(1))政治資金規正法の抜本改正について、民主党の小沢一郎幹事長は、昨年(2009年)10月中旬頃、「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)に「諮問」した。
その後、マスコミ報道によると、政治資金規正法の抜本改正についての「21世紀臨調」の「提言」は、今年2月中旬に提出されると報じられた

しかし、3月末実の時点でも「提言」が発表されないので、「何故なのだろうか?」「全く不可解だ。」と指摘しておいた。

(2)やっと、4月の中旬になって21世紀臨調が提言を発表したようだ。
日経新聞2010/4/16 22:03
政党支部への団体献金禁止を 21世紀臨調提言

 「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)の佐々木毅共同代表(元東大学長)らは16日、都内で記者会見し、選挙区単位の政党支部への企業・団体献金の禁止や、個人献金の税額控除制度の充実などを求める提言を発表した。政党交付金の増額は「論外」と表明した。
 民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)に関しては「内容が必ずしも十分ではなかった」と指摘。参院選をマニフェスト見直しを国民に問う機会と位置付け「見直しが必要なら理由を示して修正すべきだ」と注文した。
 選挙運動の自由化を掲げ、公職選挙法の改正も主張。戸別訪問の解禁や文書図画利用の自由化などを盛り込み、夏の参院選からインターネットを利用した文書図画の配布など「ネット選挙」を解禁すべきだと訴えた。

その提言の要旨は、以下のように報じられている。
2010/04/16 19:17 【共同通信】
21世紀臨調提言要旨 
 21世紀臨調の提言要旨は次の通り。

 ▽内閣運営と政党の在り方
 一、鳩山政権は民主党の未熟さや準備不足から政治主導が成功しているとは言えない。
 一、首相の指導力が国民から疑問視され始めているのは極めて深刻な事態。
 一、政務三役に対する内閣の統制が効いておらず「新たな縦割り」を生んでいる。
 一、首相は物事を決める手順と場を整え、最後の段階で判断すべきだ。
 一、閣議を政策の発議、討議、調整の場に。
 一、閣僚委員会を内閣のシステムとして設計し運用。
 一、政務三役と官僚の役割分担を明確に。
 一、首相の下に政府と与党の指導体制を一元化し、政策、人事、国会運営を含め政権運営全般を首相が統合。
 一、民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)は策定過程、内容とも必ずしも十分でなく、国民の意見を取り入れながら内容を見直し、夏の参院選で問うべきだ。

 ▽選挙・政治資金制度
 一、公選法はわかりやすい法律に全面改正。
 一、戸別訪問などの選挙運動は原則自由化。
 一、インターネットを利用した選挙運動の早期実現。
 一、政治家が複数持つ政治団体の一元化。
 一、政治団体解散時の資産処理方法の法制化。
 一、選挙区単位の政党支部への企業・団体献金の禁止。
 一、団体の帳簿などを調査し収支報告書訂正の要求や告発をする権限を持つ「選挙・政治資金委員会」の創設。
 一、政治倫理審査会は一定数の要求があれば開催

(3)私がこの提言のうち現時点で注目し取り上げて言及・批判するのは、政治資金問題、特に企業・団体献金の問題である。
提言は、この点で、企業・団体献金の全面禁止を積極的に提言していないし、企業・団体の政治資金パーティー券購入の全面禁止を提言していない。

この点を、正確に把握するために21世紀臨調のHPで、「政権選択時代の政治改革課題に関する提言」(2010/4/16)を見て、批判することにする。
http://www.secj.jp/pdf/20100416-1.pdf
3.政治資金の原資のあり方について
1)企業・団体献金及び個人献金について

 政治資金は「民主主義のコスト」であり、政治資金なくして政党・政治家の政治活動は成り立たない。従って、誰が、どのようなかたちで、どの程度の政治資金を負担するかという問題は民主主義の根幹にかかわる最も基本的な問題に他ならない。現在、企業・団体献金の是非を中心に政治資金の原資に関するルールの見直しについて与野党間で協議が始まる見通しだが、その検討にあたっては、日本の民主主義や政党政治の将来像、国民と政党・政治家が共有すべき新しい政治文化のあり方を描きながら、国民の意向、批判に謙虚に耳を傾けつつ、党利党略にとらわれず、与野党の幅広いコンセンサスのもとで結論が出されるべきである。
 その際、何よりもまず、政党・政治家がなすべきことは、政治資金の「収入」と「支出」の実態の全容を正直に国民に吐露し、大規模な情報開示に踏み切ることである。そして、「民主主義のコスト」として合理的かつ必要不可欠な正当な額とはどれほどのものなのかを自らの手で精査し、国民に対する説明責任を果たすことである。そして、政治資金の「支出の仕分け」を行い、徹底的に無駄遣いの排除を断行することである。こうした真摯な実態の把握および自己改革なしには、政治資金調達に関する実効ある制度改革は行い得ない。
 日本政治における「政治とカネ」をめぐる議論は、常に実態の把握が不十分なまま、幾度となく繰り返されてきた。その背景には、戦後日本の政治資金制度が著しく透明性を欠き、国民のみならず当事者ですらその実態の全容を把握しきれていないという事情があった。従って、われわれが今回提案したように、「政治会計団体」制度を実現すること等を通じて「公私の峻別」をはかり、透明性を飛躍的に向上させることは最優先されるべき改革課題であり、それなしに、政治資金調達のあり方をめぐる実効ある議論は成り立ち得ないことを認識すべきである。
 民主党は先の総選挙におけるマニフェストにおいて、「政治資金規正法を改正し、その3年後から企業団体の献金及びパーティー券購入を禁止する」と明記した。企業・団体献金の禁止を求める声は与野党を問わず高まっており、経済界からも企業献金のあり方の見直しが提起されている。政権交代可能な政治システムが実現された今日、政党・政治家と企業・団体との関係のあり方を根本から議論することは避けられない課題であり、むしろ、必要不可欠な作業である。そして、各党が企業・団体献金の全面禁止で仮に合意するのであれば、その結論を尊重するものである
 しかしながら、そうした検討を行うにあたっては、並行して議論すべき根本問題が山積していることを、政党、政治家は理解する必要がある。例えば、富と政治権力との関係について緊張感をもって臨むのは当然であるとしても、「新しい公共」の創造が問われている中にあって、非営利の典型である政党や政治家の活動が寄付やボランティアによって積極的に支えられていくことと矛盾のない制度設計とはどのようなものかについても念頭におく必要がある。・・・(略)。
 また、政党と政治家の関係についてもその実態を精査し、あるべき政党組織や政党内の民主的な手続き、内部統制のあり方についても並行して議論を進める必要がある。例えば、政党の本部や実体のある地方組織が主体となって選挙や政治活動を担い、政治資金調達を含め党所属の候補者による個人本位の活動を見直し、政党本位のもとに移行しなければならない。候補者本人が必要経費の相当部分を調達する現在の(とくに民主、自民両党における)政治資金のあり方をそのままにして、企業・団体献金が禁止された場合、各候補者の政治活動は著しく制約され、ひいては違法又は脱法行為による資金集めを助長する恐れもある。以上のいずれの問題においても、「政党」のあり方そのものを議論の俎上に乗せることは不可避であり、政党の在り方に関する真剣な検討を伴わない改革論議は不誠実である。
 企業・団体献金の是非は日本の政党政治の根幹に関わる課題である。危惧されるのは、議論が膠着状態に陥り、現在直面している諸問題について何らの有効策も打てないまま、現状が維持されることである。少なくとも、政党、政治家は政治資金の原資のあり方についてどのような結論を出すにせよ、企業・団体献金の透明性や個人献金促進に向けて着実に合意を積み上げる必要がある。
 例えば、企業・団体献金への規制が政党支部の定義の不備によって今日形骸化していることを是正する必要がある。現行法では、市区町村又は選挙区を区域とする政党支部であれば、企業・団体から寄付を受け取ることができる。これを利用して、実質的には個人後援会の別名又は地方議員団に過ぎない団体が形式上政党支部となって企業・団体献金を集めており、実際には、政治家単位に際限なく設立される政党支部が「第2の財布」として利用され、政治資金規正における重大な抜け道となっている。
 そこで、政治家個人への献金の抜け道と化している選挙区単位の政党支部に対する企業・団体献金については、直ちにこれを禁止し、企業・団体から寄付を受け取ることができる主体を党本部及び都道府県単位で指定した1つの支部に限る案を検討すべきである。いわゆる、「トンネル献金」(特定企業・団体は政党に使途を限定して寄付を行い、党本部は指定された政治家に向けて当該寄付相当額を交付する)の可能性は残されるが、そのプロセスには党組織が関与するため、万一不祥事が発生した場合の責めは政党自身が負うことになる。
 また、政治資金パーティーについては、政党支部への企業・団体献金を禁止する場合、パーティー券購入が抜け道になることを防ぐため、購入者の氏名等の公開基準を寄付と同等又はそれより少額に引き下げることを検討すべきである。さらには、パーティー券の購入がその実態からして企業・団体献金であるとするならば、諸外国の事例に照らし寄付として取り扱うことも検討すべきである。


(4)このように21世紀臨調の提言は、「政党の在り方に関する真剣な検討」が必要だといいながら、「選挙区単位の政党支部に対する企業・団体献金については、直ちにこれを禁止し、企業・団体から寄付を受け取ることができる主体を党本部及び都道府県単位で指定した1つの支部に限る案を検討すべきである。」として、企業・団体献金の全面禁止を提言してはいないし、また、企業・団体の政治資金パーティー券購入の全面禁止を提言していない。

(5)そもそもこの提言は、企業・団体献金が本来法的に許容されないことを無視しているし、企業・団体献金が利益誘導になるという弊害を軽視したものである。

企業・団体の政治資金パーティ券購入が実質的には企業・団体献金と実質的に同じである実態を無視してもいる。

企業・団体献金等の全面禁止が議会制民主主義の条件であるとの認識さえないものだ。

言い換えれば、法的な議論は無視して、政治腐敗の温床も存続させ、財界による政策「買収」の復活の可能性も残そうという、とんでもない提言であるし、議会制民主主義の条件を生み出そうという気が全くない提言である。

(6)また、民主党は、マニフェストで、両方の全面禁止を有権者に約束したが、21世紀臨調は、それについて与野党が認めた場合を別にして、反故にしても良いと主張しているに等しい提言を行っているのである。

経済同友会は政党シンクタンクへの企業・団体献金を容認する提言を発表していた。
21世紀臨調の提言は、それに比べても企業・団体献金の存続が露骨である。

要するに、財界主権の政治を存続させたいのであろう。

こんな恥ずかしい提言を、記者会見までして発表するとは、呆れ果てる。
厚顔無恥としか言いようがない。

(7)私たちは、すでに民主党のマニフェストを具体化した提案を行っているが、民主党は、それを無視し、自らのマニフェストを反故にし、21世紀臨調の提言や経済同友会の提言に乗るのだろうか!?

民主党の正体が自民党と同じ財界政党であるかどうかが見えることだろう!