(1)集団的自衛権行使や多国籍軍参加により日本(の自衛隊)がそれらの戦争に参戦することについて、安倍晋三首相は、従来違憲であると解釈していた政府解釈を「合憲」に変更しようと目論んでいます。
この問題では、先の投稿で私のブログの投稿を整理し直しました。

(2)第一に指摘できることは、安倍「解釈改憲」が立憲主義に反するということです。
具体的には、
憲法改正手続きさえ経ずに改憲の目的を達成しようという「解釈改憲」が、憲法上許されないことは、自民党が「新憲法草案」(2005年)や「日本国憲法改正草案」(2012年)を作成したことで証明されている、と指摘しました。
安倍「解釈改憲」が憲法上許されないのは自民党「日本国憲法改正草案」が証明している!

また、その「解釈改憲」は明文改憲が実現できないから強行しようとするものであり、卑怯であることも、指摘しました。
安倍「解釈改憲」の卑怯さ(”右翼の軍国主義者”のクーデターの企て)

5月16日、憲法改悪阻止各界連絡会議(憲法会議)が声明「安保法制懇『報告書』をテコに『戦争する国』めざす安倍首相の暴走を糾弾する」を発表したので、それを紹介しまました。
憲法会議声明「安保法制懇『報告書』をテコに『戦争する国』めざす安倍首相の暴走を糾弾する」の紹介

安倍内閣が長年の慣行を破って内閣法制局長官に素人の小松氏を抜擢したので、小松氏が退任しても、「駆けつけ警護」問題や集団的自衛権行使問題で与党が「合憲」としても体を張って違憲解釈を主張するまでは内閣法制局への不信感は払拭されないと指摘しました。
安倍政権の”慣行”破りで憲法解釈の素人と化した内閣法制局長官と「駆けつけ警護」問題

安倍首相は大臣ですから「憲法改正」や「解釈改憲」を主張できないのにそれを公言し憲法尊重擁護義務違反を犯し、日米安保条約などによる集団的自衛権行使”義務”の遵守を目指していることを指摘して批判しました。
憲法尊重擁護義務違反をして集団的自衛権行使義務の遵守を目指す安倍首相

憲法改正手続を経ても、他国を守るための集団的自衛権(他衛権)行使を「合憲」にする改憲は、憲法改正の限界を超えるので理論的に許されないのですから、ましてや「解釈」の名で集団的自衛権(他衛権)行使を「合憲」にすることが許されないことは、あまりにも明白であると述べておきました。
新憲法制定、憲法改正、「解釈改憲」(「解釈改憲」は憲法制定に相当するから許されるわけがない)

安倍「解釈改憲」は、政府に対する規制を無視し憲法尊重擁護義務に違反して政府の意のままに戦争ができるよう政府の憲法「解釈」を変更するものであり、国家権力などの公権力に歯止めをかけている立憲主義を否定する政治ですから、明文改憲とも同列に位置づけられませんから、たとえ明文改憲を護憲と同列に取り扱うのはやむを得ないという立場に立ったとしても、安倍「解釈改憲」は立憲主義を否定するクーデターなのですから、マスメディアは厳しく批判すべきです、と書きました。
安倍「解釈改憲」クーデターに対しマスメディアに求められる立場

アメリカ等の外国の戦争に日本が参戦するための集団的自衛権行使や多国籍軍の戦争に日本が参戦することは、日本国憲法第9条が存在する以上、憲法上禁止されており、違憲であることは、憲法学の常識ですが、このことは、いわゆるイラク平和訴訟における2008年の名古屋高裁の判決も、国民に教示していることも指摘しました。
イラク平和訴訟2008年名古屋高裁判決が教示している安倍「解釈改憲」の違憲性

(2)第二に指摘できるのは、安倍「解釈改憲」を主権者国民が支持してはいないということです。

具体的には
安倍首相が、外国の戦争に参戦することになる集団的自衛権(他衛権)行使を「合憲」と「解釈」する「解釈改憲」を目論んでいることについて、マスメディアの世論調査では、国民の2,3割程度しか支持していないことを確認しました(集団的自衛権(他衛権)行使を「合憲」と「解釈」する「解釈改憲」を支持する世論調査結果の最低は21%で、最高は34・5%)。
集団的自衛権(他衛権)行使についての安倍「解釈改憲」の支持者は世論調査で2、3割程度

また、自民党「日本国憲法改正草案」によると、自衛戦争であれ、集団的自衛権行使による参戦であれ、戦争をしていても、自民党政権は「戦争はしていません」と強弁することになることを指摘しました。
自民政権は日本が戦争しても「戦争はしていません」と強弁することに!

さらに、その後も、主権者国民は安倍「解釈改憲」を支持していないことを指摘しました。
やはり安倍「解釈改憲」は主権者国民が支持してはいないクーデター

そして、集団的自衛権(他衛権)行使要件についての政府原案は、自民党側だけの発案ではなく、公明党との合作だったことが報じられていることも紹介し、これが真実であれば公明党が同党支持者らを裏切っていることになると指摘しました。
集団的自衛権行使「解釈改憲」政府案は自公の合作!?

(3)集団的自衛権などを巡る与党協議で、座長を務める自民党の高村副総裁は、憲法9条の下での武力行使の3要件について、さらに公明党内の意見に配慮した試案を新たに示したようです。
NHK6月24日 19時24分
集団的自衛権3要件 公明に配慮した試案

 集団的自衛権などを巡る与党協議が開かれ、座長を務める自民党の高村副総裁は、憲法9条の下での武力行使の3要件について、さらに歯止めをかけるよう求める公明党内の意見に配慮した試案を新たに示しました。
公明党は、座長試案を持ち帰って党内で検討することになりました。
 集団的自衛権などを巡る9回目の与党協議が国会内で開かれました。
この中で、座長を務める自民党の高村副総裁は、閣議決定案の柱となる、憲法9条の下で認められる武力行使の3要件を修正したうえで、新たな試案を示しました。
 試案は、「他国に対する武力攻撃であっても、日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆されるおそれがある場合」としていた第1の要件について、さらに行使に歯止めをかけるよう求める公明党内の意見に配慮し、「おそれ」という文言を「明白な危険」に、「他国」という文言を「日本と密接な関係にある他国」に修正しています。
 また、第2の要件として、「武力攻撃を排除し、日本の存立を全うし、国民を守るためにほかに適当な手段がない」こととし、第3の要件は、これまで同様「必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」としていて、こうした武力の行使は、3つの要件に該当する場合の「自衛の措置」に限られるとしています。
 さらに高村氏は、こうした3要件のほか、「憲法9条の下で許容される自衛の措置」という項目として、閣議決定案に盛り込む試案も示しました。
 この中では、「これまで政府は、武力の行使が許容されるのは、日本に対する武力攻撃が発生した場合に限られると考えてきた。しかし、変化し続けている日本を取り巻く安全保障環境を踏まえれば、今後、他国への武力攻撃であっても、その目的や規模、態様などによっては、日本の存立を脅かすことも現実に起こり得る」として、個別的自衛権だけでなく、集団的自衛権の行使も容認する必要性を指摘しています。
 そして、武力の行使は「国際法上は集団的自衛権が根拠となる場合もある」とする一方、「憲法上は、あくまでも日本を防衛し、国民を守るためのやむをえない自衛の措置として、初めて許容される」としています。
 最後に、「民主的統制の確保が求められることは当然で、自衛隊に出動を命じる際は、原則として事前に国会の承認を求めることを法案に明記する」としています。
 与党協議の中で、公明党は、こうした座長試案を持ち帰って党内で検討する考えを示しました。
 また、自民・公明両党は、次回の与党協議を今週27日に開き、その場で政府に、閣議決定案を示すよう指示しました。
 政府・自民党は、遅くとも来月上旬には、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定を行いたい考えで、公明党の執行部にも、来月5日の党の全国代表者会議の前までには結論を出すべきだという意見があり、両党は合意に向け、調整を急ぐことにしています。

「明白な危険のほうが縛り強くなる」
 自民党の高村副総裁は記者会見で、「公明党の『将来的に解釈がより広がることを制限しよう』という趣旨はよく理解しており、『おそれ』より『明白な危険』のほうが、より縛りは強くなるのではないか。ただ、この文言には、政府が集団的自衛権に関係するとしている8事例すべてが視野に入っており、やらなければいけないことができなくなる可能性はないと判断した」と述べました。

「次回で大筋合意とはいかない」
 公明党の北側副代表は記者団に対し、「高村氏の試案は、公明党の意見を踏まえて修正されていると理解している。党内議論は、あすもあさっても丁寧に論議するが、今週中の与党間での合意はなかなか容易ではなく、次回の与党協議で大筋合意とはいかないと思う」と述べました。

(4)この報道によると、
先日の高村見直し案の第一要件の、
「他国に対する武力攻撃であっても、日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆されるおそれがある場合」
は、
「日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃であっても、日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」
に修正した試案が高村副総裁によって新たに提示されたことになります。

しましまた、高村副総裁の解釈では、
「政府が集団的自衛権に関係するとしている8事例すべてが視野に入っており、やらなければいけないことができなくなる可能性はないと判断した」
と述べたとあります。

(5)つまり、高村副総裁にとっては、
文言上は「おそれ」よりも「明白な危険」の方が限定されているようだが、
実質は集団的自衛権(他衛権)行使が「合憲」になることに変わりはなく、
その条件も変わらない
ということになります。

(6)ということは、この度の新たな高村試案も、立憲主義に反し国民が支持しない「解釈改憲」であることに変わりはなく、それゆえ、公明党も賛成できないはずです。

https://www.komei.or.jp/more/realtime/201306_01.html
立憲主義の精神守る
2013年6月3日

公明の憲法論議 北側一雄・党憲法調査会長に聞く

・・・

Q.恒久平和主義を定めた憲法9条についての考え方は?

A.公明党の9条に関する立場は、これまで積み重ねられてきた政府解釈と、裁判で示された司法判断を前提とすることが基本である。すなわち、急迫不正な武力攻撃から日本を守るための自衛権は個別的自衛権であり、その行使は憲法上許される。しかし、日本が攻撃されていないにもかかわらず日本と密接な関係にある他国を防衛する権利としての集団的自衛権は、その行使はできないとの解釈を認めている

また、憲法を改正して行使を認める必要もないと考える。
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https://www.komei.or.jp/more/opinion/p013.html
政治家改革の視点
結党50年、伝統の市民相談を更に
住民に寄り添い、新たな「信頼の政治」を築く

                          「月刊公明」2014年6月号
・・・・
各紙の論評の中には、一部とはいえ、安倍政権が信任されたことから「集団的自衛権の行使容認を巡る憲法解釈変更にも弾みがつく」というものもあった。しかし、 補選結果と集団的自衛権の行使容認を直接的に結びつける見方は、正しくない。なぜなら、今回の補選は集団的自衛権の行使容認を争点とした選挙ではなかったからだ。ちなみに、読売新聞社が投票日当日に実施した補選の出口調査によると、有権者が重視した争点は、「景気 ・雇用」29%、「医療・福祉」17%、「政治とカネの問題」9%、「消費増税の是非」6%、「原子力などのエネルギー政策」5%の順だった。この点については、4月28日付「毎日」社説が、「自民も集団的自衛権をめぐる解釈改憲の信任と位置づけるような軽はずみは許されない。勝利を謙虚に受け止めるべきだ」と強く釘を刺したのが 目を引いた。
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果たして、公明党は同党の支持者をも裏切って、同党執行部が裏工作している「自公合作」に向けて高村試案を受け入れ、立憲主義を否定するのでしょうか!?