KKベストセラーズ

『2頭出しの正しい選び方』by武内一平




書名 :『2頭出しの正しい選び方』
著者 :武内一平
出版社:KKベストセラーズ
出版年:2015年2月5日
定価:1574円(税別)


中央競馬の2頭出し、多頭出しにフォーカスを当てた武内一平氏の著書。清水成駿氏の『万馬券の9割を狙える方程式』の中でも指摘をされていたが、2頭出しの馬に注目すると思わぬ穴馬券を拾うことができる点に注目した、ありそうでなかった本だ。武内一平氏は1952年生まれ。早稲田の政経を卒業後、ライターとして活躍し、様々な媒体に寄稿したり、競馬関連の書籍を著しているお方だ。実はさきほどの清水成駿氏の本にも武内氏が寄稿している(清水成駿は監修クレジット)ということもあり、内容がつながっているのはそういうわけかと今頃になって気が付いた次第だ。


◆2頭出しの正しい買い方とは

本書刊行後に私が目撃した例だが、例えば2016年の8月13日の新潟7レースは1着が9番人気のオレンジガール、3着が16番人気のスーリーズで決まり、3連単は大荒れの944,380円となった。このオレンジガールとスーリーズはともに粕谷厩舎の管理馬。このように、一見では買えないような大穴馬も、2頭出しに注目していれば取れた可能性があったりする。武内氏はそれに着目した。しかし、一口に2頭出しとは言っても、ただ漫然と2頭出している場合もあるし、上記のとおり狙った勝負がかりな場合もある。これの違いをいかに見極めるかということを本書は解説していく。


◆初心者向けの馬券術だが、本質的には超上級者向け

2頭出しは出馬表さえあれば誰でも気がつけるオープンな情報なので、ある意味初心者でも手軽に楽しめる馬券術である。ただし、当然ながらベタ買いをしていては儲からない。でも儲けたい。さてではどうする・・・?と考えたときには一気に難易度が上がる。武内氏も本書の中でこう述べている。「2頭出し馬券の的中にたどり着くまでには最低2つの関門があります。第一の扉は、果たしてこの2頭出しは馬券になるのかどうかという判断。いうまでもなく、2頭出し全部が馬券に絡むわけではない。本気度を見抜いて、馬券になる2頭出しだけをピックアップできて、やっと第2ステップに進めます。第二の関門は2頭のうち、どの馬をチョイスするか。それとも2頭とも買うのか。この選択もなかなか難しい」。2頭出しは仕掛ける調教師や馬主によって傾向が異なる。当然ながらそれぞれのクセをしっかり把握し、買うときの券種も含めてしっかり吟味をする必要があるのだ。武内氏の著書をヒントにそれをモノにできるかどうかは、読み手の基礎的な馬券力が問われるのである。競馬格言に2頭出しは人気薄を狙えというものがあるが、それがホントかどうかも本書を読み進めると分かってくる。


◆2頭出しの傾向を丁寧にあぶり出す

そんな単純で奥深い2頭出しだが、武内氏はそれぞれ、注目すべき調教師と馬主をリストアップし、ここ数年の傾向をもとに、どんな時に買いか、どんなときにバッサリ行くかなどを丁寧に解説していく。武内氏の本は他の馬券術の本の著者にありがちな自分をすごく見せようとしているところが少なく、好感を持って読み進めることができるのが特徴だ。2頭出しはガンガンしかける厩舎や馬主(例:ミルファームなど)ではサンプルが多すぎたり、逆に人によっては少なすぎたりするので、ベタ買いでのデータなどは書いていないが、ここの厩舎はよくしかけるけどほぼこけるので無視しろ、とか、この騎手で仕掛けてくるときは要注意など武内氏の私見も交えてなるべく詳しく、分かりやすく読者に情報を提供しようという姿勢が目立つ。的中事例などもあるが、思考の補助線として例示している程度で「当たってスゴいだろう!」みたいな不愉快な感じはしない。


◆「勝負気配」を重視する馬券師さんにはよい思考訓練になるかも

基本的には2頭出し馬券術は、勝負気配をいかにつかむかという馬券術である。したがってローテーション、厩舎コメント、乗り替わりなどの要素から勝負気配を察知して当たり馬券につなげるという馬券術を実践されている方は比較的とっつきやすく、なおかつ自分のベースとなる知識との相乗効果も期待できそうだ。また、2頭出しの激走パターンを研究しているうちに、その厩舎が勝負するときのパターンが見えてくるという副次的な作用が生まれることも充分に考えられる。自分なりに、調教や場合によっては外厩などの情報も組み合わせてより精度を高くすることができれば、使える馬券術になりそうな気配はある。単純に読んでいてもけっこうおもしろいので気になった方は是非。武内氏の実践に基づいた本なので、気付きも多く、構成もしっかりした良書だと思います。


満足度:★★★★☆
面白度:★★★☆☆
勉強度:★★★★☆
実践度:★★★★☆



2頭出しの正しい選び方 (競馬最強のハンドブック)2頭出しの正しい選び方 (競馬最強のハンドブック)
武内 一平

ベストセラーズ 2015-01-24
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『こんな騎手買ってる奴の顔が見たい!』by正体が知れるとクビになる!



書名:『こんな騎手買ってる奴の顔が見たい!』
著者:正体が知れるとクビになる!
出版社:KKベストセラーズ
出版年:2002年12月5日
定価:1300円(税別)


こちらも古本屋のワゴンで購入した一冊。KKベストセラーズから出ている一冊でその名も『こんな騎手(オレ)買ってる奴の顔が見たい!』といういかにもKKベストセラーズ的な辛辣なタイトルになっている。一応「東西現役騎手39人がバラした馬券術」という副題がついており、中身も4章立ての39節となっているのだが、作りとしてはあまり立場を明確にしていない某競馬関係者が騎手のみならず助手や調教師など様々な人間から聞いた話を組み合わせて競馬界の内情を暴露するという形を取っている。39名の騎手というのはあまり気にしなくてよい。著者名の”正体が知れるとクビになる!”は半分おふざけだろうが何をクビになるのかなどは本文中でも明らかになっていないので編集部がまとめたものをとりあえずこういう著者名で出したとも考えられる。以前に『騎手がバラした馬券術―万札ザクザク、歓喜の必勝法』というKKベストセラーズの本を紹介したが、この時の著者は”実名を出すとヤバイ騎手”となっていた。まあ、こういう本を定期的に作るカルチャーがあるんだろうな。


◆いかにもKKベストセラーズなノリで競馬界を切る

競馬界の内情暴露本の類は、騎手のパーソナルな部分にスポット当てたりしたものも多いが、本書はどちらかというと馬券を買うファンの目線に立って、華やかに見える競馬の世界も実際ウラではこんな感じだから、馬券を買うときには注意しないとダメだよ、というスタンスで書かれている。出遅れ、ペース配分、乗り替わりなどがどういう理由で起こるのか、その裏にはどんな力学があるのかなどが、軽い筆致で書かれており、さすがはKKベストセラーズという言うべきか、ぶっちゃけた話や写真も多く、読み物としてはなかなか面白い構成になっている。ところどころ、こういうコメントは買いだ、とか返し馬でこういう動きをしていたら買いだ、などの具体的な馬券指南にもつながるような部分もあるが、ほとんどは競馬関係者から聞いた話として書かれており、データなどを取っているわけではないので、参考になる部分はあれど、全体としては毒にも薬にもならない本になっている。もちろん、○○騎手はフェラーリに乗っているなどのヨタ話もところどころ盛り込まれている。


◆2002年当時のリアルな騎手評が楽しめる!?

上記のとおり本書は競馬界の裏事情を楽しむのが目的ではあるのだが、文中には2002年当時の騎手たちの事情が書かれているので、2015年現在の競馬ファンからすると。当時この騎手はこういう評価だったのか!などの新鮮な発見があり、それはそれで楽しむことができる要素になっている。本書はスタートが下手、ペースが読めないなどマイナスの評価をする場合は騎手名がイニシャルになるのだが、スタートがうまい、イン突きがうまいなどプラスの評価をする場合は騎手が実名で表記されている。有望な若手減量騎手として大庭和弥騎手が挙げられていたり、当時まだ地方所属だった小牧太騎手や安藤勝己騎手に触れられていたり、さらに昔の話としてJボーイズ(昔の栗東の若手騎手グループ)なんて話もあったりして、現在とのギャップを楽しむこともできる。


◆軽薄さも含めて

2002年に書かれた本ということもあり、正直馬券の足しになるような情報というのは、今となってはほとんどないように感じるが、当時まだあまり踏み込まれていなかったエージェント制について、具体名を挙げて解説している箇所があったり当時としてはなかなか先進的な内容だったのかもしれない。また、ガレオン、シリウスシンボリ、オフサイドトラップの乗り替わりエピソードなどに触れていたりして、競馬界が人を育てることに対して一石を投じていたりもしている。わざわざ探してでも買うような本ではないし、人によっては薄っぺらいと感じる本なのかもしれないが、さすがはKKベストセラーズだけあってそうした軽薄さも含めて個人的にはさくさく読むことができた。まあ、こんなもんだという前提に立って、古本屋でパラパラやってみて、もし買ってもいいなと思えば買ってみるのもよいだろう。



満足度:★★☆☆☆
面白度:★★★☆☆
勉強度:★★☆☆☆
軽薄度:★★★★☆


こんな騎手(オレ)買ってる奴の顔が見たい!―東西現役騎手39人がバラした馬券術こんな騎手(オレ)買ってる奴の顔が見たい!―東西現役騎手39人がバラした馬券術
正体が知れるとクビになる!

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『馬主の一分』byマイケル・タバート



書名 :『馬主の一分』
著者 :マイケル・タバート
出版社:KKベストセラーズ
出版年:2014年1月30日
定価:895円(税別)


オーストラリア出身、日本で働きながらJRAの馬主資格を取って、日々競馬に取り組んでいるマイケル・タバート氏の本。タイトルはここでも取り上げた藤田伸二騎手の『騎手の一分』へのオマージュであろうか。内容はいろいろな話題を取り上げているのだが、かんたんにまとめると、外国出身の馬主として日本競馬に接していく中で感じたことを中心にまとめたエッセイとでも言おうか。これを読むことで馬主の裏事情が分かってバンバン馬券が取れるという本でもない。あくまで読み物として楽しむべき本だ。


◆親しみやすい馬主さんの本

中央の個人馬主というと企業経営者がほとんどというイメージがある。それは今でもそうなのだが、タバート氏はその中ではかなり庶民に近い感覚を持っている馬主だ。もちろん庶民では個人馬主にはなれないので、タバート氏もそれなりに稼いでいるのだが(大手監査法人勤務)、使い切れないようなお金を手にした成金馬主というわけではない。人間関係を作りながら限られたお金のなかでやりくりしつつ楽しんでいる様子が伝わってくる。もともと競馬の盛んなオーストラリアの出身。日本留学中にはダビスタにハマっていたということで、我々庶民が「馬主になってみたいかも・・・」と思うきっかけとそう大差ない経歴も何となくタバート氏を親しみやすく感じる要因にもなっているだろう。日本の競馬界にいろいろ意見してみる部分もあるのだが、わりと共感できる内容が多い。馬券の買い方は・・・マネすべきかどうかは自己判断で。


◆ハナズゴールおめでとう

そんな庶民派(?)馬主タバート氏の稼ぎ頭はハナズゴールだ。タバート氏の馬で初めてグレードレースを賑わせた馬である。本書の後半はけっこう多くがこの馬について割かれており、興味深いエピソードが満点だ。本書は2014年1月の出版だが、タバート氏は本書の中で「2014年はオーストラリアのG1を勝ってきます」と宣言した。そして2014年4月26日、ハナズゴールはG1、オールエイジドSを勝利した。本命のドンカスターマイルは無理だったが、挑戦は実ったわけだ。馬主の立場から書かれた、G1に挑戦するまでのやきもきとした苦労話はあまりないし、けっこう貴重なんじゃないだろうか。しかも結果勝てたというハッピーエンドを知っていればより楽しく読めるだろう。


◆タバート氏、ひいては我々の夢

タバート氏はハナズゴールの成功から、馬の数も増やし、生産にも手を出し始め、いよいよ本格的に馬主として活動していくような感じで本書は締めくくられている。そこまでいくと我々としては頑張ってほしいと思いながらも「大丈夫かな・・・」と思わなくもない。まあ、そのあたりはさておき、JRAの馬主要件も緩和傾向にある昨今、タバート氏のような高給サラリーマン馬主というのはどんどん増えていくと想像される。そういう立場にいる人にとっては夢が膨らむ本と言えるかもしれない。馬主という存在が何となく身近になったという点では競馬界へ貢献している面もあるだろう(もちろん荷桁はなれないのだが)。何せ馬主さんがいい馬を所有してエキサイティングなレースをしてくれてこその楽しい競馬でございますからね。何かの役に立つ必携の書という類の本ではないですが、なかなかおもしろく読めました。


満足度:★★★★☆
面白度:★★★☆☆
愛情度:★★★★☆
勉強度:★★☆☆☆


馬主の一分 (競馬ベスト新書)馬主の一分 (競馬ベスト新書)
マイケル タバート

ベストセラーズ 2014-01-21
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『絶対調教 これが勝負仕上げだ!』by高中晶敏 久保和功


書名 :『絶対調教 これが勝負仕上げだ!』
著者 :高中晶敏 久保和功
出版社:KKベストセラーズ
出版年:2013年6月
定価:895円(税別)

調教面に特化した「高中式」なる理論を構築した高中晶敏氏に久保氏を加えた一冊。調教での理論を確立している高中氏はともかく久保氏が著者に名を連ねているのかは不明。KKベストセラーズの編集部のセッティングとのことだが、久保氏は関西で活躍する予想家でよく調教を見ている、などの説明があるだけで、共著となったまでの経緯の説明はない。唐突に二人が調教を重視して多くの馬券を当てているという話がはじまり、それが延々と続く。


◆調教についての知識がつくかと思いきや・・・

以前にご紹介した井内氏の『100%激走する勝負調教、鉄板の仕上げ 馬の調子、厩舎の勝負気配は調教欄ですべてわかる』では、そもそもの調教欄の見方、基準となるタイム水準、調教コースの解説からはじまり、このコースで追切をすることで馬にどんな効果が 期待できるか、併せ馬はどんな意図があってやるのかなどの基本事項を丁寧に解説してくれていいた。しかし、本書はそういった部分はない。せいぜい「函館ウッドは時計がかかる」くらいのことを言うレベルで、きちんとした知識の整理などはない。結局そういう話もそこそこに俺たちはこんな考え方で、こんな馬券を当てたという的中実績の話が始まるのだ。


◆中身はほぼ的中事例のみ

そんなこんなで本書は延々と的中事例が続いていく構成になっている。こういう馬券術の本というのは一般化されて初めて価値があるのだが、この本は完全にそれを放棄している。調教から馬券を読み取るとは言っても、いろんなパターンがあり、単純化・一般化では説明できないのだ、という理屈はよく分かるが、だからと言って的中事例ばかりを掲げてもさらに読者には理解がしづらいことだろう。理論を提示してその理論で読者が馬券を当てるということよりも、こういう素晴らしい理論があって的中実績もあるから、著者のホームページやメルマガを取れと読者に誘導をかける方に力を入れた構成であるとも言える。


◆こういう馬券本には騙されるな

競馬本の中でも「新馬・未勝利を狙え」「2頭出しを狙え」「この騎手と調教師の組み合わせを狙え」などの多くの競馬予想本があるが、きちんと馬券を購入するにあたっての一般化した理論を書いている本はまだまともな方である。あとはその買い方で買って儲かればいいし、儲からなければダメだったな、だし、自分でその精度を上げる方向にも持っていける。しかし、今回のこの本はそういう本ではない。ただの経験談に終始しているので、読み終わったところで、自分の中にひとつの馬券理論が残らないのだ。あとがきのところに「高中、久保の話から「調教の奥深さ」を理解していただけただろうか。そして調教が馬券に強く結びつくことも・・・。」とか書いてあるが、アホかと言いたい。結局調教見て馬券買うとたまに万券取れるよということだけベラベラ言っておいて、どういうふうに調教を見るといいのかにほとんどページをさいていないクセに何言ってんだ。


◆ただの催眠商法です

繰り返しになるがひとまずこの本を買っても調教欄を見る「力」がつくことはない。調教に注目していたら取れた万馬券の事例が載っているだけである。こういう事例を見せて、高中理論に乗っかってみたい!という人はウェブにアクセスして彼の予想を手に入れるのがいいだろう。本書はそのためにあるのだから。言うたら催眠商法みたいなものなので、賢明な方は買わないほうがいいと思いますよ。高中氏自体が予想家として優れていたとしても編集者がこういう露出の仕方をしてしまっていては高中氏も不憫である。


満足度:★☆☆☆☆
面白度:★☆☆☆☆
自慢度:★★★★☆
勉強度:★★☆☆☆

絶対調教これが勝負仕上げだ! (競馬ベスト新書)絶対調教これが勝負仕上げだ! (競馬ベスト新書)
高中 晶敏 久保 和功

ベストセラーズ 2013-09-07
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『馬券術政治騎手名鑑2013 ガラガラポン!』by樋野竜司



書名 :『馬券術政治騎手名鑑2013 ガラガラポン!』
著者 :樋野竜司
出版社:KKベストセラーズ
出版年:2012年12月
定価 :1714円(税別)


樋野竜司氏による騎手本の最新刊だ。樋野氏は騎手本を中心に競馬に関する著作が多い馬券師の一人である。本書は樋野氏が追いかけてきた、中央競馬の騎手たちの最新の動向を扱った本である。馬券術政治騎手とかガラガラポン!とか言われてもなんのこちゃという話だが、中身は騎手に関して一人ひとり解説しているので素直に「騎手名鑑」として捉えるのがよい。

◆騎手一人一人に関する詳細な記述

大方の騎手本通り、内容は一人ひとりの騎手についての詳細な解説だ。この一年どんな騎乗が目立ったか、どんなコース・場面で強かったかが詳細に解説されており、有用なデータが多い。特に馬主・厩舎や条件などでバッサリ切れるようなデータや、思わぬ爆走をするときはこういうときだというデータも示してくれているので、馬券的にも使える箇所も。画面にかじりついて、全レースのメモを取るような時間がないのであれば、最新の騎手トレンドをまとめてくれる本が手元にあるというのは非常に心強いと言えよう。

◆騎手の性格や癖の把握にも。最新のエージェント一覧も収録

展開予想の際に重要なのは騎手の性格や癖。その点でもこの本はできる限りのスペースを割いて解説をしてくれている。あくまで樋野氏の分析なので、騎手に言わせれば「それは誤解だわ~」とか「そこまで考えてやってないよ」ということもあるかもしれないが、一応頭にいれておいて損はないネタもある。特に逃げ馬や追い込み馬に乗った時の性格なんかは頭に叩き込んでおけばある程度展開が想定できる。さらに最新の騎手別の担当エージェント一覧も載っているので、参考にするといいだろう。

◆展開分析派・人間関係分析派は読む価値あり

ここまで述べてきたとおり、騎手の性格や癖・人間関係などをデータや最新情報から明らかにしているため、騎手買いが好きな方はもちろん、展開をきちんと読み切って当てたいと考える方、さらには人間関係から激走する馬を見つけるというタイプの方は、最新のトレンドを知るという点でも読んでおくといいだろう。ただし、あくまで2012年までのを見たうえでの樋野氏の分析なので、頭から信用しきるのもどうかと思うし必ずしも馬券に直結するものではないのは認識しておいたほうがいいだろう。当然のことながら馬の能力や厩舎などについてはしっかりと触れていないため、その点も注意が必要だ。

◆あまりむきにならずにまずは読み物として一読を

こういう本の性格上、すぐに馬券が取りたくて藁をもすがる気持ちで読むと「こんなうんちく延々とされても馬券にならねーよ」という気分になることは間違いないので、そういうふうに構えず、まずは読み物としてじっくり読むのが後々の馬券にはいいだろう。さらに最後のほうには樋野氏の本にはありがちな的中自慢もやや含まれている。荷桁はちゃんと読みました。


満足度:★★★☆☆
面白度:★★★★☆
勉強度:★★★★☆
即効性:★★☆☆☆

『騎手がバラした馬券術―万札ザクザク、歓喜の必勝法』by実名を出すとヤバイ騎手



書名 :『騎手がバラした馬券術―万札ザクザク、歓喜の必勝法』
著者 :実名を出すとヤバイ騎手
出版社:ベストセラーシリーズ・ワニの本
出版年:1988年4月
定価:690円


名古屋をふらふらしているときに古書店でワゴン売りしていた古めの本。1988年4月の出版だが5月の時点で15版になっているので、けっこう売れていたのかもしれない・・・?著者が「実名を出すとヤバイ騎手」となっているが、これは荷桁がこうしているわけではなく、本当にこういう名前で著者欄に書いてあるのである。こういうペンネームと言ったほうが分かりやすいか。これでISBNにも登録されていると言うんだから笑える。タイトルといい、ペンネームといい、KKベストセラーズのノリと昭和の香りが漂っていていい感じだ。荷桁は1986年生まれなので、この騎手がだれかというのはちと想像がつかない。誰なんだろう・・・。

◆ノリは「プロ野球を10倍楽しく見る方法」

かつてKKベストセラーズの出したヒット作に江本孟紀氏の「プロ野球を10倍楽しく見る方法 」という本がある。この本も基本的なコンセプトは同じ。「プロ野球~」が元投手によるプロ野球の暴露本だとするならば、本書はその競馬版だ。ベタベタなタイトルがついているのでおそらく競馬におけるこうした暴露本の走りなのではないだろうか。文体も軽妙な語り口調で読みやすく、いかにもKKベストセラーズっぽい感じ。

◆騎手の心理から馬の見方、競馬新聞の読み方まで

内容は騎手の視点から「我々はこういう考え方でレースをしているから、こういうところを見ないといけないよ」という馬券を検討する際にファンが注意すべきテーマをを広いジャンルにわたって取り上げている。読み進めていくとなかなか面白いし説得力がある。もちろん、騎手の視点で「こういうことが多い」とか「こういうふうに見るのが自然」ということを言っているだけなので、それに対するデータ的な裏付けなどはない。どちらかというと「リアルな競馬格言集」といった感じであろう。とはいえその内容はバカにできない。もちろん多少盛っていたり、時代遅れになってしまった話もあるであろうが、ベーシックな騎手の考え方みたいなところで言うと参考になるところも多い。騎手が競馬新聞のどこを見て一日の仕事をイメージするか、パドックでの騎手の仕種は何を意味しているかなどのところはかなり実践的だ。

◆暴露本として、馬券本として

本書を読んだから、即座に馬券に効果が出るという類の本でもないし、ホントかどうかマユツバなところがあるのも事実だが、ひとまず読み物として面白いのでOK。まあ、野球選手の心理が分かったところで、どちらが勝つかの予想は難しいように、競馬も騎手の考え方や行動パターンが分かったところで、そのとおりになるのかというところまでは保証できない。あくまで、話半分で読みながらも、使えそうな考え方をベースに自分で勝てる買い目に落とし込んでいく必要はあるだろう。荒唐無稽とばっさり切るような内容とも思えない。古い本なので、中古かオークションでしか手に入らないだろうが、何か買い物するついでにショッピングカートに放り込むのも、まあアリなのではないだろうか。


満足度:★★☆☆☆
面白度:★★★★☆
即効性:★☆☆☆☆
勉強度:★★★☆☆

騎手がバラした馬券術―万札ザクザク、歓喜の必勝法 (ベストセラーシリーズ・ワニの本)騎手がバラした馬券術―万札ザクザク、歓喜の必勝法 (ベストセラーシリーズ・ワニの本)
実名を出すとヤバイ騎手

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