(1)日本経団連は、2004年からはじめ毎年行ってきた、自民党と民主党の各政策に対する評価を、今年は見送ると発表したという。
2009/10/13 22:11 【共同通信】
経団連、政党採点を初の見送り 民主党に期待表明

 日本経団連は13日、会員企業が民主、自民両党に政治献金する際の目安となる政党政策評価について2009年は各党の政策項目ごとに5段階で採点する方式を見送ったと発表した。04年の政策評価開始後、採点見送りは初めて。民主党の政権奪取で政治状況が激変、来年度予算編成などを見極められない状況となり採点は困難と判断した。
 一方で各党の取り組みや期待を盛り込んだ文書を発表。これを基に会員企業に自発的な政治献金を促しているが、採点見送りで献金の判断がしづらくなる懸念も出ている。10年の政策評価では採点を復活させる方針だ。
 文書は、民主党が「政治主導の政策決定に向けた政府・与党の一元化、官邸主導の強化などを掲げ、積極的な取り組みを行っている」と期待を表明した。
 自民党は「昨年秋以降、経済危機対策を講じ経済の底割れを防ぐ上で大きな成果を挙げた」と評価。従来の自民優位の評価から民主、自民双方のバランスをとった形だ。
 記者会見した御手洗冨士夫経団連会長は、年末にまとまる見通しの「来年度予算案、税制改正案などを見守る必要があり、評点を付けずに、定性的(質的)な評価にすべきだ」と説明。9月に民主党中心の鳩山由紀夫内閣が誕生したことを踏まえ、従来の採点方式では、それまで政権与党の座にあった自民党優位が続き、野党だった民主党が不利になるのを避ける狙いもあるようだ。

(2)日本経団連は「優先政策事項」を発表して、それに基づき自民党と民主党の政策を評価し、それに応じて傘下の企業に政治献金するよう斡旋してきたが、それは政策「買収」であることは、すでに指摘してきた。

(3)日本経団連が今年自民党と民主党の政策評価を見送った理由は何だろうか?
日本経団連のHPにおける「2009年政策評価について」(2009年10月13日)を見ると、それが書かれている。
8月の総選挙により政権交代が実現し、政治情勢は大きく変化した。経団連は毎年、政治寄付の参考として、政党の政策評価を実施、発表している。政策評価が今後の政治寄付の参考材料として適切なものとなるためには、主として総選挙後の政党の行動に重点を置く必要がある。しかし、現時点では、十分な評価を行える状況にはない。

冒頭で紹介した報道によると、政権交代だけではなく、「来年度予算編成などを見極められない状況」が挙げられている。

(4)この説明は、見送りの真の理由なのであろうか?
そうである可能性もあるが、そうでない可能性もある。

私は、その説明が真の理由でない可能性の方が高いように思っている。
そもそも日本経団連は、8月30日の衆議院総選挙で自民党が敗北した時点で思案していたからである。

(5)日本経団連の本心がやはり「買収」であって、「政策評価」は口実であったのではなかろうか!

というのは、昨年の日本経団連傘下企業の政治献金がそれまでと同じように自民党中心であったことは間違いないが、政策評価が低かった民主党へのそれが一昨年(2007年)の0.8億円から0.3億円ほど増え1.1億円だったからである。

また、日本経団連会長を出しているキャノングループの政治献金の合計は一昨年の5倍である1000万円に増えていたからである(私がコメントした「しんぶん赤旗日曜版」2009年10月11日)。

つまり、民主党にシフトする予兆は2008年の政治献金において現れていたのである。

(6)更に言えば、今年の政策評価をしようと思えば、総選挙のマニフェストと鳩山政権の今の行動を見て評価(採点)できないわけではないからである。

日本経団連の本音は、政策評価(採点)をすれば自民党の点数が高くなり、民主党の点数が低くなるが、それでは困るからであろう。
点数が高ければ傘下企業の政治献金額も高額になり、点数が低ければ傘下企業の政治献金額も少額になるはずであるが、それでは困るからだろう。
野党になった自民党に高額の政治献金をするのは効率を考えれば無駄になる部分が多いからであろう、
与党になった民主党に少額の政治献金をしても、少額では効果が見込めないからであろう。

(7)日本経団連としては、評価(採点)が低くても、民主党に高額の政治献金をして「買収」したいのだろう。
そのためには、従来の政策評価(採点)をするわけにはいかないのだろう。

そこで、日本経団連は、「本年においては、民主・自民両党に対して、定性的な評価と今後の政策展開への期待を示すこととした。会員企業においては、下記を参考に、社会貢献の一環として、自発的に政治寄付を検討・実施していただきたい。」として、自民党と民主党について以下のように評している。

1.民主党
民主党は、2009年8月の総選挙で政権交代を実現した。政治主導の政策決定のための政府・与党の一元化、官邸主導の強化等を掲げ、国家戦略室や行政刷新会議を設置するなど、積極的な取り組みを行っている。地方分権も重視している。

今後は、内政・外交両面にわたる重要課題について、その実現に向けた具体策を分かりやすく示し、リーダーシップを発揮していただきたい。

2.自由民主党
自由民主党は、昨年の秋以降、経済危機対策を講じ、世界的な金融危機の中で経済の底割れを防ぐ上で、大きな成果をあげた。

今後は健全野党として、政党が政策で切磋琢磨する政策本位の政治の実現に向けて、積極的な役割を果たしていただきたい。


これだと、日本経団連の傘下企業は、民主党にも政治献金しやすくなったのではなかろうか。

(8)ただ、実際に、傘下企業がどの程度の政治献金をするか、私には予想できない。

というのは、民主党は来年の参議院議員総選挙で単独過半数を獲得するまでは、日本経団連の政策を大幅に取り入れるかどうかは不明だからである。
そうなると、民主党への政治献金は、自民党に政治献金するのと同じように、ほとんど無駄になってしまいかねない。

(9)しかし、それでも、民主党に高額の政治献金をして「買収」を目指すこともありうるだろう。
というのは、2009年6月1日に開催された「民主党と政策を語る会」において、民主党は、企業献金を欲しがっていたからである(「議事録」参照)。
大橋 評議員会副議長
・・・
民主党の政治改革推進本部の心意気そのものは理解するにしても、企業・団体の政治寄付を全面禁止した場合、党や議員は本当に対応できるのか。また、禁止まで3年の猶予期間を置くとのことだが、この間はどのように党を運営していくのか。

直嶋正行 政策調査会長
・・・・
企業・団体献金を即、全面禁止すれば、我々も干上がってしまう。禁止までの3年間については、引き続きご支援を賜りたい。


とはいえ、私には、現時点では、献金額がどの程度増えるのか断定的な予測は書けない。

(10)日本経団連は、来年の政策評価では採点を復活させる方針のようだ。
おそらく来年夏の参議院議員通常選挙の結果を見て判断するのだろう。
選挙結果次第では、来年も採点を見送る可能性もあるだろう。

(11)以上の予想とは別に、株主オンブズマンと政治資金オンブズマンが先月(9月)中旬に「企業献金の速やかな廃止を求める要望書」を日本経団連と日本経団連の副会長15名の母体企業宛に送付し、その中で、「株主代表訴訟を提起することも辞さない」と明記していたので、財界人はそれが「気になっている」のかもしれない。

果たしてどうなのだろうか?

(12)今年の日本経団連の傘下企業の政治献金額は、日本経団連がすぐに発表しない限り、今の法律では、来年の9月末あるいは11月末にならないと分からない

(13)民主党は、早急に、政治資金規正法改正案を国会に提出し、企業・団体献金を全面的に禁止すべきである。

早く提出して成立させなければ、国民は鳩山政権を見放し始めるのではないか。

もし3年間の猶予を設けるとしても、民主党は、率先して企業・団体献金の受け取りを拒否すべきである。
そうすれば、民主党は「政治とカネ」の問題で自民党とは体質が違うと思うことだろう。