西松建設違法献金事件については、東京地検が私たちの刑事告発に対し、すべて処分を行ったので、総括を兼ねて、これまでの経緯を簡単にまとめておくことにしよう。

1.西松建設違法献金事件の発覚

(1)昨年(2008年)、準大手ゼネコン「西松建設」の違法献金事件が発覚。
同社は十数年前から約20億円の裏金を捻出していた。

(2)同社は、OBらで「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」(いずれも06年に解散)という政治団体をつくる等して、自民党議員・民主党議員らの政党支部又は資金管理団体などの政治団体に対し約10年間で総額約4億8000万円の政治献金(寄付およびパーティー券購入)を行っていた。

2.発端としての小沢一郎民主党代表(当時)の公設秘書の逮捕・起訴

(1)今年(2009年)3月3日、東京地検は、小沢一郎民主党代表の資金管理団体「陸山会」および小沢氏が代表を務める「民主党岩手県第4区総支部」を家宅捜索し、「陸山会」の会計責任者で小沢氏の公設第一秘書や西松建設の前社長ら3人を逮捕

(2)同秘書の逮捕容疑は、政治資金規正法が禁止している企業献金を受けた罪、他人名義の寄付を受けた罪、政治資金収支報告書に虚偽記載した罪

(3)同月24日、同秘書は起訴された。虚偽記載額は3500万円。

3.二階俊博大臣(当時)側への違法献金事件の告発と審査申し立て

(1)西松建設のダミーの2つの政治団体は、2006年までの3年間に小沢氏側以外にも与野党の国会議員(18人)や自民党の派閥などの政治団体に対し総額約6100万円を支出していた。

(2)そのうち例えば二階俊博経済産業大臣(当時)の場合、西松建設は2004〜2006年の間、二階氏の政治団体である「新しい波」が主催するパーティー券838万円を、同じ二つのダミー団体名義で購入していたし、同社役員らは、同社が献金している事実を隠蔽するために「5万円以下の献金は収支報告書に記載する必要がない」ことを悪用して、2006年、2007年に、約60人が5万円ずつの寄付したように偽装し、他人名義で300万円ずつ合計600万円を、同大臣が代表を務める「自民党和歌山県第三選挙区支部」に寄付していた。

(3)3月5日、元警察庁長官の漆間巌官房副長官が、オフレコで、西松建設違法政治献金につき「自民党側は立件できない」などと発言した。

(4)4月30日、私を含む36名(そのうち研究者は29名、ほかは「政治資金オンブズマン」のメンバー)は、前述の二階大臣側への違法献金につき政治資金規正法違反で東京地検に告発状を送付(受理は5月1日。以下、送付日を記載)。

(5)5月15日に、西松建設は、社内の内部調査の結果(西松建設内部調査委員会「調査報告書及び外部諮問委員会所見について」)を自社のHPに公表
同社は1995年から、ダミーの政治団体をつくる等して、その「政治団体からの献金を装って政治家個人の政治団体等に献金することを画策した」こと、また同社が「一部の社員に対して特別賞与の名目で金銭を交付し、その代わりに当該社員から年に2回、政治団体への寄附をさせていた」ことを明確に認めたうえで、これらの「行為は、巧妙に仕組まれた脱法行為であって、他に類を見ず、極めて悪質との評価を受けるもの」と結論づけていた。

(6)6月1日、東京地検は、私たちの刑事告発のうち「新しい波」主催の政治資金パーティー券の分につき、西松建設前社長を起訴猶予、二階大臣側を嫌疑不十分として、それぞれ不起訴処分にした。

(7)同月4日、私たちは検察審査会に審査申立てをした

(8)同月12日、私は東京第三検査審査会に追加意見書を送付した。

(9)同月16日、東京第三検察審査会は、前社長につき「十分な証拠があるのに、起訴猶予は納得できない。」等として「起訴相当」の議決を、二階大臣側につき「記録を見る限り、この関係で捜査が尽くされているとは到底言えないとの印象が強い」から「さらに踏み込んだ捜査が期待されるものと考える。」などとして「不起訴不当」の議決を、それぞれ行った。

(10)小沢氏側に他人名義で違法な企業献金をしていた西松建設前社長の初公判は、6月19日に開かれ、前社長は起訴事実を全て認めたため結審し、判決の言い渡しは7月14日の予定であったが、東京地検は東京第三検察審査会の「起訴相当」議決を受け6月26日一転して起訴する処分を行った(ただし二階大臣側については再び不起訴処分)ため延期された。

(11)7月17日、東京地裁は「西松は岩手、秋田両県発注の公共工事を談合で受注することを実効的にするため、受注業者の決定に強い影響力を持っていた小沢氏の秘書らと良好な関係を築こうとした」と認定したものの、「寄付は受注の見返りではなく、西松の支払いを公表されないようにする以上の背景もうかがえない」等として、禁固1年4月、執行猶予3年の判決を言い渡した。

(12)7月23日、私は、私たちの刑事告発のうち、西松建設の二階大臣側への他人名義による違法な献金事件につき、告発から3箇月近くが経過するにもかかわらず、東京地検は起訴するなどの処分を一切行っていないので、告発人を代表して東京地検に対し西松建設前社長をはじめ二階氏側関係者を厳正に処分するよう要請した文書を送付した。

(13)ついに12月9日、東京地検は二階・前大臣秘書を政治資金規正法違反で略式起訴した。 

4.二階俊博大臣(当時)の秘書の告発と審査申し立て

(1)6月1日、東京地検は最初の不起訴処分がなされたときの記者会見で、二階大臣の派閥の政治資金パーティー券の持ち込み先が西松建設であり当該パーティー券を持ち込んだ人物が二階氏の秘書であった旨、説明していた。

(2)6月17日、私を含む29名の研究者は、同秘書(氏名不詳)を政治資金規正法違反容疑(西松建設前社長との共同正犯)で、東京地検に刑事告発した。

(3)同月26日、東京地検は不起訴処分にした。

(4)同月29日、私は東京検察審査会に審査の申し立てをした。

(5)7月3日、私は東京第三検察審査会に新聞報道の資料を送付した。

(6)7月21日、東京地検第三検察審査会は「不起訴不当」の議決をした。

(7)同月31日、東京地検は再び同秘書を不起訴処分にした。