ROZEさんから二十六話が届きました。




天保7年 1836

大豊作を志らす件と云獣なり


天保七申十二月丹波の国倉橋山の山中に、図の如くからだハ牛、面は人に似たる件という獣出たり。

昔宝永二年酉の十二月ニも此件出たり、翌年より豊作打ちつづきしこと古き書ニ見えたり。

尤件といふ文字ハ人偏ニ牛と書いて件と読す也。

然る心正直なる獣の故に都て證文の終にも如件と書も此由縁也。

此絵図を張置バ、家内はんしゃうして厄病をうけず、一切の禍をまぬがれ大豊年となり誠にめで度獣なり


丹波国与謝群何某板








博麗神社




 魔理沙「おい霊夢、聞いたか?」

 霊夢「聞いてないわよ何も」

 「話す前に返すなよ。それで、その話って言うのがだな…」

 「いいわよそんな話」

 「だから聞く前に切るなっての、なんだって私の話を邪魔したがるんだ?」

 「あんたがそうやって話を持ち掛けて来るのって、厄介事の発端かろくでも無い話でしょ?そんなのに毎回付き合うほど私は暇じゃ…」

 「お前はいつも暇じゃないか…まあいい、そんなお前でも聞く価値が有るであろう珍しい話なんだ」

 「何よ、そんなに珍しい話なの?」

 「ああ。なんでも今朝、里に伝説の生き物が現れたそうなんだよ」

 「伝説の生き物?」

 「それが件(くだん)と言ってな、凶事や疫病、災害、『戦争』なんかの時に現れる怪物らしいんだよ、こりゃあまた何か面白い事が起きそうだとは思わないか?」

 「…やっぱり聞くんじゃ無かったわ」





人間の里・路地





 牛耳の少女「むにゃむにゃ…」

 青年「……で、その件ってのがこの子って訳?」

牛娘
牛娘 (2)

 中年「とてもそうは見えないがなぁ…」

 おばちゃん「だってこの子が今朝此処にいた時にあたしが名前を聞いたら、『私はただの件ですよ~』なんて言って、そのまま寝ちゃったんだよ?」

 青年「たまたま名前が『くだん』ってので、おばちゃんが勝手に『件』を連想しちまっただけじゃねえの?」

 「そうかも知れないけど、じゃあこの角と耳はどうなのさ?これって牛のだろ?」

 老人「だが、昔儂のじいさんから聞いた件は、男の顔の付いた牛の姿だぞ?それの剥製だってそんな感じだって聞いたしの」

 少年「うげ、そんなキモイの剥製にして物置入れちまったのかよ…絶対見たくねえ」

 女の子「そう言えば前に慧音先生から聞いたんだけど、件って何か悪い事が有ると出てきて教えてくれるんでしょ?」

 一同「あ…」




直後路地のど真ん中で眠る少女を囲んだ民衆の輪は蜘蛛の子散らす様に散開。

神棚に手を合わせ一心不乱に祈る者から彼女の姿を紙に描き写し家に貼り付け出す者、その絵を売り出す者買う者、果ては来る可き自体に備えちり紙便所紙を大量に買い占める者まで現れはじめ、里の中はちょっとしたパニックに陥った。







八雲の屋敷






 獎「……で、前回から約三年間経っている訳ですが、やっと登場した俺は何一つ変わっていないと」

 橙「獎さん、一体何の話をしているんですか?」

 「いやね、余りに改変修正に時間が掛かり過ぎたなって話、本来なら俺22歳位になっちゃってるよ?でも時間軸的には今19、20代一歩手前な訳なのよ」

 「う~ん、説明されても良く分からない…」

 「逆に分かんない方が面倒臭くなくて良いと思うよ、まさかの主人公と作者の年齢上下が逆転しちゃうって言うね、しかも何の因果かリアルに民俗学…」

 藍「まぁまぁ、気持ちは解らなくも無いですが、ややこしい話はその辺に」

 「え~、まだまだ言いたい事いっぱい有ったのに。それこそそれだけで一話分まるまる埋める自信が…」

 「そんな事をしたら、何のとは言いませんがただでさえグダグダした雰囲気が加速されてしまうでしょう? それよりも、何やら里で面白そうな話を小耳に挟んだのですが」

 「何々、なんかお祭りでもやってるの?」

 「まぁ近い様な、近くない様な…何でも伝説の怪物、『件』が里に現れたんだとか」



 「へー、それはすご……な、なんだってーーー!!!!?????」



 藍・橙「!?」

 「いやいやいや、もっと驚こうよ?件って激レアだよ?瓦版か剥製でしか見れない様な妖怪だよ?」

 「いや、それは知っていますが、外の人間は他の妖怪だってまず見る機会は…」

 「いや、だって伝説の妖怪の九尾の狐とかほぼ毎日見て見飽きる位だし、鵺だって命蓮寺行けばたまに浮かんでるし…」

 「さらりと今失礼な事言いませんでした?」

 「ああいやゴメン、それだけ慣れてるよって話。藍みたいなかわゆい女の子は毎日…」

 「それで、藍様はその妖怪を見てきたんですか?」

 「いや、私は里の人間がお祭り騒ぎで慌てふためいている様しか見ていないよ。買い物をしようと思ったんだが、商売そっちのけの店が多くてな」

 「なんかヤバイ事でも言われたのかな?それこそ幻想郷消滅とか感染症疫病とか…」

 「いえ、まだ何も分からないそうですよ。なんでも、どこからともなく現れてそのまま眠ってしまったんだとか」

 「え、牛舎で見つかった訳じゃ無いの?んで、里に来るなり何も言わずに死んじゃったって事?なんて不吉な…」

 「いえ、永眠では無く睡眠の方みたいですよ」

 「な、なんだよ脅かしやがって…実は血の気の多そうな藍が『眠る』なんて使うからてっきり…」

 「獎さん、さっきからわざと言ってますよね?」

 「はっ…い、いや今のは言葉のあやであって、その、決して藍が凶暴だとか血も涙も無い獣の様な心だとかキレる若者だとかそう言う意味では無く…」

 「……獎さん、それよりもこれからゆっくりお互いの認識について話し会いませんか?それこそそれで丸々一話分…」

 「えーっと、てな訳でちょっと妖怪UMA好きの血が騒ぐので確認して参ります!さあ橙も行こうか!」

 「え、私もですか?」

 「ちょっと待ちなさい、まだ本題にすら…」

 「ゴメン、後で聞くから!」






人間の里






 「あー、危ない所だった…危うく藍をマジギレさせる所だったぜ」

 「既に物凄い怒ってた様な…」

 「それは暗黙の了解ね、取り敢えずご機嫌取りのブツ(揚げ物)いっぱい買って謝れば許してくれるでしょ…これもこの業界ではよくある事よ」

 「じゃあ先ずお豆腐屋さんですね」

 「そゆこと」






人間の里・豆腐屋






 「すみませーん、油揚げと厚揚げ5枚ずつ…」

 「にゃ?」 「ん?」


何かがおかしい、いつもなら既に店先に居るか「す」の文字を聞いただけでドタドタと奥から出て来る店主が出てこないのである。


 「…居ないのかな?此処でブツ買えないとこのお話、今回で悲しみの向こうへたどり着いて終了しちゃうじゃん。
すーみーまーせーんー!!オヤジさんでもおかみさんでも良いから誰か居ないんですかー!!」

 店主「な、なんだよ煩いな…」

 「なんだ、居るじゃないですか。油揚げと厚揚げ、5枚ずつくださいな」

 「…用はそれだけかい?」

 「ええ、それが?」

 「何でも良い、必要な分勝手に持ってって良いよ!」

 「え、どうしたんですか急に」

 「こっちはそれどころじゃねえんだよ!取り敢えず、今日は店やんねえからさっきも言った通り、必要なの持って早く帰ってくれ!」

 「は、はぁ…」

 「じゃあな、お前も気を付けろよ!」


言うなり奥に引っ込んでいく店主。こっそりのぞき込んで見ると、数珠を握って何やら念じている様だ。


 「一体何に気を付けろと…あ、取り敢えず代金は此処、置いときますからねー!」





人間の里・路地




 「という訳で無事に賄賂はゲットした訳だが、なんか変なの売りまわってる人以外何処の店もやってないって言うね」

 「あ、獎さん、あそこ見て下さい」

 「ん、何か見付けた?」

 「あっちに何人か人間が集まってますよ」

 「お、ホントだ。ちょっと見に行ってみるか」




 牛耳の少女「むにゃ…」

 女の子「おねえちゃん、全然起きないね」

 少年「大人は殆ど家に引き篭っちゃったしな、そんなに不吉な予言が怖いのかよ」

 「異変なんて良く有るのにね」

 青年「俺だって一応大人だぞ?」

 「にいちゃんは暇潰しだろ?普段から仕事しないでぶらぶらしてるし」

 「う、うるせえな。あれは里の警備なんだよ、今だってこうして来る可き時に備えてだな…」

 獎「え~と、お話の所すみませんがちょっとよろしいでしょうか?」

 「ん?どうしたんだい?」

 「そこで寝てる子、もしかして件ですか?」

 「ああ、そうじゃないかって皆言ってるよ」

 「でも全然起きないの」

 「成る程、確証は無いけどもし件だったら凶事の前触れ、それの備えで仕事どころじゃ無いって事か」

 「まあ、そういうこったな」

 「こっちのにいちゃんは普段から仕事してないけどな」

 「まだ言うかお前!」

 「だって本当じゃん、だから女にモテないんだよ」

 「何だと~!?」

 「なんか他人事とは思えない…って、橙何してんの?」

 牛耳の少女「…ん、んんんんぅ~……」

 「くすぐったら起きるかなって思って、そこらへんに生えてた猫じゃらしでこちょこちょと…」

 「…は…くしゃんっ!!」

 一同「!?」

 「…ふわぁぁぁ…鼻がムズムズ…」

 女の子「起きた!」

 青年「おい、皆呼んで来るぞ!」

 少年「お、おう!」

 牛耳の少女「ふぁ…何だか慌てて行っちゃいましたねぇ、どうしたんでしょう?」

 「えーと、起き掛けで申し訳ないんだけど、貴女はその…『件』って妖怪で合ってるのかな?」

 件「よいしょっ、と…そうですよー、初めましてですねぇ」

 「あ、はい初めまして」

 「おねえちゃん、件って、何か良くない事が有ったらそれを教えに来てくれるんだよね?何か里に良くない事が起きるの?」

 「それは~…えぇと…」


 青年「おーい、皆呼んできたぞ!」

 中年「遂に起きたか!」

 老人「儂はもう十分生きた、今更何が起きようと」

 豆腐屋「じいさんはともかく、俺らは未練有りまくりなんだよ!」

 おばちゃん「で、何か予言したのかい?」


瞬く間に騒がしく成る路地、寝起きの件は少々煩そうに瞼を擦り出す。


 豆腐屋「頼む、神でも仏でも妖怪でも何でも良いから早く凶事を回避する方法を教えてくれ!」

 餅屋「俺には二人の娘が居る、今が可愛い盛りなんだー!!」

 青年「俺はまだ女の子と手を繋いだ事すらないんだよー!!!」

 少年「それはにいちゃんの問題だろ…」

 老人「もはや悔いは無い…」

 花屋「ああ、私、この美しさのまま永遠の眠りに…」

 狸子「まだ私、外の世界に行く願いと言うか目標叶って無いんですが…」

 小雪「幻想郷中に氷菓子を浸透させる私の夢はどうなるのよー!」

 泝「地下センターをクビに成って間も無くこれか、河童Cの表記から名を与えられたのに、俺の人生って…」

 「…んんー、皆うるさいです、これじゃ寝られないじゃないですかぁ…それに、凶事を回避する方法なんて分からないですよー」


 豆腐屋「な、なんだって!?方法が無い!?」


 餅屋「もうおしまいだ…すまねえな二人共、何もしてやれない父ちゃんで…」

 老人「定めじゃ…」


 「あのー、おしまいって、一体何の事なんですか?」


 「え、今さっき凶事を回避する方法無いって自分で言ったんじゃ…」

 「だって、私は別に理由が有って此処に来た訳じゃないですし、起こりもしない事を起こらない様にするなんて無理ですよー…」


 一同「えっ?」




彼女の一言で一斉に黙り込む里の人達、そして…




 一同「うおおおおおおおおおお!!!」


 豆腐屋「いよっしゃあああ!!!仏は俺を救って下さったんだー!!!」

 青年「良かった、俺にまだ未来は残されていたんだ!!」

 おばちゃん「なーんだい、慌てて損しちまったよ。そうと分かればぼちぼち店を開けないとね」

 少年「なーんだ、つまんねえの」

 女の子「結局みんな騒いだ割に何も起こんなかったね」

 老人「まだまだ迎えは先の様じゃの」

 餅屋「良かった…よ~し待ってろよ我が妻子、今夜はもう死んだつもりで晩飯奮発だからな!」


先程迄の焦燥・絶望感が歓喜や安堵感へと染まり、俺と橙含む数名を残して各々の家に戻り始める人々。
さながらゴーストタウン状態だった里は直ぐにいつもの活気を取り戻して行った。


 「あぁ~、やっと静かになったぁ。これでまたお昼寝出来る…」

 「あああちょっと、こんな所でまた寝たら風邪ひきますよ」

 泝「思い込みの力って凄いな、この子一人でさっきまで里中がパニックになってたなんて信じられないよ」

 小雪「あらあら、さっきまで貴方も同じように騒いでいた癖に」

 狸子「それは皆さん同じですよ、妖怪だって凶事は怖いですから」

 橙「それはともかく、あなた達は何で此処に残っているの?」

 「確かに、妖怪内でもやっぱり件って珍しいんですか?」

 泝「そりゃあ…」

 狸子「やっぱり…」

 小雪「ねぇ…」


 三人「この子に私(俺)の未来を予言して貰う為に決まってるじゃないですか(でしょう)!」


 獎・橙「……」


 「いやいや、普通分かるなら知りたく無いですか?俺なんかあれから地下センタークビになっちゃいましたし」

 「私だって生きてる内に外へ行く方法知りたいですし」

 「私も近い将来幻想郷を氷菓子だらけにする未来の事を知って今より更に効率的な方法を…」

 「え、普通日本規模とかその土地規模の予言であって、個人規模でって前代未聞と言うか、抽象的過ぎるのは無理なんじゃないですか?」

 「出来ますよ~」

 「え?」

 「でも、予言するのってすごーく疲れるので、一人だけにして欲しいですー…」



 一同「一人…?」



 「頼む、これから俺はどうやって生きていけば良いんだ!?」 「私がお祖母ちゃんから聞いた四国松山に行くには一体どうすれば…?」 「今よりもっと効率の良い氷菓子の販売方法は無いの!?」 「私が式神として一人前に成るにはあと一体どの位…」


 「…んんんー…いっぺんに言われても分かりませんよぉ…」



 「……あっ、空が晴れてるのに幻想郷最高神である龍が!」


 一同「えっ!?」


 「じゃあ今週の俺の運勢を、誕生日8月26日乙女座で!」


 一同「あっ…」


 「はーい、ちょっと待ってくださいね、今調べていますー…」

 小雪「ちょ、ちょっと、嘘言って抜け駆けなんて卑怯じゃないの!」

 泝「そうですよ、俺なんてこれに将来掛かってたのに!」

 狸子「それも今週の吉凶だなんて直ぐに過ぎちゃう様な事に使ってしまうなんて…」

 橙「私だって色々聞きたかったのに…」

 「す、すみません…でも、それでもし将来が絶望だったとか、今やってる事が無駄だって分かったら凹みません?」

 一同「それは…」

 「それに、答えが分かってる将来に今を繋げるってぶっちゃけただの作業じゃないですか?」

 「確かに、不可能って言われたら落ち込みますよね」

 「作業じゃそれこそ俺の人生なんだったのかって話ですからね」

 「そうね、それを考えるのもまた商売の醍醐味ってね」

 「いつ一人前になるか、じゃなくて一人前に認められるまで精進あるのみ、ですね」

 「みんな分かってくれたかい、先生は嬉しいぞ…!!!」

 狸子「でも、当たらぬの可能性が無い占いだったら聞いてみたかったですよね」

 小雪「自己責任の占いより為になるし」

 「うっ…えーと、そ、それで、結果は如何程ですか?」



 「はーい、お待たせしましたー。えーっとですね、結論から言うと…今週の8月生まれ、乙女座の貴方は最悪の運が出ましたー」



 「え」

 「詳細はー…『周囲の人が絡んだトラブルから予想外の事態に!今週はお家で大人しく寝ていましょう』となっていますー」

 「よ、予想外ってこの世界じゃ洒落に成らないんじゃ…」

 「ちなみに、『恋愛運は星一つ、金運は星三つ』…………」

 「何個中の1つ3つ!?え、ちょっと、寝る以外に何か対処法は有るでしょう!?有りますよね!?」


言いながら眠たそうに話す彼女の肩を揺すろうとしたが、彼女はそのまま倒れ込んでしまった。


 「え、ちょっと、大丈夫ですか!?」

 橙「まさか、今の予言で力尽きちゃったとか…」

 泝「そう言えば、件は予言を終えると直ぐに死んでしまうと…」

 「そんな、じゃあ俺の下らない占いの為にこの子は…!」


 狸子「いえ、その…彼女、寝始めただけみたいですよ?むにゃむにゃ言ってますし」


 「え?生まれて直ぐ予言して死ぬってのは?」

 「それは外の世界の伝承で、実際の所はこの位だとかじゃないですか?ついさっき生まれた訳じゃないですし」

 「そう言えば、予言すると疲れるって言ってたわよね?って事は、暫く此処で寝続けるんじゃ無いかしら」

 「良かった…危うく一生もののトラウマ背負う所だったよ…」

 「よいしょっと…それよりも、これからの一週間の方が問題なんじゃ無いですか?」

 「そうそう、確かトラブルで予想外の事態って…」

 「あ…」

 「もしかしてそれって、さっき藍様を怒らせた事で一週間予想外の事態にって意味じゃ」

 「…よし、橙、直ぐに帰るぞ!って事でお先に失礼します!」




その後八雲の屋敷に戻り、藍に賄賂を渡して必死に謝り続けた結果、何とか怒りを鎮める事に成功した。





六日後・自室




 「……しかし、問題はこの可能性がこの一週間有効であると言う事なんだよね…」


何も俺の凶事の原因が藍であると言う確証は無いのである。
周りの人と言えば家族や友人、最悪の場合自分がこれまで関わって来た人は全員該当して仕舞う訳なのだし、何処に地雷が埋まって居るのか分からない。

取り敢えず藍の一件を収めて間も無くに屋敷の住人に事情を話して部屋に篭り面会謝絶、クロもダンボール箱ごと部屋の外に放り出して置いた。
そしてかれこれ今日で七日目、誰とも会わず連絡を取らずに一人孤独に過ごして今に至る訳である。


 「家で大人しくしてろってことだったし、これで一応の地雷は回避出来てるのかな…今日一日を過ぎれば…俺は自由に…!」


とはいえ一人だと特に何もやる事は無い。取り敢えず一息着こうとしたその時、いきなり携帯が鳴り出した。


 「ひ!? って、なんだ、にとりかよ…いや、これはもしや最後の最後でフラグじゃないか?…よし、無視ろう!」


しかし一旦切れても二回、三回と掛け直して来て一向に鳴り止む気配は無い、仕方なく携帯を取って電話に出る。


 「…もしもし」

 『やっと出た!遅いよ、折角君にとっておきの情報仕入れといたのにさ!』

 「ゴメンゴメン…んで、その情報って?」

 『ふふふ、聞いて驚くな、実は君の身体に関する…』

此処で通話を切った、話の流れ的にどう考えても只のフラグ、ならば聞く前に終えてしまおう。
そして再び彼女から電話が掛かって来る。

 「…もしもし?」

 『なんで途中で切るんだよ、今すごい重要な話しようとしていたのに!』

 「ゴメン、それなんだけど…今その話すんのは止めてもらえないかい?」

 『どうしたのよ急に、だって前に元の身体に戻る方法』

 「だーかーらー!なんか良く分かんないけど今そう言うフラグ立てる系の話しないでっての!一週間耐えたのがそれに関わった所為で凶事とか洒落になんないんだよ!
しかも絶対当たるってお墨付きだし!」

 『…分かったよ、其処まで言うならこの話はしない。連絡もしない方が良いんでしょ?』

 「本当ゴメン、今日だけは本当に…ってもう切れてるし。流石に怒らせちゃったかな…」


罪悪感を感じながらも携帯を仕舞い、数分程ベッドに寝転がっていたら再びにとりからの着信が入った。


 「連絡も云々って言う割には直ぐ掛けて来たな…今度は何の用かしら」

 「もしもし?」

 『あ、獎さん!?』

 「ん?その声は雛ちゃん?なんでにとりの携帯を?」

 雛『今にとりの所に遊びに来たんですけど、様子が変なんですよ。
なんか「私はいらん子カッパの子~」とか変な歌歌いながら椅子に座って虚ろな目で胡瓜やけ食いしてますし、時折「獎の馬鹿~」とか歌いながら虚ろな目で壁蹴ってるので二人に何か有ったのかと思って通信器を』

 「いやまあ、斯く斯く然々であり…」

 『それは明らかに獎さんが悪いじゃないですか、何の話か聞こうともしないで話すななんて…』

 「だからそれは悪いと思ってるけど、こっちにもそうせざるを得ない事情が有る訳で…」

 『だからと言って友達にそう言う態度取る人が居ますか!とにかく、今すぐこっちに来てにとりに謝って下さい!』

 「だから今日は外出れないんだってば…とにかく後で行きます!ごめんね!」


言って直ぐ電話を切る。
部屋出てないのに既にめんどくさい事に成ってしまってる辺り、今日は俺の人生史上最大の厄日と言っても過言では無いだろう。
明日直ぐに二人に謝りに行かなければと思いつつ携帯を仕舞い、再びベッドに寝転んだ。




自室 23:30




 「ふふふ…いよいよ今日と言う日が終わる…俺は運命に抗い、そして打ち勝…ん?」


一日の終わり寸前を歓喜していると、またもやにとりからの着信が入った。


 「またにとり…いや、雛ちゃんか。あとちょっとって時に一体何を……もしもし?」

 『あ、獎さんですか!?』

 「そ、その声は生き別れの…!?…じゃなくて、えっと…どちら様でしょうか?」

 『私です、犬走 椛です!』

 「あ、そっか、音割れてて一瞬分からなかった』

 『それはともかく、今にとりの所に遊びに行ったらにとりと雛が虚ろな目で…』

 「…聞かなくても大体分かった。で、椛ちゃんも俺に今すぐ謝りに…」

 『当たり前です!何やってるんですか本当に、にとりは獎さんの為に、雛は二人の事を心配して話を…』

 「だからそれは分かってるし悪い事したっては思ってる、でも今日だけはフラグ立てると本当にヤバイんだよ、それじゃあね!」


返事を待たずに電話を切って起き上がり、時計を見る。


 「58分…いやはや、最後までフラグが待ち構えているとは…」

 女性「なんだか大変そうですねぇ」

 「ほんとほんと……え?」


驚いて目線を下に戻すと、一週間前に里で会った件の少女が足元に座っていた。


 「!?」

 件「こんばんはー、お久し振りですねぇ」

 「え、嘘、いつの間に!?て言うか鍵は!?」

 「掛かってませんでしたよ?お家の方に占いの結果で言い忘れた事が有るって言ったら入れてくれました~」

 「なんだ、一瞬何者かがピッキングで忍び込んで俺の暗殺を企てたのかと…それより今更感だけど、結果の言い忘れって?」

 「そうなんですよー、貴方を占った時に結果を全部言う前にうとうとしちゃって、起きたら誰も居なかったのでお昼寝しながら予言で此処のお家をー…」

 「それは態々御足労をお掛けしまして…って此処で寝ちゃ意味無いじゃないですか、今お茶煎れますから」

 「むにゃ…ごめんなさい、それでは言ってなかった続きを…『そんな貴方にワンポイントアドバイス、何があってもお友達だけは大切に、ささいな事で喧嘩になってそのまま関係がこじれてしまうかも』となっていますー」

 「えっ…」

 「今週の8月生まれ、乙女座の運勢は以上ですー……むにゃむにゃ」



言い終わると件はそのまま眠り始めてしまった。
慌てて時計を見ると既に0時を過ぎている。


 「じゃあトラブルから予想外の事態ってのは死亡フラグなんかじゃなくて今さっきの…ヤバい、直ぐ行かなきゃ!」






 「むにゃむにゃ…今週の8月生まれ、乙女座の貴方はイマイチの運勢…喧嘩した友達となかなか仲直り出来ず苦労するでしょう、恋愛運は星二つ、金運は星一つ……そんな貴方にワンポイントアドバイス、自分の非を認めて謝り続ければ、元通り仲良しに戻れるかも?……それでは良い週末を…むにゃむにゃ…」





~あとがき(長いぞ)~

取り敢えず、長らく音沙汰無しですみませんでした。修正作業は行なっていたのですが本編は手つかずのまま早三年
中二病と高校をなんとか卒業して二次元にのめり込み、京都でキャンバスライフと言う名のニート生活を送っておりました。

今回の話はオリ妖怪や名無しキャラだらけで構成されており、東方分が少な過ぎるのでは無いかと投稿前からビクビクしております。
最後の方は何と無く表現力や発想力の不足を痛感する出来と成ってますし…ネタ浮かんだ時点でオチは決まっていたんですけれどね。件の予言は絶対当たる。

その代わりブログで予告してた通り友人絵師に頼んでイラストを描いて貰い黒夜さんにtxtと一緒に送ったので色々上手くいけば今回からまさかの挿絵付き。
無理でも過去作ろだに上げているのでちゃんと見れるぜ。

人物としては初登場とも言える子供以外の里の人達、「うさぎ山商店街」の人達をイメージして書いてた結果このような妙なノリになってしまった訳で…

さて今回の件ちゃんにもモデルがおり、「モバマス」及川 雫ちゃん(牛娘のイメージ)と「中二病でも恋がしたい!」五月七日くみんちゃん(外見・すぐ寝る設定とか)の二人となっております。でも名前は無いよ。
語尾が「ですよー」「ですねぇ」と伸びてるのはおっとりのんびり眠たそうなのの乏しいイメージ。でも名前は無いよ。
文章では表現しづらいですけれど、何と無くイメージして頂けたらちょっとは楽しんで頂けるかなと思います…逆に両者のファンから石を投げられないと良いですが

次回は既に構想自体は出来ているのですが、細かい所をどうしようかと色々悩んでいる最中にございます。
まあ気長にお待ち下さいとだけ…ああいや、別に数年後とかではなく。

それでは、最後まで読んで頂き有難うございました。