(1)橋下徹大阪市長は、今年(2012年)2月に大阪市特別顧問に依頼して、「労使関係についての調査」を行わせ、全職員に対し同調査に回答するよう職務命令を発したことについては、以下のように、このブログで批判する投稿を行なってきた。

大阪市職員に対する労使関係に関するアンケート調査内容とその中止等を求める声明の紹介

自称「独裁者」で議会制民主主義実質否定の橋下大阪市長が職員に対する人権侵害アンケート強行!

大阪府労働委の勧告が出た以上野村氏はアンケートを速やかに廃棄処分するしかない!

(2)市特別顧問は、当該職員のアンケート回答を未開封のまますべて廃棄した。
それは、アンケート実施からほぼ2ヶ月後のことであった。
毎日新聞 2012年04月07日 00時11分
大阪市:職員アンケート、未開封のまま廃棄…批判受け

 大阪市が市職員の政治・組合活動を調べるために回答を義務付けたアンケートについて、調査を担当した市特別顧問の野村修也弁護士は6日、回答書を未開封のまま全て廃棄した。アンケを巡っては、職員組合が「不当労働行為に当たる」と反発。日本弁護士連合会なども「思想良心の自由を侵害する」と批判していた。
 アンケは橋下徹市長の意向で、野村氏らの第三者チームが2月、消防局を除く全職員約3万5000人に実施。「正確に回答しない場合は処分の対象になりうる」と橋下市長名で回答を義務付けた。
 しかし、勤務時間外の行動や思想信条に関する質問が含まれており、日弁連などが憲法違反と批判。組合の救済申し立てを受け、大阪府労働委員会が調査中断を市に勧告した。
 野村氏はこの日、市役所内で、回答を記録したDVD1枚を金づちで粉砕し、19箱分の回答書を大型シュレッダーで次々に裁断した。野村氏は「他の調査で市の問題点を解明できた。調査に違法性はなかったが、第三者調査だと明確にすべきだった」と説明不足を認めた。
 廃棄に立ち会った市労働組合総連合は「回答の強要で職員は精神的負担を感じた。橋下市長は市民と職員に謝罪すべきだ」と話した。【茶谷亮、原田啓之】

(3)もっとも、この問題で橋下市長らは全く責任をとっていない。
誠実に反省していないからだろう。

(4)そこで、私が事務局長を務める兵庫県憲法会議が中心となって開催した今年5月3日の神戸憲法集会では、神戸憲法集会アピール「橋下市長(大阪維新の会代表)による憲法敵視の政治に抗議する」を採択した。

(5)それでも、自称「独裁者」の憲法敵視政治は暴走し続けている。

その重大な一つが、大阪市職員が職務時間外も含め政治活動にした場合に、当該職員に対し刑罰をかすという条例案をまとめ、制定を目指すというもの。
毎日新聞 2012年05月23日 02時30分
大阪市:職員の政治活動に刑罰 条例案をまとめる

 大阪市が市職員の政治活動を国家公務員並みに厳しく規制し、2年以下の懲役などの刑罰規定を盛り込んだ条例案をまとめたことが分かった。市は検察当局や総務省に相談し、7月議会に提案する方向で検討。市によると、実現すれば地方公務員の政治活動を罰則付きで規制する全国初の条例となるが、有識者からは「憲法が保障する政治活動の自由を侵害する恐れがある」との批判も上がっている。
 昨秋の市長選で平松邦夫前市長を支援した大阪交通労働組合の役員が選挙後、勤務中なのに「選挙のお礼」と称する組合の集会に参加していたことが発覚。市の第三者チームはその後の調査で、市の幹部職員らが組織ぐるみで前市長の支援をしていたと指摘し、橋下徹市長が「政治と行政を区別すべきだ」と条例を策定する方針を示していた。
 地方公務員の政治活動は、地方公務員法で制限されているが、罰則はない。一方、国家公務員は国家公務員法で、地方公務員よりも幅広い内容が禁止されている上、違反すれば3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される。条例案では、政党などの政治的団体の機関誌の発行や配布などを禁止する。【津久井達、原田啓之】

(6)この問題については、3つのマスコミ(マスメディア)から電話取材を受けた(共同通信は、23日午前中、私のコメントを含め記事を配信し同日の夕刊あるいは翌24日の朝刊で同記事を報じたものがある。23日午前中もう1社から電話取材を受けコメントしたが、私のコメントが使われたかどうかは、未確認である。同日午後コメントしたのは、以下で紹介する産経新聞である。)
産経新聞2012.5.24 00:38
早くも波紋、反発の声も 大阪市の政治活動規制条例案

 大阪市が職員の政治活動を刑事罰付きで制限する条例の制定を検討していることへの波紋が、早くも広がりつつある。専門家は憲法が保障する思想信条や表現の自由に対する侵害や、国家公務員法にはある罰則規定が地方公務員法にはないこととの整合性をめぐり、問題点を指摘。前例のない条例だけに、市から照会を受けた総務省も慎重な姿勢を崩さない。一方、組合からは反発の声が上がっている。
 地方公務員法は、自治体職員が特定の政党や政治団体を支持し、投票に勧誘したりする政治活動を制限。一方で国家公務員法と異なり、罰則は設けられていない。
 大阪市は制定へ向け、今月上旬に総務省へ文書を送付。(1)職員の政治活動を国家公務員並みに制限できるか(2)条例で刑事罰を規定できるか(3)地方公務員法で活動を制限されていない公営企業職員などを罰することはできるか−について見解を求めた。これに対し総務省の担当者は「経緯が不明で、現時点で見解を述べるのは難しい」としている。
 「地方公務員の政治活動は国家公務員と違い、その地域内に限られる。懲戒処分で事足りるものを、罰則まで設けるのはどうだろうか」。こう疑念を呈したのは、鳥取県知事や総務相を歴任した片山善博・慶應義塾大教授(地方自治論)。「議会の手続きを踏めば条例の制定そのものは可能」との見方を示しながらも、「そこまで厳しくするのが妥当かどうかは議論の余地がある」とした。
 上脇博之(ひろし)・神戸学院大法科大学院教授(憲法学)は「勤務時間外の活動までも規制の対象とするならば、思想信条、表現の自由を保障した憲法に違反する」と指摘する
 市労働組合連合会(市労連)の支援を続ける北本修二弁護士も「条例制定そのものが(罰則規定のない)地方公務員法の趣旨に反するのではないか」と懸念を示す。
 また、市労連の幹部は「もし条例が実現しなければ『現行の法律が悪い』と批判するのだろう。話題づくりのためにしか思えず、反論する気にもならない」と憤りを隠さなかった。

(7)これまでもブログで述べてきたが、国家公務員も地方公務員も、他の職業の人々と同じように、職務外に政治活動することは基本的人権として憲法が保障している(第21条)と解する立場が妥当である。

民主主義国家であれば、当然、誰でも政治活動は保障されるというのが、大原則である。

したがって、公務員の政治活動を公務時間外まで禁止し、罰則をかすのは、人権侵害であり、憲法違反であり、それゆえ、国家公務員法(第102条)は、違憲である(委任の問題点もあるが、ここではこれ以上言及しない)。

橋下市長が制定を目論んでいる条例案の憲法問題の第一は、この点にある。

(8)第二の憲法問題は、地方公務員法が法律に違反して政治活動を行なった公務員にたいし罰則をかしていないのに、橋下市長が制定を目論んでいる条例案が罰則をかそうとしている点での問題である。

憲法は、地方公共団体の条例制定権を「法律の範囲内」でしか認めていない(第94条)。
第94条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

ここでの「法律の範と囲内」について研究者の間では憲法解釈上幾つかの立場があるが、私は、地方自治による憲法破壊政治に対する”歯止め”であると解している。

つまり、地方公共団体が住民の人権や民主主義を国(国法)よりも保障する方向でも条例制定は許容しているが、その逆の、人権や民主主義を国(国法)よりも保障しない方向での条例制定は許容していない、という立場である。

したがって、私見によると、
例えば、国がいわゆる情報公開法を制定する前に、全国の地方公共団体がそれぞれ情報公開条例を制定し、形式的あるいは実質的に”知る権利”を保障してきたが、このような条例制定それ自体は、憲法が許容しているが、
地方公共団体が国法に反して、特定の人々の政治活動や選挙権・被選挙権を剥奪する、あるいは制限することは、それ自体憲法が許容していない、
ということになる。

それゆえ、地方公務員法が地方公務員の政治活動に罰則をかしていないにもかかわらず、大阪市が条例で罰則をかしてしまえば、憲法違反になる。

(9)以上のように、橋下市長が制定を目論んでいる条例案は、二重の意味で憲法違反であるのではなかろうか!

(10)公務員が公務時間中に、政治活動をしたり選挙運動活動を行っていた場合には、行政処分で対処することが可能でありし、現に、そうすれば良いのである。

それにもかかわらず、二重の憲法違反になる条例を制定して、政敵である公務員の人権を不当に剥奪・制限し、民主主義を後退させることは、手段を選ばず政敵を弾圧するもので、あまりにも卑怯であり、独裁者の手法である、と断ぜざるを得ない。

(11)橋下氏は、大阪市長であり、公務員であるから、当然、現行憲法を尊重し、擁護する義務がある(憲法第99条)。
第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

それゆえ、橋下氏がそもそもこの義務を果たす気がないのであれば、市長を辞任すべきである!