(1)小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡る事件で、東京地検特捜部は、今年2月4日、当時の事務担当者・石川知裕衆議院議員ら3名を起訴し、小沢氏を不起訴にした。
告発人は、小沢氏につき検察審査会に審査の申立てをしていた。

(2)検察審査会の議決がそろそろ出ると予想されていた一昨日(4月16日)、小沢氏は、自らの潔白を記者会見で述べていた。
時事通信社(2010/04/26-20:38)
「検察審は冷静判断を」=議決前に異例の言及−小沢氏

 民主党の小沢一郎幹事長は26日の記者会見で、自身の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、検察審査会が近く議決を出す見通しであることについて「(東京地検特捜部による)1年間の強制捜査によって、結果として私は潔白を証明してもらった。検察審査会もそのことを冷静に受け止めて判断いただければいい」と述べた。
 検察審査会は、小沢氏を不起訴(嫌疑不十分)とした東京地検の処分の妥当性について審査しており、近く判断を示すとみられる。政権の実力者である小沢氏の発言は、審査会の議決前に「不起訴相当」とするよう圧力を掛けたとも受け取れ、問題視する声が上がりそうだ。
 小沢氏は会見で「私は不正な献金は一切受け取っていない。脱税しているわけでもない」と改めて強調した。

(3)しかし、昨日(4月27日)、検察審査会は、「起訴相当」の議決を下した。
読売新聞(2010年4月27日18時57分)
小沢民主党幹事長「起訴相当」議決の要旨

 小沢一郎・民主党幹事長に対する東京第5検察審査会の議決の要旨は次の通り(敬称略)。

 被疑者 小沢一郎

 不起訴処分をした検察官 東京地検検事 木村匡良

 議決書の作成を補助した審査補助員 弁護士 米沢敏雄

 2010年2月4日に検察官がした不起訴処分(嫌疑不十分)の当否に関し、当検察審査会は次の通り議決する。

 【議決の趣旨】
 不起訴処分は不当であり、起訴を相当とする。

 【議決の理由】

 第1 被疑事実の要旨

 被疑者は、資金管理団体である陸山会の代表者であるが、真実は陸山会において04年10月に代金合計3億4264万円を支払い、東京都世田谷区深沢所在の土地2筆を取得したのに、
 1 陸山会会計責任者A及びその職務を補佐するBと共謀の上、05年3月ころ、04年分の陸山会の収支報告書に、土地代金の支払いを支出として、土地を資産として、それぞれ記載しないまま総務大臣に提出した。
 2 A及びその職務を補佐するCと共謀の上、06年3月ころ、05年分の陸山会の収支報告書に、土地代金分が過大の4億1525万4243円を事務所費として支出した旨、資産として土地を05年1月7日に取得した旨を、それぞれ虚偽の記入をした上で総務大臣に提出した。

 第2 検察審査会の判断

 1 直接的証拠
 (1)04年分の収支報告書を提出する前に、被疑者に報告・相談等した旨のBの供述
 (2)05年分の収支報告書を提出する前に、被疑者に説明し、了承を得ている旨のCの供述

 2 被疑者は、いずれの年の収支報告書についても、その提出前に確認することなく、担当者において収入も支出も全て真実ありのまま記載していると信じて、了承していた旨の供述をしているが、きわめて不合理、不自然で信用できない。

 3 被疑者が否認していても、以下の状況証拠が認められる。
 (1)被疑者からの4億円を原資として土地を購入した事実を隠蔽(いんぺい)するため、銀行への融資申込書や約束手形に被疑者自らが署名、押印をし、陸山会の定期預金を担保に金利(年額約450万円)を支払ってまで銀行融資を受けている等の執拗(しつよう)な偽装工作をしている。
 (2)土地代金を全額支払っているのに、土地の売主との間で不動産引渡し完了確認書(04年10月29日完了)や05年度分の固定資産税を陸山会で負担するとの合意書を取り交わしてまで本登記を翌年にずらしている。
 (3)上記の諸工作は被疑者が多額の資金を有していると周囲に疑われ、マスコミ等に騒がれないための手段と推測される。
 (4)絶対権力者である被疑者に無断で、A、B、Cらが本件のような資金の流れの隠蔽(いんぺい)工作等をする必要も理由もない。
 これらを総合すれば、被疑者とA、B、Cらとの共謀を認定することは可能である。

 4 更に、共謀に関する諸判例に照らしても、絶大な指揮命令権限を有する被疑者の地位とA、B、Cらの立場や上記の状況証拠を総合考慮すれば、被疑者に共謀共同正犯が成立するとの認定が可能である。

 5 政治資金規正法の趣旨・目的は、政治資金の流れを広く国民に公開し、その是非についての判断を国民に任せ、これによって民主政治の健全な発展に寄与することにある。
 (1)「秘書に任せていた」と言えば、政治家本人の責任は問われなくて良いのか。
 (2)近時、「政治家とカネ」にまつわる政治不信が高まっている状況下にもあり、市民目線からは許し難い。

 6 上記1ないし3のような直接的証拠と状況証拠があって、被疑者の共謀共同正犯の成立が強く推認され、上記5の政治資金規正法の趣旨・目的・世情等に照らして、本件事案については、被疑者を起訴して公開の場(裁判所)で真実の事実関係と責任の所在を明らかにすべきである。これこそが善良な市民としての感覚である。よって、上記趣旨の通り議決する。
    ◇
 要旨中のAは小沢氏の元公設第1秘書・大久保隆規被告、Bは陸山会元事務担当者で衆院議員の石川知裕被告、Cは同会元事務担当者の池田光智被告

なお、審査申立人は市民団体と報じられていたが、匿名の個人のようだ。本当に市民団体なのだろうか?(市民団体の代表者だろうか?)

(4)国会議員の刑事責任の問題と政治的・道義的責任の問題はそれぞれ別々に考えなければならないことは、すでに述べてきた。

以下は、そのことを前提に読んでいただきたい。

また、私は検察の証拠資料を一切見ていないので、検察審査会の議決書だけを読んで感想を書くことも了解していただきたい。

(5)この事件は、”常識”的には「起訴相当」議決が出ることは難しいと予想される事案であった。

検察は半年以上にわたる捜査で3人も逮捕し、家宅捜索も行っていた。

http://blog.livedoor.jp/nihonkokukenpou/archives/51311364.html

http://blog.livedoor.jp/nihonkokukenpou/archives/51312404.html

http://blog.livedoor.jp/nihonkokukenpou/archives/51312678.html

そのうえで、検察は、「嫌疑不十分」で「不起訴」としたと考えるのが”常識”だ。
捜査は尽くされているし、有罪にする十分な証拠がないと判断したのだろう。
私たちが刑事告発した二階大臣らの西松建設違法献金事件とは、この点が全く異なる。

それゆえ、この度の検察審査会の「起訴相当」議決の一報を聞いて驚いた。

(6)しかしまた、「議決の理由」を読んで、また驚いた。
「情況証拠」しか挙げられていないのに小沢氏の「共謀共同正犯」を結論づけているからだ。

「直接的証拠」として会計責任者やその職務を補佐した者が「収支報告書を提出前に」小沢氏に「説明し」、小沢氏の「了承を得ている」ことが挙げられている。
だが、これは、「虚偽の報告」をすることを「説明し」「了承を得ている」、ということではないから、証拠としては十分であるとは言いがたい。

(事前のマスコミの一部報道では、「虚偽の報告」をすることを「説明し」「了承を得ている」とする供述調書がある旨、報道されていた。
それが真実であれば、「起訴相当」も理解できる。
だが、「議決の理由」では、そう記述されてはいない(記述の仕方が悪いのか?)。
事前にマスコミの取材を受けていた。
そのときには、前述の”常識”を説明し、例外として「起訴相当」議決が出るのは、一部マスコミ報道のような供述調書がある場合であると答えておいた。)

「絶対権力者」である小沢氏に「無断で」「隠蔽工作等をする必要もない」等として「起訴相当」の議決が出たのは、素朴な国民感情でいえば理解できなくもない。
だが、憲法及び刑事法の立場からすると、決定的な証拠とは言いがたい。

「疑わしきは罰せず」だからだ。

感情的な表現が随所に出てくるが、そのような感情に基づき「情況証拠」だけで「起訴相当」とするのは、無理があるのではないだろうか。

(7)この度の検察審査会の「起訴相当」議決を受けて東京検察特捜部は補充捜査をすることになる。

だが、ほかに決定的な証拠がない限り、検察は再び「嫌疑不十分」で「不起訴」にする可能性が高いのではなかろうか。

(8)一方、国民主権主義および議会制民主主義の立場からすると、小沢氏はこの事件で十分な説明責任を果たしてきたわけではない。
検察審査会が、小沢氏の供述は「きわめて不合理、不自然で信用できない」と指摘しているのは、この点では頷ける。
政治的不信を払拭するには、説明が不十分だ。
また、元会計責任者らは虚偽記載の罪を認めているから、小沢氏には、それに対する政治的な監督責任もある。

この度「起訴相当」議決が出たことで、小沢氏は国会で事件について説明しなければいけない事態に追い込まれるかもしれない。
7月に予定されている参議院議員通常選挙を考えると、この度の「起訴相当」議決は選挙への負の影響は大きいだろうから、民主党は勝利したいのであれば政治的判断が求められるだろう。
小沢氏は幹事長続投を表明しているが、最終的には幹事長の辞任を迫られるかもしれない。

(9)だが、小沢氏が幹事長を辞任するにせよ、しないにせよ、国民は、政党・政治家が根本的な対策を採らない限り、自民党政権時代と同じで、政権交代の意味を実感できず納得しないだろうから、鳩山内閣と民主党の支持率はさらに急落するだろう。

「政治とカネ」の問題では、これまで「秘書のせい」にされて終わってきた。
だが、そうさせないためには、民主党は、マニフェストで約束した企業・団体献金の全面禁止は言うまでもなく、会計責任者に対する政治家の監督責任も強化する等、政治資金規正法の抜本的な改正をせざるを得ない状況にあることは間違いないだろう。

これについては、また別の機会に書くことにしよう。

(10)今朝の東京新聞、日経新聞、神戸新聞で、私のコメントが掲載されていると思うが、その趣旨は、この投稿で書いた以上のような内容である。