか?
日本の格闘家こそ、そういう精神で戦って欲しいなあというのが、
個人的な希望でもあります。
戦国時代、激しく争っていた、
武田信玄と上杉謙信という二人の戦国大名のエピソードで、
こんな話しがあります。
ある時、他国が信玄の領地に塩が入らないように経済封鎖を行い、
信玄が窮地に陥ったんですが、この信玄を救ったのが、
なんと最大の宿敵であった謙信だったんです。
彼は「貴殿と争うのは弓矢であって、米塩ではない。
今後は我が国から塩を取り給え。」
と手紙を出し、
自国で取れた塩を、信玄の領地に供給したらしいんです。
"以前は最大の宿敵だった"とかならまだしも、
今も尚、生死を賭けて戦っている相手に対してという、
ちょっと凡人には理解に苦しむ様な、究極の精神世界です。

まあでも今回読んだ武士道には、
武士としての理想的な倫理道徳が書いてあるんですが、
果たして当時の武士は皆これを遂行出来ていたのか?
って考えると、いささか疑問も残ります。
ほぼ遂行出来ていたのは、恐らく一握りだったのではないか?
とも考えます。
勿論みな、理想や目標としての武士道は、
誰の心にもしっかりと根付いてはいて、
なんとかそれを遂行しようとは思ってはいるモノの、
なかなかそこまでの高い精神状態までは、
皆が皆もっていけなかったんじゃないか?というのが、
実際の現実だったのではないかと思うんですよね。
やはりいつの時代も、
"人によって"という個人差は必ずあるとも思うんですよ。
優等生もいれば劣等生も必ずいる的な。
まあとは言え、封建社会時代の世界なんて、
甘っちょろい現代社会の人間からは想像も出来ない様な、
非常に厳しい世界だったでしょうし、
そういう環境で生きていた武士の思考や生態なんて、
全体のレベルで考えると、想像を遙かに超えた、
かなり高いモノだったとは思いますけどね。
まあでも、前例を挙げた信玄と謙信のエピソードにしても、
誰しもが究極の武士道精神を遂行していたのであれば、
全然当たり前の事として、
後世に美談として語り継がれる事もなかったと思うんですよね。
前編で書いた平和論にしても、
実際に説いていたのはもっぱら僧侶や道徳家のみで、
一般的に侍が推奨していたのは、
武芸の稽古や鍛錬だけだったらしいですし。

武士道の理念や概念に、ちょっとでも興味がある人には、
是非ともこの、新渡戸稲造の武士道は、一度読んで頂きたいですね。
オレも然りでしたけど、恐らく読んだ事がないほとんどの人は、
武士道とは?という概念を非常に大きく誤解してると思います。
いや、興味が全くなくても、日本で生まれた男性には皆、
一度読んで欲しいなあとは思います。
そして読んだ後に、ただそのまま飲み込むのではなく、
自分の考え方や価値観と照らし合わせてみて欲しいです。
例え理解や共感を得られなくてもいいんです。
個人的には勿論武士道の概念はとても素晴らしいとは思いますが、
価値観や考え方というのは、人それぞれですし、
万人に対して武士道の概念がベストか?っていうと、
多少無理があるんじゃないかとも思うんですよね。
時代的な事を考えても、ここまで価値観が多様化した現在、
武士道の精神を全ての現代の日本人に求めるのは、
とかく無理な話しだとも思いますし、
ある意味ナンセンスなのかも知れませんが、
でも、こういう価値観や考え方もある(あった)という事実は、
日本人として是非とも知っておいて欲しいとは切に思います。

まあこんな事を偉そうに長々と書いてはいても、
オレみたいなまだまだ精神的に未熟な者にとって、
武士道の余りにも高い精神世界は、
恐らく一生完遂出来ない領域ではあるとは思ってます。
でも今回この本を読んで、
自分の根底にあるベースの倫理観や価値観は、
間違いなく武士道だと再確認しましたし、
その理想であり憧れや目標でもある武士道の精神世界に、
ちょっとでも近付ける様に、
これからも自分なりに精進したいとは思ってます。