(1)昨日、前半の統一地方選挙の投開票が行われた、
大阪府議会では、大阪府知事が代表を務める「大阪維新の会」が総定数109議席のうち57議席を獲得し、過半数を制した。
もっとも、大阪市議選挙では、「大阪維新の会」は総定数86議席のうち33議席にとどまり、半数には届かなかった。
朝日新聞2011年04月11日
府議57 維新満開 過半数確保

 府議選、大阪・堺両市議選が10日投票、即日開票された。大阪維新の会は府議選で目標の過半数を獲得。大阪市議選と堺市議選でも第1党に躍進した。投票率は府議選が46・46%(前回44・90%)、大阪市議選が49・27%(同46・42%)。堺市議選が49・42%(同49・48%)だった。当日有権者数は府議選688万1109人、大阪市議選209万2815人、堺市議選が67万1812人。
 府議選(定数109=うち2議席は無投票)と大阪市議選(定数86)をみると、大阪都構想を掲げた維新の会は府議選で57人(選挙前29人)、市議選で33人(同13人)が当選した。
 民主は議席を大きく減らし府議選10人(同21人)、大阪市議選8人(同18人)。自民も府議選13人(同23人)、市議選17人(同20人)に減った。公明は府議選21人(同23人)、市議選19人(同20人)が当選。共産は府議選4人(同10人)、市議選8人(同14人)にとどまった。府議会でみんなの党は初めて議席を獲得、社民は議席を失った。

(2)そのため、橋下徹大阪府知事は、「敗北」を認め、大阪都構想をいったん白紙にすると表明したようだ。
NHK4月11日 13時50分
橋下知事 大阪都構想を白紙へ

 10日に投票が行われた統一地方選挙の前半戦の結果を受けて、地域政党「大阪維新の会」の代表を務める大阪府の橋下知事は、大阪都構想の実現に向けて構想をいったん白紙の状態にしてほかの政党に協議を持ちかけていく考えを示しました。
 統一地方選挙の前半戦で、大阪維新の会は、大阪府議会議員選挙で目標に掲げていた過半数を獲得し、大阪府議会と大阪市議会それに堺市議会の3つの議会でいずれも第一党となりましたが、大阪市議会では目標の過半数には届きませんでした。
 一夜明けて、橋下知事は記者団に対し、「大阪の将来像について市民、府民の皆さんにどれだけ関心をもって考えてもらえるかだけを考えていたが、投票率を見るかぎり、政治的なメッセージが弱かった。それに尽きる」と述べました。
 そのうえで橋下知事は、大阪都構想の実現に向けた協議について「府議会は過半数、市議会は過半数に届かずという状況なので、協議のテーブルに着くために大阪市議会の他党の皆さんには、大阪都構想はいったん白紙の状態にして協議を持ちかけなければいけない」と述べました。
 また、橋下知事は、ことし秋に行われる見通しの大阪市長選挙への対応について、みずからが立候補するかどうかは明言しませんでしたが、「今回の議席を前提にさらに市長選も取りに行き、そのような政治的パワーを背景にして、さらに協議を進めていく」と述べました。

(3)内容が不明な大阪都構想がいったん白紙にされたのは良いことだが、私の「今の関心」は、そこにはない。

大阪都構想をいったん白紙にさせた大阪市議会選挙よりも、「大阪維新の会」に過半数の議席を獲得させた大阪府議会選挙に関心があるのだ。

一言で言えば、大阪府議会議員を選出する選挙制度が非民主的だからこそ、「大阪維新の会」は過半数の議席を獲得できたのである。
なぜマスコミはこの問題点を指摘しないのか!?
不可解である。
そこで、以下この問題を詳しく指摘する。

(4)大阪府議会の今回の一般選挙の総定数は109である。

前述したように、「大阪維新の会」は、そのうち57議席を獲得し、第一党になっただけではなく、過半数の議席を獲得した。
議席占有率で言えば52%強である。

ところが、「大阪維新の会」の候補者の得票率は、半数に達せず40%程度である。

つまり、得票率では40%程度で、議席占有率は52%もあったのだ。
明らかな過剰代表である。

(5)他の政党は、その分、過少代表されていると予想できるが、果たして実際政党ごとに見ると、どうなのか?

民主党は10人の議席を獲得し議席占有率は9%程度だが、得票率は12%もあった。
つまり、過少代表されていた。

自民党は13議席を獲得し議席占有率は12%弱だが、得票率は15%もあった。
つまり、過少代表されていた。

共産党は4議席で議席占有率が4%に達していないが、得票率では11%を超えている。
明らかな過少代表である。

他方、公明党は21議席を獲得し議席占有率は19%もあったが、得票率は15%弱であった。
つまり、過剰代表されていたのである。

さらに注目すべきことは、公明党の得票率は15%弱、自民党の得票率は15%強で、自民党の方が公明党よりも得票率が高いのに、獲得議席・議席占有率では、公明党は21議席・19%、自民党は13議席・12%で、公明党の方が自民党よりも多い・高いのである。
明らかな逆転現象であり、8議席も差がついている。

また、共産党は公明党に比べ得票率がわずか3%弱しか劣っていないのに、議席占有率では15%強も差がついている。

(6)以上を一覧表にすると、以下のようになる。

2011年4月10日大阪府議会選挙における各政党の獲得議席数、得票率、議席占有率
政党名
獲得議席数
得票率
議席占有率
維新の会
57人
40.78%
52.29%
公明党
21人
14.49%
19.27%
自民党
13人
15.08%
11.93%
民主党
10人
12.07%
9.17%
共産党
4人
11.6%
3.67%
みんなの党
1人
0.75%
0.92%
社民党
0人
0.31%
0%
無所属
3人
4.93%
2.75%
合計
109人
100%
100%


(7)もし仮に比例代表選挙で大阪府議会選挙が行われていたとしたら、どのような結果になったのかを各政党の得票率に基づき試算しておこう。
(実際に比例代表選挙が行われた場合、有権者の投票行動は変わる可能性があるし、各政党の立候補のあり方も変わる可能性があるが、ここでは、あくまでも現行制度における得票率に基づく試算である。
また、「泉大津市及び泉北郡」定数1と「大阪狭山市」定数1は無投票区である(いずれも「大阪維新の会」の候補者が無投票当選)から、そこでの投票は考慮されないことになる。)

総定数109で、各政党の得票率に基づき各政党の比例配分議席数を試算すると、「大阪維新の会」は得票率40%程度なので比例分による議席数は45になる。
つまり比例代表選挙であれば45議席程度しか獲得できないのである。
言い換えれば、今回57議席獲得したが、なんと12議席も過剰代表されされているのだ。
大きな上げ底状態である。

また、公明党は、今回21議席獲得したが、得票率では15%に達していないので、比例配分すると16議席になる。
今回5議席も過剰代表されていることになる。

他方、共産党は今回4議席しか獲得できなかったが、得票率は11%を超えているから、比例配分すると13議席になる。
なんと9議席も過少代表されていることになる。

同じように、自民党や民主党も計算した。
今回13議席の自民党は比例配分では17議席になり、4議席仮過少表されていることになり、今回10議席の民主党は比例配分では13議席になり3議席過少代表されていることになる。

(8)この試算を一覧表にすると、以下のようになる。

2011年4月10日大阪府議会選挙における各政党の獲得議席数、得票率に基づき比例配分して試算した議席数、両者の議席差
政党名
獲得議席数
比例配分議席数
議席差
維新の会
57人
45人
−12人
公明党
21人
16人
−5人
自民党
13人
17人
+4人
民主党
10人
13人
+3人
共産党
4人
13人
+11人
みんなの党
1人
1人
±0人
社民党
0人
0人
±0人
無所属
3人
4人
+1人
合計
109人
109人

この一覧表を見ると明らかなように、「大阪維新の会」と公明党が過剰代表されており、共産党、自民党、民主党は過少代表されている。

また、「大阪維新の会」は今回過半数の議席を獲得したが、比例代表選挙であれば半数に達していないこともわかる。

さらに、今回の選挙で得票数の多い順番に政党を並べると(議席ゼロの社民党と、無所属を除く)、「大阪維新の会」、公明党、自民党、民主党、共産党、みんなの党の順になる。
しかし、比例配分議席数の多い順番に政党を並べると、「大阪維新の会」、自民党、公明党の順になり、公明党と自民党の順番が入れ替わるし、また、民主党と共産党は同じ第4位になる。

(9)なぜ、このように過剰代表、過少代表、逆転現象が生じたのかといえば、それは、大阪府議会議員を選出する選挙制度が民主的な選挙制度でないからだ。

議員定数の総数は先回の一般選挙では112だったが、今回の一般選挙から109になった(確か法定議員上限数は120だが、条例で109へと減員されている)。

そのうち、1人区は33もあり(33人)、2人区も21ある(42人)。
総定数109人のうち75人、つまり約69%が大政党に有利な1人区・2人区から議員が選出されるのだ。

だからこそ、衆議院の小選挙区本位の選挙制度参議院の選挙区選挙本位の選挙制度のように、大政党の過剰代表と小政党の過少代表、得票率と議席占有率の逆転現象が起るのである。

大阪府議会選挙の場合には、さらに、無投票当選が生じる問題もある

(10)大阪府議会選挙の議員定数と比較すると、大阪市議会議員を選出する選挙制度における各選挙区の議員定数は大きいので、以上のような欠陥は比較的小さい。

大阪市議会の議員定数は先回89だったが、今回の一般選挙では86に減員された。
2人区は6選挙区、3人区は8選挙区もあり、これらが全体に占める比率は約42%であり、この点で大政党に有利なものになっている(ここでは、これ以上言及しない)。

だが、1人区の選挙区はないし、各選挙区の議員定数は、以下の一覧表で分かるように、大阪府議会のそれよりも多いので、大阪府議会の場合に比べると小政党も議席を得る可能性はある。

大阪府議会選挙のうち大阪市の各選挙区の議員定数と大阪市議会選挙における各選挙区の議員定数
選挙区
大阪府議会議員定数
大阪市議会議員定数
北区
1人
3人
都島区
1人
3人
福島区
1人
2人
此花区
1人
2人
中央区
1人
2人
西区
1人
2人
港区
1人
3人
大正区
1人
3人
天王寺区
1人
2人
浪速区
1人
2人
西淀川区
1人
3人
淀川区
2人
5人
東淀川区
2人
6人
東成区
1人
3人
生野区
2人
5人
旭区
1人
3人
城東区
2人
5人
鶴見区
1人
3人
阿倍野区
1人
4人
住之江区
2人
4人
住吉区
2人
5人
東住吉区
2人
5人
平野区
2人
6人
西成区
2人
5人
合計
33人
86人

以上の一覧表を見てわかるように、大阪府議会の場合、大阪市における各選挙区が議員定数1と議員定数2だけで構成されている。
これに比べ、大阪市議会の場合には、1人区の選挙区がなく、議員定数5や議員定数6の選挙区もある。

そして、議員定数の合計は、大阪府議会選挙における大阪市の選挙区で33しかないのに比べ、大阪市議会選挙では86あるのだ。

(11)したがって、以上の問題点を改めるために、大阪府議会の選挙制度は、民主的で中立・公正な選挙制度、すなわち、無所属の立候補も認める比例代表制に改めるべきである(大阪市議会選挙も同様)。
そのための法律改正・条例改正が至急なされるべきである(これについては、別の機会に取り上げる)。
その際、議員定数は法定上限一杯まで増員すべきである。
その方が民意が議会に反映するからだ。

なお、私見については、ブックレット「議員定数を削減していいの?」を参照いただきたい。