1.政治活動「原則懲戒免職」撤回しても大阪市の「職員の政治的行為の制限に関する条例案」の問題は解消しない!

(1)大阪の橋下徹市長は公務時間外を含め市職員の政治活動を全面的に(あるいはほぼ全面的に)禁止し、当初は、違反した職員に対して刑罰をかそうとしていた。

これについては、ブログで批判した。

橋下・大阪市の職員の政治活動への罰則化条例案は二重に違憲!

(2)国でさえも罰則化を問題にしたため、橋下市長は、今度は、違反した職員に対し「原則懲戒免職」処分にしようとした。

これについても、ブログで批判した。

橋下・大阪市長が市職員の政治活動を懲戒免職しても違憲!

(3)他からも批判があり、橋下市長は、違反者に対する「原則懲戒免職」を撤回したようだ。
朝日新聞2012年7月13日
政治活動「原則免職」撤回 大阪市職員条例案が成立へ

 大阪市職員の政治活動を国家公務員並みに規制する「職員の政治的行為の制限に関する条例案」が、7月市議会で成立する方向となった。提案した橋下徹市長と、公明党市議団は12日、条例違反者は「原則懲戒免職」としていた原案を「戒告、減給、停職または免職処分ができる」と修正することで合意した。
 橋下氏と公明はまた、保護者の声を教育現場に反映させることをめざす「市立学校活性化条例案」についても修正で大筋合意。市幹部らの組織的な選挙活動への関与を禁じる「政治的中立性を確保するための組織的活動の制限に関する条例案」と、労使交渉ルールの厳格化を定めた「労使関係に関する条例案」は、橋下氏提出の原案に公明が賛成する方向で、いずれも7月議会で成立する見通しとなった。
 橋下氏は当初、市職員の政治的行為を制限する条例案について、国家公務員法と同様の罰則規定を設け、条例に違反する政治活動をした職員に刑事罰を科す方針を表明。しかし、政府が「地方公務員法に違反する」との答弁書を閣議決定したため、違反者は「原則として懲戒免職処分」との条例案を提出していた。

(4)しかし、上記報道のとおり修正がなされたとしても、大阪市の「職員の政治的行為の制限に関する条例案」の重大な問題は解消してはいない。

大阪市職員が「公務時間内」に政治活動した場合に行政処分されることには条例上問題がなくなったものの(ただし、実際の運用が適正になされるかどうか(原則懲戒免職処分になっていないか)は監視し続けなければならないっだろう)、同職員が「公務時間外」に政治活動した場合にも行政処分される点は撤回がなされておらず、変わりないからだ。

繰り返し言うが、公務員が「公務時間外」に政治活動することを全面禁止し、違反者を行政処分することになれ、それは、憲法の保障している政治活動の自由を侵害するものであり、人権侵害となる。

したがって、大阪市の「職員の政治的行為の制限に関する条例案」が大阪市職員の「公務時間外」の政治活動まで禁止することを断念し、原則として「公務時間内」に限定しない限り、当該条例が制定されても、違憲であることには変わりないのである。


2.人権論の入門的解説が必要!?

(1)ところで、ある人物(この人物を以下「A氏」と表記する)が私の主張を自身のブログで取り上げ、外国(の一部)の場合を紹介しながら、私を名指しして質問しておられる。
その投稿は、あるところに(私の投稿の一部も転載されているところ)転載されてもいる。

(2)これまで、私は、私のブログに書き込みがあった場合、時間的余裕さえあれば応答してきたものの、他人が自身のブログで、私を名指しして質問した場合には(私は、それに気づいていないこともあって)これまで正式に応答してこなかった。

もし正式に応答してしまえば、次々に私を名指しした質問が各ブログで投稿された場合、それに全て応答しなければならなくなってしまいかねないが、私は仕事の合間にこの部ログで投稿しているため、すべての質問に正式応答する時間がないからである。
それゆえ、A氏の質問にも、これまで応答してこなかった。

(3)A氏の質問にこれまで応答してこなかった、もう一つの理由がある。
それは、A氏のブログの投稿にも転載先にも、A氏に対する反論が書き込まれており、私があえて正式に応答する必要はない、と感じたからでもある。

(4)ただ、A氏は、その自己紹介を読むと、法律学・憲法学の専門家ではないようだし、A氏の意見に同調している者らのほどんども同専門家ではないため、私が問題していることが正しく理解されていないと思えるので、上記の理由で正式に応答しないものの、人権論の入門的な解説を書いて、専門家以外の方々に、橋下市長の主張の問題点を理解しもらうことも必要なのかもしれない、と思い始めたのである。

解説とは言っても、ブログで書けることは限られているので、極簡単な解説しか書けない(詳細は専門書を読んでいただくしかない)。


3.人権論の入門的解説と公務員の政治活動の自由の原則保障

(1)そもそも「人権」とは、人間が人間らしく生きてゆくために不可欠な権利である。
この人権は国家や地方公共団体などの公権力によって侵害されてはならない。

それゆえ、人権は、原則として、日本国籍の保有の有無に関係なく、男女の性別に関係なく、年齢に関係なく・・・・・すべての人間に保障される(ただし、個々の人権によっては例外もある)。

日本国憲法もこの点は同じである。

(2)もちろん、人権を制約・制限することが許される場合がある(なお、第19条の思想・信条の自由は絶対的に保障され、制約は許されない。)。

日本国憲法も、いわゆる「公共の福祉」によって人間の制約・制限を許容している(第12条・第13条。なお、経済活動に関する人権は、第22条・第29条で、それ以上の製薬が許容されているが、以下ではこの解説は行わない。)。

しかし、これを広く解釈して、国の政治的判断や恣意的判断により人権を不当に制限することは許されない。

(3)したがって、人権は原則保障されなければならず、制限されるのは例外であり、この原則例外の関係が逆転することは許されない。

ましてや人権を全面禁止することは許されないのである。

(4)以上のことは、当然、「政治活動の自由」にも妥当する。

政治活動の自由は、他の人権と同じように、すべての人間に保障される(ただし、外国人の場合には議論の余地があるが、ここでは取り上げない)。
したがって、このことは公務員にも妥当するから、公務員にも、政治活動の自由は保障され、この人権が制約されるのは、あくまでも例外的な場合である。

(5)日本国憲法は、公務員について、以下のように定めている。

第15条第2項「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」

これを根拠に公務員の政治活動の自由を全面的に(あるいは大幅に)禁止すべきであると解するのは、憲法解釈論として妥当ではない。

公務員にも私生活があるからだ。
公務員に対して、私生活においても国民全体のために言動しろ、と憲法が命じているとは到底解し得ないからだ。

したがって、公務員の私生活において、政治活動をするかどうかは、公務員自身が自己判断して行動すればよいのであって、公務員にも政治活動の自由は保障されると憲法解釈されるべきなのである。

(6)もちろん、私生活において公務員が自己の地位を悪用して政治活動をすることは、制約されても仕方ない。

しかし、公務員の政治活動を全面的に(あるいは大幅に)禁止することは、許されないのであって、一部であれ制限するには正当な理由が必要になる。


4.橋下大阪市長は市職員の政治活動を全面禁止しようとしている!

(1)先程紹介したA氏は、そのブログの文章を読むと、橋下大阪市長が市職員の政治活動を全面的に(あるいは、ほぼ全面的に)禁止し、憲法が保障している政治活動の自由を全面(あるいは、ほぼ全面)否定しているということを、知っておられないようにも思える。

そうであれば、A氏やその支持者は大きな勘違いをしていることになるだろう。
以下、説明しよう。

(2)地方公務員法は、その第36条で、「政治行為の制限」を定めている。
(政治的行為の制限)
第三十六条  職員は、政党その他の政治的団体の結成に関与し、若しくはこれらの団体の役員となつてはならず、又はこれらの団体の構成員となるように、若しくはならないように勧誘運動をしてはならない。

2  職員は、特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、次に掲げる政治的行為をしてはならない。ただし、当該職員の属する地方公共団体の区域(当該職員が都道府県の支庁若しくは地方事務所又は地方自治法第二百五十二条の十九第一項 の指定都市の区に勤務する者であるときは、当該支庁若しくは地方事務所又は区の所管区域)外において、第一号から第三号まで及び第五号に掲げる政治的行為をすることができる。
一  公の選挙又は投票において投票をするように、又はしないように勧誘運動をすること。
二  署名運動を企画し、又は主宰する等これに積極的に関与すること。
三  寄附金その他の金品の募集に関与すること。
四  文書又は図画を地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎(特定地方独立行政法人にあつては、事務所。以下この号において同じ。)、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。
五  前各号に定めるものを除く外、条例で定める政治的行為

3  何人も前二項に規定する政治的行為を行うよう職員に求め、職員をそそのかし、若しくはあおつてはならず、又は職員が前二項に規定する政治的行為をなし、若しくはなさないことに対する代償若しくは報復として、任用、職務、給与その他職員の地位に関してなんらかの利益若しくは不利益を与え、与えようと企て、若しくは約束してはならない。

4  職員は、前項に規定する違法な行為に応じなかつたことの故をもつて不利益な取扱を受けることはない。

5  本条の規定は、職員の政治的中立性を保障することにより、地方公共団体の行政及び特定地方独立行政法人の業務の公正な運営を確保するとともに職員の利益を保護することを目的とするものであるという趣旨において解釈され、及び運用されなければならない。

(3)この条項のうち、第3項・第4項・第5項は、必ずしも違憲とは言えない、制限することがやむを得ない場合に相当するかもしれないが、第1項・第2項(ただし書を除く)は公務員の政治活動・選挙運動活動を不当に制限するものであろう。

(4)橋下市長らが制定を目指している大阪市の「職員の政治的行為の制限に関する条例案」は、以下のようである。
(もし、間違いがあれば、気づいた方、教えて下さい。)
第1条(趣旨)
この条例は、地方公務員法の政治的行為の制限に関し必要な事項を定めるものとする。

第2条(条例で定める政治的行為)
(1)職名、職権又はその他の公私の影響力を利用すること
(2)賦課金、寄附金、会費又はその他の金品を国家公務員又は本市の公務員に与え支払うこと
(3)政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し編集し配布し又はこれらの行為を支援すること
(4)多数の人の行進その他の示威行動を企画し、組織し、若しくは指導し、又はこれらの行為を援助すること
(5)集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声機、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること
(6)政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図書、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し、若しくは配布し、若しくは多数の人に対して朗読し、若しくは聴取させ、又はこれらの用に供するために著作し、若しくは編集すること
(7)政治的目的を有する演劇を演出し若しくは主宰し又はこれらの行為を援助すること
(8)政治上の主義主張又は政党その他の政治的団体の表示に用いられる旗、腕章、記章、えり章、服飾その他これらに類するものを製作し又は配布すること
(9)勤務時間中において前号に掲げるものを着用し又は表示
(10)何らの名義又は形式をもってするを問わず、前各号の禁止又は制限を免れる行為をすること

第3条(本市の区域外から行う政治的行為)
職員が法第36条第2項第1〜3号及び前条各号に掲げる政治的行為を、電話をかけ、又はファクシミリ装置を用いて送信する方法その他の方法により、本市の区域外から本市の区域内にあてて行った場合は、当該政治的行為は本市の区域内において行われたとみなす。

第4条(懲戒処分)
任命権者は、職員が法36条第1〜3項の規定に違反して政治的行為を行った場合には、「地方公務員の政治的行為に関する質問趣意書」に対する内閣の答弁の趣旨を踏まえ、当該職員に対し原則として懲戒処分として免職の処分をする等の必要な措置を公正かつ厳格に行うものとする。

第5条(施行細目)
条例の施行に関し必要な事項は任命権者が定める。

ただし、以上のうち、第4条は、前記紹介報道によると修正されるようである。

(4)上で紹介した法律(地方公務員法)と条例案を見て、「公務時間外に大阪市職員に禁止されず、許されている政治活動」を具体的に挙げられる方がどれだけあるだろうか?

たとえ、それを挙げられるとしても、違反者は行政処分を受けるため、大阪市職員は委嘱して政治活動を一切行わない可能性がある。

(5)その危惧は、以下の報道にあるように橋下市長が上記紹介条例案を通じて大阪市職員に対して国家公務員並みの政治活動の制限をかすと説明しているから、オーバーなものではないだろう。
MBS(07/06 19:04)
■大阪市議会開会 公務員の政治活動制限条例案

 橋下市長が組んだ、初めての本格予算を審議する大阪市議会が開会しました。
 政治活動を行った職員を原則、懲戒免職とする条例案の審議にも注目が集まっています。
 補正予算案を審議する今回の議会で、地方公務員の政治活動を国家公務員並みに制限する条例案が提案されました。
 去年の市長選では、役所ぐるみで当時の現職だった平松市長を応援したことを橋下市長が問題視。
 公務員による政治活動を制限する、条例案の提案にいたりました。
 条例が制定されれば、違反者は原則、懲戒免職となります。
 「本市職員に対し、国家公務員並みの政治的行為の制限を課し、政治的中立性を確保することを目的に制定するものです」(大阪市 橋下徹市長)
 また、市長選の3か月前から、候補者の政策や顔写真を市の広報に用いないことなどを定める条例案も提案されています。

(6)そこで、国家公務員法とそれに基づく人事院規則の内容を見ておこう。

まず、国家公務員法である。
(政治的行為の制限)
第百二条  職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。
2  職員は、公選による公職の候補者となることができない。
3  職員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。

この条項のうち、特に人権保障上問題になるのは、第1項である。

(7)次に人事院規則である。

国家公務員法102条1項の委任に基づく人事院規則14―7は、禁止される政治行為を具体的に定めている。
人事院規則一四―七(政治的行為)
(昭和二十四年九月十九日人事院規則一四―七)
最終改正:平成一五年一月一四日人事院規則一―三七

 人事院は、国家公務員法 に基き、政治的行為に関し次の人事院規則を制定する。

(適用の範囲)
1  法及び規則中政治的行為の禁止又は制限に関する規定は、臨時的任用として勤務する者、条件付任用期間の者、休暇、休職又は停職中の者及びその他理由のいかんを問わず一時的に勤務しない者をも含むすべての一般職に属する職員に適用する。ただし、顧問、参与、委員その他人事院の指定するこれらと同様な諮問的な非常勤の職員(法第八十一条の五第一項に規定する短時間勤務の官職を占める職員を除く。)が他の法令に規定する禁止又は制限に触れることなしにする行為には適用しない。
2  法又は規則によつて禁止又は制限される職員の政治的行為は、すべて、職員が、公然又は内密に、職員以外の者と共同して行う場合においても、禁止又は制限される。
3  法又は規則によつて職員が自ら行うことを禁止又は制限される政治的行為は、すべて、職員が自ら選んだ又は自己の管理に属する代理人、使用人その他の者を通じて間接に行う場合においても、禁止又は制限される。
4  法又は規則によつて禁止又は制限される職員の政治的行為は、第六項第十六号に定めるものを除いては、職員が勤務時間外において行う場合においても、適用される。
(政治的目的の定義)
5  法及び規則中政治的目的とは、次に掲げるものをいう。政治的目的をもつてなされる行為であつても、第六項に定める政治的行為に含まれない限り、法第百二条第一項の規定に違反するものではない。
一  規則一四―五に定める公選による公職の選挙において、特定の候補者を支持し又はこれに反対すること。
二  最高裁判所の裁判官の任命に関する国民審査に際し、特定の裁判官を支持し又はこれに反対すること。
三  特定の政党その他の政治的団体を支持し又はこれに反対すること。
四  特定の内閣を支持し又はこれに反対すること。
五  政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し又はこれに反対すること。
六  国の機関又は公の機関において決定した政策(法令、規則又は条例に包含されたものを含む。)の実施を妨害すること。
七  地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)に基く地方公共団体の条例の制定若しくは改廃又は事務監査の請求に関する署名を成立させ又は成立させないこと。
八  地方自治法 に基く地方公共団体の議会の解散又は法律に基く公務員の解職の請求に関する署名を成立させ若しくは成立させず又はこれらの請求に基く解散若しくは解職に賛成し若しくは反対すること。
(政治的行為の定義)
6  法第百二条第一項の規定する政治的行為とは、次に掲げるものをいう。
一  政治的目的のために職名、職権又はその他の公私の影響力を利用すること。
二  政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し又は提供せずその他政治的目的をもつなんらかの行為をなし又はなさないことに対する代償又は報復として、任用、職務、給与その他職員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得ようと企て又は得させようとすることあるいは不利益を与え、与えようと企て又は与えようとおびやかすこと。
三  政治的目的をもつて、賦課金、寄附金、会費又はその他の金品を求め若しくは受領し又はなんらの方法をもつてするを問わずこれらの行為に関与すること。
四  政治的目的をもつて、前号に定める金品を国家公務員に与え又は支払うこと。
五  政党その他の政治的団体の結成を企画し、結成に参与し若しくはこれらの行為を援助し又はそれらの団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となること。
六  特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないように勧誘運動をすること。
七  政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助すること。
八  政治的目的をもつて、第五項第一号に定める選挙、同項第二号に定める国民審査の投票又は同項第八号に定める解散若しくは解職の投票において、投票するように又はしないように勧誘運動をすること。
九  政治的目的のために署名運動を企画し、主宰し又は指導しその他これに積極的に参与すること。
十  政治的目的をもつて、多数の人の行進その他の示威運動を企画し、組織し若しくは指導し又はこれらの行為を援助すること。
十一  集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること。
十二  政治的目的を有する文書又は図画を国、特定独立行政法人又は日本郵政公社の庁舎(特定独立行政法人及び日本郵政公社にあつては、事務所。以下同じ。)、施設等に掲示し又は掲示させその他政治的目的のために国、特定独立行政法人又は日本郵政公社の庁舎、施設、資材又は資金を利用し又は利用させること。
十三  政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し若しくは配布し又は多数の人に対して朗読し若しくは聴取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し又は編集すること。
十四  政治的目的を有する演劇を演出し若しくは主宰し又はこれらの行為を援助すること。
十五  政治的目的をもつて、政治上の主義主張又は政党その他の政治的団体の表示に用いられる旗、腕章、記章、えり章、服飾その他これらに類するものを製作し又は配布すること。
十六  政治的目的をもつて、勤務時間中において、前号に掲げるものを着用し又は表示すること。
十七  なんらの名義又は形式をもつてするを問わず、前各号の禁止又は制限を免れる行為をすること。
7  この規則のいかなる規定も、職員が本来の職務を遂行するため当然行うべき行為を禁止又は制限するものではない。
8  各省各庁の長、特定独立行政法人の長及び日本郵政公社の総裁は、法又は規則に定める政治的行為の禁止又は制限に違反する行為又は事実があつたことを知つたときは、直ちに人事院に通知するとともに、違反行為の防止又は矯正のために適切な措置をとらなければならない。

(8)以上の国家公務員法及び人事院規則を見て、「公務時間外に国家公務員に禁止されず、許容されている政治活動」を具体的に挙げられる方がどれだけあるだろうか?

「選挙における投票」以外の政治活動は、全面的に(あるいは、ほぼ全面的に)禁止されていると言っても過言ではないだろう。

(9)前述の地方公務員法及び大阪市の「職員の政治的行為の制限に関する条例案」を、以上の国家公務員法及び人事院規則と比較して、大阪市職員に禁止されていない政治活動を挙げるのであれば、ひょとすると挙げられるかもしれないと思う方もあるかもしれない。
だが、前述の地方公務員法及び大阪市の「職員の政治的行為の制限に関する条例案」により、大阪市職員の政治活動は、国家公務員並みに禁止されていると橋下市長が公言する以上、地方公務員法及び大阪市の「職員の政治的行為の制限に関する条例案」が禁止する政治活動は、国家公務員法及び人事院規則と同じであると解して大阪市が運用を行う可能性が高いのではなかろうか。

そうなると、大阪市職員も国家公務員同様「選挙における投票」以外の政治活動は全面(あるいは、ほぼ全面)禁止されていることになるだろう。
たとえ「国家公務員に禁止されず、許容されている政治活動」を具体的に挙げられたとしても、違反者は行政処分を受けるといわれれば、公務員は萎縮して政治活動を一切行わないだろう。

(10)このように公務員の政治活動を全面(あるいはほぼ全面)禁止することは日本国憲法が許容してはいない。

日本国憲法が許容しているのは、どうしても公務員の政治活動を制限しなければならないものだけである。


5.外国(先進国)の場合

(1)私は、公務員の政治活動の自由とその制限について、外国(先進国)の場氏を詳細に知っているわけではない。
また、諸制度が異なる外国と単純比較するのは、学問的に問題がある。

とはいえ、橋下市長が目指しているように全ての公務員に政治活動の自由を一切(あるいはほとんど)保障せず、公務員の政治活動を全面(あるいはほぼ全面)禁止しようとするような先進国は。私の知る限り存在しないのではなかろうか。

(2)冒頭是紹介したA氏はアメリカの場合を挙げているが、私の知る限り(下の紹介論文を参照)アメリカは全ての公務員の政治活動を一律に全面禁止してはいない。

むしろ、アメリカは、公務員の任用制度のあり方が日本とは異なるとはいえ、公務員の政治活動の自由を認めた上で、一部の有害な政治活動を制限しているようである。
(もっとも、実際の個々の制限が全く問題がないかどうかは別に検討する必要がある。)

(3)アメリカ以外の先進国も、ほぼ同様ではなかろうか。

(4)以下では、インターネットで読むことができる論文のみ紹介する。

佐伯祐二「アメリカ公務員法における政治的行為の制限」
http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/metadb/up/kiyo/AN0021395X/HLJ_20-2_211.pdf

佐伯祐二「合衆国公務員法との比較から見た政治的行為の制限について」
http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/metadb/up/kiyo/AA12028691/HiroshimaLawRev_2_93.pdf

憲法審査会事務局・那須なす典子「米英仏における公務員の政治的行為の制限」
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2011pdf/20110701118.pdf

自治労連弁護団「地方公務員の政治的行為に刑事罰を科すことは許されない」
http://www.jichiroren.jp/download/200505.pdf

(5)なお、ここでの論点ではないが、これらの国で公務員の政治活動が一部制限されていることをもって直ちに日本でも全く同様に一部制限できる、という結論になるわけではなく、諸制度の違いにも注目しながら別個に検討されるべきであることを付記しておく。