(1)民主党、社民党、国民新党の与党3党の幹事長は、国会審議を官僚依存から政治主導に改めるため、国会法を改正して、委員会審議での官僚答弁禁止などを検討するという。
時事通信社2009年10月6日(火)14:03
国会法改正検討で一致=与党が初の幹事長会談

 民主、社民、国民新の与党3党は6日午前、国会内で連立政権発足後初めての幹事長会談を開き、国会審議を官僚依存から政治主導に改めるため、国会法改正を検討していくことで一致した。具体的には、委員会審議での官僚答弁禁止などを検討する見通しだ。
 民主党の小沢一郎幹事長は「行政に関しては政府でやるべきことだが、政党は国会法改正をしっかりやらないといけない」と主張。同党の山岡賢次国対委員長も「官僚に答弁させない。答弁するのは閣僚と副大臣だ」と述べた。社民、国民新両党もこうした方針を了承した。
 一方、社民党の重野安正幹事長は与党間の政策調整の場を設けるよう求めたが、小沢氏は「内閣で3党党首が一堂に会する場面がある。基本政策閣僚委員会で各党がしっかり発言すべきだ」として、難色を示した。

詳細はまだ不明であるかから断定的には言えないが、一般論として言えば、行政においては大臣が政治的決断として答弁すべきものと、官僚が法令の運用状況など現状を正確に答弁すべきものがあるから、官僚答弁を一切認めない国会法改正になるようであれば、行政における法令の運用状況等が正確に国民に説明されなくなる恐れがあるのではないかと危惧される。 

(2)民主党の小沢一郎幹事長の意向によると、上記の官僚の答弁禁止には、憲法解釈における内閣法制局朝刊の答弁禁止を含んでもいるようだ。
朝日新聞2009年10月8日4時8分
憲法解釈 内閣法制局長官の答弁禁止 小沢氏が意向

 民主党の小沢一郎幹事長が7日の記者会見で、国会で政府の憲法解釈を示してきた内閣法制局長官の答弁を、今後禁止する考えを示した。小沢氏は国会論議を政治主導にするために国会法を改正して「官僚答弁の禁止」を盛り込む考えだ。
 小沢氏は会見で法制局長官の答弁を認めるかを問われて「内閣法制局長官も官僚でしょう。官僚は入らない」と語った。
 国会法では、内閣法制局長官は公正取引委員会委員長、人事院総裁らと並んで、独立性の高い機関の長として「政府特別補佐人」として答弁が認められている。小沢氏は、政府特別補佐人も含めた官僚答弁を禁止する考えだ。
 内閣法制局は、省庁が作成した法案を閣議にかける前に他の法律との整合性などを審査する。また、自民党政権時代、法制局長官は政府の憲法解釈について独占的に国会で答弁してきた。長官答弁が禁止されれば、首相や官房長官ら政治家が憲法解釈を示すことになる。
 法制局改革は小沢氏の長年の持論だ。自民党の幹事長だった90年、国連平和協力法案(廃案)をめぐり、内閣法制局が自衛隊の派遣条件を厳しくとらえる憲法解釈を堅持したことで、小沢氏ら当時の自民党執行部から長官の罷免論が出たこともある。
 小沢氏は9日付の民主党機関紙のインタビューに「この臨時国会では、官僚が政府参考人として答弁することを禁止する国会法の改正に取り組む。脱官僚依存にはこれが一番」と述べ、国会法改正に強い意欲を示していた。

(3)これについては、平野博文官房長官がこれに賛成しているようだ。
時事通信社2009年10月9日(金)18:03
法制局長官の答弁禁止「賛成」=官房長官

 平野博文官房長官は9日午後の記者会見で、民主党の小沢一郎幹事長が内閣法制局長官の国会答弁を禁止すべきだとの考えを示したことについて「前から民主党は、政治家がしっかり答弁するようにという考え方なので、国会法を改正して(禁止する)という考えについては賛成だ」と述べた。
 内閣法制局長官はこれまで、憲法や法律に関する政府解釈について答弁してきた。官僚の答弁禁止を主張する小沢幹事長は7日の会見で「内閣法制局長官も官僚だ」と指摘した。 

となると、鳩山内閣としても、憲法解釈について内閣法制局長官の答弁禁止を容認することになりそうだ。

(4)しかし、これでは、憲法によって歯止めをかけている立憲主義の立場がなし崩しにされ、改憲政治家による「解釈改憲」が更に進む恐れがある。

大臣が護憲の政治家であるとは限らないからである。

(5)私は、これまで内閣法制局の憲法解釈が日本国憲法の立場を正しく捉えて「解釈」してきたとは思っていないが、それでも、改憲政治家の憲法「解釈」よりも、まだマシであると思っている。

正確に言えば、内閣法制局の憲法「解釈」は危険であったが、改憲政治家の憲法「解釈」はもっと危険である。

(6)今の明文改憲や更なる「解釈改憲」は、アメリカの要請に応えて海外で自衛隊が後方支援をしたり、武力行使をすることを「合憲」にするために、アメリカや日本の財界が要求しているものである。
決して、自衛隊そものものを「合憲」するするためだけに主張されているわけではないから、真の「専守防衛」論者はそのような改憲論に反対している

国連安保理決議がある場合であれ、それがなく集団的自衛権が行使される場合であれ、財界の求める自衛隊の後方支援や武力行使は、日本国憲法の下では決して許容されえないのである。
これは、内閣法制局による憲法「解釈」である。

(7)国会審議において官僚答弁を禁止するとして、憲法解釈について内閣法制局の答弁を禁止すれば、改憲政治家である大臣が憲法「解釈」を行うことになるから、これまで内閣法制局が違憲であると解釈してきたもの(自衛隊の集団的自衛権行使や、国連安保理決議がある場合の自衛隊の武力行使など)を「合憲」であると「解釈」してしまう危険性がある。

言い換えれば、官僚(内閣法制局)がつくってきた「歯止め」さえ取っ払ってしまい、立憲主義を骨抜きにしてしまう危険性があるのである。

小沢民主党幹事長も鳩山首相も改憲論者であることを、忘れてはならない。

(8)脱官僚依存とは、官僚”依存”を止めることであり、官僚答弁を一切否定することではないはずである。
ましてや、憲法解釈において官僚答弁を一切否定することではないはずである。

(9)国会法の改正により官僚答弁を禁止することについては、慎重の上にも慎重にすべきである。