『極楽カシノ』by森巣博



書名:『極楽カシノ』
著者:森巣博
出版社:光文社
出版年:2005年4月25日
定価:1600円(税別)


さて、競馬本ガイドを題したブログにて本書を取り上げてしまっては、著者からクレームが来てしまうかもしれないが、同じギャンブルくくりということで紹介させていただくことにしよう。本書はカシノ賭博の「常打ち賭人」と言われる森巣博氏とその仲間たち(?)による、カシノへの訪問実録がメインに据えられた本である。『小説宝石』に掲載されていたシリーズものがまとめられた一冊だ。森巣氏はカシノ界隈では有名な作家さんで、自身のカシノ体験を元にした小説やエッセイを多数著しているお方だ。アメリカ、イギリス、オーストラリアを拠点にカシノにとことん通いつめたホンマモンの博打打ちであり、その経験や知見は生半可なものではない。ちなみにカジノではなく、カシノと表記しているのは本書表記に倣っている(現地発音に合わせた形で、そもそもカジノという日本語がおかしい)。


◆競馬からカシノへ転進!?

本書はまず光文社の編集者、通称「ジミー」と森巣氏が連れ立って中山競馬場に行くシーンから始まる。ネタバレになってしまうので、ものすごく乱暴に省略すると、そこでいろいろあって、競馬からは足を洗うと決意したジミー氏が森巣氏へカシノ賭博の教えを乞う、という流れで話は進行して行く。「いったい誰が、控除率28%の博打で勝利可能なのか?」「馬券を買う者とは、きわめて勇敢なのだ。ここでの「勇敢」はバカと同義と理解していただきたい」などの森巣氏の言は、我々競馬好きとしては、日本の競馬がいかに割に合わない博打かということを嫌でも思い知らされるため耳が痛い部分だ。競馬好きの中には、俺は違う!と、反論したい人はいくらでもいるだろうが、理論上はそうなのだから仕方が無い。


◆カシノの楽しさ、そして、恐ろしさ・・・

かくして、森巣氏に同行してカシノに出入りするようになったジミー氏。オーストラリアや韓国など各地のカシノで勝負していく様子が描かれる。初心者であるジミー氏がゲーム賭博のプロ中のプロである森巣氏とかけあいをしながら話が進んでいく構成のため、読み手にとってもカシノがどんなところなのか、どんな風にして勝負が進行して行くのかという、基本的な部分がよくわかるようになっているのが本書のミソである。そして森巣氏とネット上でつながりのある通称「リゾカジ軍団」なる日本国内のカシノ好きたちと共にカシノを攻略せんと奮闘していく様子は、読んでいても非常に興奮する。BJ(ブラックジャック)、バカラ、牌九(パイガオ)、などそれぞれのゲームの打ち方や楽しむポイントは章の間のミニコーナーで解説されているので、カシノがよくわからない人でも楽しく読み進めることができるカシノ入門書的な側面もあるつくりになっている。浮くときは浮き、沈むときは沈むカシノ賭博の楽しみと恐ろしさが何となくでも感じられることは間違いない。


◆競馬ファンこそカシノ賭博から目を背けるな

かように本書はカシノの楽しみを味わえる本なのだが、一応こんなブログなので、競馬につなげた感想も述べておこう。競馬ファンの中でも「ギャンブルは競馬しかしない人」というのは一定数いるだろう。もちろん「負けてもともとの見物料だから賭けた額の半分も戻ってくればいいや」と思っている人はさておき、少しでも多く、取り戻したい、あるいは勝ちたいと考えている人は、少なくとも「日本における競馬」がどんな性質のギャンブルであるかをしかと認識すべきで、本書はその補助線となりうる本である。上記の控除率の話などは、おそらく競馬ファンであれば「頭では分かっていること」であろう。しかし「ではもっと控除率の低いカシノ賭博でお前は勝てるのか?」と問われると、うっと言葉につまりそうな気がしないだろうか。理論上、1/2の確率で勝てるはずのゲーム賭博でさえ、これだけプロが神経をすり減らしながら対峙している。我々はしっかりと、その事実と向き合いつつ相対的に「割に合わない」賭博たる競馬と対峙する必要があると感じる次第である。


◆兎に角、オモロイ本です

カシノはほとんど行ったことがなく、競馬も負けまくっているくせに偉そうな弁を延々とほざいてしまいましたが、本書はギャンブルが好きな人であればひとまず楽しく読める本であることは間違いない。ときおりオカマ言葉になる、少し砕けながらも底知れぬ恐ろしさを感じる森巣氏の文章。濃いキャラクターの登場人物たち・・・。彼らのやりとりを読んでいるだけでドーパミンが出てきてしまうぜ。読了後に「やっぱりギャンブルって面白いな」と素直に思えるかどうかはまた個人差があるとは思いますが・・・。非常におススメの本です。こんなに面白いのに、書店では見つからず、結局アマゾンの中古で購入した記憶があります・・・。


満足度:★★★★★
面白度:★★★★★
博打度:★★★★★
実践度:★★★★☆


極楽カシノ極楽カシノ
森巣 博

光文社 2005-04-20
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『2頭出しの正しい選び方』by武内一平




書名 :『2頭出しの正しい選び方』
著者 :武内一平
出版社:KKベストセラーズ
出版年:2015年2月5日
定価:1574円(税別)


中央競馬の2頭出し、多頭出しにフォーカスを当てた武内一平氏の著書。清水成駿氏の『万馬券の9割を狙える方程式』の中でも指摘をされていたが、2頭出しの馬に注目すると思わぬ穴馬券を拾うことができる点に注目した、ありそうでなかった本だ。武内一平氏は1952年生まれ。早稲田の政経を卒業後、ライターとして活躍し、様々な媒体に寄稿したり、競馬関連の書籍を著しているお方だ。実はさきほどの清水成駿氏の本にも武内氏が寄稿している(清水成駿は監修クレジット)ということもあり、内容がつながっているのはそういうわけかと今頃になって気が付いた次第だ。


◆2頭出しの正しい買い方とは

本書刊行後に私が目撃した例だが、例えば2016年の8月13日の新潟7レースは1着が9番人気のオレンジガール、3着が16番人気のスーリーズで決まり、3連単は大荒れの944,380円となった。このオレンジガールとスーリーズはともに粕谷厩舎の管理馬。このように、一見では買えないような大穴馬も、2頭出しに注目していれば取れた可能性があったりする。武内氏はそれに着目した。しかし、一口に2頭出しとは言っても、ただ漫然と2頭出している場合もあるし、上記のとおり狙った勝負がかりな場合もある。これの違いをいかに見極めるかということを本書は解説していく。


◆初心者向けの馬券術だが、本質的には超上級者向け

2頭出しは出馬表さえあれば誰でも気がつけるオープンな情報なので、ある意味初心者でも手軽に楽しめる馬券術である。ただし、当然ながらベタ買いをしていては儲からない。でも儲けたい。さてではどうする・・・?と考えたときには一気に難易度が上がる。武内氏も本書の中でこう述べている。「2頭出し馬券の的中にたどり着くまでには最低2つの関門があります。第一の扉は、果たしてこの2頭出しは馬券になるのかどうかという判断。いうまでもなく、2頭出し全部が馬券に絡むわけではない。本気度を見抜いて、馬券になる2頭出しだけをピックアップできて、やっと第2ステップに進めます。第二の関門は2頭のうち、どの馬をチョイスするか。それとも2頭とも買うのか。この選択もなかなか難しい」。2頭出しは仕掛ける調教師や馬主によって傾向が異なる。当然ながらそれぞれのクセをしっかり把握し、買うときの券種も含めてしっかり吟味をする必要があるのだ。武内氏の著書をヒントにそれをモノにできるかどうかは、読み手の基礎的な馬券力が問われるのである。競馬格言に2頭出しは人気薄を狙えというものがあるが、それがホントかどうかも本書を読み進めると分かってくる。


◆2頭出しの傾向を丁寧にあぶり出す

そんな単純で奥深い2頭出しだが、武内氏はそれぞれ、注目すべき調教師と馬主をリストアップし、ここ数年の傾向をもとに、どんな時に買いか、どんなときにバッサリ行くかなどを丁寧に解説していく。武内氏の本は他の馬券術の本の著者にありがちな自分をすごく見せようとしているところが少なく、好感を持って読み進めることができるのが特徴だ。2頭出しはガンガンしかける厩舎や馬主(例:ミルファームなど)ではサンプルが多すぎたり、逆に人によっては少なすぎたりするので、ベタ買いでのデータなどは書いていないが、ここの厩舎はよくしかけるけどほぼこけるので無視しろ、とか、この騎手で仕掛けてくるときは要注意など武内氏の私見も交えてなるべく詳しく、分かりやすく読者に情報を提供しようという姿勢が目立つ。的中事例などもあるが、思考の補助線として例示している程度で「当たってスゴいだろう!」みたいな不愉快な感じはしない。


◆「勝負気配」を重視する馬券師さんにはよい思考訓練になるかも

基本的には2頭出し馬券術は、勝負気配をいかにつかむかという馬券術である。したがってローテーション、厩舎コメント、乗り替わりなどの要素から勝負気配を察知して当たり馬券につなげるという馬券術を実践されている方は比較的とっつきやすく、なおかつ自分のベースとなる知識との相乗効果も期待できそうだ。また、2頭出しの激走パターンを研究しているうちに、その厩舎が勝負するときのパターンが見えてくるという副次的な作用が生まれることも充分に考えられる。自分なりに、調教や場合によっては外厩などの情報も組み合わせてより精度を高くすることができれば、使える馬券術になりそうな気配はある。単純に読んでいてもけっこうおもしろいので気になった方は是非。武内氏の実践に基づいた本なので、気付きも多く、構成もしっかりした良書だと思います。


満足度:★★★★☆
面白度:★★★☆☆
勉強度:★★★★☆
実践度:★★★★☆



2頭出しの正しい選び方 (競馬最強のハンドブック)2頭出しの正しい選び方 (競馬最強のハンドブック)
武内 一平

ベストセラーズ 2015-01-24
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『矢野吉彦の世界競馬案内』by矢野吉彦



書名:『矢野吉彦の世界競馬案内』
著者:矢野吉彦
出版社:オークラ出版
出版年:2003年10月12日
定価:1800円(税別)


競馬実況でおなじみの矢野吉彦氏による海外競馬ガイドである。2003年の本であるが、海外の競馬場について、非常によくまとめられている良書であり、個人的にはバイブルとして扱っている本である。矢野吉彦氏は大学卒業後に文化放送に入社。入社後に日本国内の競馬場をすべて制覇したとのこと。そして29歳のときにフリーになり、その後は休みのときには海外競馬に赴くようになり、この本を上梓した2003年には国内・海外あわせて160箇所もの競馬場に行ったとのこと。現在は200箇所を超えたという話もあり、矢野氏はもはや競馬旅打ち界隈の御大とも言える存在となっている。
 

◆海外競馬ガイドの決定版

本書の中身はいたって丁寧な海外競馬訪問ガイドとなっている。各国ごとに、競馬の歴史や文化などに関する基礎知識やレース体系などの解説がまずあり、その後各競馬場の様子やアクセスなどが矢野氏の実体験をもとに書かれている。馬券の種類や買い方なども丁寧に解説されており、旅打ちの際には現地に持って行っても重宝する。さらに、土地の名物や訪問時のエピソードなどもできるかぎり多く取り上げるよう作られており、読み物としても楽しめる構成となっている。そのへん、先に紹介した東邦出版の『海外競馬に行こう!-新ヨーロッパ競馬場ガイド』の作り方と比べて対照的だ。エリアもどこに偏るわけでもなく、欧州、北米、アジア、オセアニア、南アフリカ、南米とまんべんなく取り上げている。矢野氏が訪問した競馬場すべてを取り上げているわけではないので、完全なデータベースという代物ではないが、それでも書籍としてはもっとも幅広く海外の競馬場を取り上げているものとなっている。


◆2016年現在も本書の意義は大きい

旅打ちは常に最新の情報が求められるため、どうしても昨今はインターネット上の情報が重要になってきてしまうが、それでも主張したいのは本書は現在も非常に有用な書物であるということ。ここまで体系的かつ端的に各国の競馬の概要がまとめられている本は他にはないし、各国の競馬場の当時の息吹を感じられると言う意味でも、海外旅打ちの入門書やイギリスに限らないという意味で海外競馬文化に興味を持つきっかけには非常にいい本だと言える。もし、海外の競馬場に行って見たいと漠然と思っている人がいたら、インターネットで行き方を調べたり、レポートを見てみるのもいいのだけれど、まずは是非この本をパラパラとやってほしい。薄く広くではあるかもしれないが、ざっと世界の競馬を見渡して、自分の好みに合いそうな国を探すには本書はぴったりだ。最初から最後まで賛美ばかりしちゃいましたが、表紙にある「永久保存版」のマークは伊達じゃない出来でっせ。



満足度:★★★★★
面白度:★★★★☆
勉強度:★★★★☆
役立度:★★★★★

矢野吉彦の世界競馬案内矢野吉彦の世界競馬案内
矢野 吉彦

オークラ出版 2003-09-01
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『こんな騎手買ってる奴の顔が見たい!』by正体が知れるとクビになる!



書名:『こんな騎手買ってる奴の顔が見たい!』
著者:正体が知れるとクビになる!
出版社:KKベストセラーズ
出版年:2002年12月5日
定価:1300円(税別)


こちらも古本屋のワゴンで購入した一冊。KKベストセラーズから出ている一冊でその名も『こんな騎手(オレ)買ってる奴の顔が見たい!』といういかにもKKベストセラーズ的な辛辣なタイトルになっている。一応「東西現役騎手39人がバラした馬券術」という副題がついており、中身も4章立ての39節となっているのだが、作りとしてはあまり立場を明確にしていない某競馬関係者が騎手のみならず助手や調教師など様々な人間から聞いた話を組み合わせて競馬界の内情を暴露するという形を取っている。39名の騎手というのはあまり気にしなくてよい。著者名の”正体が知れるとクビになる!”は半分おふざけだろうが何をクビになるのかなどは本文中でも明らかになっていないので編集部がまとめたものをとりあえずこういう著者名で出したとも考えられる。以前に『騎手がバラした馬券術―万札ザクザク、歓喜の必勝法』というKKベストセラーズの本を紹介したが、この時の著者は”実名を出すとヤバイ騎手”となっていた。まあ、こういう本を定期的に作るカルチャーがあるんだろうな。


◆いかにもKKベストセラーズなノリで競馬界を切る

競馬界の内情暴露本の類は、騎手のパーソナルな部分にスポット当てたりしたものも多いが、本書はどちらかというと馬券を買うファンの目線に立って、華やかに見える競馬の世界も実際ウラではこんな感じだから、馬券を買うときには注意しないとダメだよ、というスタンスで書かれている。出遅れ、ペース配分、乗り替わりなどがどういう理由で起こるのか、その裏にはどんな力学があるのかなどが、軽い筆致で書かれており、さすがはKKベストセラーズという言うべきか、ぶっちゃけた話や写真も多く、読み物としてはなかなか面白い構成になっている。ところどころ、こういうコメントは買いだ、とか返し馬でこういう動きをしていたら買いだ、などの具体的な馬券指南にもつながるような部分もあるが、ほとんどは競馬関係者から聞いた話として書かれており、データなどを取っているわけではないので、参考になる部分はあれど、全体としては毒にも薬にもならない本になっている。もちろん、○○騎手はフェラーリに乗っているなどのヨタ話もところどころ盛り込まれている。


◆2002年当時のリアルな騎手評が楽しめる!?

上記のとおり本書は競馬界の裏事情を楽しむのが目的ではあるのだが、文中には2002年当時の騎手たちの事情が書かれているので、2015年現在の競馬ファンからすると。当時この騎手はこういう評価だったのか!などの新鮮な発見があり、それはそれで楽しむことができる要素になっている。本書はスタートが下手、ペースが読めないなどマイナスの評価をする場合は騎手名がイニシャルになるのだが、スタートがうまい、イン突きがうまいなどプラスの評価をする場合は騎手が実名で表記されている。有望な若手減量騎手として大庭和弥騎手が挙げられていたり、当時まだ地方所属だった小牧太騎手や安藤勝己騎手に触れられていたり、さらに昔の話としてJボーイズ(昔の栗東の若手騎手グループ)なんて話もあったりして、現在とのギャップを楽しむこともできる。


◆軽薄さも含めて

2002年に書かれた本ということもあり、正直馬券の足しになるような情報というのは、今となってはほとんどないように感じるが、当時まだあまり踏み込まれていなかったエージェント制について、具体名を挙げて解説している箇所があったり当時としてはなかなか先進的な内容だったのかもしれない。また、ガレオン、シリウスシンボリ、オフサイドトラップの乗り替わりエピソードなどに触れていたりして、競馬界が人を育てることに対して一石を投じていたりもしている。わざわざ探してでも買うような本ではないし、人によっては薄っぺらいと感じる本なのかもしれないが、さすがはKKベストセラーズだけあってそうした軽薄さも含めて個人的にはさくさく読むことができた。まあ、こんなもんだという前提に立って、古本屋でパラパラやってみて、もし買ってもいいなと思えば買ってみるのもよいだろう。



満足度:★★☆☆☆
面白度:★★★☆☆
勉強度:★★☆☆☆
軽薄度:★★★★☆


こんな騎手(オレ)買ってる奴の顔が見たい!―東西現役騎手39人がバラした馬券術こんな騎手(オレ)買ってる奴の顔が見たい!―東西現役騎手39人がバラした馬券術
正体が知れるとクビになる!

ベストセラーズ 2002-11
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『馬券にすぐ効く 競馬魔法の言葉』by松田一良



書名:『馬券にすぐ効く競馬魔法の言葉』
著者:松田一良
出版社:東邦出版
出版年:2006年7月7日
定価:1400円(税別)


久々に古本屋をぶらつき、チープ(失礼)な競馬予想本を何冊か格安で手に入れたのでレポートすることにしよう。今回ご紹介するのは『馬券にすぐ効く競馬魔法の言葉』という本だ。ご存知東邦出版から2006年に出ている本である。著者は松田一良なる人物。これで名前は「いちろう」と読ませるとのこと。調べた限り、松田一良名義での著書はこれ一冊のようで、競馬本業界によくいる謎の一発屋(一冊屋?)である。


◆本当に使える格言とは何か

著者紹介部分を読むと、松田氏は本書を書いた時点で、競馬歴25年とのことだが、そのほとんどをライトユーザーとして過ごしていたとのこと。しかし、04年のジャパンカップでアドマイヤドンの単勝で大金勝負に出たところ、同厩舎2頭出しの人気薄であるタイムパラドックスにやられてしまい、競馬格言のおそろしさを痛感し、「格言とは何か。本当に使える格言とはなにか」について猛研究を始めたそうな。というわけで本書は「人気薄の逃げ馬を狙え」「死んだ種牡馬の子は走る」「夏は牝馬」などの競馬格言20個について、あれやこれや論じている構成になっている。


◆格言そのものはきっかけにしかすぎない

それぞれ取り上げられている格言自体はよく聞くものが多いのだが、松田氏によって、それがいかに有用なものかというのがデータと共に解説されている。ただし、本書の場合は紙面の都合もあるのだろうが、その格言が有用だとする論拠やデータはどれも事例紹介程度で、薄っぺらい感は否めない。これは杜撰な構成になっているというよりはシンプルに解説していると捉えたほうがいいだろう。本書でいいこと言ってるなと思ったのは、前書き部分の「格言そのものはきっかにしかすぎないが、先人の知恵や経験が凝縮されている分、思考の取っ掛かりとしてこれだけ便利なツールはない。」という部分。つまり本書はあくまで松田氏が使えると踏んでいる格言の簡単な紹介と捉えるべきで、その先にそれを高めて馬券に落とし込む作業は自身であると認識しておく必要がある。あえて本書にクレームをつけるとすれば「馬券にすぐ効く」というタイトルにしてしまうのはどうかというところか。


◆初心者が次のステップにいくための教本的位置づけ?

したがって本書はどちらかというと、好きな名前の馬を単勝100円で買う、といったレベルの初心者がもう少し考えて馬券を買うための補助線的な使われ方をするのが適していると思われる。ある程度の年数、競馬をやってきた荷桁にとっても、制裁が多い騎手は内枠で狙え、最終レースは見習い騎手を狙え、などあまり意識していなかった格言もあり、わりと楽しめた。読者をむやみに煽っていたり、当たり馬券をバンバン載せたりして勧誘している不誠実な競馬本も多いが、本書はいち競馬好きが真面目に書いた本という印象。正直、必携の書として推薦するようなものかと言われると、そうでもないかもとは思うが、古本屋やネットで爆安で手に入るのなら、初心者にプレゼントしてあげてもよいかもしれません。でも、同タイプの本で言うと以前にご紹介した清水成駿の『万馬券の9割を狙える方程式』のほうが穴狙いに特化しているだけおもしろいかもなあ・・・。


満足度:★★★☆☆
面白度:★★☆☆☆
勉強度:★★★☆☆
誠実度:★★★★☆



馬券にすぐ効く競馬 魔法の言葉馬券にすぐ効く競馬 魔法の言葉
松田 一良

東邦出版 2006-06
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『京大式 鉄板の買い方講座』by棟広良隆




書名 :『京大式 鉄板の買い方講座』
著者 :棟広良隆
出版社:白夜書房
出版年:2009年10月30日
定価:900円(税別)


「馬券の買い方」にフォーカスを当てた棟広良隆氏の著書。馬券の指南書の多くが、穴馬の選び方など”馬選び”がメインだったり、WIN5や3連単など、特定の券種ありきの馬券術だったりする中で、こういうシチュエーションではどういう馬券を買うのが一番いいのか?ということを突き詰めている、異色作と言える。ちなみに棟広氏は甲陽学院高等学校→京都大学工学部卒という秀才。京都大学競馬研究会の会長をつとめ、「新馬場適性理論」なるものを創始したとのこと。現在は家業の学習塾「棟広塾」を経営し英語を教えるかたわら、多くの雑誌や競馬新聞に連載を持っているお方だ。


◆”買い方”を研究することの重要性

我々競馬ファンは日々、競馬予想に勤しんでいる。馬柱やデータを見ながらウンウンと唸って軸馬やヒモの馬を選定していくわけだ。ここまでは皆、大差なく取り組んでいることであろう。しかし、馬を選定した後、それを馬券(買い目)として表現することに関してはどうだろうか。単複枠連しかなかった時代には馬を選定する精度を磨いていれば必然的に予想も当たったが、券種が増えた昨今、きちんと儲けを出すためには、導き出した予想を馬券に落とし込む作業が予想と同等に重要になってきていると言える。本書は馬券の買い方を体系的に整理し、ケースごとの対応術として高めることを試みている本である。平たく言うと軸は当たっているのに馬券は外れていた、とか、これも押さえていればもっと儲かったのにということがどうやったら防げるか?ということを考えている本だと思っていただければよいだろう。


◆意外と重要なオッズ、そして心理

棟広氏はまずオッズをきちんと見ろということを述べている。それは効果的な押さえ馬券を買うことができるからだとしている。一般的に押さえ馬券というのは当たっているけど配当が安い馬券=トリ紙、とされているが、棟広氏の定義では「レース後に来られて嫌な馬券」となっている。何となく押さえていなかった馬券が来てしまっても配当が安ければ心理的ダメージは少ないが「うわ、こんなに配当ついた!なんでこれ買わなかったんだ!」という場合けっこうダメージがでかい。こうしたことを防ぐためにも、また新たな気づきをもたらすためにもしっかりオッズは見ておけということだ。また、棟広氏は馬券はセンター試験のようなものだとも述べている。すなわち時間制限(締切)があることでおのずとミスが誘発されやすいものだと言うのだ。そして、ミスをしないよう、オッズを見てすぐに的確な馬券がチョイスできるような準備をしておくことが重要だと述べている。儲かる組み合わせを工学的に明らかにする本かと思いきや、意外と実践に基づいた心理的要素が前提となっており共感できる部分も多い。


◆買い方の整理と実践での使い方

そうした前提部分の次に、棟広氏おススメの買い方が列挙される。基本的にはそれなりに馬券をやっているファンであれば、知っている買い方がほとんどではあるが、あらためてそのメリットデメリットが整理できるのがよい。3連複の1頭軸と2頭軸とを組み合わせる作戦など、なかなか思いつかないものもあった。その次の章では馬柱を使っての、ケーススタディーが続く。穴馬ありきの場合、人気一頭が抜けている場合、条件替わりが多い場合など、実際ありそうなシチュエーションで馬券をどう買うのがいいかを解説している。まあ、後付でなんとでも言える部分はあれど、頭の体操としてはいいかもしれない。


◆大事なのは、いかに冷静でいられるか?

ここまでご紹介して、買い方はともかく、肝心の馬選びのほうはどうなんだ?という声もでるかもしれない。これに関しては一応棟広氏が提唱する理論である「爆走レンジ」というものを使ってカバーしている。ただ、本書で学ぶべき示唆は、その爆走レンジとやらを馬券に結び付けるということではない。肝要なのは自分の予想を馬券でいかに表現するかだけでなく、悔しい思いをしないため、またうまくいったときのボーナスを最大化するために、いかに冷静に馬券をチョイスできるかということだ。これはすべてのレースに手を出したり、負けがこんできて、最終レースで一発逆転を狙うなど冷静さを欠く行為への警鐘とも捉えられる。いろんな意味で、自分の競馬を省みるきっかけとなる本でした。


満足度:★★★★☆
面白度:★★★☆☆
勉強度:★★★★☆
反省度:★★★★★

京大式鉄板の買い方講座 (競馬王新書)京大式鉄板の買い方講座 (競馬王新書)
棟広 良隆

白夜書房 2009-10-23
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『競馬の快楽』by植島啓司



書名 :『競馬の快楽』
著者 :植島啓司
出版社:講談社
出版年:1994年2月20日
定価:583円(税別)


植島先生による競馬エッセイである。植島先生については以前『賭ける魂』という本をご紹介した際に述べた。この人は文化人類学を研究する大学の先生なのだが、競馬やギャンブルが大好きで、たまにこういう本を書くという方である。いろいろと本は書いている人なのだが競馬に関する本は本書と『賭ける魂』の2冊しかない。先に書かれたのが本書なので本来であれば『賭ける魂』より先に紹介しておくべきだったのだが、あとになってしまって申し訳ない。一応、講談社現代新書から出ているのだが内容的には競馬・ギャンブルエッセイといった風情で学術的な要素はあまりないので、研究目的で購入しないようにだけご注意いただきたい。


◆賭ければパラダイス

植島先生の特徴として、色恋沙汰や酒、ギャンブルなど、世間一般では「のめりこみすぎると危ないよ」とされているものを賛美する傾向にある。本書もそんな感じだ。賛美とまではいかないが、いかに人生において賭けるという行為が刺激と楽しみを与えてくれるか、というトーンで書かれている。荷桁自身もアルコールとギャンブルにはかなり依存しているほうだと思うが、ここまで肯定している本を読んでしまうと逆に自分が心配になってこないわけでもない。ただ、競馬をたしなむ方であればそれなりに楽しく読めるくだりが多い。特に好きな部分は引用の引用なので恐縮だが<食事をゆっくり楽しみ、飲んで愉快になり、宝クジで夢を見る。そのために仕方なく働くのが、人間というものよ」>というスペイン人女性が言ったという一言。ギャンブルをやらない人間にとっても生き方を考えさせられる一言だ。


◆旅打ち要素も

発行が1994年なので、既に古い記述が多いとは思うが、旅打ち的な内容も多数収録されている。マカオ、タイ、そして植島氏が長く滞在していたアメリカの競馬がけっこう細やかに紹介されている。旅打ちを前提とした書ではないので、あくまで内容はそのときの馬券談義に終始しているのだが、場外馬券売り場をはじめ、当時の雰囲気などを知るには貴重な証言が多い。当時日本には単複枠連しかなかったので、アメリカの夢のある馬券に対してかなりの憧れがあったようなのだが、WIN5までが日本でできるようになって、いやはや日本も追いつきつつあるんだなと実感する。


◆血だらけになるような快感が欲しい方は是非

通して、読みやすく面白い本なのだが、真骨頂は実はあとがき。ギャンブルは「負けた時どう振る舞うべきか」を教えてくれる、からはじまり、ギャンブルは人間の深層心理を学ぶにはもっともおあつらえ向きなんだと続き、自分がいったい何者なのかということがお金をちょっと賭けてみただけで次第に見えてくると来ており、ここまで来ると「さすがに言い過ぎw」と思ってしまうが、植島氏らしくていい。さらに氏はこう続ける。<血だらけになるような快感が欲しい。「遊びは身を滅ぼす」って?それこそこちらの望んだとおり!>・・・もう好きにしてください!!でも何だかんだ言って、わたくし自身けっこう影響を受けた本の一冊です。絶版なのでネットや古書店で見つけたら是非。


満足度:★★★★☆
旅打度:★★★☆☆
破滅度:★★★★★
勉強度:★★★☆☆


競馬の快楽 (講談社現代新書)競馬の快楽 (講談社現代新書)
植島 啓司

講談社 1994-02
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『人生が変わる競馬』by半笑い



書名 :『人生が変わる競馬 ~ダート中距離があれば永遠に飯が食える~』
著者 :半笑い
出版社:白夜書房
出版年:2010年12月1日
定価:900円(税別)


ここらで馬券術の本も一冊はさんでおこう。本書は競馬予想家・ライターとして活躍する半笑い氏によるダートのレースに特化した予想本である。半笑い氏は一橋大→日テレというエリートコースを歩んでいたが、プロの競馬予想家になるため会社をやめてしまったという、この世界にはよくはいないがちょくちょく見かけるタイプの人である。半笑いというペンネームが謎だが、ブログを見ると、人生の半分くらいは笑っていたいという意味っぽい。名前がちゃんとしてればもう少し信頼度も上がるんではなかろうかと思いつつも(荷桁なんて名前のやつに言われたかないだろうが)、2014年現在、予想家として現役で活躍している人である。


◆中盤ラップ理論

半笑い氏の代名詞とも言えるのが「中盤ラップ理論」と呼ばれるラップタイムから強い馬をピックアップする理論である。よく競馬新聞にはテンの3ハロン、上がりの3ハロンのタイムが載っているが、総タイムからそれらを除いた中盤のラップにこそ、馬の「底力」が現れている。というのが氏の主張である。過去、ダート短距離の攻略方法に特化した『私が、太く張れる理由』も出版。本書はさらに踏み込んでダート中距離に特化したレース攻略法を展開している。JRAの全ダート中距離コースに関して「過去にこういうラップを刻んでいる馬は狙い目である」ということを述べている。特に細かい計算が必要なわけではなく、ラップがきちんと表示されている馬柱さえ手に入れば誰でも実践できる比較的分かりやすい理論である。


◆レビューは両極端

上記の通り、馬柱を見てこういう馬を狙えという本なので、荷桁は競馬予想本として本書には一定の評価をしている。当ブログでも繰り返し述べているとおり、競馬予想本にとって大事なことは当たるか当たらないかではなく、ひとつの理論として汎用的に実践できる形に最低限まとまっているか?という点だと荷桁は考えている(さらにその理論でベタ買いした際の回収率データなどが載っていればなおよし。当たり馬券がバシバシ載ってそれっぽく見せているパターンが最悪)。その点では本書は誰でも今日からダート中距離レースをこの本の理論で買うことができる作りにはなっている。しかし、アマゾンのレビューあたりを見ていると、けっこう酷評をされている。酷評しているのは氏の有料予想を買って結果が出ていない人など、氏の人格に問題ありと考えている人が多いようなのだが感情的な話は抜きにして、こういう理論はいわゆるベタ買いが危険なのは大前提であることを忘れてはならない。


◆永遠に飯が食えるとまではいかなくとも

例えばの話だが、あるダートのレースを買おうと思ったときに、氏の理論で馬をピックアップしたら、狙い目の条件に当てはまる馬が5頭いたとする。そうすればその5頭のうち同着でもない限りどれか2頭は馬券に絡まないのだから切らないといけないし、逆に1頭も当てはまる馬がいなかったとしてもどれか3頭は馬券に絡むわけで。そう考えると本書の捉え方としては「過去にこういうラップを刻んだ馬は、好走するサイン」程度に考えるのが妥当だ。例えば2歳ダート500万のレースには新馬、未勝利などを勝ち上がった1勝馬が多いと思うが、その中で一番力がありそうな馬はどれかなあ、という判断に使ってみたり、2頭までは絞れたけど、軸1頭決める判断に困っている、みたいなときに使うのが無難。何より数字に着目しているので、理論自体に多少こじつけ感はあるが「オカルト感」はないので、不確定要素は大きいことは認識しつつもたまには使えるシーンはありそうだというのが正直な感想です。過去、新潟大賞典の上がり31.9を根拠に天皇賞でオースミグラスワンをおさえてしまった人がもしいらっしゃったら、本書を読めばそういう買い方はしなくなりますので最低限その点では効果ありますw応用編にはなりますが同じ距離のレースの繰り返しが多い地方競馬でも理論は使えると思います。


満足度:★★★☆☆
実践度:★★★☆☆
汎用度:★★☆☆☆
即効性:★★☆☆☆
勉強度:★★★☆☆

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『馬主の一分』byマイケル・タバート



書名 :『馬主の一分』
著者 :マイケル・タバート
出版社:KKベストセラーズ
出版年:2014年1月30日
定価:895円(税別)


オーストラリア出身、日本で働きながらJRAの馬主資格を取って、日々競馬に取り組んでいるマイケル・タバート氏の本。タイトルはここでも取り上げた藤田伸二騎手の『騎手の一分』へのオマージュであろうか。内容はいろいろな話題を取り上げているのだが、かんたんにまとめると、外国出身の馬主として日本競馬に接していく中で感じたことを中心にまとめたエッセイとでも言おうか。これを読むことで馬主の裏事情が分かってバンバン馬券が取れるという本でもない。あくまで読み物として楽しむべき本だ。


◆親しみやすい馬主さんの本

中央の個人馬主というと企業経営者がほとんどというイメージがある。それは今でもそうなのだが、タバート氏はその中ではかなり庶民に近い感覚を持っている馬主だ。もちろん庶民では個人馬主にはなれないので、タバート氏もそれなりに稼いでいるのだが(大手監査法人勤務)、使い切れないようなお金を手にした成金馬主というわけではない。人間関係を作りながら限られたお金のなかでやりくりしつつ楽しんでいる様子が伝わってくる。もともと競馬の盛んなオーストラリアの出身。日本留学中にはダビスタにハマっていたということで、我々庶民が「馬主になってみたいかも・・・」と思うきっかけとそう大差ない経歴も何となくタバート氏を親しみやすく感じる要因にもなっているだろう。日本の競馬界にいろいろ意見してみる部分もあるのだが、わりと共感できる内容が多い。馬券の買い方は・・・マネすべきかどうかは自己判断で。


◆ハナズゴールおめでとう

そんな庶民派(?)馬主タバート氏の稼ぎ頭はハナズゴールだ。タバート氏の馬で初めてグレードレースを賑わせた馬である。本書の後半はけっこう多くがこの馬について割かれており、興味深いエピソードが満点だ。本書は2014年1月の出版だが、タバート氏は本書の中で「2014年はオーストラリアのG1を勝ってきます」と宣言した。そして2014年4月26日、ハナズゴールはG1、オールエイジドSを勝利した。本命のドンカスターマイルは無理だったが、挑戦は実ったわけだ。馬主の立場から書かれた、G1に挑戦するまでのやきもきとした苦労話はあまりないし、けっこう貴重なんじゃないだろうか。しかも結果勝てたというハッピーエンドを知っていればより楽しく読めるだろう。


◆タバート氏、ひいては我々の夢

タバート氏はハナズゴールの成功から、馬の数も増やし、生産にも手を出し始め、いよいよ本格的に馬主として活動していくような感じで本書は締めくくられている。そこまでいくと我々としては頑張ってほしいと思いながらも「大丈夫かな・・・」と思わなくもない。まあ、そのあたりはさておき、JRAの馬主要件も緩和傾向にある昨今、タバート氏のような高給サラリーマン馬主というのはどんどん増えていくと想像される。そういう立場にいる人にとっては夢が膨らむ本と言えるかもしれない。馬主という存在が何となく身近になったという点では競馬界へ貢献している面もあるだろう(もちろん荷桁はなれないのだが)。何せ馬主さんがいい馬を所有してエキサイティングなレースをしてくれてこその楽しい競馬でございますからね。何かの役に立つ必携の書という類の本ではないですが、なかなかおもしろく読めました。


満足度:★★★★☆
面白度:★★★☆☆
愛情度:★★★★☆
勉強度:★★☆☆☆


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『馬酔い放浪記』by井上オークス



書名 :『私は競馬を我慢できない! 馬酔い放浪記』
著者 :井上オークス
出版社:KKベストセラーズ
出版年:2013年4月30日
定価:895円(税別)


「旅打ち競馬ライター」の肩書を持つ、井上オークス女史のエッセイ本である。井上オークス氏は地方競馬愛好家であればご存知の方も多いと思うが、日本国内、さらにはマカオや韓国などの競馬場をめぐりつつ取材したネタでエッセイを寄稿しているライターさんである。人あたりもよく、けっこうな美人でもあるため、競馬場イベントなどの広報活動にも起用されることも多く、ライター兼競馬タレント(?)と言ってもいいような存在である。プロフィールは佐賀県出身、愛媛育ち。同志社女子大在学中にはじめて競馬場に行き、そこで見たマヤノトップガンの春の天皇賞で競馬に目覚める・・・という王道パターンで競馬に興味を持ったとのこと。本書はそんなオークス氏の2冊目のエッセイ集である。本来であれば1冊目の「いま、賭けにゆきます」から紹介したほうがいいとは思うが今手元にあるのが本書なのでそこは勘弁していただきたい・・・。


◆競馬場と関係者への愛

本書の構成は『マイホース』の連載「馬酔い放浪記」、『サラブレッド』に寄稿したエッセイ、『優駿』に連載した「優駿的馬券生活」、『スポニチ』のコラム「えい!えい!!オークス」など氏がいろいろなところで書いたエッセイをかけあわせたエッセイ集となっている。「馬酔い放浪記」部分では、各地の競馬場を転戦しながら出会った人や感動したレースがつづられ、「優駿的馬券生活」の部分では日常の中での勝負エピソードが中心につづられる。もちろん、彼女得意の単勝一点勝負も多く取り上げられている。エッセイ集なので各文章は少ないものの、なかなか楽しんで読める構成になっている。写真も多く掲載されている。文章ひとつひとつから、オークス氏が競馬関係者にとけこんで、競馬界を盛り上げようとしている様子がうかがえる。


◆私は競馬場に、恋をしているのだろう

・・・これは本書のあとがきでオークス氏がふと使う言葉である。あの馬に会いたい。/あの騎手の素顔にふれたい。/パドックで陽気な馬券オヤジと交わりたい。/あの競馬場で過ごしたい。/30年前のあの競馬場にタイムスリップしてみたい。(あとがきより引用) オークス氏はこんなことを思って競馬場に通っているのだ。荷桁のブログもそうだが、男性というのはどうしてもこういう「想い」を少なからず持っていたとしても、学術的・経営的なところや海外の事情なんかも踏まえつつニヒルに競馬場を語ってみちゃったりする傾向がある。しかし本書はそういう小難しい話はない。一人の女性の競馬場に対する飾らない愛が溢れている。


◆人と出会って、馬券も買って

オークス氏に限らずだが、女性による競馬本というのは「競馬大好き!」という想いがストレートに伝わってくるのが一番の魅力だ。オークス氏の場合、それが「馬」に寄り過ぎず(けっこうそういう人が多い)、競馬の周りの人々にまでスポットを当てているところがいい。特にこれを読んだから馬券がうまくなるとかいうたぐいの本でもないし、旅打ちに関するコツやポイントが書いているわけでもないのだが、地方競馬や旅打ちに興味がある方なら読んでおいて損はないだろう。特に女性が読むにはいいんじゃないだろうか。



満足度:★★★★☆
面白度:★★★☆☆
旅打度:★★★★★
勉強度:★★☆☆☆


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