私たちが西松建設の二階大臣側への違法献金事件で検察審査会に審査申立をしていた件で、東京第三検察審査会が、西松前社長については「起訴相当」、二階大臣側については「不起訴不当」の議決をしたことは、すでに紹介しました。
また、そのマスコミ報道も紹介しました

以下では、記録に残すために、その議決書について紹介します。

平成21年東京第三検察審査会審査事件(申立)第4号
申立書記載罪名   政治資金規正法違反
検察官裁定罪名   政治資金規正法違反
議決年月日     平成21年6月16日
議決書作成年月日  平成21年6月16日

     議 決 の 要 旨

審査申立人

 上脇博之 外35名

審査申立人代理人弁護士

 阪口徳雄外 29名

被疑者

(1) 國澤幹雄
(2) 泉 信也
(3) 氏名不詳(政治団体「新しい波」における政治資金パーティー券の対価の受入れ事務等従事者)
(4) 氏名不詳(政治団体「新しい波」における収支報告書提出事務等従事者)
(5) 政治団体「新しい波」(代表者二階俊博)

不起訴処分をした検察官

東京地方検察庁 検察官検事 木村匡良

上記披疑者らに対する各政治資金規正法違反被疑事件(東京地検平成21年検第10136号,第10137号,第10139号,第10140号,第 10143号)につき,平成21年6月1日上記検察官がした各不起訴処分の当否に関し,当検察審査会は,上記申立人らの申立てにより審査を行い,次のとおり議決する。

     議  決  の  趣  旨

本件不通訴処分は

1 被疑者國澤幹雄については不当であり、起訴を相当とする。
2 その余の被疑者らについては,いずれも不当である。

       議 決 の 理 由

1  被疑事実の要旨

(1) 被疑者団澤幹雄は,西松建設株式会社(以下「西松建設」という。)代表取締役であったものであるが,他の者と共謀の上,平成18年6月21日から同年7月28日までの間,4回にわたり,西松建設において,衆議院議員二階俊博が代表者である政治団体「新しい波」に対し,「新しい波」が開催する政治資金パーティーの対価合計340万円の支払を新政治問題研究会及び未来産業研究会(以下「新政研等」という。)の名義で行い,もって本人の名義以外の名義で政治資金パーティーの対価の支払をしたもの。

(2) 被疑者政治団体「新しい波」は,政治資金パーティーを開催する政治団体、被疑者氏名不詳(政治団体「新しい波」における政治資金パーティー券の対価の受入れ事務等従事者)(以下「A」という。)は,「新しい波」が開催する政治資金パーティーの対価の支払を受け入れる事務に従事してしていたものであるが,被疑者Aにおいて,「新しい波」の役職員として,平成18年6月21日から同年7月28日までの間, 4回にわたり,西松建設から,新政研等の名義でされた政治資金パーティーの対価合計340万円の支払を受け、もって本人の名義以外の名議でされた政治資金パーティーの対価の支払を受けたもの。

(3) 被疑者泉信也は,「新しい波」の会計責任者であったもの,被疑者氏名不詳(政治団体「新しい波」における収支報告書提出事務等従事者)は,「新しい波」の収支報告書の提出等の事務に従事していたものであるが,両名は、共謀の上,又は,それぞれ重過失により,平成17年2月10日から平成19年3月27日までの間, 3回にわたり,「新しい波」の平成16年から平成18年の各年の収支報告書を提出するに当たり,各年に開催した政治資金パーティーの対価として新政研等の名義で支払を受けた合計838万円について,真実の支払者は西松建設であり,収支報告書に支払者を西松建設として記載すべきであるのに,これを記載せず,又は新政研等を支払者として虚偽の記入をした収支報告書を東京都選挙管理委員会に提出したものである。

2  当検察審査会の判断

(1) 被疑者國澤幹雄について

検察官は,被疑者國澤が上記1「被疑事実の要旨」(1)として記載した事実を認め,同人が自白して反省していることや,同種の政治資金規正法違反で公判請求済みであることを理由に,起訴猶予と裁定している。

しかし,当検察審査会は,検察官のかかる判断を首肯することはできない。すなわち,検察官は,被疑者國澤が別件で起訴されているから,起訴猶予であるというが,バランスを保つため起訴すべきである。また,検察官は,本件を起訴しても、求刑上も量刑上も変わちないと言うが、説明になっていない。十分な証拠があるのに,起訴猶予は納得できない。この事件は,この事件として責任を取るべきである。自白して反省しているという理由で不起訴にしているが,政治にかかわる問題だけに,すべての部分を公の法廷で説明した方が、国民全体が納得するのではと思う。よって,被疑若國澤については,起訴相当であると考える。

(2) その余の被疑者らについて

被疑者國澤について起訴を相当とする場合,同人の犯罪事実に関与したその余の被疑者ら(両罰規定により処罰の対象となる政治団体「新しい波」をも含め)についても,慎重にその刑事責任を検討されるべきものであるが,―件記録を見る限り、この関係で捜査が尽くされているとは到底言えないとの印象が強い。そして,現在の日本において,強い政治不信が見られるという政治状況を踏まえると,本件のごとき,政治資金規正法遠反事件については、さらに踏み込んだ捜査が期待されるものと考える。

被疑者國澤を除くその余の被疑者らに関する本件不起訴処分については、検察官の再考を求めたい
よって,上記趣旨のとおり議決する。

東京第三検察審査会