蒼野さんから3話が届きました。




霊夢が粥を作ってくれたと言う、なのでそれをありがたく頂戴した。
熱かったので少しばかりびっくりしたが、霊夢が吹いて冷ましてくれたので食べやすかった。
そしてそのまま食事を終える。
どうやら三日眠っていた様だし、傷だらけになった日に酒風呂へと入っただけで後は身体を拭いただけだと言う。
なので着替えを持って一風呂入る――
のだが。

「いや~、良い気持ちだね」
「……あぁ」

何故だか知らんが萃香が居る、しかも良い感じに全裸だったりもする。
俺が身体を伸ばす中、胡座をかく上に座っているのだ。。
本人曰く、面倒を見るためだとか。
いきなり気を失ったり体調が悪くなったら霊夢を呼べるようにらしい。
それは有り難いのだが――

「その目、何か疑ってるね?」
「……そう見えるか?」
「質問に質問を返さないの!
 ――そうだね、疑ってると言うか信じきれないと言うか。
 そんな感じに見える」
「何故そう思う」

俺がそう言うと萃香は「鬼だし」と答えただけで、後は少しばかりの沈黙を保った。
――身体は洗ったし、頭も洗った。湯船に浸かってのんびりするのも悪くないなと思う。
数少ない娯楽とでも言えば良いだろうか。
風呂が数少ない楽しみというのも爺臭いと言われた記憶がある、拓郎は元気にしているだろうか?

「鬼は嘘が嫌いでね。何となくだけどその人が嘘をついてるか、そうじゃないか位分かるんだよ。
 だから疑心暗鬼、疑いを持つと何となくだけど感じ取れる。
 たぶん――図りかねているんでしょ?」

萃香の何気ない一言が俺にぐさりと突き刺さる。
けれども痛みは感じない、それどころか無かったような事でもあるが。
そもそも他者の言葉で痛みを感じると言う事がおかしい、言葉とは空気を振動させるものでしかない。つまり物理的に痛めつけるには衝撃波にでもするしかないのだが。

「……助けてくれた事は感謝する。
 けれども助けた事がイコールで、その人が善いヒトで有ると結びつけるのは難しい。
 見せ掛けの善意、裏に何か有るって事も――有ったからな」

かつてだ、かなり昔に友達になろうとか言って付きまとってきた奴が居る。
別に邪険な扱いはしなかったし、誘われれば都合の良いときに限って付き合う事も少なくは無かった。
そんな友人が、実は別の学校の不良に金で動いていて情報を流していた。
さらに、攫われたというから助けに行ったら背後から刺される。
――かなり厭らしい事では有った。

「……俺が無条件で受け入れる事は簡単な事だ。
けど、裏切りや騙しなんてされた日にゃ俺が死ぬ」
「けど、生きてるよね」
「死ななかっただけだ」

そう言って俺は小さく息を吐いた、結果論でしかない。
高校に入ってからは不良との喧騒など遠い昔のように思えてしまう。
そして――腐ったような澱み、停滞の中に落ち込んだ。
何かが出来る訳でもなく、何かがしたいわけでもない。
だから学ばない、覚えない、忘れる。
多分気がついたら何時の日か呼吸をする事すら忘れて、苦しくなるんじゃないだろうかと思う。
生きているという事実を忘れて、食べる事も忘れてしまいそうだ。
生きるということに溺れて、気が付いたら死んでるかもしれない。
しかし萃香は小さく笑みをふっと漏らすと、顔を上げて俺を見た。

「――アンタは口ではそう言うけどね、多分何処かでヒトを信じてるよ」
「あ?」
「本当に信じないヒトならはぐらかす、黙る、語らない。
 もしくは多弁になるからね。
 けれども大地はまだ真実味の篭った言葉でそれを語ってくれてる、つまりはそれを聞いたヒトが受け止めてくれるかどうかを図っている様なものさ。
 それに、さっき言った筈だけど私は鬼なんだ。
 最初に『助けたい』と何となくだけど思った、だからこそそれを裏切るような事はしない。
 鬼だからね」
「……鬼か」
「うん」

そう言って俺たちは黙々と風呂に浸かる。
――ただ、俺は確認したかっただけかもしれない。
彼女たちが、俺にとって敵じゃないのかどうかを。
裏切らないのか如何かを。



風呂から上がると俺は自分が寝ていた部屋へと戻る。
するとそこには霊夢や萃香ではない誰かが数人そこに居る。
紫の短い髪と黒い羽の生えた少女、その傍に居る白銀の髪を揺らすメイド。
そして――再び紫色の短い髪をした少女に、その傍に黒い髪を長く伸ばした少女だ。

「……萃香」
「警戒はしなくて良いよ、別に大地を売ったわけじゃないからね。
 ただ大地を連れ帰った夜に本当なら宴会が有った筈なんだよ、大地を連れ帰ったから延期になったけど。
 んで、ここの人はその宴会の時に参加する筈だった人さ」
「成る程」

俺と萃香の声を聞いた4人がこちらをゆっくりと向いた、そして俺たちの事を確かに見る。
上から下へ、俺を品定めするような目線もあれば、ただ全身を見てから顔へと目線を止めた人物も居るが。
ただ――どちらにせよメイドと、黒い羽の生えた紫色の紙をした少女の目線は何処か面白くないのは確かだ。
品定めをする様な目線は面白くない、ぶっちゃけ目障りで不愉快だ。

「ふ~ん、へ~……」
「お嬢様、素性や素養の知れぬ輩に近づいては危険です。
 いくら気を失って運び込まれたとは言え」

そしてその羽の生えた少女は俺の周りをグルグルと回り始めた。
更にはペシペシと足を叩いたり、胸に耳を付けてみたりと遠慮が無い。
――ただ、悪意のような物は感じない。
それどころか品定めと言うよりは好奇心や興味だという事で受け取っておく、子供だ。
子供が目新しい物を見つけて、これ何だと見たりしているようなものさ。

「わ、こいつ動じないわね」
「――躾が出来ているか、お嬢様の魅力の前に動けないだけでは?」
「……ふん」

襟首を掴んで持ち上げてみるも、驚くくらいに軽かった。
そしてそのままメイドの方へと投げてみる、ただ勢いが付きすぎて上下逆になっていたが。

「おっと」

けれども空中で受身を取って華麗に着地、9.9点くらいはあげても良い位に見事な着地である。
そして首を動かし腕を動かし、服を軽く叩いてこちらを見る。

「魅力云々は外れね、ただ単純に躾がいいだけじゃない?」
「躾がなっている人は普通人を投げたりしないと思います」
「その前に躾がなっている人は初対面の奴を叩いたり、耳を胸板につけたりはしないと思うが」

俺がそう言うと少女は「一本取られたわね」と言ってメイドを見た。
――いや、そもそもお前の行動だろうが。
さり気なく自分は関係ないみたいな雰囲気を作るんじゃない。

「なるほど、三日前に運び込まれたにしては元気そうじゃない。
 あの重傷で死ぬと思ってたけど」
「さらりと死ぬとか本人を前にして言うんじゃない」
「けど、そうね――」

どうやら話を聴かないタイプのヒトのようだ、人間では――無いだろうな。
と言うか単純に子供のような気がするが。
それ以前に背後の二人も含めて、三日前に重傷で運び込まれたと言うのを知っているにしては無遠慮かつ、身体に障るのではないかとか考えないのだろうか。
しかし、この少女は腕を組んで少しばかり考え込むと手をポムト叩いて笑みを浮かべたままに俺を見た。

「うん、アンタ面白いわ」
「……あ?」
「100人居る中で一人だけつまらなそうな顔をしている、ならその一人はきっと面白い人に違いないと誰かが言ってたし」

そりゃ……俺にはわからん。
けど、100人居る中で一人が面白く無さそうにしていると言う事が、何故その人物が面白い人だと決め付けるのか?
――いや、どうなんだろうか。逆に考えてみよう。
100人の人が居て、その99人が同じような思考をしているとする。
その中でたった一人だけ違う思考をしているとするならば如何か?
……確かに、面白そうではある。
凝り固まった思考やアイディアをした人が多ければ煮詰まる、けれども違う人が居るからこそ面白くなると言う考えだろうか。わからん。

「さ――」
「『咲夜、私決めたわ。少し館に連れて行きましょう』――とか言うつもりでしょう」

そして背後に立つもう一人の紫の髪をした少女が、遂に口を開いた。
面白そうともつまらないとも思えない、ただ平坦な感情を顔に貼り付けて。
その少女の言葉に羽の生えた少女は言葉に詰まってしまう。

「むぐっ……と言うか、ヒトの心を読まないで欲しいわね」
「貴女が全てを回してゆくと、結局のところ貴女個人が得をするように話が進むからです。
 ――初めまして、私は古明地さとりと申します。
 そしてこちらは霊烏路空」
「ども」

そしてこちらも中々だ、黒い羽の少女を押さえ込んで自分のペースを展開し始めた。
さとりと空――うつほ? あれでか?――と言うらしい。
ただ自己紹介をしてくれたあたり有り難い、さっきの二人は名乗りすらしなかった。
そして空と呼ばれた少女も俺を見て頭を下げてきた、社交辞令的な感じである。

「三日前は大怪我をしてこちらに来たみたいだけど、その怪我は?」
「傷口はもう塞がってる、痛みはまだ有るが――それくらいだ」
「――もう塞がった、と?」
「幾らなんでも早すぎない?」

さとりと黒い羽の少女が同時に驚きの声を上げる。
だが俺とておかしいと思っているのだから仕方が無い、ナノマシンですらここまでの治癒能力は無いのだから。
三日寝ていた事を考えると、その間に摂取できた栄養素はゼロだから、良くて大きな傷口がかさぶたの様に残っているくらいだろう。悪けりゃ縫合レベルだ。
つまり、健康な人間の再生力を25%程度押し上げているだけに過ぎないのだ。

「と言うかさ、さっき起きたばかりの。更に言うなら三日前に大怪我をしてきた人を立たせたまま、しかも自分たちの都合で話を進めるってのはそろそろ止めないかい?
 寝たきりどころか意識も無かったんだ、立たせてるだけ辛いと思うよ」
「…………」

萃香が頭の後ろで腕を組みながらさとりや黒い羽の少女にそう言った。
――そしてそれは確かだ、倦怠感が身体を巣食っている。
だるい、疲れた、眠たい、休みたいなどと言って身体を地面へ横たわらせようとする。
頭だって脳の前側が重たく、それが原因で目蓋が重いんじゃないかって思えるくらいだ。
気絶ではなく、自分の意志で身体を横たえて眠りたい。

「これは失礼」
「……、」

さとりは謝罪を言うが、黒い羽の少女は何も言わずにただ道を空けてくれた。
萃香に首で促されて俺は布団の上に膝を付き、そして胡坐をかく。
どうせこの状態じゃ寝ているだけ意味は無い、ならせめて座って対応するのが吉だろう。

「……ふぅ」

座った瞬間に疲れがドッと来た様に思えた、自然と溜息まで洩れてしまう。
それをみたメイドが少しだけ言葉を濁らせた。

「――流石に怪我人を相手に長々と話をするのも良くないかと」
「そうね。けど私はさっき言葉を取られたけどもう一度言うわ。
 ねえ、私たちの館に来てみない?」

そう言って彼女は笑みと共に俺を見ていた。
その笑みを見て俺は――

『大丈夫よ、大地ならきっと出来る!
 主人である私がそう確信してるんだから!』

何故か、誰とも知れない声が頭に響いた。
それに一瞬だけ脳が硝子のように硬くなり、次の瞬間には砕けるような痛みが走る。
覚えの無い記憶、そして覚えの無い声。
そんな声を聞いて俺は如何する?
薬は……とっくに飲んだ筈なのに。こんな幻想――妄想は、今聞こえたらおかしいのに。

「……お前が――」
「レミリアよ、レミリア・スカーレット。
 それとこっちのメイドは十六夜咲夜、私の従者よ」

ようやく名前が聞けた。レミリアに言われて咲夜は言葉も無く頭を下げる。
名前を聞いたうえで、俺は再び名前を間違えないように口を動かす。

「レミリアがどうして俺を館に招こうとしているのか、俺には分からない」
「吸血鬼ってね、結構長生きするから退屈が敵なのよね。
 ついぞこの前は間欠泉が吹き出て温泉が出来たみたいだけど、やっぱり楽しい事や面白い事には目が無いのよ。
 生きるだけじゃなく、活きていると実感したいから貴方を傍に置いてみたいと思ったの。
 まあ、目に誤りがあったらさようならだけど」
「――『運命の知れない人間なんて初めて見たし、何か面白そうかも』だとか」
「だ・か・ら! 勝手に読んで言わないでくれる?
 隠し事も何もかも無いじゃない!」

さとりが再びレミリアの心を読んだようだ。
しかし、少しだけ待て。
俺は頭を押さえながら片手で、皆に歯止めを利かせるように静止をかけた。
頭が痛いし、何も分からない。
脳が、動こうとしているのに錆付いて止まっている。
それでも動こうとして思い切り負荷をかけているような気持ちだ。
目の前に一歩進むための道がある、けれども其れが――其れが進むための道だと脳が理解したがらない。

「ま、ってくれ。俺はまだ何も知らない、何も分からない、何処なのかすら分からない地で――ついて行くなんて事は、出来ない。
 そもそも聞かせてくれ、運命とか心を読むとか――何なんだ?」
「――知らない方でしたか」

そう言って咲夜は頬を押さえ、少しばかり悩むようなそぶりを見せる。
能力? 何だ其れは。
超能力とは、又違うのだろうか?
とは言っても、『勘が良くなる』と言う無意味な超能力を背負わされている俺には無意味だが。
俺が持つ能力は未だに判明しては居ないが、能力開発を受けてから『勘が良くなる』と言う事が多くなったから俺はそう思っているだけだ。もしかしたら違うのかも知れないが。

「……難しい事を言うわね。私たちは『能力』を持っている。
 その力で私はアンタの運命を見ようとしたけど見れなかった、それで――」
「『このさとりとか言う女はヒトの心を読むことが出来る』。えぇ、その通りです」
「ぐっ……私、アンタが苦手だわ」
「能力……」

そう言って俺は自分の手を見つめた。
レベル0、無能と言う烙印を押された人物の両手。
今聴いた話が本当であればレミリアは運命を読めるのか、そしてさとりは心が読める。
――其れは、凄い事なんじゃないか?

「――私は時間を操れます」
「私は――何だっけ?」
「お空、自分の力を忘れたら困るでしょ。
 『核融合を操る程度の能力』よ」
「あぁ、それだぁ!!」

成る程、咲夜は時間を操れるらしい。
それなら確か……俺の学校に居る先輩も同じ能力を持っていた。
周囲の時間を遅くしたり、自分自身を加速させたり、更には自分以外の全てを止めたりも出来るとか。
空は核融合を操る、と。
核融合とやらが何なのかは覚えていないし分からないが、何だか熱そうではある。
核家族とは関係が有るのだろうか? それを操ると言う事になれば、数多くの家族が泣きを見て、幸せを得たのかもしれないが。
――確か、核融合ってのは物凄いエネルギーを作れる。そんなものだったような気がする。

「それと、私も外から来たほうだけど、ここは『幻想郷』と呼ばれる世界。もしくは箱庭かしらね。
 私もそこまで出歩いた訳じゃないし、太陽が出てると蒸発しちゃうからそこまで見て回れないけど。それでも里があるし、竹林があるし、森もあれば彼岸や三途の川まで存在する。
 ――咲夜」
「ここに」

レミリアが咲夜の名前を呼ぶと、彼女はポケットからメモとペンを出してサラサラと何か書き始める。
そしてそれが終わると千切って俺へと寄越した。
其処には単純な線画と補足のように書かれた文字で説明がなされてる

「里を中心に考えて、北上した場所に館が有るのよ。
 この博麗神社は館より南と東側に寄っている感じかしら」
「――成る程な」
「……あまりそこの吸血鬼に乗せられたままで話が進むと厄介なので、私も用件を言っておきます。
 場所はこの神社の傍にある穴から地底へと向かった場所に地霊殿が存在します。
 私も――貴方の心が読めないのです。だから、貴方なら気兼ねなく私たちの相手を出来るんじゃないかと、そう思って招きたいと思っています」
「……、」

咲夜が再びメモを俺から奪うとサラサラと書き足す。
博麗神社らしき場所の傍に地霊殿と書き足された、そして地面との断面図を新たに描いてかなり深い場所に位置すると教えてくれている。
態度は少し硬いが、別に悪い人では無さそうだと咲夜を位置づけた。

「何よ、結局アンタも私欲じゃない」
「貴女よりはマシだと思いますが?
 面白そうで楽しそう、それはつまり面白くなくなったなら捨てると高言しているのと同じでしょうに。このヒトの事を玩具か何かと思ってるのと同じでしょう」
「っ――べ、別にそういう意図で言った訳じゃないわ。
 けどあの館での主人は私で、あまりにも目に付く行為をされたら切り捨てるのが当然でしょう?
 咲夜は――」
「……お嬢様が望むのであれば、多少の注進くらいはいたしますが」
「なら問題ないわね」

何が問題ないのか、良く分からない。
けれども俺は頭を抑え、小さく息を吐いた。

『大地は女難の相が出て居るな。最近学んだ付け焼刃の占いだが』

そんな言葉を思い出す、この言葉はもう一人の仲間の方だ。
頭がいい、顔も良い、両親もエリート、そしてすでに高校生の時点で将来が約束されているような人物だ。
なのだが――俺の傍に居る。そして望むと望まないと色々と世話になっている。

『大地には助けられたからな、その礼は自分がしなければ気が済まない。
 ――親がするのではない、自分で大地に返礼する。それは絶対だ』

そんな言葉を吐いたくらいだ。俺は、何もしていないのに――な。
兎に角一つ息を吐いた、そして俺は顔を上げる。

「……俺は何処にも所属しない、ただ俺はあやふやな今を――
 何故こうなったのかを追求したい。
 その為に、出来る限りの場所を回る。
 そして聴いた話では過去に何度か外から人が来ているという、なら俺はそういう人たちに会ってみたい」

俺がそう言うとさとりは少しばかり肩を落とし、レミリアが笑みを浮かべた。
それらが何を意味するのかただ一つ――

「勝(と)った!」
「――別に、勝ち負けを競っていた訳ではないのですが」
「それでも、外から来た人が数名居る時点で私の勝ちよ。
 いや~、目立つ館で良かったとこういう時は思うわね」
「え~、負けたの~?」
「その様ですよ鳥頭さん、ところで私の名前はまだ覚えてるかしら?」
「十五夜睦月」

なんて、少しばかり朗らかだったりする。
俺はそんな4人を見て一言。
「疲れた、早く出て行け」と宣言するのもそう遠くは無かった。










※ 勘が良くなる
大地が自身でそう思っているもので、実際にそのおかげで今まで生きながらえてきたと言っても過言ではない。
日常のふとした時にいきなり既視感の様なものが映像として浮かぶのだ。
例えば階段から滑り落ちるかもしれないとか、買い物帰りに不良から絡まれて喧嘩に発展するかもしれない等のもの。
深刻なものでは『ナイフを隠し持っていた、それでわき腹を刺される』、『喧嘩中に背後から三人ほどが鉄パイプ等を持って来る、気付かなければ頭を殴られて死ぬかもしれない』と言った明確なものもある。

※ 中学時代
小学生の頃は活発でやんちゃな少年だった大地、しかも非凡で有ったが為に一部の同級生から嫌われていた。
それが中学進級と同時に『事件』があって塞ぎこみ、それと同時に好機と見られてちょっかいを出され始めた。
それでも本人はそのちょっかいにすら無反応で、逆にそんな大地を気遣う同級生を見て遂に学校で暴力沙汰を起こされる。
それから大地は今のように心の殆ど死んだ機械人形のようになる。
喧嘩や暴力等が当たり前だった生活も、高校に入ってから漸く収まった。

※ 仲間
  中学時代に出会った人物で、大地が仲間と呼ぶのは二人だけである。
  一人は同じ学校に居ながら、利用されていて大地と敵対していた。(槌田啓介)
  もう一人は大地と啓介が数多くの不良に追われている途中で遭遇、誘拐事件の真っ最中だった。
  それを流れと勢いで蹴散らし、助けたが為に知り合う。
  今では二人とも同じ高校、同じクラスに居る。
  大地にとっての仲間とは血の繋がった家族、同胞と言う意味になる。
  ――大地が心を開き、認めた親しい相手にしか用いる事はない。