2008年02月11日

「急がば回れ」藤村享平(函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞受賞)



 「あなたの座右の銘は何ですか?」
なんて聞かれたことは今までに一度もありませんが、もし聞かれたら、僕はとりあえず「急がば回れ」と答えよう、そう思っています。
というのも、それが僕にとって大変有効であるにもかかわらず、今までほとんど実行できたことがないからです。
簡単な例を挙げれば、横になったままジュースを飲もうとして、それに手を伸ばす。もう少しで手が届きそうなのになかなか届かず、
それでも立ち上がろうとはせずに寝たまま、精一杯、手を伸ばす……ギリギリの所でジュースが手に当たり、こぼれる。結局立ち上がって、それを片づける。
そんな経験が、僕はすごく多いのです。面倒を避けようとして、結果もっと面倒なことになる。近道をしようとして、道に迷って遠まわり。
楽をしようとして、地獄を見る……僕の人生は、そんなもんです。
映画学校に居た頃、僕は幸運にも卒業制作を撮ることができました。それが上映会では大変好評で、僕は有頂天になりました。
二年の時担任だった池端俊策先生に「いい映画だった。でもこれはこれで終わり。次がんばれ」と激励され、「はい!分かりました」と目を輝かせて答えたにも関わらず、
全くそれを実行する気はありませんでした。PFFか何かで賞を取って、すぐにプロになれる……そんな甘い夢に、僕は一人で酔っていたのです。
結果賞など取れず、一年間それの結果を待って遊んでいた僕は、奈落の底に突き落とされた気分でした。縋るものを無くし、エスカレーターでいけると思っていた山頂に、
これから一歩一歩自力で歩いていかなければなりません。脚本を書こうとしましたがうまく行かず、「映画化する予定もないのに書ける筈がない」などと自分に都合のいい
言い訳をして、すぐにそれを投げ出しました。
脚本よりも自主制作を撮って、今度こそエスカレーターに乗る! そう思って張り切りましたが、結局その計画も潰れ、今度は小説を書こうと思いました。映画よりも門が広く、
そこで名前を売ってから、映画界に入ろうと思ったのです。ところが門が広ければ、その分、人が多く集まるのだという自明の理を忘れていて、今度もまた結果を出すことは
できませんでした。三年が経ってようやく近道などないということに気付き、原点に戻って脚本を書き始めました。
しかし今度も思う様に進まず、途中で投げ出したくなりました。それでももう他に道もなく、なんとか踏み止まって、それを書き上げました。
するとそれが先日、函館港イルミナシオン映画祭のシナリオコンクールで、グランプリを受賞しました。
今更ですが池端先生の言う通り、学校を卒業してすぐに脚本に専念していればと思います。しかしそれは遠回りをしたからこそ、気付いたことでもあり、冷静に振り返ってみれば、
僕は学生時代にだって楽に本が書けたことなど一度もないのです。きっとそれは自主制作でも小説でも同じで、楽をしようと思っている限りは、決していいものはできないということに、
ようやく気付きました。急がば回れ……辛くても投げ出さず、耐え続け、あがき続ける……歩きづらい雪の上を、迷いながらも何往復かしている内に、やがて雪が溶け、
道ができてくる……楽をしないということ、それが一番の近道だということを、この頃やっと悟るようになりました。
今、僕はようやくスタートラインに立てた所です。どこまでいけるかは分かりませんが、とりあえず「急がば回れ」の精神で、これからも大好きな映画を作り続けていきたいなと
思ってます。

(日本映画学校 映像科17期生)

│カテゴリ:OB 
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