
1980年代中盤頃まで、音楽ソフトの主役はレコード、そしてカセットテープだった。
両者は収録曲は同じだが、一部のタイトルでは
カセットで曲順の変更が行われているケースがあった。
カセットテープは1本のテープを往復して(裏返して)A面、B面を再生するので
例えば、A面30分、B面20分のレコードをそのままカセットにする場合
30分の長さのテープを使用し、B面の後半10分は無音状態となる。
しかし、曲順をシャッフルしてA面25分、B面25分にすれば
使用するテープの長さは25分で足りるので製造コストを削減できる。
その結果、「It Ain’t Easy」で終わる「The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars」や「Rebel Rebel」で終わる「Diamond Dogs」が誕生している。

そして、もうひとつ同じ時代に音楽ソフトとして存在していたのが
8トラック・カートリッジ・テープ(通称:8トラック)だ。
1965年に、主にカーステレオを視野に開発された長時間録音(再生)が可能なテープで
1962年に先行して開発されていたカセットテープが会議などのモノラル録音目的で
音楽ソフトを視野に入れていなかったためにステレオ録音できる音楽用メディアとして
開発されたという経緯がある(Wikipedeiaより)。
8トラック(8トラ)は1本のテープに8つのトラックがあり
2トラック(ステレオの右チャンネルと左チャンネル)を2往復して再生する
4つのプログラムで構成されている(図参照)。
そして、カーステレオでの再生に特化するためにテープの出し入れ(裏返し)をすることなく
全編を再生することができ、再生が終わると自動的に冒頭に戻りループ再生される構造だ。

しかし、その構造故にカセットテープ同様、
いやそれ以上に曲順シャッフルありきのリリースとなっていたという側面もある。
例えば、A面30分、B面20分のレコード8トラックにする場合
12分半くらい(収録時間50分の4分の1)の長さのテープを使用するのがベストとなる。
つまり、曲順をシャッフルして12分半×4パート(8トラではプログラム)に
なるようにすればよいわけだ。
レンタルレコードでダビングを体験した世代の方ならすぐにご理解いただけるだろう。
例えば、「PINUPS」の場合、図のような構造になる。
収録時間33分49秒を4等分したおよそ8分28秒にできるだけ近くなるよう
曲順をシャッフルして4つのプログラムに分割
8分29秒の長さのテープを使用して図のような曲順で収録し
8分29秒より短いプログラム1・2は曲間の無音部分で時間調している
このアルバムは曲の分割無しで構成できた珍しい例だ

しかし、実際には、そう都合良くはいかないので、
各プログラムのつなぎ目では曲をフェードアウト、フェードインさせるという
アーティストの意向をないがしろにしたたやり方が選択されている。
例えば、「Scary Monsters」の場合、「PINUPS」のように
曲順シャッフルだけで4等分することができなかったので
曲を2分割するという手段を講じている
まず収録時間45分15秒を4等分したおよそ11分19秒にできるだけ近くなるよう
曲順をシャッフルして4つのプログラムに分割
11分20秒の長さのテープを使用して図のような曲順で収録
その結果「Scream Like A Baby」は2分割され(それぞれフェードアウト&フェードイン)
11分21秒より短いプログラム1・2・4は曲間の無音部分で時間調整している

NIBn知る限り、Bowieの8トラックテープに関しては
オリジナルと異なるバージョンが収録されている事実は確認できていないが
Jeff Beck「Blow By Blow」の8トラックテープのリリースは
4チャンネル×2で8トラックを使用するQuadraphonic Mixで
オリジナルとは別テイクが使用されていて
他にも様々なアーティストのアルバムで独自のミックスや
編集バージョンを収録しているタイトルが存在している
また、Pink Floyd「Animals」は8トラックリリースの際に
オリジナルLPでは2パートに分割されていた「Pigs On The Wing」を
合体させブリッジ部分を追加した完全別バージョンでの収録となっていた
このバージョンは6月にリリースされたベスト盤「8tracks」に収録され話題となっていた
BOWIEのカセットでのリリースは同じアルバムでも国によって
LPと同じ曲順のものとシャッフルされているものが混在していたが
8トラックのリリースは基本的には同じ曲順でリリースされているようだ
ただし、「Space Oddity」については「Memory Of A Free Festiva」で幕を開ける
衝撃のトラックリストに変更されているイタリア盤も存在していてなかなか奥が深い
「アルバムはこの曲で始まってA面ラストはこれ、B面はこの曲からスタート、締めはこの曲」
といったアーティストの考え抜いたコンセプトを完全無視の8トラックテープ
当時、アーティスト本人はこの事実を知っていたのだろうか
今となっては、真相は闇の中に置き去りにされたままだ
【参考文献】
BowieOnTape
Bowieのテープでのリリースをまとめている興味深い内容のサイト
その仕事の緻密さには、ただただ感嘆しか無い
Wikipedia(8トラックの詳しい説明はこちらで。構造が分かる現物の画像も掲載されている)









