自民党、公明党の与党だけではなく、民主党からも議員定数削減が言われだした。
この問題については、すでに批判を行っているが、再度批判しておきたい。
加えて、民主党への注文もしておきたい。

1.報道
読売新聞(2009年2月6日21時18分)
民主、首相に対抗?衆院比例選の定数削減案…80減

 民主党は6日、政治改革推進本部(本部長・岡田克也副代表)の役員会を開き、次期衆院選の政権公約(マニフェスト)に、衆院比例選の定数を80減らし、100議席とすることを盛り込む方針を決めた。
 07年参院選の公約を踏襲したもので、参院についても党内に協議会を設け、定数削減に向けた議論を開始する。
 また、政治家の世襲を制限するため、資金管理団体などの政治団体を子や配偶者に引き継ぐことを禁止する法案の提出を検討する。子や配偶者を同一選挙区から立候補できないようにする措置についても、党の内規や政権公約に明記することを目指し、アンケートなどを通じて党内論議を急ぐ方針だ。
 国会議員の定数削減は、麻生首相が意欲を示しており、民主党として方針を明確にして対抗する狙いがある。

2.「しんぶん赤旗」による批判
「しんぶん赤旗」2009年2月1日(日)

「身を削る」という自公民
税金山分け 政党助成金 どうする
おかしいぞ 議員定数削減

 「国会議員自ら身を削るべきだ」として、国会議員の定数を削減しようという流れが自民、公明、民主の各党で強まっています。消費税増税のための地ならしです。しかし、本当に「身を削る」というなら、真っ先に削るべきものがあるのではないでしょうか。
 議員定数や選挙制度の見直しに火を付けたのは、一月十八日の自民党大会での首相あいさつ。“総選挙での対決材料づくり”と指摘されています。公明党は二十四日の全国県代表協議会で同調し、与野党協議会の設置を提案。民主党も鳩山由紀夫幹事長が二十九日の代表質問で「議員定数の削減はもう既に民主党が具体的に提案している」と競い合う姿勢をみせました。
 しかし、国会議員は国民と国会を結ぶパイプです。「それが細ければ細いほどいいというのは、国民の声が国会に届かなければいいという話になる」(日本共産党の志位和夫委員長)ものです。消費税増税の地ならしのために、民意を削ることは許されません。
 一九九〇年代からの相次ぐ選挙制度改悪で、国会議員定数は減少の一途。人口あたりの議員数も決して多くはありません。(グラフ参照)
 一方、自民、民主、公明が口を閉ざしているのが政党助成金です。今年も自民、民主、公明など七党が受け取りを申請し、三百二十億円の税金を山分けしようとしています。日本共産党は、政党助成金は憲法の思想・信条の自由に反するとして受け取っていません。
 「なぜ国はこれだけの大金を出してまで政党を支援しなければならないのか」(中国新聞一月二十六日付「広場」)、「いっそ交付金制度は廃止し、雇用対策など緊急に対応しなければならない課題に充当するほうがよほど効果的である」(「朝日」同二十四日付「声」)―。新聞投書欄には、景気悪化のもと、国民が生活苦に襲われているにもかかわらず、巨額の税金を政党が山分けしていることに疑問の声が相次いでいます。
 政党助成金 1994年の「政治改革」関連法で小選挙区制とセットで導入され、実施は95年から。赤ちゃんからお年寄りまで国民一人あたり250円の税金でまかなわれ、支持政党にかかわりなく国民の税金が各党に配分されます。配分の対象は、国会議員が5人以上か直近の国政選挙での得票率が2%以上の党です。2008年までの14年間の交付総額は4399億円に達します。

政党助成












議員数国際比較













3.「しんぶん赤旗」日曜版2009年2月8日での私のコメント

「しんぶん赤旗」日曜版も「■“議員定数削減”は民意の締め出し  身を削るなら政党助成金こそ」の記事で、上記紹介「しんぶん赤旗」日刊紙と同様に批判をしている。
私のコメントが掲載されたので、以下紹介しておく。
神戸学院大学教授 上脇博之教授(憲法学)さん
議員減らすと「官僚政治」ひどくなる
 自民党も民主党も「官僚政治」を表向き批判しています。であれば、歳費を減らしてでも国会議員の数を増やすなどして、そのチェック体制を強化しなければいけません。なのに逆に議員数を減らそうというのは、政官癒着を本気で変える気がないからです。議員を減らせば「官僚政治」はもっとひどくなります。
 定数削減の対象になるのは、民意を正確に反映する比例代表でしょう。小選挙区は区割りの見直しが大変だし、自分らのために単純小選挙区制に近づけたいのでしょう。そうすると、自民も民主もあまり困らず、少数政党が一番割を食います。官僚政治や財界政治を批判している共産党などを支持する民意が真っ先に切り捨てられることになります。その結果、政・財・官の癒着の構造が温存され、財界が求めている消費税率引き上げや法人税率引き下げ、自衛隊の海外派兵の恒久化がやりやすくなります。
 中選挙区時代から考えると、議員定数の削減がおこなわれるたびに、消費税増税や福祉の切捨て、自衛隊の海外派兵などが強行されてきました。議員削減が国民への痛みのおしつけに直結しているのです。
 本当に自民と民主が痛みを受けるというのであれば、小選挙区制と政党助成金を廃止すべきです。定数削減と小選挙区で民意を切捨て、自分たちはぬくぬくと政党助成金をもらい、国民に痛みを強いる財界政治をこのまま続けるというのでは、主権者国民はふんだりけったりです。

4.補足説明

(1)上記報道で紹介されているように、国際的にも日本の衆議院議員の定数は多くない。むしろ少ない。

(2)国民主権のもとで議員定数を削減するのは、主権者の意思を切り捨てることになる。

(3)特に、小選挙区の議員定数ではなく、比例代表の議員定数を削減すると言うことは、大政党には大きな「痛み」はない。
むしろ小政党に大きな「痛み」が生じる。
つまり、自民・民主両政党による比例代表議員定数削減論は党利党略なのである。

(4)小政党の議員が減ることは、官僚政治の批判も財界政治の批判も弱くなってしまうだろう。
言い換えれば、自民党も民主党も官僚政治や財界政治を本気で批判する気がないのだろう。

(5)税金の無駄遣いを削減するのなら、違憲の政党助成を廃止すべきである。
年間約320億円になる。

(6)議員定数を削減しても、公金の削減は、こんなに多くはない。

上記紹介「しんぶん赤旗」日曜版では、民主党の主張している(比例代表の)定数80を削減しても、約17.6億円しか削減できないことが紹介されている。

議員定数が削減されると歳費以外も削減されるので、それ以外を含めて議員定数が80削減された場合の公金の削減額を試算してみたので紹介する。
議員定数80を削減した場合の公金削減分の試算
項目
一人分
80人分
議員歳費
2193万1608円
約17億5453万円
文書通信交通滞在費
1200万0000円
9億6000万円
立法事務費
780万0000円
6億2400万円
公設秘書の人件費(3人分)
約2600万円
約20億8000万円
合計
約6773万円
約54億1853万円
ただし、立法事務費は上記の金額に議員数を乗じて会派に交付される。
また、すでに紹介したように上記以外の特権も削減されるので、実際にはもう少し公金は削減されることになるだろう。
(7)次の総選挙で自公両党は大敗し、民主党が大きく躍進する可能性が高くなっているが、それは、社民党、国民新党、新党大地、新党日本が選挙協力し、共産党が候補者の擁立を抑制するからである。
民主党が政権交代を本気で目指すのであれば、今の野党が共闘できるように、以下のことを明言すべきである。

・次の総選挙後、自民党との「大連立」を絶対に行わないこと。
・「事実上の大連立」になってしまう自衛隊海外派兵恒久化法案成立に賛成しないこと。
・憲法改悪のための議論の場となる「憲法審査会」の設置に賛成しないこと。
・新自由主義政策によるこれまでの法律改悪を元に戻すことに賛成すること。さらに、福祉国家政策を推進すること。
・消費税引き上げ、法人税引き下げに賛成しないこと。
・比例代表の定数削減をしないこと。さらに、小選挙区制を廃止すること。
・税金の無駄遣いを削減するのであれば、政党助成を廃止(または大幅に削減)すること、
など。