はじめに

被告人・小沢一郎衆議院議員(元民主党代表)の刑事裁判の判決が東京地裁で本日(2012年4月26日)くだされた。
これについての簡単な感想を書く(いわゆる判例評釈ではない)。

なお、複数のマスコミからコメント依頼があった。

1.この事件及び判決について

(1)東京地裁の判決は小沢一郎氏を無罪であるという結論だった。

もっとも、その判決理由によると、小沢氏の「共謀共同正犯の成立を疑うことには、相応の根拠がある」等と判示しており、小沢氏を、黒に限りなく近い灰色であると判断している。

(2)東京地検特捜部は、4億円の原資がゼネコンからの裏献金であるとの見立てをしながら、小沢氏の岩手の自宅も東京の自宅も家宅捜索していなかったので、元々、小沢氏本人まで起訴する覚悟がなったのではないかとさえ思えてならない。

たとえ、その覚悟があったとしても、特捜部は小沢氏を十分有罪にする証拠を収集するよう努めたととは言い難いように思う。

だからこそ、検察審査会の2度の「起訴相当」議決の理由も、小沢氏を十分有罪にできるとの自信に溢れた内容ではなかった。
そもそも共謀は立証のハードルが高い。
だから、私は、秘書ら3名の有罪は確実であっても、検察審査会の議決理由を読んで、当時マスコミの取材に「小沢氏が無罪になる可能性が高い」旨コメントした。

検察審査会の小沢一郎「起訴相当」議決には2度驚いた!
予想外の小沢一郎氏の東京第5検察審査会2度目の「起訴相当」議決について

元秘書ら3名の裁判で一審判決も、大久保氏の共謀について一部認定されてはいない

(3)他方、元秘書ら3名の一審判決は虚偽記入・不記載を認定し有罪判決を下した(ただし元秘書らは控訴)。
政治資金収支報告書や金融機関の口座の写しなど客観的な証拠があり、3名の冒頭陳述内容も通用しない弁明で酷いものだったから、当然である。

小沢氏を無罪とした今日の判決も、秘書らによる土地公表の先送りや4億円の簿外処理、政治資金収支報告書への支出の計上を翌年にズラすことについて小沢氏が報告を受け、了承したことを認定している。

私は、裁判が始まってから、この事件の詳細が判明し、予想していた以上に秘書らが小沢氏の関与を窺わせる供述をしていた上に、いくつか墓穴を掘っていたので、小沢氏の有罪の可能性もあるかもしれない、と考えてきた。

しかし、今日の判決は、違法となる具体的事情について小沢氏が認識していなかった可能性があるので小沢氏の故意が十分立証されてはいないとして共謀を認定しなかった。

地裁の要求する共謀の立証のハードルは予想以上に高かった。

結局、小沢氏は陸山会の代表者でありながら、「秘書任せ」が裁判で結果的に通用し、少なくとも一審では逃げ切ったことになる。

(4)しかし、秘書らの裁判に続いて小沢氏本人の裁判でも予想通り虚偽記入・不記載が認定された上に、小沢氏の供述は信頼できない旨指摘された。

そうである以上、陸山会の代表者である小沢氏は、刑事責任とは別に、政治責任が問われるべきである。


2.改革の必要性

(1)一部の検察官(不起訴処分に不満だった者)の取調べや捜査報告書にも問題があったことが発覚した(判決も厳しく批判している)のだから、取調べの完全可視化や証拠開示などの検察改革、更には検察審査会における適正手続きの保障などが進められるべきであることは言うまでもない。
労働者の場合には身分保障が不可欠である。その法的整備が求められる。

なお、法務省は、いわゆる判検交流を廃止するようだ。
朝日新聞2012年4月26日5時49分.
検事・判事の人事交流廃止 刑事裁判の公正に配慮

 検察官が刑事事件の裁判官になったり、刑事裁判官が検察官になったりする人事交流が今年度から廃止されたことがわかった。裁判官と検察官の距離の近さが「裁判の公正さをゆがめかねない」との批判を受け、法務省が「誤解を生むような制度は続けるべきではない」と判断した。
 裁判官(判事・判事補)と検察官(検事)が互いの職務を経験する仕組みは「判検交流」と呼ばれ、裁判所と法務省が合意して続けている。このうち刑事分野の交流は、刑事事件を担当する裁判官と、捜査・公判を担当する検察官が入れ替わる形が中心で、主に東京地裁と東京地検の間で行われてきた。
 法務省は「正確な記録はない」としているが、東京弁護士会の調査によると、刑事分野での交流開始は1974年。2000年度以降は相互に年に1〜2人程度が出向し、約3年でもとの職場に戻っていた。

これは、私が賛同してきた改革の一つである。

(2)しかし、それだけでは不十分である。
政治資金規正法等も改正されるべきである。

 その主要な第一は、企業・団体献金を全面禁止すること。
民主党はマニフェストでこれを公約しながら、小沢氏が幹事長時代にこれを反故にしてしまった。
企業・団体献金は、政治腐敗の温床であり株主や労働組合員の人権を侵害しているから、即刻法律改正して全面禁止すべきである

(3)第二は、政治団体の代表者の刑事責任も問えるようにすること。
より具体的には、会計責任者の監督について注意を怠った場合に政治団体の代表である政治家の責任を問えるようにすること
会計責任者による収支報告の内容についての説明を受けることを代表に義務づけること、
あるいはまた、小沢氏が1993年の単著の中で主張しているように連座制を強化すること
などである。

(4)さらに、4億円の原資が不明のままであることを考えると、政治家の資産報告制度についても、配偶者や扶養の親族を対象に加えた上で、現金や普通預金も毎年報告させるようにするなど改善すべきである。