2006年04月03日

「妖怪ときつねと香港人」寺田明人(助監督)

寺田明人

映画学校三年生の六月、梅雨の時期。携帯電話が鳴る。
「寺田、明日暇か」 「いや、あの、学校が・・・」 「六時に新宿な、頼んだぞ」
「あ、はい・・・」 
次の日、首都圏郊外の湖に僕はいた。
ふと、中央を見ると見たことのあるアーティストが湖の上に仁王立ちしている。
吉川晃司だ。
「よーい、スタート!!!」
声と共に水中から爆発! 飛び込む吉川晃司! 
「な、なんじゃこりゃ!?」
「カット、はい、オッケー」
声の主は言わずと知れた日本バイオレンス界の巨匠、三池崇史監督、その人だ。
都心から約二時間、トラックに揺られて着いた所は世にも奇妙で愉快な三池ワールドでした。
気がつけば、スタッフと一緒に吉川さんを湖からロープで引き上げている。
今でも鮮明に覚えている、三池組初体験の記憶・・・。
卒業後、遂にその時が。
調布、角川大映スタジオ。セットの大戸を開けるとそこでは、な、なんと!!!
・・・河童が宙を舞っているではありませんか。
映画『妖怪大戦争』 
セットの中、端から端まで妖怪だらけ。スタッフ探すほうが難しい。
その数およそ1200万!! 
東京都の人口じゃないですか。どんだけいるのよ、妖怪。
撮影は朝から晩まで。しかも『河童の川太郎』の特殊メイクは四時間かかる。
寝る暇全くねぇ・・・。
夢にも出てきた河童の甲羅、一生忘れません。
『妖怪大戦争』の後も三池組に参加した。思えば、年に一本は必ず三池組をやっている。
香港映画『頭文字D』 原作は日本の漫画。この撮影にも参加した。
スタッフの半分は香港人。日本語わからない。英語ちょっと。広東語ペラペラ。
「テラダ」
「なに」
「ネエチャン、ホシイ」
「香港帰れ!」
しかしまあ、長く付き合っていると仲良くなるもので最後の宴会は日中友好関係を象徴するような盛況振りであった。
だがそこは香港人。ジャッキー・チェンの映画ばりのはしゃぎぶりで即刻退店、入店拒否。
ダメだよ、君達。お寿司投げたり、鬼ごっこしたりしちゃ。
『子ぎつねヘレン』は北海道ロケでした。
網走の海岸沿い、海の向こうにうっすらと見える世界遺産、知床。
身も心も雄大な自然に浄化されていく・・・。
が、撮影現場は何処へ行っても慌しい。
「ヤギが逃げたぞォーーー!!」
「ウサギが消えたぁ!」
ハイエースに乗り、農道を猛スピードで走る! 前方にはヤギ。
「アイツ(ヤギ)、はえぇ・・・」
思い返せば、いろいろなことをしているな。
でも、仕事をしている感じがない。遊んでいる気がする。
そう、現場で無邪気にはしゃぎまわってばっかりだ。
三池監督もそうだし、カメラマンもプロデューサーも映画学校の卒業生。
香港のコーディネーターも卒業生。
どこへ行っても誰かいる。
日活行けばアイツとすれ違って、東映の食堂で同期と一緒に飯を食う。
案外狭いです、この世界。
でも、撮る世界はだだっ広い。
その微妙なバランスが、素敵です。

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