(1)自民党・公明党は、一刻も早い総選挙により政権奪還を目指している。
にもかかわらず、費税率引き上げを柱とする社会保障・税一体改革関連法の成立を優先し、野田内閣不信任案に賛成しなかった。

その理由としては、幾つか考えられる。

(2)当該理由を思いつくままに上げると、

第一に、国民に「痛み」を押し付ける関連法の成立を自らの政権で強行するよりも現民主党政権で先に強行させた方が得策だ、と判断した。

もちろん、国民に「痛み」を押し付ける政策を歓迎するのは一般庶民ではなく財界であるから、財界政党である自民党、これまでそれに協力してきた公明党としては、当然のことであった。
これが第二。

第三に、野田首相が「近いうちに」衆議院を解散し国民に信を問うことを約束したので、早期解散と財界政治強行の二兎を追える、と判断した。

(3)問題は、第三の「近いうちに」解散総選挙が行われるのか、ということである。

これについては、このブログで、憲法の視点から投稿したり、可能な限り主観を排除して客観的な分析に努めながら投稿したりしてきた。

”憲政の常道”を逸した、公約違反の法案可決後の「近いうち」解散の3党合意

藤村官房長官の「首相は約束を守る人」発言には驚いた!

内閣不信任案の衆議院否決と、「近いうちに」を実質判断する参議院

今年10月に衆議院は解散される!?

(4)ところが、そもそも、民主党が衆議院の選挙制度改革について、野党、特に自民党とさえ、合意にいたらず、議員定数削減法案を提出したという事実は、少なくとも今国会での解散・総選挙を阻止する狙いもあると考えられる
民主党は、衆議院の選挙制度改革関連法案等を衆議院で可決した。
自公両党はこれに反発した。
時事通信(2012/08/27-20:12)
選挙法案、民主単独で可決=自公、29日に首相問責提出−特別委

 衆院政治倫理・公職選挙法改正特別委員会は27日、野党欠席のまま民主党提出の衆院選挙制度改革関連法案を採決し、同党の賛成で可決した。自民党は「憲政史上類を見ない暴挙」(石原伸晃幹事長)と反発を強めており、公明党と共同で29日に野田佳彦首相問責決議案を参院に提出する方向だ。
 同法案は、「1票の格差」を是正するため小選挙区を「0増5減」し、比例代表定数を40削減するとともに、小政党に有利とされる小選挙区比例代表連用制を部分導入する内容で、民主党単独で22日に審議入り。全ての野党が「手法が強引」と反発、委員会への欠席を続ける中、民主党は採決に踏み切った。
 これを受け、衆院議院運営委員会は27日夜の理事会で、選挙制度改革法案と、赤字国債発行に必要な特例公債法案を28日の衆院本会議で採決することを小平忠正委員長(民主)の職権で決めた。ただ、参院では野党が多数を握っており、両法案とも今国会で成立させるのは困難な情勢だ。 
 一方、自民、公明両党など野党各党の国対委員長は27日、横路孝弘衆院議長に対し「選挙制度は議会制民主主義の土台であり、与党だけで強行することは断じて許されない」として、選挙制度改革法案を本会議で採決しないよう申し入れた。拒否された場合、野党は同法案の採決を欠席する方針だ。
 また、自民党は同日、谷垣禎一総裁ら幹部が国会内で協議し、首相問責案を提出する方針を決め、提出日を含めた対応を谷垣氏に一任した。自民党は可決を確実にするため公明党以外の野党との調整を加速させる考えで、28日に野党参院国対委員長会談を開き、協力を呼び掛ける。

時事通信(2012/08/28-13:57
特例公債法案を可決=選挙制度も、自民など反発−衆院

 赤字国債発行に必要な特例公債法案は28日午後の衆院本会議で採決され、与党の賛成多数で可決された。自民党は本会議を欠席した。民主党提出の衆院選挙制度改革関連法案も採決され、与党の賛成で可決されたが、野党各党は民主党の国会運営に抗議し、退席した。
 ただ、両法案を参院に送付しても、参院は野党多数のため今国会での成立は困難だ。与野党の対立は深まっており、自民、公明両党は29日に野田佳彦首相の問責決議案を参院に提出する方向だ。一方、首相は28日午前、首相官邸で民主党の輿石東幹事長と会談。国会運営について協議したとみられる。
 本会議に先立ち自公両党など野党11党の幹事長らは横路孝弘衆院議長と会い、「民主主義の根幹の選挙制度について、与党の多数をもって強行採決することは憲政史上類を見ない暴挙」と抗議したが、議長は「申し入れは与党に伝える」と述べるにとどめた。
 自民党の谷垣禎一総裁は28日午前の党役員会で「もはや内政、外交で国政をコントロールできない状態だ」と野田政権を厳しく批判。公明党は同日午前、山口那津男代表ら幹部が国会内で対応を協議し、問責案への対応を山口氏に一任した。 
 自民党は問責案可決に向け、他の野党にも協力を呼び掛ける考えで、28日午後に野党各党の参院国対委員長が会談する。ただ、新党「国民の生活が第一」など参院の野党7会派は今月7日、消費増税を阻止する狙いから首相問責案を提出済み。生活などは7会派の問責案の採決を優先するよう求めており、野党間の調整もポイントとなる。


(5)ところで、野党7会派が今月7日に提出した問責決議案は採決されてこなかった。
時事通信(2012/08/27-22:55)
先行提出の問責優先を=参院7会派、自公に要求へ

 新党「国民の生活が第一」など野党7会派の参院国対委員長が27日夜、国会内で会談し、自公両党が提出する野田佳彦首相の問責決議案への対応を協議した。その結果、先に7会派が共同で出した首相問責案の採決を優先すべきだとの考えで一致した。28日に自公両党に伝える方針だ。 
 会談後、生活の主浜了氏は記者団に「7会派の問責案を優先して(参院本会議に)上程してもらわなければ、自民党が出す問責案の上程を認めない方向で動く」と強調。仮に参院議院運営委員会で民主党に加えて生活とみんなの党が反対すれば、自公両党の問責案は本会議で採決できないが、7会派が実際に強硬姿勢を続けるかは不透明だ。
 7会派は今月7日に参院に首相問責案を提出。消費増税阻止を理由にしていたことから、自公両党は、採決せず棚上げにしていた。

(6)「近いうち」解散・総選挙を期待した自民党・公明党としては、野田首相に裏切られたと判断したようで、自民党・公明党は、昨日(8月28日)野田首相問責決議案を提出した。
ロイタ2012年 08月 28日 19:45 JST
自公が首相問責決議案を共同提出、野党7会派の決議案と一本化調整

[東京 28日 ロイター] 自民党と公明党は28日夕、野田佳彦首相に対する問責決議案を参議院に共同で提出した。中小野党7会派が先に問責決議案を提出しているため、一本化についてこれから協議するという。
自民党の岸田文雄国対委員長が明らかにした。
これに先立って自民党の谷垣禎一総裁は公明党の山口那津男代表と会談、その後記者団に、きょう問責を提出することになったことを明らかにし、いまの野田政権は限界にきていると語った。また、問責提出で「近いうちに」という解散の約束は反故になったとする一部民主党内の声について、「そうは考えない」と否定した。
谷垣総裁は、今回の問責提出をどう解散に結びつけるのかとの質問に「将棋で言えば、もう詰んでいる」と述べ、解散に踏み切らないまま次の臨時国会を開いても野田首相を参議院に迎えないとの声が党内にあることについては「そういう考え方があるのは事実だ」とした。
自民党の岸田国対委員長は問責提出に関連して、先に問責決議案が提出されており、7会派から自公の決議案には乗れないとしていることを明らかにしたうえで、統一の決議案を作ることができないか、自民党側から提案したと語った。
こうした動きに、民主党の城島光力国対委員長は「問責は論外だと思うが、出てきた中でやっていく。われわれは国民のため、その一点で9月8日までの会期を全うしていきたい」としている。前原誠司政調会長も、問責提出は一体改革をめぐる3党党首会談を破棄するものだと批判した。


(7)野田首相の問責決議案としては、先に提出されている野党7党のものと、後で提出された自公2党のものがあり、両者を一般化することについては難航したようだが、最終的には、先に提出された野党7党案が上程され、採決されて、可決されようだ。
なんと、公明党は棄権し、自民党は賛成したという。
テレビ朝日(08/29 18:00)
野党内の調整難航の末…野田総理問責決議案可決へ

 野田総理大臣の問責決議案は、野党内の調整が難航しましたが、29日の参議院本会議で採決される見通しです。

 (政治部・藤川みな代記者報告)
 国会では、午後から参議院本会議で問責決議案の討論と採決が始まる見通しです。午後7時20分ごろには、自民党など野党の賛成多数で可決する見通しです。今回、自民党は苦渋の選択を迫られました。消費税増税に反対する野党7党の猛反発にあい、自民党は野党7党が提出した消費税増税を批判する問責決議案に賛成せざるを得なくなりました。一方、公明党は採決を棄権する方針で、自公の足並みが乱れることになります。民主党からは冷ややかな声が出ています。
 民主党・城島国対委員長:「この間のドタバタ劇はまさに、いかにこの問責決議案が無理筋かということを表しているのではないか」
 問責可決後は、国会は事実上の休会状態になり、自民党も民主党も総裁選や代表選に向けて動き出すことになります。

NHK8月29日 20時10分
首相への問責決議 賛成多数で可決

 国民の生活が第一やみんなの党などが提出した野田総理大臣に対する問責決議は、参議院本会議で野党側の賛成多数で可決されました。
これに対し、野田総理大臣は問責決議に法的な拘束力はないなどとして、衆議院の解散などには応じない方針です。
 国会は参議院議院運営委員会で、国民の生活が第一やみんなの党など、参議院の野党7会派が提出した野田総理大臣に対する問責決議案を本会議で採決することを、賛成多数で決めました。
 一方、自民・公明両党が28日に提出した問責決議案は、反対多数で上程されませんでした。
 そして、午後5時から参議院本会議が開かれ、法案の採決などが行われたあと、問責決議案の審議に入りました。
 この中で、みんなの党の小野次郎氏が「野田内閣が押し通した消費税率引き上げ法は、先の衆議院選挙での民主党のマニフェストに違反しており、国民への約束に背く政治姿勢をとり続ける野田総理大臣の責任は極めて重大だ」などと、問責決議案を提出した理由を説明しました。
 また、自民党の川口順子氏が「野田政権と民主党には、震災復興や竹島・尖閣諸島を巡る摩擦など、解決を迫られている課題を解決に導くための国家運営能力、すなわち『与党力』が絶対的に欠如し責任感もない」と述べました。
 これに対し、民主党の武内則男氏が「自民党が党利党略を重視して問責決議案に賛成するのは、節操のない厚顔無恥の暴挙で、3党合意をほごにするものだ。『近いうちに解散する』という約束も無効にせざるを得ない」と反論しました。
 このあと、決議案は記名投票による採決が行われ、賛成129票、反対91票で野党側の賛成多で可決されました。
 ただ、野党のうち公明党は「消費税率の引き上げ反対を理由とする問責決議案には賛成できない」として、採決を欠席しました。
 また、自民党の丸山和也参議院議員が「問責決議が可決されれば、解散が近くなるということでやっているだけで、自己矛盾も甚だしい」として、採決を棄権しました。
 総理大臣に対する問責決議が可決されたのは、4年前に福田総理大臣、3年前に麻生総理大臣に対する決議が可決されたのに続いて、今回で3例目で、民主党政権では初めてです。
 野田総理大臣は、問責決議は内閣不信任決議と違って法的な拘束力はないなどとして、辞任や衆議院の解散には応じない方針です。

(8)参議院で可決された問責決議は、以下の報道のとおりである。
時事通信(2012/08/29-19:15)
首相問責決議の全文

 29日の参院本会議で可決された野田佳彦首相問責決議の全文は次の通り。

 内閣総理大臣野田佳彦君問責決議

 本院は、内閣総理大臣野田佳彦君を問責する。
 右決議する。

 理由
 野田内閣が強行して押し通した消費税増税法は、2009年の総選挙での民主党政権公約に違反するものである。
 国民の多くは今も消費税増税法に反対しており、今国会で消費税増税法案を成立させるべきではないとの声は圧倒的多数となっていた。
 最近の国会運営では民主党、自由民主党、公明党の3党のみで協議をし、合意をすれば一気呵成(かせい)に法案を成立させるということが多数見受けられ、議会制民主主義が守られていない。
 参議院で審議を行う中、社会保障部分や消費税の使い道等で3党合意は曖昧なものであることが明らかになった。
 国民への約束、国民の声に背く政治姿勢を取り続ける野田佳彦内閣総理大臣の責任は極めて重大である。
 よってここに、野田佳彦内閣総理大臣の問責決議案を提出する。

(9)この問責決議について私見を書いておこう。

この問責決議は、形式的には、野田内閣ではなく、首相首相に対するものである。

もっとも、問責決議の理由が消費税増税を問題視している点で言えば、「実質的には、野田内閣に対する問責決議」に相当する。

また、問責決議の理由が民自公3党を問題にしている点で言えば、「実質的には、民自公3党に対する問責決議」に等しい。

もっといえば、「実質的には、『民自公による事実上の大連立』に対する問責決議」に等しいのである。

(10)したがって、私は、この問責決議に賛成であり、歓迎したい。

(11)ただ、自民党がこの問責決議案に賛成したのは明らかな矛盾である、と言わざるを得ない。

また、公明党がこの問責決議案に賛成しなかったのは「当然のこと」であるが、反対せず棄権したのは、必ずしも態度が一貫するとは言い難い。

(12)自公両党が早期解散を求めるのであれば、野田首相の「近いうちに・・・」という発言を信用せず、野田内閣不信任案に賛成すべきであったのだ。

また、言うまでもないことであるが、一般庶民に「痛み」を強いる消費増税等の法案を成立させた責任は、民主党だけにあるのではなく、問責決議に賛成した自民党にも、棄権した公明党にもあるのだ。

今後国会が空転すれば、その責任は実質的には民自公三党にある。

(13)上記紹介報道、及び、事前の以下の報道によると、野田内閣は、今国会で衆議院を解散しない可能性が高いようだ。
毎日新聞 2012年08月12日 18時49分(最終更新 08月12日 18時57分)
衆院解散:民主幹事長「今国会中は難しい」

 民主党の輿石東幹事長は12日のNHK番組で、野田佳彦首相と谷垣禎一自民党総裁が「近いうち」で合意した衆院解散時期について、9月8日に会期末を迎える今国会中は難しいとの認識を示した。輿石氏は特例公債法案、衆院選挙制度改革関連法案、原子力規制委員会の国会同意人事を挙げ、「この三つを必ず仕上げねばならない。今国会で解散できる状況にならないのではないか」と述べた。
 一方、自民党の石原伸晃幹事長は同番組で、解散時期について「10月か会期末までに絞られる。一日も早い解散がベストだ」と反論し、今国会中の解散を求めた。公債法案に関しても「『通してください』では、簡単に処理できない」と述べ、解散確約を協力の条件にする考えを表明。参院での首相問責決議案提出も「首相が不誠実な対応をすれば、視野に入れる」と述べた。
 首相と谷垣氏が党首選で交代すれば、「近いうち」の合意はなくなるとした自らの発言について、輿石氏は「党首だから党と党の公約になる。新党首が再度確認すれば済む」と釈明した。9月の民主党代表選に関しては「首相が1年で交代するのはいかがなものか」と首相再選支持を改めて表明。石原氏も9月の自民党総裁選について「今の政治体制のまま行くのがベストだ」と述べ、谷垣氏が立候補すれば支持する考えを示した。【高橋恵子、念佛明奈】

産経新聞2012.8.28 19:38
自公、問責決議を提出 29日採決へ 首相、解散拒否の構え

 自民、公明両党は28日、野田佳彦首相に今国会中の衆院解散を迫るため問責決議案を参院へ共同提出した。29日に採決する方向で調整する。首相は問責決議が可決されても今国会中の解散を拒否する構えだ。平成24年度予算執行に不可欠な公債発行特例法案は28日午後に参院へ送付された。野党が過半数を占めており成立は困難だ。
 自民党の谷垣禎一総裁「内政、外交両面で、今の野田政権が事態を掌握し国政を進めるのは限界にきている。問責を出す機運は十二分に熟した」と述べた。
 野党は28日午後、問責決議案をめぐり国対委員長会談を開催。自公両党以外の野党は、先に参院へ提出した自らの問責決議案の採決を主張。これに対し自公両党は自公案に同調するよう求めて折り合わず、引き続き調整する。首相は28日午前、民主党の輿石東幹事長と官邸で約30分間会談し、国会対応を協議。野党が要求する今国会中の解散には応じない方針を確認したとみられる。

[時事通信社] 2012年 8月 29日 19:22 JST
首相問責決議を参院で可決=今国会解散に応ぜず―民・自党首選に突入

 参院は29日午後の本会議で、新党「国民の生活が第一」など野党7会派が提出した野田佳彦首相の問責決議を、7会派や自民党の賛成多数で可決した。問責決議に法的拘束力はなく、首相は自民党が求める今国会での衆院解散には応じない構え。野党は参院での審議の全面拒否に入り、9月8日の会期末を前に、国会は空転状態となった。政局の焦点は、9月の民主党代表選、自民党総裁選に移る。
 首相は先の谷垣禎一自民党総裁との会談で、「近いうち」の衆院解散で合意した。しかし、民主党内では早期解散に反対する声が大勢。同党の樽床伸二幹事長代行は29日の党の会合で、首相問責に関し「約束をほごにするという意思だ」と述べ、合意は白紙になったとの認識を強調した。
 首相は9月21日の党代表選に出馬する意向を示唆、再選が有力視されている。ただ、原発再稼働や環太平洋連携協定(TPP)参加に反対する議員の間には「反野田」候補の擁立を模索する動きもある。
 与野党には、首相は再選されれば10月前半にも臨時国会を召集し同月中に解散を断行。11月に衆院選挙が行われるとの見方が広がりつつある。

(14)そうなると、次の注目点は、9月に予定されている自民党の総裁選挙と民主党の代表選挙であり、谷垣総裁が再選されるのか、野田代表が再選されるのか、ということになる。

今後の政局を考えると、両選挙には注目せざるえを得ない。

(15)両選挙は財界二大政党の選挙だ。

したがって、一般庶民にとっては、どうでも良い選挙だが、財界にとっては重要な選挙になるのだろう。