ウソかマコトか、随筆「枕草紙」の作者として有名な平安時代
の女性・清少納言(966頃-1025年頃)にはこんなお話が
残されています。
兄・清原致信(生年不肖-1017年)が、二十名ほどの騎兵・
歩兵に館を襲撃された時のお話です。
すでに出家していた清少納言も、じつはこの館にいて、混乱に
巻き込まれてしまいました。
なにしろ兄・致信を標的にした「襲撃」ですから、賊側も殺気
立っています。
とうに五十歳を超えて老齢?の域に達していた清少納言は、
この時(1017年)、雅な宮廷衣装とも無縁な僧衣をまとっていた
でしょうから、相手の「うっかりミス」(男女の見間違い)を心底心配
しました。 そこで・・・
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例によって、以下の会話は、日本史探検隊の
史)=姫隊長/史乃(しの)、歴)=古参隊員/歴三(れきぞう)です。
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史) そのお話、なんか聞いたことあるような気がするなぁ。
僧衣姿になると、男女の見分けが難しいってことだったよね。
歴) そんな地味っぽく遠慮勝ちなお話ではなく、その続きはこうだ。
~あわわわ・・・うっかり「男」に見間違えられようものなら
ワタシの命もありゃあせんぞッ!~
切羽詰まった清少納言は、とっさに裾をまくり上げるや、
「前」を晒して、男ではないことを納得?させ、難を逃れた。
史) それって、ほんとにほんとのお話なの?
枕草紙にある「すさまじきもの」(興ざめなもの)を、地でいって
いる感じで、ちょいとばかりできすぎじゃないかしら?
歴) こういう性に関するちょいとしたお話は、まあ神話の昔から、
数多くある。
だから、実話かどうかは別にして、平安のインテリ女性である
清少納言がその材料に取り上げられても不思議ではない。
史) そういうことなら、同じようなお話の「男性編」もありそうね。
どこが違うの? 違いがハッキリ!
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鋭いッ! 確かにあるぞ。
洒脱な絵画「○△□図」で有名な、江戸時代の禅僧・仙厓義梵
(1750-1837年)が、よく似たエピソードを持っている。
ただし、こちらは「女と間違えられた」というお話になっている。
仙厓は男だから当然だな。
さて、仙厓が江戸から博多への帰途、箱根の関所にさしかかった
ところ、どう見間違えたのか、番所の役人が仙厓にこう問い
ただしたのだ。
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史) ~お主ッ、もしや尼僧ではあるまいなッ、面を上げいッ!~
くらいのことを言ったわけね、きっとなら。
歴) 僧衣姿は、確かに男女の見分けが難しいから何となく
自然な運びに感じられるところだ。
史) 義梵サンも清少納言と同じことをしたってか?
すると、こんな風な具合だったのかしら。
~無言のまま、いきなり衣の裾をたくし上げるや、股間を見せ、
男であることの証明に及んだ~
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その通り、姫はスケベかして話の呑み込みが早いなぁ。
それはともかく、
~女性(清少納言)の場合にせよ、男性(仙厓義梵)の場合にせよ、
「男女の証明」はああじゃこうじゃの説明より、「ナニ」を目視確認させる
ことが最も説得力のある方法だ~
こうしたお話を大らかな気分で語れたのも、それこそ「今は昔」だ。
「同性婚」とか「性別違和(性同一性障害)」などの概念が定着した、
現代では、そうしたお話自体が「セクハラでアウト」ということなのかもダ。
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日本史探検隊 姫隊長・史乃/古参隊員・歴三/研修隊員・記録係
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