はじめに
(1)「みんなの党」の渡辺喜美代表(すでに辞任。以下同じ)が、DHC会長に2010年参議院通常選挙前に3億円と、2012年衆議院総選挙前に5億円を用立ててもらっていたのに、それらを一切報告していなかった問題について、すでに、このブログで取り上げました。、
DHC会長が「みんなの党・渡辺代表に選挙資金8億円」を用立てたが一切収支報告なし!
渡辺「みんなの党」代表は「8億円裏金」問題で説明責任を果たしていない
(2)具体的な疑問点として、第1に、渡辺代表が新党「みんなの党」を立ち上げた時の資金作りの点について疑問点を説明しておきました。
「みんなの党」渡辺代表「裏金」問題の疑問点その1(党立ち上げ資金)
第2に、渡辺代表が受け取った計8億円が「みんなの党」への貸付に回れているのかどうかについての疑問点を指摘しました。
「みんなの党」渡辺代表「裏金」問題の疑問点その2(貸付・借入金)
第3に、渡辺代表は、計8億円の一部ではあるものの、使途の説明を変遷させ、党のための政治活動・選挙活動に使ったことを認め始めたことを指摘しました。
「みんなの党」渡辺代表「裏金」問題の疑問点その3(政治資金・選挙資金)
第4に、その使途について、2012年の衆議院総選挙と2010年の参議院通常選挙における公認候補の供託金に使われたのかどうかを収支報告書で確認しました。
「みんなの党」渡辺代表「裏金」問題の疑問点その4(供託金)
第5に、渡辺代表が「みんなの党」の代表を辞任したので、それについての私見と内部調査の必要性を述べておきました。
「みんなの党」渡辺代表「裏金」問題の疑問点その5(代表辞任と内部調査)
その辞任会見で、渡辺氏は、8億円の借入金の支出について説明をさらに変遷させ、「政5億円弱は妻の口座に移し、残っていた。他は親類縁者や知人らから融通してもらった。年に約1000万円を個人的に使った。」
と説明しましたので、、これについても疑問点を述べておきました。
「みんなの党」渡辺代表「裏金」問題の疑問点その6(妻の口座に5億円弱)
(3)本日(4月24日)、みんなの党の調査チームは、8億円問題について調査結果を公表しました。
これについては、別の機会に投稿することにして、ここでは、辞任した渡辺喜美代表(当時)が政治資金規正法について独自の解釈を行っていたので、それについて私見を書いておきます。
1.渡辺喜美代表(当時)の政治資金規正法についての解釈とそれに対する批判
(1)渡辺代表(当時、以下同じ)は、今年3月31日に「みんなの党」のホームページの「DHC会長からの借入金についてのコメント」2014年3月31日 15:37)において以下のように説明していました。
また、4月1日の党役員会(渡辺代表本人欠席)で配布された文書でも以下のように説明されていました。
さらに、4月7日、代表を辞任すると表明した会見でも以下のように説明していました。
(2)しかし、以上の解釈は、政治資金規正法について意図的に間違った説明をしたものではないかと思います。
というのは、
そもそも政治資金規正法は、「政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治団体の届出、政治団体に係る政治資金の収支の公開並びに政治団体及び公職の候補者に係る政治資金の授受の規正その他の措置」を講じ、「政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする」法律で(第1条)、
「政治団体」(「政党」を含む)について「定義」を行い(第3条)、
「政治団体」に、選挙運動資金を含む政治資金について必ず収支報告させており、報告されない裏金を許容していないからです。
つまり、政治資金を受け取り、支出したい場合には、大原則として、政治団体を結成させ、その政治団体に政治資金の収支を管理させ、政治資金収支報告書を提出させ、政治資金の透明化を図っており、公職の候補者個人では政治資金の管理、収支報告をさせてはいないのです。
同法が都道府県の選挙管理委員会又は総務大臣に政治団体の届け出を義務づけ(第6条)、
「政治団体」は、この「届出がされた後でなければ、政治活動(選挙運動を含む。)のために、いかなる名義をもってするを問わず、寄附を受け、又は支出をすることができない」と定めている(第8条)のは、その大原則の表れです。
(3)だからこそ、政治資金政治研究会編集『逐条解説 政治資金規正法〔第2時改訂版〕』(ぎょうせい・2002年)は、以上の定めにつき
「いわば隠密裡に政治資金が授受されることを禁止して、もって政治活動の公明と公正を期そうとするものである」
と解説しているのです(88頁)。
(4)政治団体ではなく公職の候補者個人が政治資金を取扱える例外として、政治資金規正法は「公職の候補者の選挙運動に関する寄附」を認めています(第21条の2第1項)が、
これについても、公職選挙法に基づき「公職の候補者」に選挙運動費用収支報告書を提出させています(第189条)。
(5)また、政治資金規正法は、政党が「公職の候補者の政治活動に関する寄附」を受けることを許容しています(第21条の2第2項)が、少なくとも政党の政治資金収支報告書には、当該寄附は「支出」欄に記載されなければなりません。
(6)政治資金規正法は、このような例外以外で「公職の候補者」が政治資金を支出することを認めていないのです。
そうでなければ、公職の候補者は国民の知らない状態のまま個人で政治資金を受け取り支出していまい、政治資金規正法は政治資金の透明化にとって実効性のない無意味な法律になってしまうからです。
実際に公職の候補者が政治団体(政党を含む)に対し寄附または貸付をしているのは、合法的にそのカネを政治資金として支出したいからです。
2.指定団体方式と保有金方式を廃止し資金管理団体を創設した1994年の改正政治資金規正法の立場
(1)以上のことは、1980年と1994年の改正政治資金規正法の内容を確認し、比較することで、より明確になります。
(2)1980年に、公職の候補者の政治資金についての公私の峻別を図るために政治資金規正法は改正されました。
それによると、公職の候補者は、できるだけ自らは政治資金を取り扱わないこととし、政治資金は、できるだけ政治団体に取り扱わせるようにし(指定団体方式。自治省選挙部編『政治資金規正法解説』地方財政協会・1988年、61頁)、
「指定団体を指定しない場合」や「受けた寄付の一部を自らの手元で支出しようとする場合」には、公職の候補者が自ら政治資金を管理し、
この場合には、保有金としてその者が直接その収支を報告しなければならないことになったのです(保有金制度。同上、62頁、76頁)。
(3)もっとも、政治活動に関する寄附のうち選挙運動に関するものは保有金制度から除外され、選挙運動に関するものは公職選挙法で別途収支報告する制度がありました(同上、64頁)が、
政党及び指定団体から公職の候補者が受けた寄付は、保有金に含まれず、収支報告の対象から除かれました(同上、76頁)。
(4)1994年には、公職の候補者の政治資金についての公私の峻別をより一層徹底するために政治資金規正法は改正されました。
それによると、「指定団体制度」と「保有金制度」は廃止され、それに代わって新たに「資金管理団体」の制度が創設され、公職の候補者は一の政治団体に限り資金管理団体を指定できるとともに、公職の候補者の政治活動に関する金銭等による寄付は原則として禁止されたのです(第21条の2第1項。政治資金制度研究会編集「逐条解説 政治資金規正法 〔第2次改訂版]」ぎょうせい・2002年、31〜32頁)。
もっとも、政治活動に関する寄附のうち選挙運動に関するものはこれまでどおり許容される(第21条の2第1項カッコ書き)とともに公職選挙法で別途収支報告制度が維持され、
また、「政党からの寄附」は公職の候補者が受けることはこれまでどおり許容され(第21条の2第2項)、収支報告の対象から除かれるという運用がなされています(その運用は問題ですが、ここでは、便宜的にこの運用を前提にします)。
(5)以上の改正について政治資金制度研究会編集『逐条解説 政治資金規正法 〔第2次改訂版]〕(ぎょうせい・2002年、150〜151頁)は、次のように解説しています。
(6)また、当時の青森地検八戸支部長(前刑事局付検事)の高橋秀雄氏は、
「今回の政治資金規正法は、全体としては、政治家個人への不明朗な資金提供を全面的に禁止し、政党中心の政治資金の調達及び政治資金の流れの一掃の透明化をめざすもの」である、
と簡潔に解説しています(「法の焦点 政治資金規正法の改正について」法務総合研究所『研修』1994年4月号(550号)68〜69頁)。
(7)これらの解説によると、保有金制度が廃止され、公職の候補者のために政治資金を取り扱える資金管理団体が創設されたので、公職の候補者個人は、前述の2つの例外を除いて、政治資金を取り扱えなくなったのです。
言い換えると、保有金制度が廃止された分、公職の候補者が個人で政治資金を取り扱うことが原則禁止されたのです。
(8)もっとも、その代わり、
公職の候補者が政党から受けた政治活動に関する寄附を自己の資金管理団体に寄附(特定寄附)した場合には寄附の量的制限が適用されず幾らでも寄附できることになり(政治資金規正法第21条の3第4項、旧第22条第2項〔現第22条第3項〕)、
また、公職の候補者が自己の資金管理団体にする特定寄付以外の自己資金による寄附についても寄附の量的制限のうち年間150万円以下の個別制限は適用されず年間1000万円以下の総枠制限を受けるだけになりました(同法第21条の3第3項、第22条第2項〔現第22条第3項〕)。
(9)また、これまでの保有金制度が廃止され、それゆえ公職の候補者の政治資金収支報告制度が廃止されたことで、政治資金の透明化が後退したわけではなく、それは公職の候補者の資金管理団体によって実現することになったのです。
言い換えれば、公職の候補者の政治資金収支報告制度が廃止された代わりに公職の候補者の資金管理団体の政治資金収支報告制度が創設されたからこそ、公職の候補者個人の政治資金の支出は原則禁止されたのです。
(10)したがって、現行法のもとでは、「公職の候補者」が借入をすることは明文で禁止してはいないものの、「公職の候補者」がそれを政治資金として支出することは前述の例外(選挙運動に関する寄附と政党のする寄附)に該当しない限り、許容されないのです。
(11)したがって、渡辺代表の政治資金規正法についての前述の解釈は、間違っているのです。
それは、ご本人もご存知のはずです。
(1)「みんなの党」の渡辺喜美代表(すでに辞任。以下同じ)が、DHC会長に2010年参議院通常選挙前に3億円と、2012年衆議院総選挙前に5億円を用立ててもらっていたのに、それらを一切報告していなかった問題について、すでに、このブログで取り上げました。、
DHC会長が「みんなの党・渡辺代表に選挙資金8億円」を用立てたが一切収支報告なし!
渡辺「みんなの党」代表は「8億円裏金」問題で説明責任を果たしていない
(2)具体的な疑問点として、第1に、渡辺代表が新党「みんなの党」を立ち上げた時の資金作りの点について疑問点を説明しておきました。
「みんなの党」渡辺代表「裏金」問題の疑問点その1(党立ち上げ資金)
第2に、渡辺代表が受け取った計8億円が「みんなの党」への貸付に回れているのかどうかについての疑問点を指摘しました。
「みんなの党」渡辺代表「裏金」問題の疑問点その2(貸付・借入金)
第3に、渡辺代表は、計8億円の一部ではあるものの、使途の説明を変遷させ、党のための政治活動・選挙活動に使ったことを認め始めたことを指摘しました。
「みんなの党」渡辺代表「裏金」問題の疑問点その3(政治資金・選挙資金)
第4に、その使途について、2012年の衆議院総選挙と2010年の参議院通常選挙における公認候補の供託金に使われたのかどうかを収支報告書で確認しました。
「みんなの党」渡辺代表「裏金」問題の疑問点その4(供託金)
第5に、渡辺代表が「みんなの党」の代表を辞任したので、それについての私見と内部調査の必要性を述べておきました。
「みんなの党」渡辺代表「裏金」問題の疑問点その5(代表辞任と内部調査)
その辞任会見で、渡辺氏は、8億円の借入金の支出について説明をさらに変遷させ、「政5億円弱は妻の口座に移し、残っていた。他は親類縁者や知人らから融通してもらった。年に約1000万円を個人的に使った。」
と説明しましたので、、これについても疑問点を述べておきました。
「みんなの党」渡辺代表「裏金」問題の疑問点その6(妻の口座に5億円弱)
(3)本日(4月24日)、みんなの党の調査チームは、8億円問題について調査結果を公表しました。
これについては、別の機会に投稿することにして、ここでは、辞任した渡辺喜美代表(当時)が政治資金規正法について独自の解釈を行っていたので、それについて私見を書いておきます。
1.渡辺喜美代表(当時)の政治資金規正法についての解釈とそれに対する批判
(1)渡辺代表(当時、以下同じ)は、今年3月31日に「みんなの党」のホームページの「DHC会長からの借入金についてのコメント」2014年3月31日 15:37)において以下のように説明していました。
党首が個人の活動に使った分は、政治資金規正法上、政治家個人には報告の義務はありません。そのような制度がないということです。個人財産は借金も含めて使用・収益・処分は自由にできるからです。
また、4月1日の党役員会(渡辺代表本人欠席)で配布された文書でも以下のように説明されていました。
そもそも政治家個人が借入分を含む自己の財産を個人の政治活動や議員活動に支出したとしても、公職選挙法および政治資金規正法に報告の制度がありませんので、報告のしようがなく、したがって報告していない、というだけのことです。
さらに、4月7日、代表を辞任すると表明した会見でも以下のように説明していました。
私が個人で使用した分については、政治家がポケットマネーを使って政治活動をしていない場合、その収支については収支報告書の制度がないことを総務省に確認しておりますので、政治資金規正法上もなんら違法な点はありません。
(2)しかし、以上の解釈は、政治資金規正法について意図的に間違った説明をしたものではないかと思います。
というのは、
そもそも政治資金規正法は、「政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治団体の届出、政治団体に係る政治資金の収支の公開並びに政治団体及び公職の候補者に係る政治資金の授受の規正その他の措置」を講じ、「政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする」法律で(第1条)、
「政治団体」(「政党」を含む)について「定義」を行い(第3条)、
「政治団体」に、選挙運動資金を含む政治資金について必ず収支報告させており、報告されない裏金を許容していないからです。
つまり、政治資金を受け取り、支出したい場合には、大原則として、政治団体を結成させ、その政治団体に政治資金の収支を管理させ、政治資金収支報告書を提出させ、政治資金の透明化を図っており、公職の候補者個人では政治資金の管理、収支報告をさせてはいないのです。
同法が都道府県の選挙管理委員会又は総務大臣に政治団体の届け出を義務づけ(第6条)、
「政治団体」は、この「届出がされた後でなければ、政治活動(選挙運動を含む。)のために、いかなる名義をもってするを問わず、寄附を受け、又は支出をすることができない」と定めている(第8条)のは、その大原則の表れです。
(3)だからこそ、政治資金政治研究会編集『逐条解説 政治資金規正法〔第2時改訂版〕』(ぎょうせい・2002年)は、以上の定めにつき
「いわば隠密裡に政治資金が授受されることを禁止して、もって政治活動の公明と公正を期そうとするものである」
と解説しているのです(88頁)。
(4)政治団体ではなく公職の候補者個人が政治資金を取扱える例外として、政治資金規正法は「公職の候補者の選挙運動に関する寄附」を認めています(第21条の2第1項)が、
これについても、公職選挙法に基づき「公職の候補者」に選挙運動費用収支報告書を提出させています(第189条)。
(5)また、政治資金規正法は、政党が「公職の候補者の政治活動に関する寄附」を受けることを許容しています(第21条の2第2項)が、少なくとも政党の政治資金収支報告書には、当該寄附は「支出」欄に記載されなければなりません。
(6)政治資金規正法は、このような例外以外で「公職の候補者」が政治資金を支出することを認めていないのです。
そうでなければ、公職の候補者は国民の知らない状態のまま個人で政治資金を受け取り支出していまい、政治資金規正法は政治資金の透明化にとって実効性のない無意味な法律になってしまうからです。
実際に公職の候補者が政治団体(政党を含む)に対し寄附または貸付をしているのは、合法的にそのカネを政治資金として支出したいからです。
2.指定団体方式と保有金方式を廃止し資金管理団体を創設した1994年の改正政治資金規正法の立場
(1)以上のことは、1980年と1994年の改正政治資金規正法の内容を確認し、比較することで、より明確になります。
(2)1980年に、公職の候補者の政治資金についての公私の峻別を図るために政治資金規正法は改正されました。
それによると、公職の候補者は、できるだけ自らは政治資金を取り扱わないこととし、政治資金は、できるだけ政治団体に取り扱わせるようにし(指定団体方式。自治省選挙部編『政治資金規正法解説』地方財政協会・1988年、61頁)、
「指定団体を指定しない場合」や「受けた寄付の一部を自らの手元で支出しようとする場合」には、公職の候補者が自ら政治資金を管理し、
この場合には、保有金としてその者が直接その収支を報告しなければならないことになったのです(保有金制度。同上、62頁、76頁)。
(3)もっとも、政治活動に関する寄附のうち選挙運動に関するものは保有金制度から除外され、選挙運動に関するものは公職選挙法で別途収支報告する制度がありました(同上、64頁)が、
政党及び指定団体から公職の候補者が受けた寄付は、保有金に含まれず、収支報告の対象から除かれました(同上、76頁)。
(4)1994年には、公職の候補者の政治資金についての公私の峻別をより一層徹底するために政治資金規正法は改正されました。
それによると、「指定団体制度」と「保有金制度」は廃止され、それに代わって新たに「資金管理団体」の制度が創設され、公職の候補者は一の政治団体に限り資金管理団体を指定できるとともに、公職の候補者の政治活動に関する金銭等による寄付は原則として禁止されたのです(第21条の2第1項。政治資金制度研究会編集「逐条解説 政治資金規正法 〔第2次改訂版]」ぎょうせい・2002年、31〜32頁)。
もっとも、政治活動に関する寄附のうち選挙運動に関するものはこれまでどおり許容される(第21条の2第1項カッコ書き)とともに公職選挙法で別途収支報告制度が維持され、
また、「政党からの寄附」は公職の候補者が受けることはこれまでどおり許容され(第21条の2第2項)、収支報告の対象から除かれるという運用がなされています(その運用は問題ですが、ここでは、便宜的にこの運用を前提にします)。
(5)以上の改正について政治資金制度研究会編集『逐条解説 政治資金規正法 〔第2次改訂版]〕(ぎょうせい・2002年、150〜151頁)は、次のように解説しています。
公職の候補者の政治資金の取り扱いついては、昭和55年の方改正により、公職の候補者の政治資金としてき経済との峻別の見地から、指定団体制度・保有金制度が定められたところであるが、平成6年の法改正において、『政治とカネ』とをめぐる問題を抜本的に解決し公職の候補者の公私の峻別のより一層の徹底を制度的に担保するため、指定団体制度・保有金制度を廃止して、公職の候補者の政治活動に関する寄附で金銭等によるものについては、選挙運動に関するもの及び政党のするものを除き、これを禁止する(法第21条の2参照)とともに、新たに資金管理団体制度が創設され、公職の候補者個人への資金については、その資金管理団体で取り扱うこととされたものである。
(6)また、当時の青森地検八戸支部長(前刑事局付検事)の高橋秀雄氏は、
「今回の政治資金規正法は、全体としては、政治家個人への不明朗な資金提供を全面的に禁止し、政党中心の政治資金の調達及び政治資金の流れの一掃の透明化をめざすもの」である、
と簡潔に解説しています(「法の焦点 政治資金規正法の改正について」法務総合研究所『研修』1994年4月号(550号)68〜69頁)。
(7)これらの解説によると、保有金制度が廃止され、公職の候補者のために政治資金を取り扱える資金管理団体が創設されたので、公職の候補者個人は、前述の2つの例外を除いて、政治資金を取り扱えなくなったのです。
言い換えると、保有金制度が廃止された分、公職の候補者が個人で政治資金を取り扱うことが原則禁止されたのです。
(8)もっとも、その代わり、
公職の候補者が政党から受けた政治活動に関する寄附を自己の資金管理団体に寄附(特定寄附)した場合には寄附の量的制限が適用されず幾らでも寄附できることになり(政治資金規正法第21条の3第4項、旧第22条第2項〔現第22条第3項〕)、
また、公職の候補者が自己の資金管理団体にする特定寄付以外の自己資金による寄附についても寄附の量的制限のうち年間150万円以下の個別制限は適用されず年間1000万円以下の総枠制限を受けるだけになりました(同法第21条の3第3項、第22条第2項〔現第22条第3項〕)。
(9)また、これまでの保有金制度が廃止され、それゆえ公職の候補者の政治資金収支報告制度が廃止されたことで、政治資金の透明化が後退したわけではなく、それは公職の候補者の資金管理団体によって実現することになったのです。
言い換えれば、公職の候補者の政治資金収支報告制度が廃止された代わりに公職の候補者の資金管理団体の政治資金収支報告制度が創設されたからこそ、公職の候補者個人の政治資金の支出は原則禁止されたのです。
(10)したがって、現行法のもとでは、「公職の候補者」が借入をすることは明文で禁止してはいないものの、「公職の候補者」がそれを政治資金として支出することは前述の例外(選挙運動に関する寄附と政党のする寄附)に該当しない限り、許容されないのです。
(11)したがって、渡辺代表の政治資金規正法についての前述の解釈は、間違っているのです。
それは、ご本人もご存知のはずです。