1.民主主義も人権保障も否定または後退する「大阪都構想」

(1)自公政権は財界の要求に応え、構造改革(新自由主義)を強行し、格差社会を生みだした。
2009年総選挙の結果、政権交代が起きた。
民主党政権には、この格差社会の是正が期待された。

しかし、その期待は裏切られ続けている。

(2)橋下徹氏が大阪府知事選で当選したときの最大の理由は彼のタレント性にあったのだろう。

今でも大阪府民や大阪市民の中で橋下徹氏を支持している者は、民主党に裏切られたと思い、その期待を今度は自称「独裁者」橋下徹氏へとシフトしているのかもしれない。
そして、「大阪都構想」が何となく夢の構想ではないかと夢想しているのかもしれない。

だが、それは一般庶民にとっては悪夢だろう。

(3)地方自治は、本来、国政以上に民主主義や人権保障に資するから存在するはずである。

ところが、橋下氏は、弁護士でありながら、民主主義や人権について、あまりにも無知あるいは不勉強である。

(4)大阪府議会の選挙制度は非民主的であり、そのため「大阪維新の会」は40%の得票率で50%を超える議席占有率だったが、橋下氏はこの選挙制度の非民主主義性を問題視する発言をしたことを聞いたことがない。それどころか、彼が代表をつとめる「大阪維新の会」は、さらに議員定数を削減して非民主的度合いを高める条例改悪を強行した。

そして彼は独政治を肯定している。

(5)また、彼が教育を受ける権利も知らないことは、かつて、このブログでも指摘した。

大阪府議会で「大阪維新の会」は君が代起立斉唱義務付け条例も強行成立させている。

問題のある「教育基本条例」「職員基本条例」の制定も強行しようとしている。

(6)このように民主主義、人権保障について無理あるいは不勉強な地域政党の代表が構想する「大阪都構想」により、民主主義、人権保障が、より進むどころか、それらを否定または後退させることになるだろう。


2.二重行政そのものがムダとは言い難い!

(1)橋下氏は、簡潔にいえば、大阪府と例えば大阪市の二重行政がムダであるから、大阪市を解体し、二重行政を解消するために「大阪都構想」を主張しているようだ。

(2)しかし、そもそも二重行政そのものがムダと断言できるわけではない。
そのような主張を突き詰めれば、「地方自治は不必要で、国だけがあればよく、地方は国の出先機関にしてしまえ」といことになりかねない。
これだと、戦前に近いものになる。

あるいはまた、地方自治は必要だという立場に立ちながら、二重行政がムダであるという立場を突き詰めれば、「身近な市町村は必要だが、都道府県は不必要だ」ということにもなりかねない。

(3)もちろん、今の都道府県、市町村という二重構造において、ムダが絶対に生じないわけではないが、それは運用のあり方の問題であり、制度そのものの問題ではないだろう。

(4)ところで、この20年間で市町村合併が進んだ。
1999年まで3200を超える市町村があったのに、今ではその半分を少し上回る1700程度(割合でいえば53%)にまで減少している(参照、上脇博之『議員定数を減らしていいの?」119−120頁)。
地方自治体は市町村合併により広域化したが、地方は豊かになったのであろうか?
その逆であることは明白である。

(5)自公政権のもとで新自由主義の構造改革、つまり財界政治が強行され、国主導の市町村合併も行われた。

したがって「平成の大合併」は、福祉国家制作を否定した新自由主義のためのものであったから、市町村合併と共に福祉など一般庶民の暮らしに対する行政サービスは後退するのは当然のことであった。

(6)道州制の導入も、「平成の大合併」と同じように、財界が求めている。
言い換えれば、財界が要求して、道州制を実現する地ならしとして市町村合併が行われてきたとも言える。

http://www.kkc.or.jp/dousyusei/action/action.html

(7)橋下氏の「大阪府構想」で主張されている「大阪府と大阪市の二重行政の解消」を主張していたのは、関西経済同友会である。

関西経済同友会地域主権・NPO委員会「関西活性化のために大阪府と市の統合を」(2002年2月)は、大阪府と大阪市の統合と、「関西州」への移行を主張していた。

(8)それゆえ、橋下氏の「大阪府構想」の基本的内容は、新自由主義を主張する財界の主張内容と基本的に同じであるから、一般庶民のためではなく、財界のためのものなのである。
言い換えれば、福祉の充実ではなく、むしろ、福祉を切り捨て、財界の都合の良い政策を実現するためのものなのである。


3.専門家も指摘する、「大阪都構想」の問題点

(1)「大阪都構想」に問題があることは、大阪市も指摘しているようだ。
2010/10/14 17:47 【共同通信】
「府より市」実施が効率的 大阪都構想の問題点検討

 大阪市内での大阪府の事業は、市が行った方が効率的―。「ローカルパーティー大阪維新の会」の代表、橋下徹知事が掲げた府市を再編する「大阪都」構想について、大阪市が行財政面で多くの問題点があるとの検討結果をまとめていたことが14日、分かった。
 平松邦夫市長は大阪都構想を「市を分断するだけで市民に何の利益もない」と厳しく批判しており、来春の統一地方選に向け橋下、平松両氏の対立はさらに激しさを増しそうだ。
 大阪市は橋下氏が大阪都構想を訴え始めた1月ごろから問題点の検討を始めた。商工労働関連や都市整備などを「わざわざ府でやる必要があるのか」と疑問視。市内で納められる法人事業税など、2008年度決算で7550億円に上る府税をすべて市税として確保し、警察や府立高校などの府が負うべき事務以外は、市が行った方が効率的とまとめている。
 また市を九つの特別区に再編した場合、生活保護率で最大4倍、市税収入額で最大10倍の差が生じ「区ごとの格差が固定される」と指摘。市条例の区条例への変更や、戸籍などのデータ移行、職員の配置換えも必要で「手続きが膨大で行政事務が停止するのは確実」と強調する。

(2)もっとも、大阪市の検討結果は、自己保身だとして信用しない大阪府民、大阪市民もいるだろう。
そこで、最後に、専門家の検討結果を紹介しよう。

http://www.oskjichi.or.jp/modules/report/content0051.html

「大阪都構想」問題を検証
 〜東西の学者が語り合うシンポジウム(2011.2.11)に〜
 470人の府民が参加

鶴田廣巳・関西大学教授(大阪自治体問題研究所理事長):「大阪都構想は集権化による大規模なインフラ整備が最大の目的。福祉行政は基礎自治体におしつけるが、財源なき分権であり、行政責任の転嫁に過ぎない。世論調査では、府民は大阪都構想について『説明不足だ』と感じながらも、なんとなく賛成している人も多い。シンポジウムでは、東西の地方自治の専門家による議論で、大阪都構想の問題点を明らかにしたい」。

大阪停滞の原因は府市制度にはない

重森暁・大阪経済大学教授:「大阪都構想は、大阪の歴史的な経過や法制度などを踏まえて検討・熟慮された形跡はなく、当面の選挙にむけたワンフレーズ・ポリテックスとしての思いつきといった性格が強い。府と市の無用の対立を引き起こし、大阪経済の地盤沈下に拍車をかけるのでないか」。
宮本憲一・大阪立大学名誉教授:「大阪都構想は、大阪市・堺市を破壊する以外は改革の目的が不明確だ。大阪が抱えている問題は、大阪都構想でなくても府と市がしっかり協議すれば解決できる問題ばかりだ。大阪市のような大都市には経済や文化の集積がある。その大都市を簡単になくしてしまうのは許せない。蓄積された資産、人材を生かして大阪を発展させる基本方針をもつべきだ」。

木村收・元阪南大学教授(元大阪市財政局長):「大阪では1960年代からの急激な人口増により衛星都市で発生した様々な都市問題を府政がカバーする役割を担ってきた。橋下知事は『大阪府と大阪市は二重行政でムダだ』と言うが、府と市の図書館、体育館はどれも利用率は高く、市民にとってはムダでもなく問題はない」。

加茂利男・立命館大学教授:「政令指定都市は大阪だけでなく首都圏や中京圏にもある。全国で大阪だけが停滞していることを行政制度で説明できるのか。大阪の衰退は行政制度にあるのでなく、企業が東京や海外に移ったなど経済的な理由によるものとしか考えられない。病気の原因を間違えると、誤った薬を飲ませることになる」。
橋下知事が自ら代表となる地域政党「大阪維新の会」の運動についても「知事による府内市町村の自治に対する政治的な殴り込みだ。声の大きなリーダーが地方政治を好きなように牛耳り『仁義なき闘い』の世界になってしまう。お互いの自治を尊重しあう地方自治のルールや作法を崩壊させることになりかねない。橋下流の政治手法はファッショ的な気がする。見ようによっては日本の地方自治の危機だともいえる」と指摘しました。

大阪都になれば、財政危機が進む

柴田徳衛・東京都立大学名誉教授:「大阪都にすれば財政もうまくいくと言うが、国から5千億円ぐらいの交付金を受けなければもたない。しかし国からそのような交付金が出るかも不明であるし、都と特別区の間での財源の配分方法もはっきりしていない。東京都と大阪では財政規模も違う。もっと冷静に考えるべきだ」。

大森彌・東京大学名誉教授:「東京都は大企業が集中しているから財源が豊かであり、都から特別区にお金をまわすことができるが、財政が厳しい大阪ではその条件はない。もともと東京の都区制度は、戦時体制下で東京府が当時の東京市を吸収してつくった集権体制だ。特別区の自治が市町村よりも制約されるなど問題点が多い。最終的に都区制度は廃止される運命にある。橋下知事は東京をまねて都区制度をつくろうとしているが、時代錯誤だ」。
「大阪の指揮官を一人にする」という大阪都構想のねらいについても、「東京では都知事と特別区の区長は対立することも多い。特別区と東京都は対等な立場で協議して様々なことを決めている。都になれば司令塔が一本になると言うのも幻想だ」。

森裕之・立命館大学教授:「大阪は東京と違って税収が少なく、国からの交付税がなければ行政サービスができない。大阪都になれば、大阪市から約2700億円、堺市から約440億円の税収と地方交付税分が都に吸いあげられ、特別区に入る財源がさらに少なくなる。財政危機がさらに進み、住民サービスの低下は必至だ」。