(1)内閣官房機密費の使途につき、1998年7月から99年10月までの1年余り小渕内閣で官房長官を務めた野中広務氏が証言していることに関しては、すでに紹介した。

内閣官房長官がその時々の判断で自由に使える金である官房機密費は、野中氏の時代、一月に最高で1億2000万円に上った。
なお、年間予算は今年も年間14億6000万円が計上されている。

(2)テレビ、講演、新聞等における野中氏の証言のうち重要な発言をまとめておこう。

・「毎月5000万〜7000万円くらいは使っていた」。「1カ月あたり、多い時で7000万円、少なくとも5000万円は使っていた」。

・「総理の部屋に月1000万円。」

・「国会対策に使うことが多かった。」「衆議院国会対策委員長、参議院幹事長室に(月)500(万円)ずつもっていかなきゃならなかった。」「固定費」は「国対委員長」が「国会を動かしていくのに必要だったのではないですかね。」「これはある程度僕も疑問を感じながら、慣例だからと思って持っていかせましたけれども。あの当時は野党工作がいるときですからね。」機密費はどう使われたのか「知りません。それは、国会対策委員長に渡した後の使い方は知らない。」

・「盆暮れ」に「それぞれ総理を経験された方とか。」総理経験者の方には「顧問料のようなもんでね。せいぜい100万くらいですよ。」・・・総理経験者一人に年間計200万円。

・「あの頃北朝鮮と何とかしたいという、90年以来のアレがありましたから。そういう点で向こうに行く人は正規の金も出ないし…」直接北朝鮮に行かれる議員の方に。

・「(内閣官房の担当者から)「過去の実績が(ノートに)記録されておりますから、それを参考にしてやって頂いたら結構です」と言われた。」「(引き継ぎ帳に)書いてあることをそのまま引き継いで。」「これだけは従来から持っていってましたから、"これはきちっと引き継いでやってくださいよ"ということで引き継ぐわけですから」。「引き継いでいただいた帳簿によって配った」。「前の官房長官から引き継いだノートに、政治評論家も含め、ここにはこれだけ持って行けと書いてあった。」

固定費以外に、その時々の判断で支出される金は、月に「7、8000万(円)、一番よけいいったときで7000万(円)。」

・「(政治)評論をしておられる方々に、盆暮れにお届けするというのは額までみんな書いてありました」。「言論活動で立派な評論をしている人たちのところに盆暮れ500万円ずつ届けることのむなしさ。秘書に持って行かせるが『ああ、ご苦労』と言って受け取られる」。「テレビで立派なことをおっしゃりながら盆と暮れに官邸からのあいさつを受けている評論家には亡くなった方もいる」。「もうちょっと(金額の)ランクを上げてくれ」と言った人もいた。」「持って行って断られたのは、田原総一朗さん1人」。

・「「最近家を建てたから3000万円ほど祝いをくれ、というて」と総理から電話がかかってきたんだけど、官房長官、どうしたらいいと思う、と」・・・総理に電話をかけてきたのは、引退した政治家で、その時政治評論家をしていた人物だった。
「何を言うんですかと。”そんな人は政治家も、何もかも去った人じゃないですかと。総理に親しいからといって、そんな安易な電話をかけてきて、そんなことに金を出したらおかしくて笑い者になりますよ、と。ここからは一切出ませんよ。総理あんたは人がいいから、自分の金からも出しなさんなよ”と言ったらね、”分かった分かった”と総理は言いましたけどもね。結果的にはね、1000万円やそこらは出したのではないかと思ってますよ。」

・たかってくる議員さんも「ないとは言えませんね」。国会議員のなかにも、機密費をもらいにくる人々がいた。外遊、海外視察に向かう際の餞別として。それは長年続く慣例だった。「野党問わずに外遊をしたり、なにかするので、癖であそこに行ったらもらえるというのを知っている人がおりましたね。そういう人が来たことはあります。私は人を見て、お渡しする人と、しないで話のままで帰ってもらった人とがおりますし。」外遊する議員には「せいぜい、50万か100万(円)。」

・使われた官房機密費の中で、この使い方は良かったなと思うものとしては、「ある程度北朝鮮の情報を調べるというのは良かったと思うし、ロシアの政変を察知するのにも良かったなあと、そう思います。」

・機密費のあり方については「やはり外交的にはある程度公開できないものもあるのではないかと思います。ただ、その他のものについては公開していく、そういうやり方を透明化していくやり方がいいと思いますね。」「個人的にはある程度明確にして、不透明な、あるいは私的な官邸機密費の使い方ができないような状況を、きちっと仕組み的にしておくべきだなあ、と思いますね。」

・「機密費自体をなくした方がいい」。「政権交代が起きた今、悪癖を直してもらいたいと思い、告白した」。「私も年(84歳)で先がない。政権も代わったので悪弊を断ち切ってもらった方がいいと思った。自分はできなかったが、政治をゆがめる機密費は廃止した方がいい」。「国民の税金を表に出せない形で操作することはある程度必要かもしれないが、ちょっと大まか過ぎる。私も年だし、政権交代で変えてもらうのが一番いいという意味も含めて話した。」

・「しかるべき友達に「非常に問題だなあ」と話したことはあるが、内閣の根幹にかかわる問題を私が打ち切ることはできない。娘に「今ごろ明らかにするなら、なぜ(当時)やめられなかったの」と厳しく叱責(しっせき)されたのが一番こたえた。ただ、ある程度(表に)出たので、(現政権は)断りやすいのではないか。」

(3)週刊誌では「週刊ポスト」が精力的にこの問題を報じていることも、すでに紹介した。

「野中広務氏が暴露した「官房機密費」配布実名リスト公開」週刊ポスト2010年5月28日号

「”民意”はこうして捏造される 「世論誘導」と「人民裁判」の国ニッポン 「官房機密費実名リスト」に血相を変えたテレビ局大幹部と元官邸秘書官」週刊ポスト2010年6月4日号

「官房機密費マスコミ汚染問題 歴代官邸秘書官を連続直撃!」週刊ポスト2010年6月11日号。


(4)先日、内閣官房報償費(機密費)情報公開訴訟の原告、訴訟代理人らが集まり、色々話をし、情報交換などもしたのであるが、その際、上記の野中証言と週刊ポストの記事も話題に上った。

政治評論家で内閣官房機密費をもらっている者らがいること自体が問題であるが、そのような政治評論家をマスコミが、野中証言後も出演させ続けていることは、もっと問題である旨の意見が噴出した。

(5)野中氏は内閣官房機密費などの「カネ」を「「毒饅頭」と表現してきた。

以下では「毒饅頭=官房機密費」を食った評論家に絞って、「野中広務氏が暴露した「官房機密費」配布実名リスト公開」週刊ポスト(2010年5月28日号)の記事を紹介しておこう。
この記事は、ジャーナリストの上杉隆氏と週刊ポスト取材班によって書かれている。
今、私の手元に3枚のメモ書き・・・がある。1枚は下に「内閣」と印字され、政治評論を主とする言論人約20名と、万単位の金額と思しき「200」「100」といった数字が手書きで記されている。・・・

リストに掲載された評論家のうち、存命の人物に真偽を直撃取材した。
まずは三宅久之氏。5月7日に収録された『たかじんのそこまで言って委員会』(讀賣テレビ系、5月16日放送)がメディア特集を組み、私も出演した。そこで収録中、出演していた三宅氏にこの件を質問すると、「デタラメだ」と一蹴されたが、後日、改めて取材を申し入れると、三宅氏はこう答えた。
「第2次中曽根康弘内閣で官房長官になった藤波孝生(在任83〜85年)は早大の後輩で、『急に忙しくなって、約束していた2つの講演ができないので、代わりにやってくれませんか』と頼んできた。引き受けることにしたら秘書が100万円を持ってきた。藤波のポケットマネーだと思って受け取りました。領収書も書いていない。
 しかし、内閣からカネをもらったことは一切ないし、野中さんからは菓子折りひとつもらっていない。・・・」

三宅氏は毎日新聞社政治記者出身(1976年退社)だから、元ジャーナリストでもある。
その人物が、官房長官経験の経歴を持つ議員の秘書から領収書を書かずに100万円を受け取っていたのである。

講演料や交通費などを受け取るのは、一応、その金額が高額すぎる場合を別にすれば、それ自体は講演の対価等なので問題はない(ただし、政治家に依頼された講演を引き受けるるのは普通ありえない。どのよう講演だったのだろうか?)。

しかし、それとは別に100万円をもらい、領収書を書かなかったということは、政治資金収支報告書にも記載されていないのだろう。

となると、議員側から裏金100万円を平気で受け取ったことになる!

内閣官房機密費の引継ぎ用のリストに三宅氏の氏名が掲載されており、それが真実であるとなると、その裏金の原資は、内閣官房機密費であったのだろう。

いずれにせよ、政治評論家としてだけではなく、元ジャーナリストとしても大問題だ!
カネで言論が買われたことになるからだ!

(6)週刊ポストの記事でも紹介されているように、三宅氏は、「たかじんのそこまで言って委員会」(讀賣テレビ)でレギュラーとして、今での出演しているようだ。

http://www.ytv.co.jp/takajin/index.html

三宅氏がレギュラー出演している番組はもう一つあり、それは「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)もある。

http://www.tv-asahi.co.jp/tvtackle/

以上のレギュラー出演以外にも、時々出演している番組があるようだ。

(7)前掲の「週刊ポスト」の記事に戻ろう。
「リストは怪文書のたぐい」と牽制した上で、「永田町の常識」に従ったことを認めたのは俵孝太郎氏である。
「私はこの4半世紀、政府の様々な審議会委員を務めてきました。日当は1万3800円で、往復のタクシー代にもならない。政府としては私に苦労をかけたと思っていただろうから、半年に一度ぐらいずつ官房長官などが数10万円を持って挨拶に来ることはありました。こういうお金をもらっていたのは私だけではない。それを否定するなら嘘だと思う。・・・・」

(8)俵孝太郎氏は、サンケイ新聞・産経新聞政治部記者、同社論説委員(1969年8月に退社)であった。その後、文化放送でニュースキャスター(1978年9月辞任 )、フジテレビでニュースキャスター(1987年3月辞任 )を勤めた人物で、元ジャーナリストである。

その人物が平然と、半年に一度ぐらいずつ官房長官などから数10万円を受け取っていたのである!

現在、テレビ番組でレギュラー出演しているかどうか、私には分からない。

(9)少なくとも、内閣官房機密費である可能性の高い裏金を受け取ったと認めている三宅久之氏を、今でもマスコミが出演させるのは、どういうことなのだろうか!?

裏金も内閣官房機密費も受け取っていないことが確認されたから、出演させ続けているのだろうか!?

確認もせずに出演させ続けているのであれば、そのテレビ局は、カネで変われた言論人を登場させているのだから、ジャーナリズムの精神があるとはいえない!

(10)受け取った政治評論家を出演させるのは、ジャーナリズムの精神から言えば論外であるから、テレビ局に限らず新聞等も含めマスコミは、三宅氏に限らず、政治評論家については全員、裏金や内閣官房機密費の受け取りの有無を確認し、その結果を公表して、出演させ続けるかどうかを決定すべきである。

そうでなければ、裏金も内閣官房機密費も受け取っていない政治評論家が疑惑の目で見られ迷惑するだろう。

(この続きは、別の機会に書くことにしよう。)