上脇博之 ある憲法研究者の情報発信の場

憲法研究者の社会活動の一環として、ブログを開設してみました(2008年4月5日)。 とはいえ、憲法問題全てについて意見を書くわけではありません。 政治問題について書くときがあるかもしれません。 記録として残しておくために、このブログを使用するときがあるかもしれません。 各投稿記事の右下の「拍手」が多いようであれば、調子に乗って投稿するかもしれません。 コメントを書き込まれる方は、カテゴリー「このブログの読み方とコメントの書き込みへの注意」の投稿を読んだ上で、書き込んでください。 皆様のコメントに対する応答の書き込みは直ぐにできないかもしれませんので、予めご了解ください。 ツイッターを始めました(2010年9月3日)。 https://twitter.com/kamiwaki フェイスブックも始めました(2012年7月29日) http://www.facebook.com/hiroshi.kamiwaki.7 かみわき・ひろし

2012年08月

財界政治・対米従属政治、「事実上の大連立」、民自二大政党制の崩壊その1(はじめに)

はじめに

(1)先回の衆議院総選挙により自公政権方から民主党中心の政権になった。
その総選挙が施行されたのは、2009年8月30日だった。
それから、今日で、3年になる。

(2)2009年総選挙前には、ブログで総選挙に関して幾つか投稿したが、ここでは、以下の投稿だけを紹介しておく。

09年総選挙の重大な争点その1(マニフェスト以前)

09年総選挙の重大な争点その2(財界政治・政策との決別)

事実上の財界主権政治を真の国民主権政治に変える総選挙になるのか

(3)今年(2012年)1月、通常国会で野田佳彦首相がの施政方針演説を行った。
このブログでもそれを紹介した。

第二自民党(民主党)財界政権「野田首相の施政方針演説」全文紹介

民主党政権は、2009年8月下旬の総選挙における政権交代における庶民の期待を裏切り、財界政治を推進しており、自民党政権と大きな違いがなくなっている。
そう感じているのは、私だけではないだろう。

野田内閣の支持率も民主党の支持率も下がっているのは、庶民のそのような気持ちを反映しているのではなかろうか。

(4)私が2009年総選挙前に予想したよりも早く民主党が国民の期待を裏切り、財界政治を推進した、その理由には、幾つかかあるだろう。

そのなかで私が重視してきたのは、民主党が企業・団体献金全面禁止の政権公約をいち早く反故してしまったことである。

民主党の裏切りを振り返る(小沢一郎氏の「企業・団体献金全面禁止」公約反故から始まった)

民主党のマニフェストには、本気で守る気のあったものと、全く守る気のなかったものがあるし、庶民からすると、本気で守ってもらっては困るものと、本気で守ってもらわないといけないものとがあった。

企業・団体献金全面禁止という政権公約は、財界政治を真の国民主権政治に変える大きなきっかけになるからこそ、庶民にとっては本気で守ってもらわなければならない公約だったが、民主党にとっては本気で守る気のなかったものの一つだったようだ。

(5)これまで、野田内閣の前の菅内閣不信任劇(当時)を振り返りながら、野田政権が財界政治を強行できるワケを投稿してきた。

野田政権が財界政治を強行できるワケ(菅内閣不信任劇を振り返って):その1(原発推進)

野田政権が財界政治を強行できるワケ(菅内閣不信任劇を振り返って):その2(憲法審査会始動)

野田政権が財界政治を強行できるワケ(菅内閣不信任劇を振り返って):その3(TPP交渉参加)

野田政権が財界政治を強行できるワケ(菅内閣不信任劇を振り返って):その4(消費税税率アップ)

(6)非民主的な小選挙区制のもとで財界政治、対米従属政治が進んでいるが、それも、なんと「事実上の大連立」のもとで進んでいる。
小選挙区選挙の下では本来ありえない異常事態であり、民意と「事実上の大連立」との逆転(ねじれ)現象が生まれている

しかしまた、皮肉にも、自民党と民主党の財界二大政党制は、(特に民主党から多くの離党者があり)崩壊過程にある。

と同時に、第三極の財界政党になり、総選挙後には政権に加わろうと、保守政党・議員らが蠢いているが、これも、国民から遊離したところで行われている。

(7)以上のことを確認し、政権交代から3年を振り返るために、今後複数の投稿を行うことにする。

(つづく)

参議院での野田首相問責決議について(「事実上の民自公大連立」への問責決議!)

(1)自民党・公明党は、一刻も早い総選挙により政権奪還を目指している。
にもかかわらず、費税率引き上げを柱とする社会保障・税一体改革関連法の成立を優先し、野田内閣不信任案に賛成しなかった。

その理由としては、幾つか考えられる。

(2)当該理由を思いつくままに上げると、

第一に、国民に「痛み」を押し付ける関連法の成立を自らの政権で強行するよりも現民主党政権で先に強行させた方が得策だ、と判断した。

もちろん、国民に「痛み」を押し付ける政策を歓迎するのは一般庶民ではなく財界であるから、財界政党である自民党、これまでそれに協力してきた公明党としては、当然のことであった。
これが第二。

第三に、野田首相が「近いうちに」衆議院を解散し国民に信を問うことを約束したので、早期解散と財界政治強行の二兎を追える、と判断した。

(3)問題は、第三の「近いうちに」解散総選挙が行われるのか、ということである。

これについては、このブログで、憲法の視点から投稿したり、可能な限り主観を排除して客観的な分析に努めながら投稿したりしてきた。

”憲政の常道”を逸した、公約違反の法案可決後の「近いうち」解散の3党合意

藤村官房長官の「首相は約束を守る人」発言には驚いた!

内閣不信任案の衆議院否決と、「近いうちに」を実質判断する参議院

今年10月に衆議院は解散される!?

(4)ところが、そもそも、民主党が衆議院の選挙制度改革について、野党、特に自民党とさえ、合意にいたらず、議員定数削減法案を提出したという事実は、少なくとも今国会での解散・総選挙を阻止する狙いもあると考えられる
民主党は、衆議院の選挙制度改革関連法案等を衆議院で可決した。
自公両党はこれに反発した。
時事通信(2012/08/27-20:12)
選挙法案、民主単独で可決=自公、29日に首相問責提出−特別委

 衆院政治倫理・公職選挙法改正特別委員会は27日、野党欠席のまま民主党提出の衆院選挙制度改革関連法案を採決し、同党の賛成で可決した。自民党は「憲政史上類を見ない暴挙」(石原伸晃幹事長)と反発を強めており、公明党と共同で29日に野田佳彦首相問責決議案を参院に提出する方向だ。
 同法案は、「1票の格差」を是正するため小選挙区を「0増5減」し、比例代表定数を40削減するとともに、小政党に有利とされる小選挙区比例代表連用制を部分導入する内容で、民主党単独で22日に審議入り。全ての野党が「手法が強引」と反発、委員会への欠席を続ける中、民主党は採決に踏み切った。
 これを受け、衆院議院運営委員会は27日夜の理事会で、選挙制度改革法案と、赤字国債発行に必要な特例公債法案を28日の衆院本会議で採決することを小平忠正委員長(民主)の職権で決めた。ただ、参院では野党が多数を握っており、両法案とも今国会で成立させるのは困難な情勢だ。 
 一方、自民、公明両党など野党各党の国対委員長は27日、横路孝弘衆院議長に対し「選挙制度は議会制民主主義の土台であり、与党だけで強行することは断じて許されない」として、選挙制度改革法案を本会議で採決しないよう申し入れた。拒否された場合、野党は同法案の採決を欠席する方針だ。
 また、自民党は同日、谷垣禎一総裁ら幹部が国会内で協議し、首相問責案を提出する方針を決め、提出日を含めた対応を谷垣氏に一任した。自民党は可決を確実にするため公明党以外の野党との調整を加速させる考えで、28日に野党参院国対委員長会談を開き、協力を呼び掛ける。

時事通信(2012/08/28-13:57
特例公債法案を可決=選挙制度も、自民など反発−衆院

 赤字国債発行に必要な特例公債法案は28日午後の衆院本会議で採決され、与党の賛成多数で可決された。自民党は本会議を欠席した。民主党提出の衆院選挙制度改革関連法案も採決され、与党の賛成で可決されたが、野党各党は民主党の国会運営に抗議し、退席した。
 ただ、両法案を参院に送付しても、参院は野党多数のため今国会での成立は困難だ。与野党の対立は深まっており、自民、公明両党は29日に野田佳彦首相の問責決議案を参院に提出する方向だ。一方、首相は28日午前、首相官邸で民主党の輿石東幹事長と会談。国会運営について協議したとみられる。
 本会議に先立ち自公両党など野党11党の幹事長らは横路孝弘衆院議長と会い、「民主主義の根幹の選挙制度について、与党の多数をもって強行採決することは憲政史上類を見ない暴挙」と抗議したが、議長は「申し入れは与党に伝える」と述べるにとどめた。
 自民党の谷垣禎一総裁は28日午前の党役員会で「もはや内政、外交で国政をコントロールできない状態だ」と野田政権を厳しく批判。公明党は同日午前、山口那津男代表ら幹部が国会内で対応を協議し、問責案への対応を山口氏に一任した。 
 自民党は問責案可決に向け、他の野党にも協力を呼び掛ける考えで、28日午後に野党各党の参院国対委員長が会談する。ただ、新党「国民の生活が第一」など参院の野党7会派は今月7日、消費増税を阻止する狙いから首相問責案を提出済み。生活などは7会派の問責案の採決を優先するよう求めており、野党間の調整もポイントとなる。


(5)ところで、野党7会派が今月7日に提出した問責決議案は採決されてこなかった。
時事通信(2012/08/27-22:55)
先行提出の問責優先を=参院7会派、自公に要求へ

 新党「国民の生活が第一」など野党7会派の参院国対委員長が27日夜、国会内で会談し、自公両党が提出する野田佳彦首相の問責決議案への対応を協議した。その結果、先に7会派が共同で出した首相問責案の採決を優先すべきだとの考えで一致した。28日に自公両党に伝える方針だ。 
 会談後、生活の主浜了氏は記者団に「7会派の問責案を優先して(参院本会議に)上程してもらわなければ、自民党が出す問責案の上程を認めない方向で動く」と強調。仮に参院議院運営委員会で民主党に加えて生活とみんなの党が反対すれば、自公両党の問責案は本会議で採決できないが、7会派が実際に強硬姿勢を続けるかは不透明だ。
 7会派は今月7日に参院に首相問責案を提出。消費増税阻止を理由にしていたことから、自公両党は、採決せず棚上げにしていた。

(6)「近いうち」解散・総選挙を期待した自民党・公明党としては、野田首相に裏切られたと判断したようで、自民党・公明党は、昨日(8月28日)野田首相問責決議案を提出した。
ロイタ2012年 08月 28日 19:45 JST
自公が首相問責決議案を共同提出、野党7会派の決議案と一本化調整

[東京 28日 ロイター] 自民党と公明党は28日夕、野田佳彦首相に対する問責決議案を参議院に共同で提出した。中小野党7会派が先に問責決議案を提出しているため、一本化についてこれから協議するという。
自民党の岸田文雄国対委員長が明らかにした。
これに先立って自民党の谷垣禎一総裁は公明党の山口那津男代表と会談、その後記者団に、きょう問責を提出することになったことを明らかにし、いまの野田政権は限界にきていると語った。また、問責提出で「近いうちに」という解散の約束は反故になったとする一部民主党内の声について、「そうは考えない」と否定した。
谷垣総裁は、今回の問責提出をどう解散に結びつけるのかとの質問に「将棋で言えば、もう詰んでいる」と述べ、解散に踏み切らないまま次の臨時国会を開いても野田首相を参議院に迎えないとの声が党内にあることについては「そういう考え方があるのは事実だ」とした。
自民党の岸田国対委員長は問責提出に関連して、先に問責決議案が提出されており、7会派から自公の決議案には乗れないとしていることを明らかにしたうえで、統一の決議案を作ることができないか、自民党側から提案したと語った。
こうした動きに、民主党の城島光力国対委員長は「問責は論外だと思うが、出てきた中でやっていく。われわれは国民のため、その一点で9月8日までの会期を全うしていきたい」としている。前原誠司政調会長も、問責提出は一体改革をめぐる3党党首会談を破棄するものだと批判した。


(7)野田首相の問責決議案としては、先に提出されている野党7党のものと、後で提出された自公2党のものがあり、両者を一般化することについては難航したようだが、最終的には、先に提出された野党7党案が上程され、採決されて、可決されようだ。
なんと、公明党は棄権し、自民党は賛成したという。
テレビ朝日(08/29 18:00)
野党内の調整難航の末…野田総理問責決議案可決へ

 野田総理大臣の問責決議案は、野党内の調整が難航しましたが、29日の参議院本会議で採決される見通しです。

 (政治部・藤川みな代記者報告)
 国会では、午後から参議院本会議で問責決議案の討論と採決が始まる見通しです。午後7時20分ごろには、自民党など野党の賛成多数で可決する見通しです。今回、自民党は苦渋の選択を迫られました。消費税増税に反対する野党7党の猛反発にあい、自民党は野党7党が提出した消費税増税を批判する問責決議案に賛成せざるを得なくなりました。一方、公明党は採決を棄権する方針で、自公の足並みが乱れることになります。民主党からは冷ややかな声が出ています。
 民主党・城島国対委員長:「この間のドタバタ劇はまさに、いかにこの問責決議案が無理筋かということを表しているのではないか」
 問責可決後は、国会は事実上の休会状態になり、自民党も民主党も総裁選や代表選に向けて動き出すことになります。

NHK8月29日 20時10分
首相への問責決議 賛成多数で可決

 国民の生活が第一やみんなの党などが提出した野田総理大臣に対する問責決議は、参議院本会議で野党側の賛成多数で可決されました。
これに対し、野田総理大臣は問責決議に法的な拘束力はないなどとして、衆議院の解散などには応じない方針です。
 国会は参議院議院運営委員会で、国民の生活が第一やみんなの党など、参議院の野党7会派が提出した野田総理大臣に対する問責決議案を本会議で採決することを、賛成多数で決めました。
 一方、自民・公明両党が28日に提出した問責決議案は、反対多数で上程されませんでした。
 そして、午後5時から参議院本会議が開かれ、法案の採決などが行われたあと、問責決議案の審議に入りました。
 この中で、みんなの党の小野次郎氏が「野田内閣が押し通した消費税率引き上げ法は、先の衆議院選挙での民主党のマニフェストに違反しており、国民への約束に背く政治姿勢をとり続ける野田総理大臣の責任は極めて重大だ」などと、問責決議案を提出した理由を説明しました。
 また、自民党の川口順子氏が「野田政権と民主党には、震災復興や竹島・尖閣諸島を巡る摩擦など、解決を迫られている課題を解決に導くための国家運営能力、すなわち『与党力』が絶対的に欠如し責任感もない」と述べました。
 これに対し、民主党の武内則男氏が「自民党が党利党略を重視して問責決議案に賛成するのは、節操のない厚顔無恥の暴挙で、3党合意をほごにするものだ。『近いうちに解散する』という約束も無効にせざるを得ない」と反論しました。
 このあと、決議案は記名投票による採決が行われ、賛成129票、反対91票で野党側の賛成多で可決されました。
 ただ、野党のうち公明党は「消費税率の引き上げ反対を理由とする問責決議案には賛成できない」として、採決を欠席しました。
 また、自民党の丸山和也参議院議員が「問責決議が可決されれば、解散が近くなるということでやっているだけで、自己矛盾も甚だしい」として、採決を棄権しました。
 総理大臣に対する問責決議が可決されたのは、4年前に福田総理大臣、3年前に麻生総理大臣に対する決議が可決されたのに続いて、今回で3例目で、民主党政権では初めてです。
 野田総理大臣は、問責決議は内閣不信任決議と違って法的な拘束力はないなどとして、辞任や衆議院の解散には応じない方針です。

(8)参議院で可決された問責決議は、以下の報道のとおりである。
時事通信(2012/08/29-19:15)
首相問責決議の全文

 29日の参院本会議で可決された野田佳彦首相問責決議の全文は次の通り。

 内閣総理大臣野田佳彦君問責決議

 本院は、内閣総理大臣野田佳彦君を問責する。
 右決議する。

 理由
 野田内閣が強行して押し通した消費税増税法は、2009年の総選挙での民主党政権公約に違反するものである。
 国民の多くは今も消費税増税法に反対しており、今国会で消費税増税法案を成立させるべきではないとの声は圧倒的多数となっていた。
 最近の国会運営では民主党、自由民主党、公明党の3党のみで協議をし、合意をすれば一気呵成(かせい)に法案を成立させるということが多数見受けられ、議会制民主主義が守られていない。
 参議院で審議を行う中、社会保障部分や消費税の使い道等で3党合意は曖昧なものであることが明らかになった。
 国民への約束、国民の声に背く政治姿勢を取り続ける野田佳彦内閣総理大臣の責任は極めて重大である。
 よってここに、野田佳彦内閣総理大臣の問責決議案を提出する。

(9)この問責決議について私見を書いておこう。

この問責決議は、形式的には、野田内閣ではなく、首相首相に対するものである。

もっとも、問責決議の理由が消費税増税を問題視している点で言えば、「実質的には、野田内閣に対する問責決議」に相当する。

また、問責決議の理由が民自公3党を問題にしている点で言えば、「実質的には、民自公3党に対する問責決議」に等しい。

もっといえば、「実質的には、『民自公による事実上の大連立』に対する問責決議」に等しいのである。

(10)したがって、私は、この問責決議に賛成であり、歓迎したい。

(11)ただ、自民党がこの問責決議案に賛成したのは明らかな矛盾である、と言わざるを得ない。

また、公明党がこの問責決議案に賛成しなかったのは「当然のこと」であるが、反対せず棄権したのは、必ずしも態度が一貫するとは言い難い。

(12)自公両党が早期解散を求めるのであれば、野田首相の「近いうちに・・・」という発言を信用せず、野田内閣不信任案に賛成すべきであったのだ。

また、言うまでもないことであるが、一般庶民に「痛み」を強いる消費増税等の法案を成立させた責任は、民主党だけにあるのではなく、問責決議に賛成した自民党にも、棄権した公明党にもあるのだ。

今後国会が空転すれば、その責任は実質的には民自公三党にある。

(13)上記紹介報道、及び、事前の以下の報道によると、野田内閣は、今国会で衆議院を解散しない可能性が高いようだ。
毎日新聞 2012年08月12日 18時49分(最終更新 08月12日 18時57分)
衆院解散:民主幹事長「今国会中は難しい」

 民主党の輿石東幹事長は12日のNHK番組で、野田佳彦首相と谷垣禎一自民党総裁が「近いうち」で合意した衆院解散時期について、9月8日に会期末を迎える今国会中は難しいとの認識を示した。輿石氏は特例公債法案、衆院選挙制度改革関連法案、原子力規制委員会の国会同意人事を挙げ、「この三つを必ず仕上げねばならない。今国会で解散できる状況にならないのではないか」と述べた。
 一方、自民党の石原伸晃幹事長は同番組で、解散時期について「10月か会期末までに絞られる。一日も早い解散がベストだ」と反論し、今国会中の解散を求めた。公債法案に関しても「『通してください』では、簡単に処理できない」と述べ、解散確約を協力の条件にする考えを表明。参院での首相問責決議案提出も「首相が不誠実な対応をすれば、視野に入れる」と述べた。
 首相と谷垣氏が党首選で交代すれば、「近いうち」の合意はなくなるとした自らの発言について、輿石氏は「党首だから党と党の公約になる。新党首が再度確認すれば済む」と釈明した。9月の民主党代表選に関しては「首相が1年で交代するのはいかがなものか」と首相再選支持を改めて表明。石原氏も9月の自民党総裁選について「今の政治体制のまま行くのがベストだ」と述べ、谷垣氏が立候補すれば支持する考えを示した。【高橋恵子、念佛明奈】

産経新聞2012.8.28 19:38
自公、問責決議を提出 29日採決へ 首相、解散拒否の構え

 自民、公明両党は28日、野田佳彦首相に今国会中の衆院解散を迫るため問責決議案を参院へ共同提出した。29日に採決する方向で調整する。首相は問責決議が可決されても今国会中の解散を拒否する構えだ。平成24年度予算執行に不可欠な公債発行特例法案は28日午後に参院へ送付された。野党が過半数を占めており成立は困難だ。
 自民党の谷垣禎一総裁「内政、外交両面で、今の野田政権が事態を掌握し国政を進めるのは限界にきている。問責を出す機運は十二分に熟した」と述べた。
 野党は28日午後、問責決議案をめぐり国対委員長会談を開催。自公両党以外の野党は、先に参院へ提出した自らの問責決議案の採決を主張。これに対し自公両党は自公案に同調するよう求めて折り合わず、引き続き調整する。首相は28日午前、民主党の輿石東幹事長と官邸で約30分間会談し、国会対応を協議。野党が要求する今国会中の解散には応じない方針を確認したとみられる。

[時事通信社] 2012年 8月 29日 19:22 JST
首相問責決議を参院で可決=今国会解散に応ぜず―民・自党首選に突入

 参院は29日午後の本会議で、新党「国民の生活が第一」など野党7会派が提出した野田佳彦首相の問責決議を、7会派や自民党の賛成多数で可決した。問責決議に法的拘束力はなく、首相は自民党が求める今国会での衆院解散には応じない構え。野党は参院での審議の全面拒否に入り、9月8日の会期末を前に、国会は空転状態となった。政局の焦点は、9月の民主党代表選、自民党総裁選に移る。
 首相は先の谷垣禎一自民党総裁との会談で、「近いうち」の衆院解散で合意した。しかし、民主党内では早期解散に反対する声が大勢。同党の樽床伸二幹事長代行は29日の党の会合で、首相問責に関し「約束をほごにするという意思だ」と述べ、合意は白紙になったとの認識を強調した。
 首相は9月21日の党代表選に出馬する意向を示唆、再選が有力視されている。ただ、原発再稼働や環太平洋連携協定(TPP)参加に反対する議員の間には「反野田」候補の擁立を模索する動きもある。
 与野党には、首相は再選されれば10月前半にも臨時国会を召集し同月中に解散を断行。11月に衆院選挙が行われるとの見方が広がりつつある。

(14)そうなると、次の注目点は、9月に予定されている自民党の総裁選挙と民主党の代表選挙であり、谷垣総裁が再選されるのか、野田代表が再選されるのか、ということになる。

今後の政局を考えると、両選挙には注目せざるえを得ない。

(15)両選挙は財界二大政党の選挙だ。

したがって、一般庶民にとっては、どうでも良い選挙だが、財界にとっては重要な選挙になるのだろう。

橋下徹市長の慰安婦問題発言と「『慰安婦』問題の解決に向けた意見書可決をすすめる会」の抗議・声明の紹介

はじめに

(1)「大阪維新の会」代表の橋下徹・大阪市長がいわゆる慰安婦について発言した。
朝日新聞2012年8月22日
慰安婦の強制連行 橋下市長「確証ない」

 橋下徹大阪市長は21日、従軍慰安婦問題での旧日本軍の関与をめぐり、「強制連行があったかどうかの確たる証拠はなかったというのが日本の考え方」と述べた。韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領の竹島(韓国名・独島〈トクト〉)訪問などを受け、記者団に語った。
 橋下氏は、竹島問題の背景に「従軍慰安婦という大きな課題が根っこにある」と指摘。「(強制を示す証拠があるなら)韓国の皆さんに出してもらいたいと思っている」と語った。
 一方、日本政府は1993年、軍の関与を認めたうえで、朝鮮半島出身を含む慰安婦の募集や移送などに関し「甘言や強圧など総じて本人の意思に反して行われた」と強制性を認める官房長官談話(河野談話)を出している。
 河野談話に触れて橋下氏は、日本政府が改めて国民に説明する必要があると訴え、「河野談話はそのまま本当に踏襲するのか、やっぱり問題があったんだったらあったとはっきり言わなきゃいけない」と述べた 。

(2)この発言に対しは、多くの批判があり、橋下市長は、さらに、いわゆる河野談話まで批判するに及んだ。
(2012年8月24日11時49分 読売新聞)
橋下市長、河野談話は「日韓紛争の一番の元凶」

 大阪市の橋下徹市長は24日、いわゆる従軍慰安婦問題に関する1993年の河野洋平官房長官談話について、「無理やり強制連行されたと韓国側が受け取るあいまいな表現になっているのが一番の問題で、日本政府の大失態だ」と批判。
 「日韓の紛争の一番の元凶となっており、政府は直ちに是正すべきだ」と訴えた。市役所で報道陣の取材に答えた。
 河野談話では、慰安婦の募集について「本人たちの意思に反して集められた事例が数多くある」としているが、橋下市長は「慰安婦として働くのは本人には不本意だったかもしれないが、強制されていたかどうかは別問題。(強制連行の)証拠もないのに、日本政府が悪い印象を与える必要はない」と述べた。

(3)以上の発言に対しても、批判が巻き起こっている。

(4)そこで、以下では、私が存じ上げている「若者たちと考える「慰安婦問題」フォーラム −−「慰安婦」問題の解決に向けた意見書可決をすすめる会−−」が、橋下市長の最初の発言に対し抗議文を作成し、同市長に送付し(2012年8月24日)、また、同市長の後の発言に対する声明も作成し、公表しているので、その両者を紹介しておくことにする。


1.「橋下市長の「慰安婦」問題での発言(8月21日)に対する抗議文」

http://nanumu.blog59.fc2.com/blog-entry-278.html

橋下市長の「慰安婦」問題での発言(8月21日)に対する抗議文

 以下は、橋下市長の「慰安婦」問題での発言(8月21日)に対する、私たち「『慰安婦』問題の解決に向けた意見書可決をすすめる会」の抗議文です。

 本日(8月24日)付でマスコミ各社に公表し、橋下市長にも送付いたします。

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                                        2012年8月24日
大阪市長
橋下 徹 様
                          「慰安婦」問題の解決に向けた意見書可決をすすめる会
                                (共同代表)安達克郎(茨木診療所所長)
                                    石川康宏(神戸女学院大学教授)
                                        西欣也(甲南大学教授)

          橋下市長の「慰安婦」問題での発言(8月21日)に対する抗議文

 日本軍による性的暴行の被害者である元「慰安婦」を侮辱し、この国の進路を危うくするものであるとの理由から、8月21日の記者会見で橋下市長が行った「慰安婦」問題での発言に強く抗議し、あわせて発言の撤回と謝罪を求めます。

 新聞報道によると、市長は「(慰安婦の)強制連行の事実があったのか、確たる証拠はないというのが日本の考え方で、僕はその見解に立っている」「慰安所はあったのかもわからないけど、慰安婦が軍に暴行、脅迫を受けて連れてこられたという証拠はない。あるなら韓国にも出してもらいたい」と述べられました。

 しかし、ここで市長がいう「日本の考え方」とは一体誰の考え方のことでしょう。

 外務省が、世界に公開しているホームページには「加藤官房長官談話(92年7月)」「河野官房長官談話(93年8月)」が掲載されており、それは「慰安婦の募集について」「甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった」(河野談話)と、強制連行の事実をはっきり認めるものになっています。

 河野談話は、日本政府自身が、警察庁・防衛庁・法務省等々の政府機関の他、国立公文書館や国会図書館、米国国立公文書館などを調査し、さらに元軍人、元朝鮮総督府関係者等をふくむ広範な当事者への聞き取りも行ってまとめられたものです。

 日本政府のこの判断が「日本の考え方」と異なる誤りだとするのであれば、その「証拠」を日本政府に向けて提出する責務を負うべきは、市長ご自身ではないでしょうか。市長はどのような「証拠」をお持ちでしょう。ぜひ、お示し下さい。

 あわせて市長は「慰安婦制度はいまから考えると非常に倫理的に問題のある制度なのかもしれないが当時の時代背景において、どういうものだったのかということを真正面から議論しなければいけない」ともいわれています。

 しかし、これも長く調査、研究が重ねられてきた事柄です。

 当時の国際法のもと、日本政府も遵守すべきであった奴隷的な強制労働や非戦闘員への虐待の禁止など「当時の時代背景」に照らしても、「慰安婦」制度が許されるものでないことはすでに明らかです。これについて、市長はどのような反証の根拠をもって、今回のような発言をされたのでしょう。

 市長もご承知ではありましょうが、「慰安婦」問題をめぐり、「河野談話」にとどまらない誠実な謝罪や事実の究明と公開、賠償などを日本政府と社会に求めているのは、「韓国」政府だけではありません。

 2007年にはアメリカ下院、オランダ下院、カナダ下院、欧州議会(加盟27ケ国)、08年にはフィリピン国会、韓国国会、台湾立法院などで、それぞれ日本政府に問題の解決を求める正式の決議が成されています。

 さらに今年アメリカのクリントン国務長官が、「慰安婦」ではなく「強制的な性奴隷」と呼ぶべきだと発言した(7月9日報道)ことも、多くの国際的な注目をあびました。

 こうした動きの背後にあるのは、現代における戦時性暴力の廃止に向けて、これまでの「不処罰の連鎖」を断ち切ることの必要が、国際社会の広い合意となっている事実です。

 「慰安婦」問題を検討の埒外においた日韓基本条約をもって、「請求権問題は解決済」とする一部の議論も、国際社会ではまったく通用するものではありません。

 橋下市長が就任される前の2010年10月に、多くの大阪市民からの要請を受け、大阪市会は「日本軍『慰安婦』問題の早期解決に関する意見書」を可決しました。それは今も大阪市会のホームページに掲載されています。

 その最後の一文は次のようになっています。

 「国におかれては、河野談話に矛盾しないよう慰安婦問題の真相究明を行い、被害者の尊厳回復とともに、今日なお存在する女性への暴力・人権侵害の解決に向け、誠実に対応されるよう強く要望する」。

 これこそが大阪市民の良識の声であり、市会議員のみなさんの見識の表れではないでしょうか。市長はこの意見書をどのように考えておられるのでしょう。

 以上、何ら新たな「証拠」も根拠も示すことなく、「慰安婦」被害者を侮辱し、国際社会における日本の進路を危うくさせる今回の市長の発言に、強く抗議し、ただちにこれを撤回し、謝罪していただくことを求めます。

 くわえて日本の政治家の責務として、橋下市長には「慰安婦」問題の歴史と関連する戦後政治史の事実、さらには戦時性暴力の克服をめざす現代国際社会の努力を、広く、しっかり学んでいただくことを要望するものです。

 以上


2.「「2007年の閣議決定」はいずれも「河野談話」の継承を明示している――「河野談話」の意義を低める橋下市長発言(8月24日)の誤りを正す」

http://nanumu.blog59.fc2.com/blog-entry-282.html

「2007年の閣議決定」はいずれも「河野談話」の継承を明示している――「河野談話」の意義を低める橋下市長発言(8月24日)の誤りを正す

(1)

8月24日朝の「囲み取材」で、橋下市長は「慰安婦」問題について、あらためて自説を展開した。ただし「慰安婦」問題をめぐる歴史に対しては、これといって新しい論点が示されたわけではない。むしろ、安倍晋三氏をはじめ様々な論者によって、長く、語られてきた事柄の繰り返しに終始しているといっていい。

そうした議論への基本的な批判は、「『慰安婦』問題の解決に向けた意見書可決をすすめる会」による「橋下市長の『慰安婦』問題での発言(8月21日)に対する抗議文」ですでに明らかにしておいた(http://nanumu.blog59.fc2.com/blog-entry-278.html)。これはもちろん市長にも届けさせていただいている。

上の「抗議文」は次の文章で締めくくられた。
「日本の政治家の責務として、橋下市長には『慰安婦』問題の歴史と関連する戦後政治史の事実、さらには戦時性暴力の克服をめざす現代国際社会の努力を、広く、しっかり学んでいただくことを要望するものです」。


(2)

その上で、ここで追加してとりあげたいのは、市長が、24日に次のように語ったことである。

「河野談話でいろんな表現はあるけれども、しかし2007年に強制連行を示す、それを裏付けるような、直接示すような記述、直接のその証拠はなかったということを2007年の安倍内閣のときに閣議決定はされているわけです。そうであれば、河野談話の中身をもう一度、しっかり疑義がないように、内容を見直すのか、それとも2007年の閣議決定が間違っていたか。どちらかですよ。
で、僕はやっぱり2007年の閣議決定というのは、河野談話を出した以降、それは日本政府がそういう閣議決定をする以上はやっぱりそれは責任をもってやっていると思いますよ。河野談話は閣議決定されていませんよ。それは河野談話は、談話なんですから。
 だから、日本政府が、日本の内閣が正式に決定したのは、この2007年の閣議決定だった安倍内閣のときの閣議決定であって、この閣議決定は慰安婦の強制連行の事実は、直接裏付けられていないという閣議決定が日本政府の決定です。」

ごらんのように市長は、➀強制連行を裏付ける直接の記述・証拠はないということが、2007年に閣議決定されており、➁それは河野談話を「見直す」か、閣議決定が「間違って」いるかの「どちらか」という二者択一の内容をもつものであり、➂「談話」より閣議「決定」は上位に立つのだから、その「2007年の閣議決定」こそが「日本政府の決定」なのだと述べている。

結果として、これは日本政府に対する重要な告発にもなっている。「慰安婦」問題についての政府見解をまとめた外務省のサイトは、「2007年の閣議決定」については一言もふれず、「河野談話」やそれに先立つ「加藤談話」を掲載しつづけているからである(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/index.html)。

もし市長がいうように、「2007年の閣議決定」が「河野談話」と両立しえないものであり、しかも前者が「日本政府の決定」だというのが事実であれば、日本政府は2007年から今日までの5年間、日本政府の見解の重要な転換を、世界に隠し続けてきたことになる。

同サイトに外務省が掲げた最新の文書は、2011年8月の「慰安婦問題に対する日本政府のこれまでの施策」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/ianfu.html)だが、それは次のように述べている。

「平成5年(1993年)の調査結果発表の際に表明した河野洋平官房長官談話において,この問題は当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であるとして,心からのお詫びと反省の気持ちを表明し,以後,日本政府は機会あるごとに元慰安婦の方々に対し,心からのお詫びと反省の気持ちを表明している。」

これが事実を隠すための文章であれば、それは重大な国際問題となる。

ただし、それは、橋下市長の上の議論が正しいとすればの議論である。


(3)

以下では、この事実関係を確かめたい。行うべきは「2007年の閣議決定」の調査である。

首相官邸には「閣議案件」をまとめたサイトがある(http://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/index.html)。そこで「閣議案件のバックナンバー」(http://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/kakugi-bk.html)のページを開けば、「平成19年1月9日」から「平成19年12月28日」までの105回の閣議案件が確かめられる。

105回の案件一覧をすべて開いて検索したところ、案件のタイトルに「慰安婦」の文字が含まれたのは、次の9件だけであった。

➀平成19年03月16日(金)「衆議院議員辻元清美(社民)提出安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する質問に対する答弁書について」
➁平成19年04月20日(金)「衆議院議員辻元清美(社民)提出安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する再質問に対する答弁書について」
➂平成19年04月20日(金)「衆議院議員辻元清美(社民)提出安倍首相の「慰安婦」問題についての発言の「真意」に関する質問に対する答弁書について」
な神19年06月05日(火)「衆議院議員辻元清美(社民)提出安倍首相の「慰安婦」問題についての発言に関する質問に対する答弁書について」
ナ神19年06月05日(火)「衆議院議員辻元清美(社民)提出バタビア臨時軍法会議の証拠資料と安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する質問に対する答弁書について」
κ神19年06月05日(火)「衆議院議員辻元清美(社民)提出極東国際軍事裁判の証拠資料と安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する質問に対する答弁書について」
平成19年07月06日(金)「衆議院議員鈴木宗男(無)提出米下院外交委員会で可決された従軍慰安婦問題への決議案に対する日本政府の対応に関する質問に対する答弁書について」
平成19年08月15日(水「衆議院議員辻元清美(社民)提出「慰安婦問題」についての米下院決議と安倍首相の謝罪に関する質問に対する答弁書について」
平成19年11月09日(金)「衆議院議員辻元清美(社民)提出福田首相の慰安婦問題についての認識に関する質問に対する答弁書について」

ご覧のように、以上はいずれも衆議院議員からの質問に対する「答弁書」の確認である。

この「答弁書」と事前に衆議院議員から提出された「質問趣意書」については、衆議院のサイトに全文が公開されている(http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_shitsumon.htm)。それを読めば、上記➀〜のすなわち「慰安婦」を案件名にふくむ「2007年の閣議決定」のすべてを確かめることができるというわけである。


(4)

以下、1件ずつ内容を確かめたい。確認すべき論点は、a)「強制連行」に対する認識、b)「河野談話」に対する認識の2点にしぼりこむ。

➀について(2007年3月16日)

答弁書はこう述べている。

a)「強制連行」に対する認識
「お尋ねは、『強制性』の定義に関連するものであるが、慰安婦問題については、政府において、平成三年十二月から平成五年八月まで関係資料の調査及び関係者からの聞き取りを行い、これらを全体として判断した結果、同月四日の内閣官房長官談話(以下「官房長官談話」という。)のとおりとなったものである。また、同日の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである。
調査結果の詳細については、「いわゆる従軍慰安婦問題について」(平成五年八月四日内閣官房内閣外政審議室)において既に公表しているところである・・・」。

b)「河野談話」に対する認識
「三の1について−官房長官談話は、閣議決定はされていないが、歴代の内閣が継承しているものである」「三の2について−政府の基本的立場は、官房長官談話を継承しているというものであり、その内容を閣議決定することは考えていない」「三の3について−御指摘の件については、官房長官談話においてお詫びと反省の気持ちを申し上げているとおりである」。

※b)に登場する「三の1」などは質問の項目である。念のために、以下に「三の1」から「三の3」までの質問を全文書き写しておく。「三 《「河野官房長官談話」の閣議決定》について」「1 『河野官房長官談話』が閣議決定されていないのは事実か。事実であるなら、どのような扱いなのか」「2 安倍首相は、『河野官房長官談話』を継承すると発言している以上、『河野官房長官談話』を閣議決定する意思はあるか。ないのであれば、その理由を明らかにされたい」「3 政府は『慰安婦』問題について『すでに謝罪済み』という立場をとっているが、いつの、どの文書や談話をもって謝罪しているという認識か。すべて示されたい」。

a)を読むにあたり確認しておきたいのは、「河野談話」や談話のための調査の経過と概要を記した「いわゆる従軍慰安婦問題について」は、「強制連行を直接示すような記述」を根拠に事柄への判断を下したとはどこにも書いていないということである。この点について「河野談話」の内容を導く調査の経過と内容について「いわゆる従軍慰安婦問題について」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/pdfs/im_050804.pdf)は次のように述べている。

「政府は、平成3年12月より、関係資料の調査を進めるかたわら、元軍人等関係者から幅広く聞き取り調査を行うとともに、去る7月26日から30日までの5日間、韓国ソウルにおいて、太平洋戦争犠牲者遺族会の協力も得て元従軍慰安婦の人たちから当時の状況を詳細に聴取した。また、調査の過程において、米国に担当者を派遣し、米国の公文書につき調査した他、沖縄においても、現地調査を行った。調査の具体的な態様は以下の通りであり、調査の結果発見された資料の概要は別添の通りである」。

また「上記の資料調査及び関係者からの聞き取りの結果、並びに参考にした各種資料を総合的に分析、検討した結果、以下の点が明らかになった」として、「慰安婦の募集」について次のように述べている。

「慰安婦の募集については、軍当局の要請を受けた経営者の依頼により斡旋業者らがこれに当たることが多かったが、その場合も戦争の拡大とともにその人員の確保の必要性が高まり、そのような状況の下で、業者らが或いは甘言を弄し、或いは畏怖させる等の形で本人たちの意向に反して集めるケースが数多く、更に、官憲等が直接これに加担する等のケースもみられた」。

以上のように「河野談話」は、政府諸機関の文書資料だけでなく、「元軍人等関係者」や「元従軍慰安婦の人たち」からの聞き取り、米国公文書の調査、沖縄の現地調査など行い、さらに各種の参考資料にもあたった上での「総合的」な判断にもとづいたものである。

この点を了解した上で、a)を読むならば、「河野談話」発表の日までに「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」ことが、仮に事実であったとしても、それだけで「河野談話」の内容を覆す意味をもつわけでないことは明らかである。

くわえてb)を見るならば、質問「三の2」に対して政府(安倍内閣)は「河野談話」の閣議決定をしりぞけながらも、同時に「政府の基本的立場は、官房長官談話を継承している」と述べている。

a)で「河野談話」を否定し、b)で「河野談話」を継承するという自己撞着に陥っているのでなければ、この「答弁書」は、a)をあえて書き込みはしたが、それ理由に「河野談話」を否定しようとしたものでないと理解する他ない。

➁について(2007年4月20日)

「答弁書」はこう述べている。

a)「強制連行」に対する認識−(直接の言及なし)。

※ただし、A・「極東軍事裁判所の判決の中国の項に『女工』の名目で『募集された婦女子に、日本軍隊のために醜業を強制した』とあるがこれを認めるか、B・オランダ政府公文書「旧オランダ領東インドにおけるオランダ人女性に対する強制売春」に含まれた「スマラン事件」についてのバタビア臨時軍法会議の判決(抑留所の女性を暴力的に慰安所に移したとして日本人担当者は死刑)を認めるかとの「質問」に、「我が国は、日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号。以下「平和条約」という。)第十一条により、同裁判を受諾しており、国と国との関係において、同裁判について異議を述べる立場にはない」「我が国は、平和条約第十一条により、連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾しており、国と国との関係において、同裁判について異議を述べる立場にはない」と繰り返し、「強制連行」の認定をふくむ2つの判決を承認している。

b)「河野談話」に対する認識
「オランダ出身の慰安婦を含め、慰安婦問題に関する政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話のとおりである」「我が方在オランダ大使より、オランダ外相に対し、慰安婦問題に関する日本政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話を継承するものであること、また、安倍総理は、元慰安婦の方々が極めて苦しい状況に置かれ、辛酸をなめられたことにつき、心から同情し、おわびする旨明確に述べていること等を説明した」。

以上である。a)が、強制連行の認定にもとづく判決に「国と国との関係において」「異議を述べる立場にない」というのが日本政府の態度だとしていることは重要ある。

先の3月16日の「答弁書」➀は、「調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」と書いていたが、では、その「政府が発見した資料」に、このように政府として「受諾」済である裁判資料は含まれていたのか、いなかったのか。そういう問いが、そこから立つ。

「裁判について異議を述べる立場にはない」のであるから、そこに含まれた証拠書類についても「異議を述べる立場にはない」。これが常識的な判断だろう。そうであれば、先の「政府が発見した資料」は、これらの裁判資料を除外したものだということになる。

➂について(2007年4月20日)

「答弁書」はこう述べている。

a)「強制連行」に対する認識
「二の1及び2について−平成五年八月四日の内閣官房長官談話は、政府において、平成三年十二月から平成五年八月まで関係資料の調査及び関係者からの聞き取りを行い、これらを全体として判断した結果、当該談話の内容となったものであり、強制性に関する政府の基本的立場は、当該談話のとおりである」。

b)「河野談話」に対する認識
「一の3について−政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話の内容全体を継承しているというものである」。

※質問「一の3」は「『当初、定義されていた強制性を裏付けるものはなかった。その証拠はなかったのは事実ではないかと思う。』という三月一日の安倍首相の発言は、河野官房長官談話のどの箇所を踏襲したものか。安倍首相の真意を示されたい」というものである。
質問「二の1」は「安倍首相のいう『狭義の強制性』とは、どのような定義によるものか。『家に乗り込んでいって強引に連れていった』以外にどのようなケースがあるのか。具体的に示されたい」であり、また質問「二の2」は「安倍首相のいう『狭義の強制性』以外は、すべて『広義の強制性』になるのか。安倍首相の見解を示されたい」である。

a)は「強制性に関する政府の基本的立場は、当該談話のとおりである」と述べており、これは強制連行の有無をめぐる「閣議決定」としてきわめて重要なものである。質問は「強制性」一般についてではなく、「慰安婦」の連行の「強制性」を問うていた。その「強制性」について、安倍内閣は「政府の基本的立場」は「河野談話」の「とおりである」と明言したのである。

ここにいたって橋下市長が語った「河野談話」と対立する「2007年の閣議決定」の存在は、かなり危ういものとなってくる。ここで結論をあわてる必要はない。最終の結論は、当然のことながら、関連情報のすべてをしっかり確かめてから、厳密に下すことにしたい。

い砲弔い董2007年6月5日)

「答弁書」はこう述べている。

a)「強制連行」に対する認識−(直接の言及はない)。

※ただし、現地時間4月27日のブッシュ大統領との「記者会見において、安倍内閣総理大臣は、日本語で、慰安婦の問題について昨日、議会においてもお話をした、自分は、辛酸をなめられた元慰安婦の方々に、人間として、また総理として心から同情するとともに、そうした極めて苦しい状況におかれたことについて申し訳ないという気持ちでいっぱいである、二十世紀は人権侵害の多かった世紀であり、二十一世紀が人権侵害のない素晴らしい世紀になるよう、日本としても貢献したいと考えている、と述べた」とある。

b)「河野談話」に対する認識
「いずれにせよ、御指摘の安倍内閣総理大臣の発言は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話に沿ったものである」「慰安婦問題に関する政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話のとおりである」。

b)で「河野談話」が「政府の基本的立場」だと繰り返しながら、a)の※印部分のように「元慰安婦の方々に」「申し訳ない」と謝罪しているのであるから、それは「河野談話」が認めており、安倍内閣も「答弁書」➂で認めた「強制性」の承認とその上にたった「お詫びと反省」(河野談話)に「沿ったもの」だと理解する他にない。

イ砲弔い董2007年6月5日)

「答弁書」はこう述べている。

a)「強制連行」に対する認識−(直接の言及はない)。

※ただし、「マゲラン事件」についてのオランダ・バタビア臨時軍法会議書類番号23126(この書類はオランダ政府戦争犯罪調査局が作成したもので、バタビア臨時軍法会議に証拠資料として提出され、採用されたものとされる)が、少女たちの強制連行に関する証言を記録していることを問われて、「答弁書」は「連合国戦争犯罪法廷の裁判については、御指摘のようなものも含め、法的な諸問題に関して様々な議論があることは承知しているが、いずれにせよ、我が国は、日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号)第十一条により、同裁判を受諾しており、国と国との関係において、同裁判について異議を述べる立場にはない」とこたえている。

b)「河野談話」に対する認識−「いずれにせよ、オランダ出身の慰安婦を含め、慰安婦問題に関する政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話のとおりである」。

これも「河野談話」を「政府の基本的立場」として認めており、さらに強制連行の証言を証拠書類として採用した「マゲラン事件」についての裁判結果を、日本国は「受諾」していることを繰り返し認めるものとなっている。

Δ砲弔い董2007年6月5日)

「答弁書」はこう述べている。

a)「強制連行」に対する認識−(直接の言及はない)。

※ただし、「マゲラン事件」についてのオランダ・バタビア臨時軍法会議書類番号7868/R(極東国際軍事裁判での書類番号:PD5770/EX1725)(この書類はオランダ政府戦争犯罪調査局が作成したもので、極東国際軍事裁判に証拠書類として提出され、採用されたものとされる)が、民間人抑留所からマゲランへの女性の連行と日本兵による性交の強要を記録していることについての質問に、「極東国際軍事裁判に対しては、御指摘の資料を含め、関係国から様々な資料が証拠として提出されたものと承知しているが、いずれにせよ、オランダ出身の慰安婦を含め、慰安婦問題に関する政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話のとおりである」とこたえている。

b)「河野談話」に対する認識−「御指摘の点を含め、慰安婦問題に関する政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話を継承しているというものである」。

これも「河野談話」を「政府の基本的立場」として認め、「マラゲン事件」の被害者を含む「オランダ出身の慰安婦」に対しても同様の姿勢を確認するものとなっている。

安倍内閣の「答弁書」➂は、連行の「強制性」についての理解を「河野談話」と同じくすることを明言したが、そうであればこれら「慰安婦」に対する「お詫びと謝罪」(河野談話)は、その「強制性」に対する「お詫びと謝罪」を当然含むものとなろう。

Г砲弔い董2007年7月6日)について

「答弁書」はこう述べている。

a)「強制連行」に対する認識−(直接の言及はない)。

b)「河野談話」に対する認識−(直接の言及はない)。

※ただし、2007年6月26日に米下院外交委員会が、「第二次世界大戦中に日本軍に強制的な売春を強いられたとされているいわゆる従軍慰安婦(以下、「従軍慰安婦」という。)の問題に関して、日本政府に対し謝罪を求める決議案」を「可決」したことに関する質問に、「慰安婦問題に関しての政府の立場については、例えば、安倍内閣総理大臣が平成十九年四月の訪米の際明らかにするなど、既に説明してきているところである」とこたえている。

ここで「答弁書」がいう「四月の訪米」は、「答弁書」い埜たように、「いずれにせよ、御指摘の安倍内閣総理大臣の発言は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話に沿ったものである」ことが確認されているものである。したがって、この「答弁書」も「河野談話」に対立する内容を含むものではまったくない。

┐砲弔い董2007年8月15日)

「答弁書」はこう述べている。

a)「強制連行」に対する認識−(直接の言及はない)。

b)「河野談話」に対する認識−「慰安婦問題に関する政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話を継承しているというものである」。

※ただし、「安倍首相は、『米下院外交委員会の決議案は客観的事実に基づいていない』と考えるか。基づいている、いないで答弁されたい。また、そう考える根拠も併せて示されたい」との質問に、「答弁書」は「御指摘の決議の内容につき一つ一つ取り上げて意見を述べることは差し控えたいが、全体的に言えば、特に、慰安婦問題に対する日本政府の取組に対して正しい理解がなされていないと考える」と答えている。

一部に文章の曖昧さが見られるが、それでも、※印の部分は「政府の基本的立場」が「河野談話」の「継承」であることを前提しており、前記「答弁書」きГ蓮峪遊遒遼米」で「河野談話」にそった説明がなされたことを明らかにしていた。

そうであれば、ここでの「日本政府の取組に対して正しい理解がなされていない」ことの内容は、「河野談話」が示した「お詫びと反省の気持ち」が正しく理解されていないことを指摘したものと見るべきだろう。

いずれにせよ、ここでも「河野談話」に対する見解の明示はない。

について(2007年11月9日)

この「答弁書」は安倍内閣退陣後の福田内閣によるものだが、こう述べている。

a)「強制連行」に対する認識−(直接の言及はない)。

b)「河野談話」に対する認識−「慰安婦問題に関する政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話のとおりであり、現内閣においてもそれを継承している」。

※ただし、「安倍前首相による『慰安婦問題に対する日本政府の取組に対して正しい理解がなされていない』とする答弁(四)について、福田首相は同じ認識か。そうであれば具体的にどのような取組に対し、どのように『正しい理解がなされていない』と考えるか」との質問に、「回答書」は「お尋ねについては、先の答弁書(平成十九年八月十五日内閣衆質一六七第六号)二についてでお答えしたとおりであり、御指摘の決議の内容につき一つ一つ取り上げて意見を述べることは差し控えたい」と述べている。

上の「答弁(四)」は、前記「答弁書」┐裏┛部分に引用したものである。この再度の問いに対して、福田「内閣」も「河野談話」を「継承している」ことを前提に、安倍首相と同じ回答を繰り返した。


(5)

以上が、「慰安婦」を案件名に含む「2007年の閣議決定」の「a)強制連行」と「b)河野談話」に関する認識のすべてである。これを了解した上で、再び、橋下市長の8月24日に発言にもどってみたい。

先に(2)で確認したように、橋下市長は「2007年の閣議決定」について、要旨、次のように述べていた。

➀「2007年の閣議」では、強制連行を裏付ける直接の記述・証拠はないということが決定されており、➁それは河野談話を「見直す」か、閣議決定が「間違って」いるか「どちらか」という、二者択一の関係に立つものである、➂その上で、閣議の「決定」は「談話」より上位に立つものであり、「2007年の閣議決定」こそが「慰安婦」問題についての「日本政府の決定」ある。

しかし、見てきたように、2007年の9件の「閣議決定」の中に「政府の基本的立場」が「河野談話」の「継承」にあることを表明しなかったものは、ただの1つもない。逆に、9件の「閣議決定」のすべてで「河野談話」の「継承」を確認したのが、「2007年の閣議決定」であった。

つまり、市長が上記➁のように強調した、「河野談話」の内容に対立し、双方の「どちらか」だけが正しいという関係にたつ「2007年の閣議決定」はどこにもなく、したがって「河野談話」の内容に反する決定が「日本政府の決定」として行われている事実もどこにもない。

日本政府が外務省のサイトに「河野談話」を掲載し、これを最新の2011年8月の文書でも再確認していることは、まったく適切なことであり、ここに市長がいう「2007年の閣議決定」を掲載していないことも、まったく適切なことであった。

「2007年の閣議決定」が、強制連行をめぐる証拠がなかったことを確認しているという点については、重要なところなので、あらためて整理をしておきたい。

第一に、2007年3月16日の「答弁書」➀(答弁第110号)は、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」と述べている。しかし、「河野談話」は、そもそもそうした直接の「記述」に依拠して「慰安婦」連行の強制性を認めたものではなく、これをもってただちに「河野談話」との対立をいうことはできない。

第二に、2007年4月20日の「答弁書」➁(答弁第168号)、ァ陛弁第266号)は、個々の強制連行の認定の上に立って下された極東軍事裁判所やバダビア臨時軍法会議の判決を国として「受諾」し、国としてこれに「異議を述べる立場にない」ことを明らかにした。そうであれば「答弁書」➀が「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」とする「政府が発見した資料」には、これらの裁判資料は含まれていないということになる。

第三に、2007年4月20日の「閣議決定」➂(答弁第169号)は、「慰安婦」の強制連行をめぐる質問に「平成五年八月四日の内閣官房長官談話は、政府において、平成三年十二月から平成五年八月まで関係資料の調査及び関係者からの聞き取りを行い、これらを全体として判断した結果、当該談話の内容となったものであり、強制性に関する政府の基本的立場は、当該談話のとおりである」と明快に述べている。

この「強制性」について「河野談話」は次のように述べている。「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった」と述べている。「閣議決定」は、これを「強制性に関する政府の基本的立場」だと認めているのである。

以上のことから、「2007年の閣議決定」が、「慰安婦」連行の「強制性」について、「河野談話」の内容に反する決定をふくむものないことは明白である。


(6)

最終的な結論を述べておこう。

8月24日の記者会見における橋下市長の発言は、「2007年の閣議決定」が「慰安婦」の強制連行を否定する内容を含むかのように述べ、それを理由に「河野談話」の意義を低め、あるいは否定しようとするものだった。しかし、そこで根拠とされた「2007年の閣議決定」に対する市長の認識は、まるで誤ったものである。

あらためて前掲「抗議文」の末尾の文章を採録しておきたい。

「日本の政治家の責務として、橋下市長には『慰安婦』問題の歴史と関連する戦後政治史の事実、さらには戦時性暴力の克服をめざす現代国際社会の努力を、広く、しっかり学んでいただくことを要望するものです」。

深く、胸に刻んでいただくことを期待したい。

2012年8月下旬の近況報告

はじめに

(1)お盆も終わり、8月下旬を迎えました。
猛暑のため熱中症などの被害が出ていますが、まだまだ猛暑が続きます。

また、すでに台風による被害も出ていますが、台風の襲来はこれからが本番なのかもしれません。

皆様、くれぐれもご自愛、ご注意ください。

(2)昨年(2011年)は、故郷(鹿児島県霧島市)で、小学校卒業40周年の同窓会を9月に開催したので、昨年の今頃はその準備で忙しかったように記憶しています。

中学校時代の同級生から、「55歳の記念の同窓会」を計画中との連絡を受けました。
まだ日程は確定していないようです。
そういえば、2008年、50歳の時にもお盆明けに同窓会を開催しているので、55歳の同窓会だとなると、開催時期は来年(2013年)のお盆の頃なのですかね?
再来年(2014年)3月は中学校卒業40周年になります。

両者を分けて同窓会を開催するのは、呼びかけ人が大変なので、再来年正月あたりに「55歳と卒業40周年の両方を兼ねた同窓会」を開催するのも良いと思いますが、神戸在住の私としては、呼びかけ人がどのような判断をしようとも、それを尊重したいと思います。

(3)さて、以下では、いつものように近況報告をしておきます。


1.原稿等の執筆状況

(1)雑誌『ねっとわーく京都』285号(2012年10月号)の「政治とカネ連載35」の原稿を、脱稿し、校正も終えました。

「大阪維新の会による政務調査費削減案と議会の弱体化」

雑誌は来月(9月)上旬に発行される予定です。

(2)雑誌『ねっとわーく京都』286号(2012年11月号)の原稿締切りは来月(9月)20日頃だろうか!?
原稿「政治とカネ連載36」では、何を書こうか?

(3)大学の紀要「神戸学院法学」(42巻1号)に掲載するために、以下の原稿を4月下旬に脱稿しました。

「内閣官房報償費(機密費)情報公開訴訟 〜大阪地裁判決骨子、原告「陳述書」および「独立した一体的な情報」説批判〜」

初校は先月(7月)終え、校正ゲラは戻しました。

再校はいつになるのでしょうか?

(4)住民訴訟を提起された、あるフリージャーナリストの方から、昨年、控訴審で意見書を執筆して欲しいと依頼され、裁判所に提出しました。
それは、政務調査費で政治資金パーティー券を購入していたのは違法であるという意見書です。
敗訴してしまったのですが、その意見書を大学の紀要に掲載しておこうと思い初め、作業に取り掛かっています。

紀要の締切は10月末なので、それに間に合わせようと思います。

(5)2009年総選挙後に、企業・団体献金の全面禁止を含む政治資金規正法改正の提案を作成し、政府・与党に提出しました。
結果的には、民主党の裏切りで実現していませんが、その提案も、大学の紀要に掲載し、記録に残しておこうと思い始め、作業に取り掛かりました。

紀要の締切10月末に間に合わせたいと思います。

(6)ある研究会の原稿を執筆すると返事しました。

原稿の一応のタイトルは「歪曲された政党政治と議会制民主主義の条件 〜 選挙制度と政治資金制度の問題を中心に」。

一応の締切は来月(9月)30日
字数は2万字程度(200字×100枚)

(7)国会の状況次第では、緊急に原稿執筆の依頼の可能性があるようです。
ですが、私で大丈夫なのでしょうかね?

(8)専門は異なるのですが、以前、職場でご一緒させていただいた先輩の先生お二人の退職記念論文を書くことになるかもしれません。

正式に決まれば、締切は今年12月末あるいは来年1月末になるようです。
論文のテーマは何にするか?
一応、地方議会の選挙制度の問題にしようかと考えていますが、少し迷っています。

(9)ある研究会の部会に参加することになりました。
今後毎月開催されるようです。
そのまとめの原稿執筆があるのでしょうかね!?


3.講演(予定を含む)

(1)小学生と中学生に対し、憲法について話をしてほしいという依頼が再び舞い込みました。

詳細が決まりましたら、後日報告いたします。

(2)山口で講演します。

比例定数削減を考える学習講演会

日時:2012年9月8日(土)13時30分〜15時30分(そのうち90分程度講演、20分程度質疑応答)
会場:山口県労働者福祉文化中央会館(労福協会館)4階・・・(山口市緑町3-29)
演題「国民の声が届く選挙制度とは」

共催:山口県革新懇・自由法曹団山口県本部・新婦人山口県本部・山口県商連・山口県労連・山口県高教組・山口自治労連・山口民医連・山口県憲法会議


(3)3年ほど前に講演依頼のあったところから、再び講演依頼がありました。

日時:2012年9月17日(月・祝日)14時〜16時30分
憲法講演会と脱原発ビデオ上映
◆14:00〜14:50 脱原発ビデオ上映         
ドキュメンタリーWAVE「世界から見た福島原発事故」(NHKBS1 2012.4.29放送の録画ビデオ)
◆15:00〜16:30 上脇博之 憲法講演会 
演題「着々と進む改憲の動き」
会場:高砂市文化会館展示集会室(山陽電車「高砂駅」下車、北へ徒歩5分)
主催:平和憲法を守る高砂市民の会。

(4)地元の西神中央で講演します。

日時:2012年9月21日(金)夕方

詳細が決まりましたら、お知らせいたします。

(5)2012年11月18日(日)午後、
女性団体の依頼で、議員定数削減問題について講演することになりそうです。

詳細が決まりましたら、後日紹介いたします。



4.マスコミでのコメント等

(1)複数のマスコミの記者から取材を受けました。
すでに私のコメントが紹介されたものがあるかもしれませんが、未確認ですし、今後紹介されるものがあると思います。

(2)ある憲法問題で、来月上旬に、あるマスコミの記者から直接会って取材を受けることになりました。


5.呼びかけ

(1)竹下彌平さんについての情報提供をお願いします

なお、有力な情報提供がありました。

(2)5年目の母校への寄贈候補「憲法本リスト」

(3)2012年11・3神戸憲法集会での「九条の会」活動報告のお願い


6.2012年の論文等

(1)「政治とカネ連載28 「陸山会」裁判(5) 事件の背景・動機(小沢事務所と企業の癒着)」『ねっとわーく京都』277号(2012年2月号)55−58頁。

(2)「政治とカネ連載29 「陸山会」裁判(6) 検察の問題点」『ねっとわーく京都』278号(2012年3月号)34−38頁。

(3)「解説  行き着く先は「財界主権」  衆院比例定数削減の問題点」全国保険医新聞2532号(2012年2月5日)

(4)「政治とカネ連載30 買収”効果を発揮した東電の政治資金」『ねっとわーく京都』279号(2012年4月号)49ー53頁。

(5)「比例定数削減「政治家も身を見るべき」どう考える?」女性のひろば398号(2012年4月号)30−35頁。

(6)「野田財界政権の衆院比例定数80削減案について」青年法律家493号(2012年3月25日号)4−6頁。

(7)「政治とカネ連載31 収益率の高いパーティー収入は政治献金だ!」『ねっとわーく京都』280号(2012年5月号)81−83頁。

(8)「比例定数削減問題と“真の政治改革” ― 小選挙区を廃止し比例代表制に!」
治安維持法犠牲者国家賠償請求同盟編『治安維持法と現代』23号(2012年春季号)13−19頁。

(9)「政治とカネ連載32 「内閣官房機密費」情報公開訴訟・大阪地裁判決  “開かずの扉”をこじ開けた「画期的」判決!」『ねっとわーく京都』281号(2012年6月号)41−43頁。

(10)「長谷川正安「政党論」」杉原泰雄・樋口陽一・森英樹編『長谷川正安先生追悼論集 戦後法学と憲法 − 歴史・現状・展望』日本評論社・2012年920−940頁。

(11)「議会制民主主義の理念に逆行する国会議員の定数削減問題」青年法律家協会弁学合同部会第43回定時総会題案書第2部・第3部、127−128頁。

(12)「政治とカネ連載33  小沢一郎「無罪」判決と政治的責任」『ねっとわーく京都』283号(2012年8月号)100−102頁。

(13)「論文演習セミナー」に私が執筆した以下の2つが掲載されました。

「自衛隊のイラク派遣による「武力の行使」と平和的生存権」

「地方議会(本会議・委員会)の公開と住民・ジャーナリストの傍聴の自由」

http://www.tkc.jp/news/20120215005149.html

(14)「維新の会大阪市議団が政務調査費を違法支出」『ねっとわーく京都』284号(2012年9月号)99−101頁。


7.2012年の講演のまとめ

(1)新年早々講演でした。

日時:2012年1月8日(日)11時〜13時(このうち50分)
演題:「憲法をめぐる最近の政治状況  〜 とくに選挙制度問題について」
会場:池田地域福祉センター(!?)
主催:神戸市長田区池田地域9条の会(新年会)

(2)2012年2月17日(金) 午後2時から午後4時まで(そのうち90分間講演。質疑応答あり)

会場  尼崎市中小企業センター 1階 多目的ホール
主催者 兵庫県都市選挙管理委員会連合会主催

「委員長・委員・事務局長研修会」

150名位の参加があったようです。

(3)2012年2月29日(水)18時30分〜
比例定数削減問題学習会
「何を招く?比例定数削減、野田政権の本当のねらいは?」
会場 高教組会館
主催:兵庫労連・自由法曹団兵庫県支部

紹介してくださいました。

(4)2012年3月8日(木)16時〜18時30(そのうち質疑応答含めて60分)
演題:「議員定数を削減していいの?ーー議員定数と選挙制度についての憲法論」
会場:岡山大学法・文・経済学部の10番教室
主催:科学者九条の会・岡山  / 後援:科学者会議岡山支部 
「科学者九条の会・岡山」創立6周年記念講演会

(5)2012年3月11日(日)午後1時〜4時(そのうち、質疑応答含めて90分)
テーマ:政治情勢をどうみるのか? 〜財界政治と比例定数削減問題〜
主催者:大阪建設労働組合

(6)2012年3月25日(日)午後2時〜4時(90分講演、30分質疑応答)

「比例定数削減と財界政治を斬る 〜議会制民主主義に相応しいのは比例代表制〜」

会場:伊丹市立スワンホール(労働福祉会館)3階中ホール
主催:憲法改悪ストップ伊丹共同センター、平和と民主主義を守る伊丹連絡会

(7)憲法リーフ第二弾完成説明学習会で講演。

2012年6月20日(水)18:30〜(30分講演30分質疑応答)
講演テーマ「くらしと憲法」
場所:高教組会館4階
主催:兵庫憲法共同センター(6月度代表者会議)

(8)日時:2012年6月30日(土)午後1時30分〜4時
会場:兵庫県民会館・県民ホール
テーマ:選挙制度を考えよう ― 比例定数80削減をゆるさないために
パネラー 報告・発言:
     上脇博之 神戸学院大学教授
     松山秀樹 弁護士
司会:津川知久 兵庫労連議長(兵庫革新懇代表世話人)
会場整理・資料代:600円
主催:平和・民主・革新の日本をめざす兵庫の会(兵庫革新懇)

このシンポジウムは、
「しんぶん赤旗」2012年7月2日、「兵庫民報」2388号・2012年7月8日
で、紹介されました。


8.書籍(ただし、ブックレット・ハンドブックに限定)の紹介

(1)「しんぶん赤旗」2012年2月5日の「本と話題」で、私が執筆した以下のハンドブック・ブックレットが紹介されました。

共著『国会議員定数削減と私たちの選択』

単著『議員定数を削減していいの?』

(2)「滋賀民報」2102号(2012年2月19日)で、私が執筆した以下のハンドブック・ブックレットが紹介されました。

共著『国会議員定数削減と私たちの選択』

単著『議員定数を削減していいの?』


9.2012年3月以前の著書・論文などの紹介

私の単書・共著などの紹介

私の論文などの紹介

雑誌『ねっとわーく京都』における「政治とカネ」連載のまとめ的紹介(30回連載を記念して)

民主党が衆議院比例定数削減法案審議入りで暴走!

はじめに・・・民主党が暴走!

(1)民主党は衆議院議員の議員定数を削減する法案を6月下旬に、自民党は、7月下旬に提出していた。
法案の内容は、一部同じであるが、異なる。
衆院選挙制度改革:与野党協議物別れ 民主単独で法案提出
毎日新聞 2012年06月18日 21時41分(最終更新 06月18日 21時53分)

 与野党11党は18日、衆院選挙制度改革に関する幹事長・書記局長会談を国会内で開き、民主党の輿石東幹事長が14日に提示した衆院定数45削減案について協議した。与党の国民新党は修正を条件に賛成する方針だが、野党の賛成は得られず、民主党は18日、関連法案を衆院に単独で提出した。議員定数に関わる法案を与党第1党のみで国会提出するのは異例で、ねじれ国会のもと、法案は修正される可能性が高い。
 民主党案は09年マニフェスト(政権公約)に掲げた議員定数80削減を棚上げし、比例代表(現行180)から40削減、小選挙区(同300)から5削減し、計45削減する。比例代表の新たな定数140のうち35で、中小政党に有利とされる小選挙区比例代表連用制を導入する。
 連用制の導入に際しては、少数政党の乱立を避けるため、有効投票総数の1%以上を得ない政党は議席を得られない「阻止条項」を設ける。また、候補者が28人以上いない政党は新規参入できないようにする。
 これに対し、連用制で獲得議席が大幅に削られる自民党は法案を激しく批判。同党は衆院の「1票の格差」是正のため小選挙区定数を「0増5減」する法案を提出する方針だ。
 一方、連用制で勢力を拡大する公明党は「すぐに賛成すべきだ」とする意見と、「連用制導入の見返りに消費増税に賛成したと見られる。自民党との関係もある」と法案賛成に慎重な意見とが分かれている。

 自民党以外の野党も「比例の削減幅が大きすぎる」などと反対しており、公明党の賛成がなければ、法案成立の可能性は低い。輿石氏は18日、国会内で記者団に「(国会の)公の場で議論し、修正できるのかやっていただけばいい」と述べ、法案修正に含みを残した。【大場伸也】

 ◇ことば 小選挙区比例代表連用制
 有権者が小選挙区と比例代表で計2票を投じ、小選挙区で獲得議席の少ない政党に優先的に比例代表の議席を割り振る制度。「小選挙区の当選者プラス1、2、3……」の整数で比例の得票数を割った商の大きな順に議席を配分する。現行の小選挙区比例代表並立制よりも中小政党が議席を獲得しやすくなるため、公明党などが導入を求めている。

 一方、小選挙区で獲得議席が多い民主、自民両党は比例代表の議席が削られるため、難色を示してきた。09年衆院選の結果に基づき試算すると、連用制導入で公明党の議席占有率は4.4%から6.6%に拡大するが、民主、自民はそれぞれ約3%落とし、60.9%、21.4%となる。

毎日新聞 2012年07月27日 20時28分
衆院選:「0増5減」法案を自民が提出

 自民党は27日、「1票の格差」を是正する衆院小選挙区定数の「0増5減」法案を議員立法で衆院に提出した。民主党は小選挙区の0増5減とともに比例定数も40削減し、小選挙区比例代表連用制を一部導入する法案を既に提出している。両案は近く衆院政治倫理・公職選挙法改正特別委員会で審議入りする。
 自民党の0増5減法案は山梨、福井、徳島、高知、佐賀5県の定数をそれぞれ現行の3から2に減らす内容。最高裁が違憲状態とした09年衆院選の最大格差2.30倍が1.79倍に抑えられる。
 自民党は連用制導入などの抜本改革を主張する公明党に配慮して提出を控えていたが、消費増税法案成立後の衆院解散・総選挙を野田政権に求める環境整備として、1票の格差是正を進める必要があると判断した。
 自民党の谷垣禎一総裁は提出に先立ち、公明党の山口那津男代表と東京都内で会談し、法案提出への理解と協力を要請。山口氏は提出は了解したが、「格差是正だけでなく選挙制度の抜本改革や定数削減の3点をしっかり議論して合意を得るべきだ」と伝えた。【念佛明奈】

(2)民主党は、すでに国会に提出していた、衆議院の比例代表選挙の議員定数削減等の法案を、野党の合意を得ないまま、単独で審議入りし、単独で採決しようとしている。
東京新聞 2012年8月21日 朝刊
民主 「格差是正」に強気 あす審議入りの構え

 民主党の城島光力国対委員長は二十日、自民党の岸田文雄国対委員長と国会内で会い、二十二日に衆院政治倫理・公選法改正特別委員会を開き、民主党が提出した「一票の格差」を是正する選挙制度改革法案の提案理由説明を行うと伝えた。岸田氏は外交問題に関する衆参両院での予算委員会開催と選挙制度改革に関する各党協議が先決として拒否した。民主党は自民党が応じなくても、二十二日から審議入りする構えだ。
 選挙制度改革をめぐっては、民主党、自民党がそれぞれ法案を提出している。
 会談で、城島氏は民主、自民両案の審議入りを提案。岸田氏が拒んだため、民主党案を先行審議する考えを示した。
 選挙制度改革に関しては、民主、自民両案とも「一票の格差」を是正するため山梨、福井、徳島、高知、佐賀の五県で小選挙区数を三から二に減らす「〇増五減」を盛り込んだ点では共通している。
 民主党案はさらに、比例代表定数の四十削減を盛り込んだ。
 民主党は民主、自民両案を同時に審議入りさせる意向だった。一方、自民党は、公明党などが民主党案を否定していないことから、審議入りすれば民主党案を強行採決されかねないと警戒。修正協議への道筋をつけるよう求めている。
 民主党は自民党の対応を「政党としての役割を果たしていない」(幹部)と批判。輿石東幹事長は記者会見で「わが党独自で審議させてもらう時が来るかもしれない」と、自民党抜きでも審議を進めて、過半数を握る衆院で民主党案を通過させることも辞さない姿勢を示している。
 自民党は審議入り通告に対して「乱暴だ」と反発しているため、民主党が審議を強行すれば、国会が混乱するのは避けられない。
 政府・民主党は二十日の政府・民主三役会議で、今国会中に衆院の選挙制度改革関連法案を成立させる方針を確認した。
衆議院選挙制度民主党自民党案







テレビ朝日(08/22 00:07)
選挙制度改革、民主案が審議入り 野党は反発

 衆議院の選挙制度改革を巡り、民主党は22日の特別委員会で、民主党が提出した案の審議入りを決めました。自民・公明など野党は反発しています。
 民主党は、小選挙区を5議席減らす一票の格差是正と、比例選挙区を40議席削減して一部を小政党に有利な連用制とする案を提出しています。自民党も一票の格差是正だけを行う対案を提出していますが、審議入りには応じてきませんでした。このため、与党側は、22日の特別委員会で、民主党案の趣旨説明だけ行うことにしています。自民党などは、「強引だ」などと反発して欠席する方針です。また、自民党は、領土問題に関する予算委員会の開催に民主党が応じなければ、今週末にも参議院で野田総理大臣へ問責決議案を提出することを検討しています。

NHK8月23日 13時7分
選挙制度改革 野党欠席で審議実施

 衆議院の選挙制度改革を審議する特別委員会では、23日、すべての野党が民主党の委員会運営に反発して欠席するなかで、民主党が提出した法案の実質的な審議が行われました。
 衆議院の選挙制度改革を審議する衆議院の特別委員会では、22日、民主党が提出した法案について趣旨説明が行われましたが、野党側は民主党が反対を押し切って審議入りさせたことなどに反発して欠席しました。
そして、23日の委員会もすべての野党が欠席するなかで、法案の実質的な審議が行われました。
 委員会の冒頭、質問に立った民主党の後藤祐一氏は「選挙制度の法案は与野党で相談してできるだけ合意形成していく必要があるが、野党の出席が得られなかったことは大変残念だ」と述べ、野党側の対応を批判しました。このあと、野党側の質問時間に入り、赤松委員長は野党側が不在のまま委員会を開会した状態にしていました。
 特別委員会は、午後の理事会で今後の対応を話し合うことにしていて、民主党は野党側に対して引き続き出席を呼びかけることにしていますが、会期末が迫りこれ以上審議を遅らせることはできないとして、野党側が審議に応じない場合でも、近く採決を行い法案を参議院に送る方針です。

8月23日 16時49分
輿石氏“選挙改革法案 衆院採決を”

 民主党の輿石幹事長は記者会見で、衆議院の選挙制度改革を審議する特別委員会で、野党側が欠席したまま、民主党が提出した法案の審議を進めていることについて、「タイムリミットが来たという判断だ」と述べ、野党側が審議に応じなくても、今の国会中に衆議院で採決し、参議院に送る考えを強調しました。
 衆議院の選挙制度改革を審議する衆議院の特別委員会では、民主党が、みずから提出した法案を22日から審議入りさせ、すべての野党が「民主党の国会運営は強引だ」などと反発して欠席するなかで、実質的な審議が進められています。
 これについて、輿石幹事長は記者会見で、「1票の格差の是正や国会議員の定数の削減は、国民との約束だ。また、赤字国債発行法案を必ず通すことも、政権与党の責任だ」と述べました。
 そのうえで、輿石氏は「政権与党としてやり抜かなければならない。タイムリミットが来たという判断だ」と述べ、衆議院の選挙制度を改革するための法案などは、野党側が審議に応じなくても、今の国会中に衆議院で採決し、参議院に送る考えを強調しました

(3)選挙制度は、主権者国民の代表機関である国会を形成するものであるし、各政党の国会内勢力を左右するものであるから、一部の政党の都合で決めるべきものではない。
ですから、野党が合意しないのに、与党だけで審議入りするのは、党利党略の暴走と言わざるを得ない。

(4)与党である民主党の案が選挙制度として中立・公正なものであり、憲法の要請に基づくものであれば、野党の反発の方が問題であるということになるが、そうではなく、民主党の案は中立・公正なものでなく、憲法の要請に逆行するものであり、野党の反発はその理由は各党間で異なるものの、当然のことである。

衆参の選挙制度の問題は、これまで何度も指摘したが、以下、その理由を述べておく。


1.小選挙区選挙と議員定数削減は主権者国民にとって有害だった!

(1)1994年の「政治改革」によって、衆議院の選挙制度は、従来の中選挙区制から小選挙区比例代表並立制という小選挙区本位の選挙制度になった。

中選挙区時代には、議員定数が512あったときもあるが、94年の「政治改革」で500に削減され、その後480に削減された。

並立制における議員定数の内訳は、当初、小選挙区300、比例代表200で1996年総選挙が施行されたが、2000年の総選挙からは小選挙区300、比例代表180であった。
なお、比例代表は11のブロックに分かれている。

つまり、小選挙区中心の選挙制度である。
小選挙区制は、ひとつの選挙区で一人しか当選しないから小政党の当選を事実上不可能にし、あまりにも大政党に有利すぎる選挙制度である。

(2)民主党案は、小選挙区の議員定数につき自民党案を採用し「0増5減」し295に減らし、比例代表の議員定数を40削減し、140にするというものである。
なお、比例代表の140は、従来のドント式で105、「連用制」的な方法で35を配分するというもんもである。

これは、次回総選挙の議員定数であり、次々回の総選挙では400にするというのである。

民主党案附則第4条
衆議院議員の選挙制度については、次々回の総選挙……からの実施が可能になるよう、参議院議員の選挙制度の改革の状況を踏まえつつ、衆議院議員の定数を四百と人とすることとして、有権者の政権の選択と民意の反映との両立を図る選挙制度の在り方について、次回の総選挙後、選挙制度審議会において一年以内に、検討を行い結論を得るものとする。

(3)1993年総選挙のときには、中選挙区制だった。
それによって政権交代がやっと実現したのに、前述した1994年「政治改革」によって小選挙区本位の選挙制度になり、大政党に有利すぎるため政権交代を起こりづらいものにしてしまった。

(4)それどころか、2005年総選挙では、自公与党が圧勝したため、事実上参議院の存在意義(二院制の存在意義)を失わせる事態になった。
それが、国民の圧倒多数によってそうなったのであれば、あまり問題はなかったが、実際には半数程度の得票率で3分の2以上の議席を獲得した結果であり、これは、明らかに小選挙区選挙の弊害によるものだった。

(5)2009年総選挙で政権交代が再び実現したものの、民主党政治は、一般庶民の期待を全く裏切るものであった。

自公政権により財界が求める「聖域なき構造改革」という新自由主義政策が強行されたため、労働者の使い捨て、ワーキングプア、自殺者の増大、構造的な格差社会を生み出した。
それを変えて欲しいということで政権交代が実現したにもかかわらず、相変わらず財界政治が強行されており、ワーキングプア、構造的な格差社会は解消されていない。

(6)そのうえ、消費税増税などいくつかの重要政策の点で「事実上の大連立」状態が生まれている。
対決するはずの大政党である自民党と民主党が、公明党も加わって財界政治のために密室談合し、「事実上の大連立」し、国民から遊離した政治が強行されているのである。

これでは、あえて小選挙区本位の選挙制度を採用している意味はない。

(7)議員定数が減らされてきたため、財界政治・官僚依存政治を十分チェックできなくなっている。
これ以上減らせば、「政官財」の癒着の政治(財界政治、それを実現する官僚依存政治)は、もっと酷くなる。

「少数精鋭で」というのは、非現実的な幻想である。

(8)そのうえ、「政治改革」により政治腐敗もなくなるとか、議員定数不均衡問題も解消するとか言われたが、いずれも実現していない。

(9)小選挙区選挙と議員定数削減は、主権者国民にとっては有害であったと言わざるを得ない。

(10)にもかかわらず、民主党が原稿の並立制を維持し、比例代表の議員定数を削減するというのは、以上の反省をしていないからであろう。

財界に言われるまま原発再稼働、消費税増税、TPP参加を目指しているから、次の総選挙で少しでも大敗北を和らげたいとの魂胆で、財界の言われるままに比例定数を削減しようというのであろう。

比例定数が削減されれば、民意がさらに切り捨てられ、財界政治・官僚依存政治がより強固になるわけであるから、主権者国民は”踏んだり蹴ったり”状態になる。

(11)衆議院の選挙制度について政党の多くが、足並みが完全に揃っているわけではないものの抜本改正を求めている。
それは当然のことである。


2.日本の国会議員は少ない!

(1)しばしばアメリカを例に日本の国会議員の数は多いといわれるが、そもそも大統領制で連邦制のアメリカと比較すること自体が間違いである。

(2)単純な国際比較をすることに賛成するわけではないが、あえて各国の人口10万人あたりの国会議員数の比較をすれば日本は0・57名で国際的に少ないことがわかっている。

例えばイギリスにおける人口の数は日本のほぼ半分の約6076万人だが、両院の議員数は日本のそれの倍近くの1388名。日本の衆参の国会議員数(現在、衆議院480、参議院242、計722)をイギリス並みにすれば2902名になる計算になる(つまり2180増しなければならない!)。

(3)日本における戦後直後と比較しても国会議員の数は少ない。

1946年衆議院選の「有権者数」は約3688万人で、衆議院の議員定数は466だった。
2010年参議院選の有権者数は約1億403万人で2・82倍になっている。
ということは、衆議院の議員定数は1314あってもよいはずである。

また、1947年の「人口」は約7810万人で、2008年のそれは1億2769万人で、1・63倍になっている。
ということは、衆議院の議員定数は760であってもよいはずなのだ。

「有権者」であれ「人口」であれ、戦後直後とその数を比較しても、現在の衆議院の国会議員は少ないのである(参議院も同じ)。

(4)「無駄を削る(切る)」という理由で、民主党などは、議員定数削減を主張するが、これは、大問題である。

国会議員は主権者国民の代表者である。
その国会議員が無駄だというのは、国民主権、国民代表、議会制民主主義を実質的には否定しているに等しい。

国会議員が削減されるということは、そういうことであるが、民主党などは、そのことを全く理解していないことになる。

(5)「無駄を削る(切る)」というのであれば、年間約320億円の政党助成金を削減すべきである。

民主党は、企業・団体献金を全面禁止するという政権公約を破り、政党助成との二重取りを続けている。

まさに財界政党らは、自分たちを「聖域化」し、一般庶民にのみ「痛み」を押し付けているのである。

国会議員の定数が削減されても、政党助成金の年間総額は人口数が減らない限り削減されないから、議員数が減った分政党としては実質増額されたに等しいのである。

(6)選挙制度については、国会を活性化させるために改革すべきである。

議員定数を削減して国会を弱体化させてしまえば、超高額報酬を受けている財界人が喜ぶだけである。l


3.衆議院の小選挙区、参議院の選挙区選挙を廃止し、完全比例代表制にすべきである!

(1)もちろん、議員定数を増やし、アメリカや財界のいいなりになっている政党の議員が増えたとしても、財界政治は続く可能性が高い。

(2)アメリカや財界のいいなりになっている政党は、非民主的な選挙制度によって過剰代表されているのだから、まず、中立公正ではない非民主的な選挙制度を廃止すべきである。

具体的には、衆議院の小選挙区選挙参議院の選挙区選挙を廃止すべきである。

(3)民主党が比例代表の一部に「連用制」を導入し、小選挙区選挙による大政党の過剰代表と小政党の過少代表を若干緩和しようとしているのは、小選挙区選挙の弊害を自覚しているからだろう。
真に弊害を除くためには小選挙区選挙を廃止するのが一番なのである。

(4)小選挙区選挙は政権選択選挙にふさわしい選挙と言われてきた。
しかし、そもそも小選挙区選挙は民意の逆転現象を生み出す可能性が高いから、政権選択選挙としても実はふさわしくない。

イギリスでは、1950年代と1970年代に二大政党の得票率と議席占有率との逆転現象が起きている。

小選挙区選挙に近い参議院の選挙制度によっても、2010年の通常選挙では、自民党と民主党の間で逆転現象が起きている。

(5)中選挙区制に戻すべきとの主張がある。
傾聴に値しないわけではないが、おそらく今中選挙区制に戻せば、議員定数を削減した3人区(一部例がああるかもしれないが)の中選挙区制になり、比例代表制がなくなる分、今よりも酷い財界政治を可能にするだろう。

(6)小選挙区と選挙区選挙を廃止し、衆議院も参議院も完全比例代表制にすべきである。

民意が正確・公正に国会に反映するからである。

本来民主主義とは直接民主主義であるが、これを採用することは事実上不可能であるから、やむを得ず代議制・議会制を採用しているのであるから、代議制・議会制は、限りなく直接民主主義に近いものになるようにしなければならない。
そのためには、普通選挙を採用しなければならないが、それだけでは不十分であるから、国民の縮図を国会に形成するようにしなければならない。

そうして初めて、議会主義は民主主義としての性格を有し、議会制民主主義になるのである。

それに一番ふさわしいのは、民意を正確に半ネイする比例代表制である。

(7)もちろん、比例代表制を採用しても、政党以外の政治団体や個人も比例代表選挙に立候補できるようにすべきである。
すべての国民に被選挙権を保障しなければならないからだ(今の公選法は保証していない点で違憲だ)。

(8)完全な比例代表制にすれば、議員定数不均衡問題は基本的に将来生じなくなる。
もしブロック制を採用するのであれば、投票後に各ブロックの「定数」が決まるシステムを採用すべきである。

そうすれば、投票前も投票後も平等は確保できる。

(9)もちろん、比例代表制になっても、財界政治を推進する政党に一般庶民が投票し続ければ、一般庶民の暮らしは良くならないことだけは、留意して欲しい。


おわりに

(1)民主党は暴走をやめるべきである。

(2)そして、他党とともに選挙制度の抜本改正に向けて努力すべきである。

※なお、詳細については、以下の文献を参照いただきたい。

上脇博之『ゼロからわかる政治とカネ』日本機関紙出版センター

上脇博之『ゼロからわかる政治とカネ』日本機関紙出版センター

坂本修・小沢隆一・上脇博之『国会議員定数削減と私たちの選択』新日本出版社

フェイスブックの「お友達」の公開のあり方を少し変更しました

(1)フェイスブックを始めたのが、今年(2012年)7月29日23時59分
実質的には7月30日から始めました。
今日で、ファイスブック開設から25日になります。

(2)それから今まで、フェイスブックについては、以下の投稿をし、特に「お友達」承認の方針については、よほどのことがない限りリクエストを承認し、私も可能な限りリクエストする、と申し上げてきました。

Facebookの「お友達」承認の方針について

ブログ、ツイッター、フェイスブックについて・・・フェイスブック「お友達」リクエスト歓迎!

残暑お見舞い・・・・盆帰りと故郷の経済状況とフェイスブック

(3)それが功を奏したのかどうか、わかりませんが、フェイスブックにおける私の「お友達」は、110名に達しました。

リクエストしてくださった皆様、私のリクエストを承認してくださた皆様、ありがとうございます。

(4)フェイスブックにおける私の「お友達」の公開のあり方については、これまで、アクセスしていただいた方に全て公開してまいりましたが、これを変更し、アクセスしていただいた方と共通の「お友達」のみ公開することにしました。

その理由は、「お友達」の中には、すべて公開されている方もあるのですが、共通の「お友達」だけに公開されている方も数名おられます。

実名で開設されているので、「お友達」の公開を「お友達」に限定されているのも、理解できます。それは「お友達」への心配り、配慮でしょう。

そこで、私も、そのような方に習って(倣って)公開のあり方を少し限定してみました。

(5)公開のあり方を少し限定する理由は以上の通りなのですが、これで、私に対し「お友達」リクエストされる方が増えるという予想外の副産物があることを、少しだけですが、期待してみようかと思っています。

(7)皆様、宜しくお願いいたします。

橋下大阪市長は「維新政治塾」参加の公務員を特権化する!?

はじめに

(1)大阪市の橋下徹市長が同市職員の政治活動を「禁止」するなどの条例を制定する動き、および同条例制定については、これまで以下の投稿で批判してきた。

橋下・大阪市の職員の政治活動への罰則化条例案は二重に違憲!

橋下・大阪市長が市職員の政治活動を懲戒免職しても違憲!

政治活動「原則懲戒免職」撤回しても大阪市の条例案の問題は解消しない!

維新の会・公明党・自民党は公務員の政治活動の自由を侵害する点では「同じ穴のムジナ」だ!

大阪市職員政治活動制限条例はやはり実質的には政治活動「全面(ほぼ全面)禁止」条例だ!(政治活動には選挙権行使等は含まれない)

(2)大阪維新の会の「維新政治塾」に国家公務員や他の地方自治体の地方公務員が参加していることが分かり、マスコミが、これを大阪市職員政治活動「禁止」条例の立場に矛盾すると報じた。
スポニチ[ 2012年8月17日 17:57 ]
維新政治塾に公務員20人参加 「ダブルスタンダード」批判も

 橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会の「維新政治塾」に、約20人の国家公務員や地方公務員が参加していることが17日、関係者への取材で分かった。大阪市では7月、市職員が政治的行為をした場合、原則懲戒処分とする条例案を橋下市長が提案し、成立したばかり。市職員の政治的行為の締め付けを強める一方、身内には甘い“ダブルスタンダード”との批判の声が出ており、市議会でも問題となりそうだ。
 関係者によると、塾生には原子力安全・保安院や財務省、国土交通省の職員のほか、県や市の職員が名を連ねている。大阪市職員は含まれていないという。
 6月に始まった塾には約880人が参加。一部塾生が9月半ばには街頭演説する予定。次期衆院選では、塾生を中心に候補を選ぶ。

産経新聞2012.8.18 08:43
どうやの? 維新塾に公務員 大阪市職員への規制と矛盾?

 橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会の「維新政治塾」に、国家公務員や地方公務員が参加していることが物議を醸している。次期衆院選の候補者養成機関となる維新政治塾に公務員を受け入れる一方、大阪市は今月、市職員の政治活動規制条例を施行。公務員の政治活動を厳しく律しており、橋下維新の姿勢に「ダブルスタンダード」との批判も上がっている。
 維新政治塾には約880人が参加。講義のほか、候補者選抜を目的とした討論や、衆院選公約のベースとなる「維新八策」の策定に向けた議論も行われ、9月には塾生が大阪市内で街頭演説をする予定だ。
 橋下氏は昨秋の大阪市長選で市職員が平松邦夫前市長の支援態勢を組織ぐるみで敷いていたと問題視。7月市議会で、職員の政治活動規制条例案が維新、公明、自民各市議団の賛成多数で可決成立した。条例では、多数の人に政治的意見を述べることなど、罰則規定のある国家公務員並みに10項目の政治活動を禁止。違反者には「懲戒処分として戒告、減給、停職、免職の処分をすることができる」と規定している。
 次期衆院選に向け、維新は政党要件を満たすために現職国会議員の取り込みを目指す一方、塾生から候補者を選抜する方針だが、塾生に公務員が含まれていることに整合性を問う声もある。橋下氏に批判的な評論家、野田正彰さんは「明らかなダブルスタンダードで問題。公務員たたきに躍起になった結果、矛盾が生じたのだろう」としている。

(3)大阪維新の会の代表の橋下市長はこれに反論したようだ。
2012/08/19 15:42 【共同通信】
維新、公務員の政治塾参加OK 橋下氏がツイッターで

 大阪維新の会を率いる橋下徹大阪市長は19日までに、維新が主宰する政治塾に国家公務員や地方公務員が参加していることについて「非公開の会合で公務員の参加も許される」と短文投稿サイト「ツイッター」で持論を展開。
 大阪市では7月、橋下市長の強い意向を受け、市職員が政治的行為をした場合に原則懲戒処分とする条例が成立。塾での公務員受け入れをダブルスタンダードと批判する報道に対し、橋下市長は「もう少し勉強してもらいたい」と反発した。
 関係者によると、政治塾に参加している公務員は約20人で、原子力安全・保安院や財務省、国土交通省の職員のほか、県や市の職員らが名を連ねている。

中国新聞'12/8/19
公務員の政治塾参加OK 維新・橋下氏が反発

 大阪維新の会を率いる橋下徹大阪市長は19日までに、維新が主宰する政治塾に国家公務員や地方公務員が参加していることについて「非公開の会合で公務員の参加も許される」と短文投稿サイト「ツイッター」で持論を展開した。
 大阪市では7月、橋下市長の強い意向を受け、市職員が政治的行為をした場合に原則懲戒処分とする条例が成立。塾での公務員受け入れをダブルスタンダードと批判する報道に対し、橋下市長は「もう少し勉強してもらいたい」と反発した。
 関係者によると、政治塾に参加している公務員は約20人で、原子力安全・保安院や財務省、国土交通省の職員のほか、県や市の職員らが名を連ねている。
 大阪市職員は含まれていないが、橋下市長は「(市条例でも)勤務する役所の所管エリア外での政治活動は規制されない。政党機関紙を個人的に購入することや、政党の非公開の会合で政治的発言をすることは許される」と指摘している。

(4)以上の経過は、大阪市職員の政治活動を禁止する条例が違憲・違法であるとの問題とは別に、同条例がどのような政治活動を許容しているのか、その解釈が問題になりだしていることを意味している。

と同時に、大阪市の同条例が今後どのように運用されるのかという問題にもなってゆくだろう。

そこで、橋下市長の弁明を少し検討してみよう。


1.違憲の条例をさらに拡大解釈していないか?、橋下市長の弁明は妥当か?

(1)橋下市長は「(市条例でも)勤務する役所の所管エリア外での政治活動は規制されない。政党機関紙を個人的に購入することや、政党の非公開の会合で政治的発言をすることは許される」と指摘しているという。

(2)「維新政治塾」には、大阪市職員はいないといういことなので、国家・地方公務員の塾生の場合には、国家・地方公務員各法違反になる場合のほかは、条例違反ではなく、条例の立場との整合性が問題になる。

(3)さて、「勤務する役所の所管エリア外での政治活動」については、確かに、地方公務員の場合には、「一応」弁明としては成り立っている。

地方公務員法第36条第2項
2  職員は、特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、次に掲げる政治的行為をしてはならない。ただし、当該職員の属する地方公共団体の区域(当該職員が都道府県の支庁若しくは地方事務所又は地方自治法第二百五十二条の十九第一項 の指定都市の区に勤務する者であるときは、当該支庁若しくは地方事務所又は区の所管区域)外において、第一号から第三号まで及び第五号に掲げる政治的行為をすることができる
一  公の選挙又は投票において投票をするように、又はしないように勧誘運動をすること
二  署名運動を企画し、又は主宰する等これに積極的に関与すること
三  寄附金その他の金品の募集に関与すること
(以下、略)

しかし、留意しなければならないのは、条例第3条があることだ。
(本市の区域外から行う政治的行為)
第3条 職員が法第36条第2項第1号から第3号まで及び前条各号に掲げる政治的行為を、電話をかけ、又はファクシミリ装置を用いて送信する方法その他の方法により、本市の区域(当該職員が区に勤務する者であるときは、当該区の所管区域。以下同じ。)外から本市の区域内にあてて行った場合は、当該政治的行為は本市の区域内において行われたものとみなす

この規定によると、所管区域外であっても「電話をかけ、又はファクシミリ装置を用いて送信する方法その他の方法により」所管区域内にあてて行われると、所管区域内において行われたものとみなされてしまうのである。

つまり、大阪市以外の地方自治体の地方公務員が大阪市から自己の所管区域内にあてて、ツイッターなど何らかの手段により、条例で禁止される政治活動を所管区域内に発信すれば、条例の立場に矛盾することになる。

しかし、地方公務員の塾生は、そのような行為をしていないことを確認しているのだろうか?

(4)また、「勤務する役所の所管エリア外での政治活動は規制されない」という弁明は、国家公務員の場合には原則として通用しない。

人事院規則は、以下のように適用範囲を定めている
(適用の範囲)
1  法及び規則中政治的行為の禁止又は制限に関する規定は、臨時的任用として勤務する者、条件付任用期間の者、休暇、休職又は停職中の者及びその他理由のいかんを問わず一時的に勤務しない者をも含むすべての一般職に属する職員に適用する。ただし、顧問、参与、委員その他人事院の指定するこれらと同様な諮問的な非常勤の職員(法第八十一条の五第一項に規定する短時間勤務の官職を占める職員を除く。)が他の法令に規定する禁止又は制限に触れることなしにする行為には適用しない。
2  法又は規則によつて禁止又は制限される職員の政治的行為は、すべて、職員が、公然又は内密に、職員以外の者と共同して行う場合においても、禁止又は制限される。
3  法又は規則によつて職員が自ら行うことを禁止又は制限される政治的行為は、すべて、職員が自ら選んだ又は自己の管理に属する代理人、使用人その他の者を通じて間接に行う場合においても、禁止又は制限される。
4  法又は規則によつて禁止又は制限される職員の政治的行為は、第六項第十六号に定めるものを除いては、職員が勤務時間外において行う場合においても、適用される。

もちろん、国家公務員の塾生がどのような政治的活動をするのかが分からなければ、国家公務員法に違反する、あるいは、条例の立場と矛盾する、とは断じ得ないないのだが、ここでは、橋下知事の弁明は、国家公務員の場合には原則として通用しないことだけは確認しておきたい。

橋下市長は、国家公務員の場合についての弁明をしているのだろうか?

(5)次に、「政党機関紙を個人的に購入すること」についてであるが、これも、確かに法律によっても条例によっても禁止されてはいない。

条例は、「政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し編集し配布し又はこれらの行為を支援すること」を禁止している(ただし地方公務員法は禁止していない)し、人事院規則も「政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助すること」を禁止している(ただし国家公務員法それ自体は禁止していない)が、政党機関紙を購入すること自体は禁止してはいない。

(6)ただし、この程度のことは、本来あえて政治活動に含めるほどのことではない、というのが、私見である。
政党機関紙を購入することは、当該政党を支持して購入する者もあれば、当該政党の主張・見解を知るために購入する者もある。
後者は、政治的ではあるが、党派的ではない。
法律、条例が想定する政治活動は、政党の場合には党派的なものである。
したがって、購入しているだけで、そのどちらであるのかは即断できないのだから、政治的ではあっても、一応、経済活動である、と考えるべきであろう。

(7)次に、「政党の非公開の会合で政治的発言をすること」についてであるが、これも、確かに法律等や条例は禁止してはいない。

人事院規則は「集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること」を禁止しているし、条例も「集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること」を禁止している。
だが、「政党の非公開の会合で政治的発言をすること」までは禁止してはいない。

これは、政治活動の自由として保障されるが、一応、結社の自由として理解しておいた方がいいだろう。

(8)もっとも、この点は、「維新政治塾」の場合は、問題になる。
以下、それについて検討する。


2.国家公務員等の「維新政治塾」への参加は、条例の立場と矛盾しないか?

(1)最後の問題は、国家公務員や他の地方公務員が「維新政治塾」に参加することを、条例の立場との関係で、どう評価するのか、である。

これにつき、橋下市長は、一応「(市条例でも)・・・政党の非公開の会合で政治的発言をすることは許される」と主張することで、反論した気になっているようだ。

(2)そこで、まず疑問に思うのは、「維新政治塾」はそもそも非公開なのか、ということである。

例えば、石原慎太郎・東京都知事が今年6月23日、「維新政治塾」で講演したとき、マスコミは報じている。
朝日新聞2012年6月23日21時53分.
石原氏、維新政治塾で講演 「一緒に頑張ろう」

 石原慎太郎・東京都知事が23日、橋下徹・大阪市長の維新政治塾で講演した。自らも政治塾を立ち上げ、橋下氏との連携を模索する石原氏は、新党設立も意欲的。だが、両氏の政策に違いがあり、第三極結集につながるか不透明だ。
 大阪市の中央公会堂。「闘いに勝ちましょう。皆さん、戦士になってください」。橋下氏が塾生約900人に檄(げき)を飛ばした。その後、非公開で講演した石原氏は「東京で政治塾を立ち上げようと思っている。一緒に頑張ろう」と呼びかけたという。
(略)

確か私の記憶に間違いがなければ、テレビも報道していたのではなかろうか。
したがって、「維新政治塾」は非公開ではないはずである。

(3)もっとも、これに対しては、それは「講演」であったから塾生が発言する場でないとか、マスコミの取材だけを許していたのであって、一般の方々にまで公開していない、との反論がありうるだろう。

そうであれば、
「講演」以外は非公開にするのか?
「講演」以外でもマスコミだけ公開するのか?
という疑問が生じる。

もし、「国家公務員や地方公務員の塾生が取材しているマスコミを利用して」政治的発言を外部に発信すれば、違法との解釈もありうるのではなかろうか!

(4)これについても、マスコミが編集の際に配慮して国家公務員等の政治的発言を報道しなければいいとの反論もありうるだろう。

(5)しかし、先に紹介したマスコミ報道によると、「9月には塾生が大阪市内で街頭演説をする予定だ」とある。

国家公務員や地方公務員の塾生がこの街頭演説をし、橋下市長ら大阪維新の会が、それを許してしまえば、国家公務員については違法行為を許したことになり、また、地方公務員の場合には、条例との立場とは矛盾する行為を許したことになる。

維新政治塾が塾生に街頭演説をさせるのは、それが塾生には必要と判断したからだろう。
そうであれば、塾生が国家公務員であれ地方公務員であれ、全員に街頭演説をさせることになるはずである。

そうではなく、公務員の塾生は街頭演説をさせない、とすでに決まっているのだろうか?
橋下市長は、そのような弁明をしているのだろうか?

(6)独裁政治を肯定する橋下市長は、まさに独裁者らしく、違憲の法律・条例を「合憲」と言いくるめた上で、公務員の塾生を他の塾生と同じように扱い、大阪市職員とは異なる扱いをする、すなわち「特権化」するのだろうか!?
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