騎馬戦士たちに戦いをまかせると、シルクは戦列をはずれて、峡谷の中央にいたガリオンとレルドリンのところへやってきた。「こんにちは、おふたかた」悠然と挨拶し、「待たせ

すぎなかっただろうね」
「どこでナドラク人を召集したんだ?」ガリオンはきゅうに気がぬけて、ふるえながらたずねた。
「そりゃ、ガール?オグ?ナドラクにきまってるさ」
「なんでかれらはぼくたちを助けたんだろう?」
「金を払ったからだよ」シルクは肩をすくめた。「きみには多額の貸しができたぞ、ガリオン」
「こんなに大勢のナドラク人をこんなに短時間にどうやって見つけたんです?」レルドリンがきいた。
「ヤーブレックとおれは国境のすぐ向こうに毛皮貿易の根拠地を持ってるんだ。去年の春、毛皮をもちこんできた猟師たちがそのすぐ先で酒をのんでばくちを打っていたんで、雇った

のさ」
「あぶないところだったんだ」ガリオンは言った。
「わかってたよ、なにせ、さわりごこちのいい火だったもんな」
「やつらが水をかけはじめるまでは、うまくいってたんだ。そのあとさ、事態が苦しくなりだしたのは」
 進退きわまった数百人の信者は、雨溝の急斜面をよじのぼり、その上の荒れはてた湿原へのがれることで全滅をまぬがれた。しかし、大多数の信者は逃げられなかった。
 大襲撃のひとにぎりの生き残りをリヴァの軍が掃討している雨溝から、バラクが馬にまたがってでてきた。「降伏のチャンスを与えてやるかい?」と、ガリオンにたずねた。
 ガリオンは数日前のポルガラとの会話を思いだし、一瞬考えこんでから言った。「そうすべきだろう」
「むりをすることはないんだぜ」バラクは言った。「この状況だ、最後のひとりにいたるまであの世へ送りこんだからって、だれもおまえをとがめはしない」
「いや。そこまではやりたくない。生存者たちに、武器を捨てれば命は助けてやると言ってくれ」
 バラクは肩をすくめた。「そう言うんならな」
「シルク、この悪党!」フェルトの上着に目をむきたくなるような毛皮の帽子をかぶった、長身のナドラク人がわめいた。「こいつらはみんな金を持ってて、金の鎖や腕輪をしている

と言ったろう。こいつの体についてるのはノミだけだぞ」
「ちょっと誇張したんだよ、ヤーブレック」シルクはいんぎんに仕事の相棒に言った。
「はらわたをひきずりだしてやりたいよ、わかってるのか?」
「なんと、ヤーブレック」シルクはおどろいたふりをした。「それが兄弟分にたいする口のききかたか?」
「兄弟分がきいてあきれらあ!」ナドラク人は鼻をならしてたちあがると、かれをいたく失望させた死体のわき腹をこっぴどくけとばした。
「パートナーをくむときにそれで意見が一致したじゃないか――たがいを兄弟みたいに扱うことにしようってな」
「こじつけるんじゃないよ、このイタチ野郎が。それにな、おれは二十年前に兄貴をナイフで刺してるんだ――おれに嘘をついたみせしめに」
 数の上ではまさっていた信者たちの最後のひとりが武器をなげ捨てて降伏したころ、ポルガラ、セ?ネドラ、エランドが薄ぎたない小男のベルディンにともなわれて、用心深く峡谷を

やってきた。
「アルガーの援軍の到着までには、まだ数日かかる」背中の曲がった醜い魔術師はガリオンに言った。「せきたてようとしたんだが、連中は馬にたいしてえらくやさしいんだ。どこで

ナドラク人を調達したんだ?」
「シルクが雇ったんだよ」
 ベルディンはよしよしというようにうなずいた。「傭兵はつねに最高の兵になる」
 品のない顔つきのヤーブレックはポルガラに気づいてさっきから目をぎらつかせてじっと見ていたが、やがてこう言った。「あいかわらずきれいだな、あんたは。おれにあんたを買

わせるって話だが、気は変わったかい?」
「いいえ、ヤーブレック。まだよ。ミングで到着したわね」
「どっかの嘘つきこそ泥が戦利品があると言ったからさ」ヤーブレックはシルクをにらみつけると、足もとの死体をこづいた。「はっきり言って、死んだニワトリの羽根でもむしって

たほうがよっぽど金になった」
 ベルディンがガリオンを見た。「息子にひげが生える前に会う気があるんなら、出発したほうがいい」
「捕虜のことでちょっと決めなくちゃならないことがあったんだ」
「なにを決めるってんだ?」ヤーブレックが肩をすくめた。「一列に並ばせて、首を切っちまいなよ」
「絶対にだめだ!」