西松建設の二階大臣側への違法な献金等問題について、同大臣の秘書(氏名不詳)を政治資金規正法違反の容疑で(西松建設前社長との共同正犯として)東京地検に刑事告発しました。

告発状は、本日(6月17日)夕方、東京地検に送付しました。

告発人は、私を含む研究者29名です。

    告  発  状
         2009年6月17日

東京地方検察庁 御 中
    告発人ら代理人(代表)
                     弁 護 士  阪  口  徳  雄
                                外27名

     告 発 人 − 上脇博之を含む別紙告発人目録記載の者29名
     被告発人 − 二階俊博議員の秘書、氏名不詳

告 発 の 趣 旨

 被告発人氏名不詳(A)の下記の行為は、政治資金規正法違反等に該当する。時効が近いものもあるので、小沢秘書事件のように強制捜査を実施するなどして、至急捜査を遂げ、厳重に処罰していただきたく告発する。
 なお、本年6月16日、東京第三検察審査会が「新しい波」関係者への不起訴処分について、国沢について「起訴相当」、その他の被疑者について「捜査が尽くされているとは到底言えない」等として「不起訴不当」決議され、検察庁の捜査のあり方を批判しているので、早急に捜査されたい。

                 記
第1 告発被疑事実

(1) 当事者
被告発人(A)は、自民党二階俊博国会議員の秘書であり、同議員が代表者である政治団体「新しい波」の2006年(平成18年)の政治資金パーティー券を西松建設株式会社(以下「西松建設」)に持ち込んだ者である。
被疑者国沢幹雄は、「西松建設」の前社長であり、今年4月30日付けでの告発(ただし告発事実1(1)。下記(2))につき御庁が6月1日付で「起訴猶予」(不起訴)にした者である。

(2)被告発人(A)の責任
同人らは、被疑者国沢と共謀して、「西松建設」において、自民党二階俊博国会議員が代表者である政治団体「新しい波」に対し、新政治問題研究会(以下「新政研」)及び未来産業研究会(以下「未来研」)の名義で平成18年に「新しい波」が主催するパーティー券を購入することを企て、
? 「トップセミナーIN愛知」と称する政治資金パーティーに2006年(平成18年)6月ごろ「新政研」名義で120万円、「未来研」名義で60万円、
? 「躍進の集いIN東京」と称する政治資金パーティーに2006年(平成18年)8月ごろ「新政研」名義で100万円、「未来研」名義で60万円、
の各政治資金パーティーの対価の支払いを上記他人名義でなし、もって政治資金規正法第26条の2第5号に違反したものである。

(3)共同正犯
被疑者国沢と被告発人(A)は、上記政治資金規正法第26条の2第5号違反の犯罪において、いずれも正犯である(共同正犯)。

第2 罪名及び罰条
被告発人(A)の行為は、政治資金規正法第26条の2第5号(他人名義でパーティー券対価の支払い)違反。刑法60条。

告 発 の 理 由
(1) 犯罪の悪質性
政治資金規正法は、誰がどの政治家(政治団体を含む)にどれだけの寄付(パーティー券の購入を含む)をしたかを公開させ、もって国民の判断に任せることに法の制度趣旨がある。同法の基本趣旨は政治家のカネの透明性の確保である。従って、この透明性を隠ぺいする行為は金額の多寡に関わらず法の根本趣旨を踏みにじり、悪質であり政治不信を助長させる最たるものである。
企業・団体が、欲しいままにダミー政治団体を作り、そのダミー団体を悪用して政治家に資金提供(寄付または政治資金パーティ券購入)することが許されるならば、企業団体献金を規制した政治資金規正法の意味はなくなる。西松建設が「新政研」「未来研」などのダミー団体を設立し民主党の党首の小沢議員が代表である、陸山会及び政党支部への献金を今回強制捜査し、起訴したことについては、「その時期」などについては批判があるものの、政治家のカネの透明性を要求している政治資金規正法の趣旨に合致する。

(2) 被疑者国沢の起訴猶予処分の不当性
 ? 「新政研」「未来研」を西松建設がダミーとして設立し、支配してきたことは小沢の秘書の起訴事件において、東京地検が十分な証拠を集収しているし、西松建設の内部調査報告書においても明らかである。従って被疑者国沢が他の者と共謀して、同団体を悪用して寄付をしている場合は自民党議員側主催の政治資金集めのパーティー券を購入する場合も被疑者国沢に政治資金規正法の他人名義のパーティー券購入違反の罪は明白に成立する。
  御庁は、被疑者国沢について、政治資金規正法違反の嫌疑が十分成立すると判断した。
? 御庁は、告発代理人への電話連絡によると「すでに小沢の秘書との関係において政治資金規正法違反容疑で起訴しているし、同じ容疑で起訴する必要がない等」として、国沢を「起訴猶予」の不起訴処分としたと説明した。
? 今回の告発事実は、ダミーの政治団体を悪用して真実を隠蔽したもので政治資金規正法の根本趣旨に反する、極めて悪質な事案であるだけに、不起訴処分は以下のような理由で不当である。
    第1は、西松側がダミー団体を悪用して、与党・野党を問わず、国会議員に巨額の献金(パーティー券購入も含む)をしている。小沢への秘書事件で起訴されていたとしても、そのことから、与野党にばらまいた違法な政治献金(パーティー券購入を含む)全体の真相解明・全容解明が公開の法廷で明らかにならない。明かになるのは、刑事訴訟法上、小沢の秘書との関係に、限定される。それでは西松側の献金の一部が明らかにされるにすぎず、その他のダミー団体を通じた多数の政治家との関係が「闇」のままに放置される。
起訴猶予処分は、小沢秘書以外のダミー団体の献金の真相を闇に葬ることになることから、きわめて不当である。
第2の理由は、国沢が小沢秘書の事件と同じ罪名で起訴されていたとしても、国沢の量刑において、小沢への起訴事件に限定され、二階側へ違法な政治資金パーティー券購入事件などはいわば「起訴されない余罪」となり、量刑事情に考慮されない。ある政治家に賄賂を配り、その事件が起訴されているからと言って、他の政治家の贈賄を、刑事事件として立件をしないことは普通はあり得ないと同様に、今回のダミー団体を通じた献金の悪質性からみれば、カネをばらまいた先ごとに国沢を起訴することは量刑にも影響を与えるから、起訴すべきである。
第3に、野党の党首の秘書は起訴した。しかし二階側に配った、同じ国沢を「起訴猶予」にすると、小沢の秘書が逮捕された直後、漆間巌官房副長官が、オフレコで、「自民党議員に波及する可能性はないと思う」と発言しているが、検察の今回の処分はこの発言を実質的に肯定し、国民の間に政治的不公平感をより一層増幅する結果になる。検察は証拠があり、悪質である以上、与党、野党に関わらず、それに金を配った者を起訴すべきである。さもないと、野党に金を配ると違法で、起訴されるが、与党側に配ると、違法でも情状酌量をして、起訴猶予にするという悪しき「不公平感」を国民に与えることになるからである。
以上の理由により、容疑者国沢は「起訴猶予」でなく政治資金規正法違反容疑で起訴、それも略式ではなく、正式起訴をすべきである。

(3) 被告発人(A)の行為の犯罪性
 ? 御庁が被疑者国沢を6月1日付で「起訴猶予」(不起訴)にした理由の中で、「西松建設にパーティー券の購入を持ちかけたのは自民党二階俊博国会議員の秘書であった」旨、報ぜられている。これが事実なら同秘書の被告発人(A)は被疑者国沢と共同正犯となり、国沢と同様に起訴すべきである。
? 西松建設は5月15日に、違法な資金提供などについての内部調査の結果を同社のHP上に公表し、政治家側への違法な資金提供を「自白」した。以下、その一部を紹介する。
「平成6年の政治資金規正法改正(平成7年1月1日施行)により、企業から政治家個人への献金が禁じられたことから、当社は、平成7年8月下旬ころ、政治団体を設立した上、政治団体からの献金を装って政治家個人の政治団体等に献金することを画策した。」
「平成7年夏ころ、政治団体「新政治問題研究会」が設立されることとなった。献金を行う趣旨に関しては、工事の発注を得たいという積極的な動機よりも、受注活動を妨害しないでほしいという消極的な理由もあったと供述する者もいた。」
「平成10年になって、新政治問題研究会の代表者が、國澤に対し、政治団体としての規模が大きすぎると目立つので、政治団体をもう一つ設立して資金を分散し、目立たないようにしたいと申し出て、國澤もこれを承認した。その結果、同年、二つ目の政治団体として「未来産業研究会」を設立し(平成11年6月3日自治大臣に届出)、その代表者には既に当社の子会社である松栄不動産株式会社(以下「松栄」という。)の取締役であった元当社社員を充てた。事務所は、新政治問題研究会と同一のマンションとし、家賃は二つの政治団体で分担した。」
「政治団体がどの議員関係にいくら献金するかは、政治団体ではなく、当社が決定した。
政治団体の代表者らは、いずれも、当社内部での意思決定の過程は分からず、当社の部長級社員を窓口として、会社の意向として指示されるとおり、独自の判断は一切行わずに献金を継続していた。当社内部の意思決定は、國澤が行っていた模様である。どのような基準によって、相手方及び金額を決定していたかは明らかではない。そのような事項を取締役会に諮った事実もなければ、國澤から意思決定についての相談を持ちかけられたと供述する者もいないため、國澤が独断で決定していたものと推測される。」
? 以上のように、西松建設は、ダミーの政治団体をつくって政治家への違法な資金提供を「画策」し、その提供先を決定したのはダミーの政治団体ではなく、同社前社長の被疑者国沢だったのであるから、当然、被疑者国沢は、政治資金パーティー券を持ち込んだ者に対し必ずカラクリを説明し真実の資金提供者が同社であることを伝えたはずである。
    ? 自民党二階俊博国会議員が代表者である政治団体「新しい波」の政治資金パーティー券は、被告発人(A)が西松建設に持ち込んだ、ということである。そうであれば、当然、被疑者国沢と被告発人(A)は共謀して、「新政研」及び「未来研」の名義で当該パーティー券を同社が購入することにしたものと考えられる。
    ? したがって、被告発人(A)は、被疑者国沢とともに、政治資金パーティーの対価の支払いを他人名義でなし、もって政治資金規正法第26条の2第5号に違反したものであるから、御庁は被疑者国沢の嫌疑が十分成立すると結論づけた以上、共同正犯の嫌疑が十分成り立つ被告発人(A)は、被疑者国沢とともに、厳重に処罰していただきたく告発する。


         添 付 書 類
1、委任状                       29 通

(以下、略)