2006年06月06日

『もしも明日が晴れならば』考察

『もしも明日が晴れならば』

非情に考えさせられる良いお話でした。

今回は、この通称『もしらば』のタイトルの面から考察していきたいと思います。

ネタバレ全開ですのでご注意をw




この作品の中には

もしも○○が○○ならば〜。

というテキストが多々見られます。

大抵それは、夢見るだけで、こんなこと言ってても埒があかないと気付きます。

しかし、各ルートで核となる仮定文があるんです。



<つばさルート>
もしも私が姉ならば。


お姉ちゃんから数々のものを奪ってきた(と思い込んでいる)つばさは、

お姉ちゃんの一番だけは譲ると決めた。

だからこそ一樹だけは手に入れるわけにはいかなかった。

それなのに、一樹を奪ってしまった。寝取ってしまった。

そう思い込んだつばさは、姉に体を受け渡します(つばさの妄想)


もしも私がお姉ちゃんならば、
―――全てが上手くいく。


そう考えたのでしょう。

しかし、一樹はつばさを選んだ。

そんな仮定は無意味だったのです。(詳細は省略)

これは、「もしも○○が○○ならば〜」という仮定に対する明らかな否定ですね。



<千早ルート>
もしも全てが千早の所為ならば。


そもそも彼女はどうして疫病神になってしまったのでしょうか。

その詳しいところは語られていませんが、おそらく、イツキくんが死んだのは自分の所為だと思い込み、こんな私では、イツキくんと顔を合わせる事が出来ない。(死後の世界で)

あるいは、自分は地獄にいくので、死んだ後に天国に逝ったイツキくんとは会えない。→未練

このように成仏できずに現世に残った。

そして、人々から恨まれることで疫病神となったのでしょう。


もしも全てが千早の所為ならば、
―――千早が償わなければならない。


この仮定は見方によっては成立しています。

千早が疫病神になることで、人々が少しでも何かを恨むことが出来、気が晴れたのならば。

しかし、これでは千早自身が救われていません。

ラストに千早は償いが終わっていないから、と一樹の前を去り、合歓の木に戻ります。

数ヶ月に渡り、一樹を見守りながら合歓の木の中で考えます。

考えた末の結論は、一樹の側にいたい。それだけです。

償いは側にいることとかなんとか言ってますが、そんな口実はいらないです。

好きだから。愛してるから。それだけでいいじゃないですか。


このルートの「もしらば」も否定されました。

そもそも千早ちゃんが全てを背負う必要なんてなかったのだから。



<珠美ルート>
もしも出会いがないならば。


子供の頃から数々の別れを体験してきた珠美。

幽霊はすぐにいなくなってしまう。

人間もいつかはいなくなってしまう。

次第に彼女はこう考え始めます。


もしも出会いがないならば、
―――哀しい想いはしなくていいのに。


出会わなければ、当然別れもありません。
だから、悲しい思いをしなくて済む…と。

そんな中、彼女はつばさと出会い、そして…一樹に恋をします。

珠美は恋をして、明穂に対して果たした義務などあらゆる葛藤の中で、

自分のすべき事。大切にすべき事に気付きます。


いつかは別れなくてはいけないから―――
だからこそ、人は誰かを愛する。


そして、彼らは約束を交わします。


いつかは終わってしまう幸せだからこそ、今の一瞬を
いつまでも大切にしていきたい。


これこそが、「もしも明日が晴れならば」という仮定文に対する最も強い否定でしょう。

千早ルートにおける

「もしも明日が晴れならば、またあの丘へ行こう。」という些細な仮定文でさえ、一時否定されました。

彼らはあの丘に行けなかったのだから。(千早ルート以外)

明日…いや、次の瞬間終わってしまうかもしれない。だから今の一瞬を大切に。

そういうことなのでしょう。


以上3つのルートにおいて、「もしらば」はことごとく否定されてきました。

「もしも○○が○○ならば〜」こんな淡い仮定は現実において許されないでしょう。

それが上記3ルート+委員長ルート(?)で語られています。

委員長ルート(?)では、

もしも明日が晴れならば、
―――空の向こうが見えるのに

明穂のいる天国が見えるのに。

一樹自身が語っています。

そんな考えは埒が明かないと。


そして肝心の明穂です。



<明穂ルート>
これは「もしらば」肯定です。


もしも転生できたならば、
―――今度こそアナタとの未来を。


叶いました。彼らはきっと幸せになったでしょう。

しかし、このルートだけ明らかに浮いてますね。

やはり「もしらば」を願う事はダメなのでしょうか。



そんなことはないと思います。



<つばさED後>
もしも明日が晴れなら、その時は、一緒にお出かけしよう。

そう約束した。

そして、約束は果たされました。

青空の下、姉に語りかけるつばさ。

そして、一樹と二人で、空から見守ってくれている明穂に、語りかけます。

僕たちは幸せです。


<千早ルート>
ED後のラストに彼らはあの日の約束を守りに行きます。


もしも明日が晴れならば、またあの丘へ行こう。


あの時は叶わなかった願いが、500年経ってやっと叶ったのです。



<珠美ルート>
それは明穂が教えてくれました。


もしもウチの義務ならば、私はあなた(一樹)を愛します。


珠美が一樹を「やはり愛せない」と、振ろうとした時に、明穂からメールが来ました。

一樹を愛してあげてほしい。彼が私(明穂)のことを思い出せないくらいに。

そして、それは珠美の義務として―――。


<委員長ルート(?)>
このルートでも敢えて言うなら、

もしも振り向いてくれるなら、私も見てほしい。

と、委員長が望みます。語られてはいませんが、「もしらば」を望んだ彼らにはちゃんと幸せがきたと思います。


否定されてきた「もしらば」でしたが、各ルート最後にはちゃんと叶っています。


この物語は

「もしも○○が○○ならば」

こんな非現実の仮定を望んでもいい。

そんな世界を垣間見せてくれたのではないでしょうか。
nif322 at 20:42│Comments(1)TrackBack(0)PCゲーム 

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この記事へのコメント

1. Posted by あいふぅ   2006年06月07日 12:49
すばらしい考察お疲れです☆

この作品は最初から答えがわかりきってる事項、「死なない人間なんて、この世にはいない」「変わらない気持ちも、たぶんないんだと思う」という二つの言葉を、もう一度見つめなおした作品だと思う。(ともにつばさルートで明穂と一樹の発言)

事項を仮定にまで戻し、そして再構築した…っていう印象を受けたよw それから最後のにふ君の結論で、一番救われたのは実かもねw 彼には幸せになってほしい…。

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