(1)昨日(2010年)12月24日、最高検察庁は、いわゆる厚労省元局長無罪事件についての検証結果を法務大臣の私的諮問機関「検察の在り方検討会議」に報告し、マスコミにも公表したようだ。
(2)マスコミに公表されたのは、以下の2つの文書のようだ。
最高検察庁「いわゆる厚労省元局長無罪事件における捜査・公判活動の問題点等について(概要)」・・・A4用紙で表紙1枚、目次2枚、本文25枚
「検証結果報告書の概要」・・・A4用紙で4枚(これは上記の概要であろう。)
(3)私は、共同通信社の電話取材を受け、コメントした。
この配信記事を採用したと新聞には、私のコメントが紹介されているだろう(例えば「南日本新聞」「神戸新聞」は配信記事を掲載している)。
私のコメントは、事実関係の解明部分に対するものではなく、再発防止策に対するものである。
以前コメントした内容は、検察だけではなく、裁判所の改革も含めたものであったは、今回の私のコメント内容は、だいぶ短いため、検察改革に限定されているが、基本的にはそのときの趣旨の一部は同じである。
(4)時間がないので、以下、主たる再発防止策(全ての防止策ではない)に限定して簡潔に私の感想を書いておこう。
最高検の検証結果は、捜査体制が不十分だったことや検察内部のチェックが不十分だったことを認めたうえで、再発防止策まで言及している。
この点では、一定の前進が見られる。
だが、本気で再発を防止する気があるのか、その真剣さが感じられない。
言い換えれば、徹底的な改革を目指す姿勢が感じられないのである。
再発防止策における私の視点は、内部のチェック体制、外部によるチェック体制、裁判所との関係の3つである。
(5)内部のチェック体制
捜査体制が不十分で検察内部のチェックが不十分だったとなると、当然、検察官を大幅に増やさなければならないが、その点については明示されていない。
単なる配置転換で対応しているようにも読める。
検察官の人員は倍増すべきである。
また、私見では、捜査担当とそのチェック・起訴担当に分けるべきであると考えている。
報告書を見ると、高検と最高検にそれぞれ「特別捜査係検事を配置」し、「証拠関係の十分な検討等」を行わせるようだが、果たして私見の立場に近いものなのか、不明である。
検察官の大幅な増員なしに極限定された者だけでその役割を期待しても、十分機能するのか疑問である。
さらに、「速やかに取調べの録音・録画の試行を開始する」としているが、これが「全面」的可視化を意味するのか、明記されてはいないし(一部だけだと、むしろ危険である)、「試行」にとどまるのも、気がかりである。
(6)外部によるチェック体制
前述の取調べの全面可視化は検察内部におけるチェックに役立つだけではなく、外部によるチェックにも役立つ。
これは前述したとおりである。
また、被告人側への証拠の全面開示が求められるが、報告書では言及さえされてはいない。
(7)裁判所との関係
法的根拠のないまま、裁判官(判事)と検察官(検事)との人事交流がなされ、検事が判事に起用されるなどしているが、これは三権分立、司法権の独立の観点から考えて問題であるから、速やかに止めて、両者の緊張関係を構築すべきであるが、報告書では言及さえない。
(8)以上が私の感想である。
冤罪、でっち上げを繰り返さないためには、改革は検察に限定すべきではない。
それゆえ、法務大臣は、検察の改革を徹底すべきであるが、それにとどまらず裁判官を倍増する等、裁判所改革も行う必要があるから、そのための第三者機関を設置すべきである。
2010/12/24 17:57 【共同通信】
厚労省事件、組織的問題と認める 最高検が検証
厚生労働省の元局長村木厚子さんの無罪が確定した文書偽造事件の捜査・公判について最高検は24日、検証結果と再発防止策を法相の私的諮問機関「検察の在り方検討会議」に報告。大阪地検特捜部が見立てに合わない不利な証拠を軽視して取り調べで誘導、大阪高検、最高検のチェックも不十分だった「組織的問題」と認めた。
検証チーム座長の伊藤鉄男次長検事が報告後に記者会見し「誠に遺憾で、村木さんや国民の皆さまに深くおわび申し上げます」と謝罪した。
検証結果は、主任検事だった前田恒彦被告(43)が証拠のフロッピーディスク(FD)を改ざんした背景として、村木さんの立件を「ミッション(使命)」とする前特捜部長大坪弘道被告(57)ら上司のプレッシャーが影響した可能性を指摘した。
2010/12/24 19:23 【共同通信】
厚労省文書偽造の検証報告書要旨
最高検が24日公表した厚生労働省文書偽造事件の検証報告書要旨は次の通り。
【捜査の問題点】
元主任検事の前田恒彦被告らは、公的証明書の作成が2004年6月8日から10日ごろと想定していたが、フロッピーディスク(FD)の情報では同1日に証明書データが完成しており、想定と合わなかった。
前田被告は、1日はデータ作成日で文章を完成させた日と異なる可能性があり、データが証明書のもととなったとも断言できず、村木厚子元厚労省局長の関与を揺るがさず、今後の捜査で解明できると判断した。
証明書作成の日時や状況は、村木氏の指示の有無および時期に直接かかわる極めて重要な問題点で、ただちに強制捜査に着手せず、捜査を尽くし逮捕の可否を慎重に検討するのが相当だった。現段階で証拠関係を冷静に検討すれば起訴すべきではなかった。
村木氏の公判で、検察官調書の請求が却下された3人については、誘導等で客観証拠等と整合しない調書が作成されたと疑われるものが少なからず存在し、取り調べを反省すべき問題があった。
前田被告は捜査指揮、証拠分析・整理、資料作成、上司への報告のほとんど全てを1人でしていた。FDなど証拠の問題点を他の検察官と共有せず、解決法を見いだせないでいたことがうかがわれる。消極証拠や供述の不整合などの問題点を上司に報告せず、決裁を得ようとする意識や姿勢に問題があった。
前特捜部長大坪弘道被告は捜査会議を開くこともなく、元副部長佐賀元明被告に実質的な関与をさせず、重層的、組織的な検討をさせなかった。主要証拠の報告や提示も求めず、部下が消極的な意見を述べることを好まず、理不尽にしっ責することもあった。部下に消極証拠の報告をためらわせ、ひいては前田被告がFD問題を大坪被告に報告しなかった要因となった。
検事正や次席検事は前田被告の報告書が不十分だったのに補充させず、消極証拠の有無や内容を報告させなかった。大阪高検や最高検もFD問題などを把握せず、捜査着手や処分を了承した。
【公判上の問題点】
改ざん判明後に徹底調査していれば、弁護人に改ざんの事実を明らかにする等の対応、場合によっては公訴の取り消しも検討されたと思われる。
公判部長は改ざんの疑いを把握した以上、検事正から前田被告の公判立ち会いを指示された際、この問題に関する意見を述べるなど厳正な対応が必要だった。遅くとも論告までに調査等が実施されていれば、有罪を求めないなど適切な対応も検討されたと思われる。
【改ざん、犯人隠避】
検事による証拠改ざんは刑事司法の根幹を揺るがすもので断じて許されない。前田被告が、村木氏の関与がなかったと現実に考えていたと認めるのは困難。公判の紛糾や上司からのしっ責を避けるため改ざんをした。背景には、村木氏摘発が最低限の使命、と大坪被告から言われたことなどによるプレッシャーがあった可能性も否定できない。
証拠改ざんを知った検事が隠蔽工作で犯人を隠避することは言語道断。検事正や次席検事は問題の重要性を軽視し、大坪被告らの「問題がない」との結論を安易に受け入れ、庁務をとりまとめる者の対応として問題だ。
【再発防止策】
(1)11年2月から、特捜部の独自事件は検事長が指揮し、最高検・高検に特捜係検事を配置する。
(2)特捜部の独自捜査の身柄事件では、容疑者の取り調べの録音・録画を試行し、11年2月ごろまでに試行方針を策定、速やかに試行を開始する。
(3)特捜部の独自捜査事件では、主任検事は上司や高検にすべての証拠書類、主要証拠物の写しを提出。証拠上の問題点や検討結果を報告する。
(4)特捜部の独自捜査事件では、主任検事を総括的に補佐する検事を配置。消極証拠や証拠上の問題点を主任検事だけでなく上司にも報告する義務を負わせる。
(5)特捜部の独自捜査事件で部長・副部長は、当初の見立てに固執せず、証拠に基づき変更し、引き返す勇気を持って、捜査からの撤退も含め適切な指導や決裁の在り方を周知徹底する。
(6)公判担当検事は、捜査段階とは別の観点から証拠関係等を検討し、最終的に有罪判決を得ることが著しく困難と認められる場合等には、公訴取り消し等を行うべきか否かなどを検討する。
(7)11年4月から順次、押収した電子データは複写物等を作成して原本を封印。内容の解析等は原則、複写物を利用する。
(8)11年4月をめどに最高検に検証・指導担当の部署を設置し、再発防止策の実施状況の検証と必要な指導を行い、1年後をめどに検証結果を取りまとめて公表する。
(9)公正な検察権行使に関する基本原則等を作成・公表し周知徹底する。
(10)違法行為の発生への適正な対応を周知徹底。
(11)検事の配置は、全国的な適材適所が重要な課題。11年の早い時期に結論を得るよう検討する。
(12)取り調べメモの保管・管理の在り方につき、11年3月までに結論を出せるよう検討する。
(2)マスコミに公表されたのは、以下の2つの文書のようだ。
最高検察庁「いわゆる厚労省元局長無罪事件における捜査・公判活動の問題点等について(概要)」・・・A4用紙で表紙1枚、目次2枚、本文25枚
「検証結果報告書の概要」・・・A4用紙で4枚(これは上記の概要であろう。)
(3)私は、共同通信社の電話取材を受け、コメントした。
この配信記事を採用したと新聞には、私のコメントが紹介されているだろう(例えば「南日本新聞」「神戸新聞」は配信記事を掲載している)。
私のコメントは、事実関係の解明部分に対するものではなく、再発防止策に対するものである。
以前コメントした内容は、検察だけではなく、裁判所の改革も含めたものであったは、今回の私のコメント内容は、だいぶ短いため、検察改革に限定されているが、基本的にはそのときの趣旨の一部は同じである。
(4)時間がないので、以下、主たる再発防止策(全ての防止策ではない)に限定して簡潔に私の感想を書いておこう。
最高検の検証結果は、捜査体制が不十分だったことや検察内部のチェックが不十分だったことを認めたうえで、再発防止策まで言及している。
この点では、一定の前進が見られる。
だが、本気で再発を防止する気があるのか、その真剣さが感じられない。
言い換えれば、徹底的な改革を目指す姿勢が感じられないのである。
再発防止策における私の視点は、内部のチェック体制、外部によるチェック体制、裁判所との関係の3つである。
(5)内部のチェック体制
捜査体制が不十分で検察内部のチェックが不十分だったとなると、当然、検察官を大幅に増やさなければならないが、その点については明示されていない。
単なる配置転換で対応しているようにも読める。
検察官の人員は倍増すべきである。
また、私見では、捜査担当とそのチェック・起訴担当に分けるべきであると考えている。
報告書を見ると、高検と最高検にそれぞれ「特別捜査係検事を配置」し、「証拠関係の十分な検討等」を行わせるようだが、果たして私見の立場に近いものなのか、不明である。
検察官の大幅な増員なしに極限定された者だけでその役割を期待しても、十分機能するのか疑問である。
さらに、「速やかに取調べの録音・録画の試行を開始する」としているが、これが「全面」的可視化を意味するのか、明記されてはいないし(一部だけだと、むしろ危険である)、「試行」にとどまるのも、気がかりである。
(6)外部によるチェック体制
前述の取調べの全面可視化は検察内部におけるチェックに役立つだけではなく、外部によるチェックにも役立つ。
これは前述したとおりである。
また、被告人側への証拠の全面開示が求められるが、報告書では言及さえされてはいない。
(7)裁判所との関係
法的根拠のないまま、裁判官(判事)と検察官(検事)との人事交流がなされ、検事が判事に起用されるなどしているが、これは三権分立、司法権の独立の観点から考えて問題であるから、速やかに止めて、両者の緊張関係を構築すべきであるが、報告書では言及さえない。
(8)以上が私の感想である。
冤罪、でっち上げを繰り返さないためには、改革は検察に限定すべきではない。
それゆえ、法務大臣は、検察の改革を徹底すべきであるが、それにとどまらず裁判官を倍増する等、裁判所改革も行う必要があるから、そのための第三者機関を設置すべきである。
こうした学界サイドの披瀝ブログが増えること望んでいます。
現下の関心事である「小沢問題」に関する検察審査会の運営、経緯についての見解を伺いたいと思います。当然、検察審査会法の企図、権能などご教示いただければ幸甚です。