『傑作ノンフィクション集 競馬人』by後藤正治 阿部珠樹 広見直樹 木村幸治 井口民樹 宇都宮直子 山本徹美 辻󠄀谷秋人 吉澤譲治



書名:『傑作ノンフィクション集 競馬人』
著者:後藤正治 阿部珠樹 広見直樹 木村幸治 井口民樹 宇都宮直子 山本徹美 辻󠄀谷秋人 吉澤譲治
出版社:株式会社有朋社
出版年:1997年12月21日
定価:1200円(税別) 



今回は硬派なノンフィクションを。そういえば引っ越ししてから近所の図書館の競馬本のラインナップを見てなかったなあと思ってふらっと行って、そこで見つけてそのまま借りてきた本である。著者がたくさんいるのは、それぞれの著者が一編ずつ短編のノンフィクションを寄せているという構成になっているからである。すべて初出は皆さんご存知の競馬誌『優駿』となっており、平たく言ってしまえば「優駿に掲載されたノンフィクションの傑作集」といった感じであろうか。当然のことながら著者の皆さんはノンフィクション作家、スポーツライター、競馬ライターなどで知られている面々で、全体としては非常に読ませる良書となっている。



◆よくある競馬ノンフィクションとは一線を画す

競馬ノンフィクションというと、よくあるのは中央競馬のG1レースの名勝負の裏側、みたいな切り口で騎手や調教師、関係者の内面にせまるといった感じのものが多い印象がある。勿論本書の中にもそういった話もあるのだが、ライデンリーダーの中央挑戦をその父馬ワカオライデンからひも解く広見直樹氏の「ライデンの夢」、阪神大震災で被災した阪神競馬場が再開するまでの苦闘を追った山本徹美氏の「阪神競馬再開までの300日」など、少し切り口が変わっているものも入っていてちょっとへそ曲がりな競馬ファンでも満足できるような内容になっている



◆地味な作りがやや勿体ない

前述のとおり、内容は非常にいい感じなのだが、地味な表紙、そして「競馬人」という漠然としたタイトルなどのせいもあってか、あまり目立たない存在になっているのがやや勿体ない感じがする。出版元の有朋社自体は広告代理店が本業になっているようで、90年代に競馬・競艇の本を何冊か出しているがそれ以降は特に競馬関係の本を出している訳ではなさそうで、当時の競馬ブームに乗っかって「優駿」のノンフィクションをまとめて出版したら売れるのではないかという感じで安易に作られた可能性もあるのかなあという気がする。内容はいい感じなのだが、強烈にプッシュするかというとちょっと微妙な感じではある。荷桁のように図書館や古書店で安く手に入ればご一読を・・・と思ったらAmazonではけっこういい値段がついてるな。あまり重版されなかったのだろうか・・・。




満足度:★★★☆☆
面白度:★★★★☆
勉強度:★★☆☆☆
硬派度:★★★☆☆



『ホソジュンのステッキなお話』by細江純子




書名:『ホソジュンのステッキなお話』
著者:細江純子
出版社:株式会社芸文社
出版年:2007年12月25日
定価:1200円(税別)


今回もインタビュー系の一冊をご紹介。元JRA騎手で現在は「ホースコラボレーター」という肩書で活躍している細江純子氏がインタビュアーとなって競馬関係者にインタビューしてきた記事をまとめた一冊だ。元は「netkeiba.com」の携帯サイトである「競馬総合チャンネル」内のひとつの人気コンテンツで、それがたまってきたから本にした、という流れで作られたと思われる。従って本書の出版社は芸文社としているが、芸文社は販売元で、発行元はnetkeibaの運営会社である株式会社ネットドリーマーズとなっている。



◆中身は毒にも薬にもならない対談集

元騎手の細江純子氏が競馬関係者にインタビューしているという建付けではあるが、全体通しての雰囲気は対談という感じで、あまりジャーナリスティックな感じで取材対象を掘り下げている感じの本ではない。テレビで行われているような当たり障りのないインタビューの延長という感じだ。ただ、発行が2007年ということもあり、ディープインパクトの関係者である市川厩務員、池江調教助手、さらには装蹄師の西内氏に対してまさにディープインパクトが三冠に挑んでいた最中の時期(05年6月~10月頃)にインタビューをしたものが収録されているのは特筆すべきところ。あまり本として全面に押し出してはいないのだが、ディープインパクトに関するものはとりあえず持っておきたいという方は押さえておいてもいい一冊と言える。勿論、先ほど言ったように深く掘り下げたノンフィクションのようなものではないので過剰な期待はしないように。



◆聞き上手のホソジュン全開

ほかにも、調教師や騎手へのインタビューがあり、中にはまだ南関東時代の内田博幸騎手、地方唯一のフリー騎手となった内田利雄騎手など、中央所属騎手以外の話題の騎手なんかも押さえている。先ほどは毒にも薬にもならないと毒づいてしまったものの、細江氏のキャラクターもあってか、インタビューされている側がけっこう心を許して盛り上がりながら話をしている感じが漂っているのは本書のいいところだ。むしろそのあたりを楽しむのが本書においては正しい読み方と言えるだろう。近年は下ネタでも有名になってしまった細江氏だが、本書ではそのあたりはあまり出していないのであしからず。



◆出色の出津孝一インタビュー

出色なのは強烈なキャラクターで知られる出津孝一騎手(現在は引退)のインタビュー。ウェブに掲載されていた時から評判がよかったようで、ノーカットで20ページにわたって収録されている。これまで出津孝一騎手をこんなに取り上げた本があっただろうか。海外との比較も交えながら障害競馬を熱く語る出津騎手のインタビューは必見。そのために買ってもいいくらいだと言ったら言い過ぎだろうか。私は1年ほど前にネットで安く手に入れたのだが、今見たら、品薄になっているのか1万円前後の値段がついている通販サイトもありびっくり。興味がある方はお早めに・・・?



満足度:★★★☆☆
面白度:★★★☆☆
勉強度:★★☆☆☆
出津度:★★★★★

 

『武豊×オリビエ・ペリエ 勝つには理由がある』by武豊 オリビエ・ペリエ


書名:『武豊×オリビエ・ペリエ 勝つには理由(わけ)がある』
著者:武豊 オリビエ・ペリエ
出版社:株式会社小学館
出版年:2002年11月10日
定価:1200円(税別)



久々にきちんとした競馬の本を取り上げることにしよう。タイトルそのまんまではあるが、ご存知、武豊騎手とフランスの名騎手オリビエ・ペリエ騎手の本だ。一応、著者の欄には武豊の名前とオリビエ・ペリエの名前が連なっているが、中身のほとんどは両者へのインタビュー記事で構成されており、武豊騎手やペリエ騎手が自ら執筆したという類の本ではない。合間合間には競馬関係者への丁寧な取材で定評がある平松さとし氏の文章が挿入されていて、インタビューの内容をより深く理解できるような構成になっているのだが、肝心のインタビュアーが誰かというところはよく分からない作りになっている。雰囲気的にインタビュー部分も平松氏が手掛けているような気がするのだが、巻末に取材協力者や企画編集の担当者クレジットもあるため、複数の人間が担当した断片的なインタビューをつないだものかもしれない。脂が乗っていた時期の武豊騎手とオリビエ・ペリエ騎手へのインタビューを通して彼らの強さの秘密に迫ろうとする本書の試みは、王道かつストレートな企画だったと言えるだろう。




◆オリビエ・ペリエ騎手

今の若い競馬ファンの中にはオリビエ・ペリエ騎手と言ってもよく分からないという人もいるかもしれないので、一応ペリエ騎手について説明しておこう。ペリエ騎手はフランス出身で、母国の競馬でも活躍する一方で、20代前半の若いうちから日本競馬にも短期免許で騎乗しにきていて、90年代半ばから2000年代半ばにかけては外国人騎手と言えばまずこの人の名前が挙がるくらいに有名な騎手であった。1995年に京都金杯をワコーチカコで制し、JRAの重賞初制覇。2001年にはJRA史上初となる3週連続GI制覇を達成。2004年にはゼンノロブロイにて秋の天皇賞・ジャパンカップ・有馬記念の3連勝を達成するとともに、有馬記念では騎手として競走新記録の3連覇を達成(シンボリクリスエスーシンボリクリスエスーゼンノロブロイ)するなど、まさにペリエ無双という感じであった。その間96年、97年、99年、2000年にはフランス平地リーディングジョッキーも獲得しており、まさに日仏両方で一時代を築いた騎手だと言える。40代後半になった現在は来日することはほとんどなく、南仏を拠点に騎手を続けているとのことだ。




◆武豊とペリエの競馬観を炙り出す

本書は競馬にまつわるテーマ、私生活にまつわるテーマなど様々なことについて武豊とペリエにインタビューをし、それぞれに共通している部分や違っている部分を読み取って楽しむことができる構成になっている。タイトルはいかにも馬券に役立ちそうな雰囲気を出しているが、騎乗方法の話だけでなく、なぜ違う環境を求めて異国で騎乗するのかなど、騎手として以上に人間としての部分を掘り下げている作りになっているので馬券の足しにというよりは純粋に二人の天才アスリートの生き方を知ることができる本だと考えるのがよいだろう。二人が子供の頃どんな子供だったのかのエピソードや女性観など興味深いインタビューも多い。インタビューはそれぞれ単独で行われているようなのだが、最後にはペリエ邸での二人の対談が収録されている。対談は2008年の8月。当時はまだ武豊はディープインパクトに騎乗する前だし、ペリエはシンボリクリスエスに乗る直前のことだ。それを思いつつ読むとまた違った角度から対談を楽しむことができるぞ。




◆多分、今読んだ方がオモシロい

内容はそれなりに深いものの、作りとしては基本的に生真面目なインタビューが続く本書は、たぶんリアルタイムで読むよりも今読んだ方が楽しめるんじゃないかというのが正直な感想だ。本書の刊行から17年以上経った今、JRAではルメール騎手が大活躍し、ミカエル・ミシェル騎手が日本での騎乗に意欲を見せている。さらに凱旋門賞には毎年にのように日本馬が出走し、馬券まで買えるようになっている。本書内ではペリエ騎手がロンシャン競馬場を評して「計算違いを許してくれないコース」と表現しているのだが、このあたりなんかは当時の競馬ファンよりも、今の競馬ファンの方が余程実感を持って読むことができる部分かと思う。時期的にも二人の活躍のピークの少し前に刊行されたということもあり、その後の二人を思いつつ読むのもまた味わい深い。日本の競馬シーンでペリエの名前を見なくなって久しいが、またいつか、武豊とのマッチレースが見てみたくなる一冊です。



満足度:★★★★☆
面白度:★★★☆☆
勉強度:★★★☆☆
懐古度:★★★★☆



『ムエタイの世界―ギャンブル化変容の体験的考察』by菱田慶文






書名:『ムエタイの世界―ギャンブル化変容の体験的考察』
著者:菱田慶文
出版社:めこん
出版年:2014年4月10日
定価:2500円(税別)


非常に久々の更新にもかかわらず、またも競馬でもなんでもない本で申し訳ない。メインブログの『そこに競馬があるから』でタイの競馬場レポートを書いている中で、ムエタイ賭博も取り上げることとなりその中で出会ったのが本書である。著者の菱田慶文氏は筑波大学の大学院に在学中にムエタイを題材に修士論文を書くことを思い立ち、タイのカセサート大学に留学したという。自らもプロ格闘技のシュートボクシングの選手で留学中にプロのムエタイの試合を経験し、レディーボーイのボクサーにボコボコにやられた記述が出てくるなど、彼の実体験・実地調査に基づくリアルで面白い研究となっている。出版社の「めこん」はその名のとおり東南アジア関連書籍を出している出版社だ。




◆この一冊でムエタイの歴史と文化が理解できる

本書はタイという国でムエタイ文化がどのように育まれ、どのように変容してきたかを非常に分かりやすく解説している。そもそもムエタイを生んだタイという国はどんな国なのか。タイではムエタイは賭けの対象となるが、そもそもタイ人にとってギャンブルはどんな位置づけなのか。ムエタイはどのように生まれ、タイの中でどのように文化として育っていったのか。そして近代以降にムエタイがギャンブル化していく過程が順を追って述べられている。ムエタイだけでなくその前提となる知識もしっかりと解説してくれているのでタイという国の文化を理解するにも役に立つだろう。そして学術的な話だけでなく、菱田氏が実際にムエタイのジムで修業をしていた際のリアルな経験に基づいたレポートもあり、ノンフィクション的な面白さも楽しめるつくりになっている。




◆ムエタイとギャンブル

ムエタイの文化全般がわかる作りになっている本書だが、肝となっているのは本書のサブタイトルにもあるとおりムエタイの「ギャンブル化変容」の部分である。現在、タイにおいてムエタイは賭けの対象として絶大な人気を誇っており、その産業構造はギャンブルに支えられていると言っても過言ではない。ギャンブルであるからこそムエタイは他の国の格闘技とは違った独特の進化を遂げている。ムエタイではなぜ小柄な選手の試合が人気なのか?ノックアウトが少ないのはなぜか?選手入場時にド派手な演出がないのはなぜか?これらはすべてムエタイがギャンブルだからこそのことなのだが、そのあたりの部分を本書は詳細に明らかにしてくれる。また、実際にどんな人間がどのくらいの金額でどんな賭けをしているのかという部分も実地調査を中心に詳細なレポートがある。情報屋として莫大な富を築いた男や、ムエタイ情報誌のエロ広告の変遷などその内容に興味は尽きない。




◆文系研究かくありきや・・・

ちょっと偏見っぽい見方になってしまうのは百も承知で言うが、この本からは、菱田氏はいわゆる秀才型の研究者ではないオーラがにじみ出ている。文章も不器用とまではいかないがなんともストレートな感じで、まあ全体的に泥臭い感じの筆致なのだ。ただ、学部までだが歴史を研究した自分としては非常に好感が持てるというか、ああ、俺はこういう研究が大好物なんだよなあ、と素直に思える感じの研究であった。昨今人文学系統の学問は役に立たない研究として扱われがちだが、普段なかなか追いきれない他国のひとつの文化をきちんと記録・整理しておくという意味では非常に価値がある存在だよなあとあらためて思った次第である。ホント、面白い本なので、ムエタイにもギャンブルにも興味がない方も是非ご一読を。ちなみに、競馬については「タイ国内の合法ギャンブルのひとつ」としてわずかに記述があるぞ!!



満足度:★★★★★
面白度:★★★★★
勉強度:★★★★☆
競馬度:☆☆☆☆☆


『極楽カシノ』by森巣博



書名:『極楽カシノ』
著者:森巣博
出版社:光文社
出版年:2005年4月25日
定価:1600円(税別)


さて、競馬本ガイドを題したブログにて本書を取り上げてしまっては、著者からクレームが来てしまうかもしれないが、同じギャンブルくくりということで紹介させていただくことにしよう。本書はカシノ賭博の「常打ち賭人」と言われる森巣博氏とその仲間たち(?)による、カシノへの訪問実録がメインに据えられた本である。『小説宝石』に掲載されていたシリーズものがまとめられた一冊だ。森巣氏はカシノ界隈では有名な作家さんで、自身のカシノ体験を元にした小説やエッセイを多数著しているお方だ。アメリカ、イギリス、オーストラリアを拠点にカシノにとことん通いつめたホンマモンの博打打ちであり、その経験や知見は生半可なものではない。ちなみにカジノではなく、カシノと表記しているのは本書表記に倣っている(現地発音に合わせた形で、そもそもカジノという日本語がおかしい)。


◆競馬からカシノへ転進!?

本書はまず光文社の編集者、通称「ジミー」と森巣氏が連れ立って中山競馬場に行くシーンから始まる。ネタバレになってしまうので、ものすごく乱暴に省略すると、そこでいろいろあって、競馬からは足を洗うと決意したジミー氏が森巣氏へカシノ賭博の教えを乞う、という流れで話は進行して行く。「いったい誰が、控除率28%の博打で勝利可能なのか?」「馬券を買う者とは、きわめて勇敢なのだ。ここでの「勇敢」はバカと同義と理解していただきたい」などの森巣氏の言は、我々競馬好きとしては、日本の競馬がいかに割に合わない博打かということを嫌でも思い知らされるため耳が痛い部分だ。競馬好きの中には、俺は違う!と、反論したい人はいくらでもいるだろうが、理論上はそうなのだから仕方が無い。


◆カシノの楽しさ、そして、恐ろしさ・・・

かくして、森巣氏に同行してカシノに出入りするようになったジミー氏。オーストラリアや韓国など各地のカシノで勝負していく様子が描かれる。初心者であるジミー氏がゲーム賭博のプロ中のプロである森巣氏とかけあいをしながら話が進んでいく構成のため、読み手にとってもカシノがどんなところなのか、どんな風にして勝負が進行して行くのかという、基本的な部分がよくわかるようになっているのが本書のミソである。そして森巣氏とネット上でつながりのある通称「リゾカジ軍団」なる日本国内のカシノ好きたちと共にカシノを攻略せんと奮闘していく様子は、読んでいても非常に興奮する。BJ(ブラックジャック)、バカラ、牌九(パイガオ)、などそれぞれのゲームの打ち方や楽しむポイントは章の間のミニコーナーで解説されているので、カシノがよくわからない人でも楽しく読み進めることができるカシノ入門書的な側面もあるつくりになっている。浮くときは浮き、沈むときは沈むカシノ賭博の楽しみと恐ろしさが何となくでも感じられることは間違いない。


◆競馬ファンこそカシノ賭博から目を背けるな

かように本書はカシノの楽しみを味わえる本なのだが、一応こんなブログなので、競馬につなげた感想も述べておこう。競馬ファンの中でも「ギャンブルは競馬しかしない人」というのは一定数いるだろう。もちろん「負けてもともとの見物料だから賭けた額の半分も戻ってくればいいや」と思っている人はさておき、少しでも多く、取り戻したい、あるいは勝ちたいと考えている人は、少なくとも「日本における競馬」がどんな性質のギャンブルであるかをしかと認識すべきで、本書はその補助線となりうる本である。上記の控除率の話などは、おそらく競馬ファンであれば「頭では分かっていること」であろう。しかし「ではもっと控除率の低いカシノ賭博でお前は勝てるのか?」と問われると、うっと言葉につまりそうな気がしないだろうか。理論上、1/2の確率で勝てるはずのゲーム賭博でさえ、これだけプロが神経をすり減らしながら対峙している。我々はしっかりと、その事実と向き合いつつ相対的に「割に合わない」賭博たる競馬と対峙する必要があると感じる次第である。


◆兎に角、オモロイ本です

カシノはほとんど行ったことがなく、競馬も負けまくっているくせに偉そうな弁を延々とほざいてしまいましたが、本書はギャンブルが好きな人であればひとまず楽しく読める本であることは間違いない。ときおりオカマ言葉になる、少し砕けながらも底知れぬ恐ろしさを感じる森巣氏の文章。濃いキャラクターの登場人物たち・・・。彼らのやりとりを読んでいるだけでドーパミンが出てきてしまうぜ。読了後に「やっぱりギャンブルって面白いな」と素直に思えるかどうかはまた個人差があるとは思いますが・・・。非常におススメの本です。こんなに面白いのに、書店では見つからず、結局アマゾンの中古で購入した記憶があります・・・。


満足度:★★★★★
面白度:★★★★★
博打度:★★★★★
実践度:★★★★☆


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森巣 博

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『2頭出しの正しい選び方』by武内一平




書名 :『2頭出しの正しい選び方』
著者 :武内一平
出版社:KKベストセラーズ
出版年:2015年2月5日
定価:1574円(税別)


中央競馬の2頭出し、多頭出しにフォーカスを当てた武内一平氏の著書。清水成駿氏の『万馬券の9割を狙える方程式』の中でも指摘をされていたが、2頭出しの馬に注目すると思わぬ穴馬券を拾うことができる点に注目した、ありそうでなかった本だ。武内一平氏は1952年生まれ。早稲田の政経を卒業後、ライターとして活躍し、様々な媒体に寄稿したり、競馬関連の書籍を著しているお方だ。実はさきほどの清水成駿氏の本にも武内氏が寄稿している(清水成駿は監修クレジット)ということもあり、内容がつながっているのはそういうわけかと今頃になって気が付いた次第だ。


◆2頭出しの正しい買い方とは

本書刊行後に私が目撃した例だが、例えば2016年の8月13日の新潟7レースは1着が9番人気のオレンジガール、3着が16番人気のスーリーズで決まり、3連単は大荒れの944,380円となった。このオレンジガールとスーリーズはともに粕谷厩舎の管理馬。このように、一見では買えないような大穴馬も、2頭出しに注目していれば取れた可能性があったりする。武内氏はそれに着目した。しかし、一口に2頭出しとは言っても、ただ漫然と2頭出している場合もあるし、上記のとおり狙った勝負がかりな場合もある。これの違いをいかに見極めるかということを本書は解説していく。


◆初心者向けの馬券術だが、本質的には超上級者向け

2頭出しは出馬表さえあれば誰でも気がつけるオープンな情報なので、ある意味初心者でも手軽に楽しめる馬券術である。ただし、当然ながらベタ買いをしていては儲からない。でも儲けたい。さてではどうする・・・?と考えたときには一気に難易度が上がる。武内氏も本書の中でこう述べている。「2頭出し馬券の的中にたどり着くまでには最低2つの関門があります。第一の扉は、果たしてこの2頭出しは馬券になるのかどうかという判断。いうまでもなく、2頭出し全部が馬券に絡むわけではない。本気度を見抜いて、馬券になる2頭出しだけをピックアップできて、やっと第2ステップに進めます。第二の関門は2頭のうち、どの馬をチョイスするか。それとも2頭とも買うのか。この選択もなかなか難しい」。2頭出しは仕掛ける調教師や馬主によって傾向が異なる。当然ながらそれぞれのクセをしっかり把握し、買うときの券種も含めてしっかり吟味をする必要があるのだ。武内氏の著書をヒントにそれをモノにできるかどうかは、読み手の基礎的な馬券力が問われるのである。競馬格言に2頭出しは人気薄を狙えというものがあるが、それがホントかどうかも本書を読み進めると分かってくる。


◆2頭出しの傾向を丁寧にあぶり出す

そんな単純で奥深い2頭出しだが、武内氏はそれぞれ、注目すべき調教師と馬主をリストアップし、ここ数年の傾向をもとに、どんな時に買いか、どんなときにバッサリ行くかなどを丁寧に解説していく。武内氏の本は他の馬券術の本の著者にありがちな自分をすごく見せようとしているところが少なく、好感を持って読み進めることができるのが特徴だ。2頭出しはガンガンしかける厩舎や馬主(例:ミルファームなど)ではサンプルが多すぎたり、逆に人によっては少なすぎたりするので、ベタ買いでのデータなどは書いていないが、ここの厩舎はよくしかけるけどほぼこけるので無視しろ、とか、この騎手で仕掛けてくるときは要注意など武内氏の私見も交えてなるべく詳しく、分かりやすく読者に情報を提供しようという姿勢が目立つ。的中事例などもあるが、思考の補助線として例示している程度で「当たってスゴいだろう!」みたいな不愉快な感じはしない。


◆「勝負気配」を重視する馬券師さんにはよい思考訓練になるかも

基本的には2頭出し馬券術は、勝負気配をいかにつかむかという馬券術である。したがってローテーション、厩舎コメント、乗り替わりなどの要素から勝負気配を察知して当たり馬券につなげるという馬券術を実践されている方は比較的とっつきやすく、なおかつ自分のベースとなる知識との相乗効果も期待できそうだ。また、2頭出しの激走パターンを研究しているうちに、その厩舎が勝負するときのパターンが見えてくるという副次的な作用が生まれることも充分に考えられる。自分なりに、調教や場合によっては外厩などの情報も組み合わせてより精度を高くすることができれば、使える馬券術になりそうな気配はある。単純に読んでいてもけっこうおもしろいので気になった方は是非。武内氏の実践に基づいた本なので、気付きも多く、構成もしっかりした良書だと思います。


満足度:★★★★☆
面白度:★★★☆☆
勉強度:★★★★☆
実践度:★★★★☆



2頭出しの正しい選び方 (競馬最強のハンドブック)2頭出しの正しい選び方 (競馬最強のハンドブック)
武内 一平

ベストセラーズ 2015-01-24
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『矢野吉彦の世界競馬案内』by矢野吉彦



書名:『矢野吉彦の世界競馬案内』
著者:矢野吉彦
出版社:オークラ出版
出版年:2003年10月12日
定価:1800円(税別)


競馬実況でおなじみの矢野吉彦氏による海外競馬ガイドである。2003年の本であるが、海外の競馬場について、非常によくまとめられている良書であり、個人的にはバイブルとして扱っている本である。矢野吉彦氏は大学卒業後に文化放送に入社。入社後に日本国内の競馬場をすべて制覇したとのこと。そして29歳のときにフリーになり、その後は休みのときには海外競馬に赴くようになり、この本を上梓した2003年には国内・海外あわせて160箇所もの競馬場に行ったとのこと。現在は200箇所を超えたという話もあり、矢野氏はもはや競馬旅打ち界隈の御大とも言える存在となっている。
 

◆海外競馬ガイドの決定版

本書の中身はいたって丁寧な海外競馬訪問ガイドとなっている。各国ごとに、競馬の歴史や文化などに関する基礎知識やレース体系などの解説がまずあり、その後各競馬場の様子やアクセスなどが矢野氏の実体験をもとに書かれている。馬券の種類や買い方なども丁寧に解説されており、旅打ちの際には現地に持って行っても重宝する。さらに、土地の名物や訪問時のエピソードなどもできるかぎり多く取り上げるよう作られており、読み物としても楽しめる構成となっている。そのへん、先に紹介した東邦出版の『海外競馬に行こう!-新ヨーロッパ競馬場ガイド』の作り方と比べて対照的だ。エリアもどこに偏るわけでもなく、欧州、北米、アジア、オセアニア、南アフリカ、南米とまんべんなく取り上げている。矢野氏が訪問した競馬場すべてを取り上げているわけではないので、完全なデータベースという代物ではないが、それでも書籍としてはもっとも幅広く海外の競馬場を取り上げているものとなっている。


◆2016年現在も本書の意義は大きい

旅打ちは常に最新の情報が求められるため、どうしても昨今はインターネット上の情報が重要になってきてしまうが、それでも主張したいのは本書は現在も非常に有用な書物であるということ。ここまで体系的かつ端的に各国の競馬の概要がまとめられている本は他にはないし、各国の競馬場の当時の息吹を感じられると言う意味でも、海外旅打ちの入門書やイギリスに限らないという意味で海外競馬文化に興味を持つきっかけには非常にいい本だと言える。もし、海外の競馬場に行って見たいと漠然と思っている人がいたら、インターネットで行き方を調べたり、レポートを見てみるのもいいのだけれど、まずは是非この本をパラパラとやってほしい。薄く広くではあるかもしれないが、ざっと世界の競馬を見渡して、自分の好みに合いそうな国を探すには本書はぴったりだ。最初から最後まで賛美ばかりしちゃいましたが、表紙にある「永久保存版」のマークは伊達じゃない出来でっせ。



満足度:★★★★★
面白度:★★★★☆
勉強度:★★★★☆
役立度:★★★★★

矢野吉彦の世界競馬案内矢野吉彦の世界競馬案内
矢野 吉彦

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『こんな騎手買ってる奴の顔が見たい!』by正体が知れるとクビになる!



書名:『こんな騎手買ってる奴の顔が見たい!』
著者:正体が知れるとクビになる!
出版社:KKベストセラーズ
出版年:2002年12月5日
定価:1300円(税別)


こちらも古本屋のワゴンで購入した一冊。KKベストセラーズから出ている一冊でその名も『こんな騎手(オレ)買ってる奴の顔が見たい!』といういかにもKKベストセラーズ的な辛辣なタイトルになっている。一応「東西現役騎手39人がバラした馬券術」という副題がついており、中身も4章立ての39節となっているのだが、作りとしてはあまり立場を明確にしていない某競馬関係者が騎手のみならず助手や調教師など様々な人間から聞いた話を組み合わせて競馬界の内情を暴露するという形を取っている。39名の騎手というのはあまり気にしなくてよい。著者名の”正体が知れるとクビになる!”は半分おふざけだろうが何をクビになるのかなどは本文中でも明らかになっていないので編集部がまとめたものをとりあえずこういう著者名で出したとも考えられる。以前に『騎手がバラした馬券術―万札ザクザク、歓喜の必勝法』というKKベストセラーズの本を紹介したが、この時の著者は”実名を出すとヤバイ騎手”となっていた。まあ、こういう本を定期的に作るカルチャーがあるんだろうな。


◆いかにもKKベストセラーズなノリで競馬界を切る

競馬界の内情暴露本の類は、騎手のパーソナルな部分にスポット当てたりしたものも多いが、本書はどちらかというと馬券を買うファンの目線に立って、華やかに見える競馬の世界も実際ウラではこんな感じだから、馬券を買うときには注意しないとダメだよ、というスタンスで書かれている。出遅れ、ペース配分、乗り替わりなどがどういう理由で起こるのか、その裏にはどんな力学があるのかなどが、軽い筆致で書かれており、さすがはKKベストセラーズという言うべきか、ぶっちゃけた話や写真も多く、読み物としてはなかなか面白い構成になっている。ところどころ、こういうコメントは買いだ、とか返し馬でこういう動きをしていたら買いだ、などの具体的な馬券指南にもつながるような部分もあるが、ほとんどは競馬関係者から聞いた話として書かれており、データなどを取っているわけではないので、参考になる部分はあれど、全体としては毒にも薬にもならない本になっている。もちろん、○○騎手はフェラーリに乗っているなどのヨタ話もところどころ盛り込まれている。


◆2002年当時のリアルな騎手評が楽しめる!?

上記のとおり本書は競馬界の裏事情を楽しむのが目的ではあるのだが、文中には2002年当時の騎手たちの事情が書かれているので、2015年現在の競馬ファンからすると。当時この騎手はこういう評価だったのか!などの新鮮な発見があり、それはそれで楽しむことができる要素になっている。本書はスタートが下手、ペースが読めないなどマイナスの評価をする場合は騎手名がイニシャルになるのだが、スタートがうまい、イン突きがうまいなどプラスの評価をする場合は騎手が実名で表記されている。有望な若手減量騎手として大庭和弥騎手が挙げられていたり、当時まだ地方所属だった小牧太騎手や安藤勝己騎手に触れられていたり、さらに昔の話としてJボーイズ(昔の栗東の若手騎手グループ)なんて話もあったりして、現在とのギャップを楽しむこともできる。


◆軽薄さも含めて

2002年に書かれた本ということもあり、正直馬券の足しになるような情報というのは、今となってはほとんどないように感じるが、当時まだあまり踏み込まれていなかったエージェント制について、具体名を挙げて解説している箇所があったり当時としてはなかなか先進的な内容だったのかもしれない。また、ガレオン、シリウスシンボリ、オフサイドトラップの乗り替わりエピソードなどに触れていたりして、競馬界が人を育てることに対して一石を投じていたりもしている。わざわざ探してでも買うような本ではないし、人によっては薄っぺらいと感じる本なのかもしれないが、さすがはKKベストセラーズだけあってそうした軽薄さも含めて個人的にはさくさく読むことができた。まあ、こんなもんだという前提に立って、古本屋でパラパラやってみて、もし買ってもいいなと思えば買ってみるのもよいだろう。



満足度:★★☆☆☆
面白度:★★★☆☆
勉強度:★★☆☆☆
軽薄度:★★★★☆


こんな騎手(オレ)買ってる奴の顔が見たい!―東西現役騎手39人がバラした馬券術こんな騎手(オレ)買ってる奴の顔が見たい!―東西現役騎手39人がバラした馬券術
正体が知れるとクビになる!

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『馬券にすぐ効く 競馬魔法の言葉』by松田一良



書名:『馬券にすぐ効く競馬魔法の言葉』
著者:松田一良
出版社:東邦出版
出版年:2006年7月7日
定価:1400円(税別)


久々に古本屋をぶらつき、チープ(失礼)な競馬予想本を何冊か格安で手に入れたのでレポートすることにしよう。今回ご紹介するのは『馬券にすぐ効く競馬魔法の言葉』という本だ。ご存知東邦出版から2006年に出ている本である。著者は松田一良なる人物。これで名前は「いちろう」と読ませるとのこと。調べた限り、松田一良名義での著書はこれ一冊のようで、競馬本業界によくいる謎の一発屋(一冊屋?)である。


◆本当に使える格言とは何か

著者紹介部分を読むと、松田氏は本書を書いた時点で、競馬歴25年とのことだが、そのほとんどをライトユーザーとして過ごしていたとのこと。しかし、04年のジャパンカップでアドマイヤドンの単勝で大金勝負に出たところ、同厩舎2頭出しの人気薄であるタイムパラドックスにやられてしまい、競馬格言のおそろしさを痛感し、「格言とは何か。本当に使える格言とはなにか」について猛研究を始めたそうな。というわけで本書は「人気薄の逃げ馬を狙え」「死んだ種牡馬の子は走る」「夏は牝馬」などの競馬格言20個について、あれやこれや論じている構成になっている。


◆格言そのものはきっかけにしかすぎない

それぞれ取り上げられている格言自体はよく聞くものが多いのだが、松田氏によって、それがいかに有用なものかというのがデータと共に解説されている。ただし、本書の場合は紙面の都合もあるのだろうが、その格言が有用だとする論拠やデータはどれも事例紹介程度で、薄っぺらい感は否めない。これは杜撰な構成になっているというよりはシンプルに解説していると捉えたほうがいいだろう。本書でいいこと言ってるなと思ったのは、前書き部分の「格言そのものはきっかにしかすぎないが、先人の知恵や経験が凝縮されている分、思考の取っ掛かりとしてこれだけ便利なツールはない。」という部分。つまり本書はあくまで松田氏が使えると踏んでいる格言の簡単な紹介と捉えるべきで、その先にそれを高めて馬券に落とし込む作業は自身であると認識しておく必要がある。あえて本書にクレームをつけるとすれば「馬券にすぐ効く」というタイトルにしてしまうのはどうかというところか。


◆初心者が次のステップにいくための教本的位置づけ?

したがって本書はどちらかというと、好きな名前の馬を単勝100円で買う、といったレベルの初心者がもう少し考えて馬券を買うための補助線的な使われ方をするのが適していると思われる。ある程度の年数、競馬をやってきた荷桁にとっても、制裁が多い騎手は内枠で狙え、最終レースは見習い騎手を狙え、などあまり意識していなかった格言もあり、わりと楽しめた。読者をむやみに煽っていたり、当たり馬券をバンバン載せたりして勧誘している不誠実な競馬本も多いが、本書はいち競馬好きが真面目に書いた本という印象。正直、必携の書として推薦するようなものかと言われると、そうでもないかもとは思うが、古本屋やネットで爆安で手に入るのなら、初心者にプレゼントしてあげてもよいかもしれません。でも、同タイプの本で言うと以前にご紹介した清水成駿の『万馬券の9割を狙える方程式』のほうが穴狙いに特化しているだけおもしろいかもなあ・・・。


満足度:★★★☆☆
面白度:★★☆☆☆
勉強度:★★★☆☆
誠実度:★★★★☆



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松田 一良

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『京大式 鉄板の買い方講座』by棟広良隆




書名 :『京大式 鉄板の買い方講座』
著者 :棟広良隆
出版社:白夜書房
出版年:2009年10月30日
定価:900円(税別)


「馬券の買い方」にフォーカスを当てた棟広良隆氏の著書。馬券の指南書の多くが、穴馬の選び方など”馬選び”がメインだったり、WIN5や3連単など、特定の券種ありきの馬券術だったりする中で、こういうシチュエーションではどういう馬券を買うのが一番いいのか?ということを突き詰めている、異色作と言える。ちなみに棟広氏は甲陽学院高等学校→京都大学工学部卒という秀才。京都大学競馬研究会の会長をつとめ、「新馬場適性理論」なるものを創始したとのこと。現在は家業の学習塾「棟広塾」を経営し英語を教えるかたわら、多くの雑誌や競馬新聞に連載を持っているお方だ。


◆”買い方”を研究することの重要性

我々競馬ファンは日々、競馬予想に勤しんでいる。馬柱やデータを見ながらウンウンと唸って軸馬やヒモの馬を選定していくわけだ。ここまでは皆、大差なく取り組んでいることであろう。しかし、馬を選定した後、それを馬券(買い目)として表現することに関してはどうだろうか。単複枠連しかなかった時代には馬を選定する精度を磨いていれば必然的に予想も当たったが、券種が増えた昨今、きちんと儲けを出すためには、導き出した予想を馬券に落とし込む作業が予想と同等に重要になってきていると言える。本書は馬券の買い方を体系的に整理し、ケースごとの対応術として高めることを試みている本である。平たく言うと軸は当たっているのに馬券は外れていた、とか、これも押さえていればもっと儲かったのにということがどうやったら防げるか?ということを考えている本だと思っていただければよいだろう。


◆意外と重要なオッズ、そして心理

棟広氏はまずオッズをきちんと見ろということを述べている。それは効果的な押さえ馬券を買うことができるからだとしている。一般的に押さえ馬券というのは当たっているけど配当が安い馬券=トリ紙、とされているが、棟広氏の定義では「レース後に来られて嫌な馬券」となっている。何となく押さえていなかった馬券が来てしまっても配当が安ければ心理的ダメージは少ないが「うわ、こんなに配当ついた!なんでこれ買わなかったんだ!」という場合けっこうダメージがでかい。こうしたことを防ぐためにも、また新たな気づきをもたらすためにもしっかりオッズは見ておけということだ。また、棟広氏は馬券はセンター試験のようなものだとも述べている。すなわち時間制限(締切)があることでおのずとミスが誘発されやすいものだと言うのだ。そして、ミスをしないよう、オッズを見てすぐに的確な馬券がチョイスできるような準備をしておくことが重要だと述べている。儲かる組み合わせを工学的に明らかにする本かと思いきや、意外と実践に基づいた心理的要素が前提となっており共感できる部分も多い。


◆買い方の整理と実践での使い方

そうした前提部分の次に、棟広氏おススメの買い方が列挙される。基本的にはそれなりに馬券をやっているファンであれば、知っている買い方がほとんどではあるが、あらためてそのメリットデメリットが整理できるのがよい。3連複の1頭軸と2頭軸とを組み合わせる作戦など、なかなか思いつかないものもあった。その次の章では馬柱を使っての、ケーススタディーが続く。穴馬ありきの場合、人気一頭が抜けている場合、条件替わりが多い場合など、実際ありそうなシチュエーションで馬券をどう買うのがいいかを解説している。まあ、後付でなんとでも言える部分はあれど、頭の体操としてはいいかもしれない。


◆大事なのは、いかに冷静でいられるか?

ここまでご紹介して、買い方はともかく、肝心の馬選びのほうはどうなんだ?という声もでるかもしれない。これに関しては一応棟広氏が提唱する理論である「爆走レンジ」というものを使ってカバーしている。ただ、本書で学ぶべき示唆は、その爆走レンジとやらを馬券に結び付けるということではない。肝要なのは自分の予想を馬券でいかに表現するかだけでなく、悔しい思いをしないため、またうまくいったときのボーナスを最大化するために、いかに冷静に馬券をチョイスできるかということだ。これはすべてのレースに手を出したり、負けがこんできて、最終レースで一発逆転を狙うなど冷静さを欠く行為への警鐘とも捉えられる。いろんな意味で、自分の競馬を省みるきっかけとなる本でした。


満足度:★★★★☆
面白度:★★★☆☆
勉強度:★★★★☆
反省度:★★★★★

京大式鉄板の買い方講座 (競馬王新書)京大式鉄板の買い方講座 (競馬王新書)
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