戦国の世には、元はと言えば足軽身分に過ぎなかった者が、
後には出世街道を驀進し、遂には人臣最高位の関白にまで
上り詰めた事件?があります。
その人物の名は豊臣秀吉(1537-1598年)。
しかし、現代人の印象とは違って、この出世物語は、当時の
人々にはあまり歓迎されるものではありませんでした。

~末世とはほかにはあらじ木の下の猿関白を見るにつけても~
(意味) まさに世も末だゼ。 
      なにせ木の下の猿(秀吉)が関白になっちゃんだからナ。
こんな落首が残されたところから すれば、世論はこの出来事を
歓迎どころか、むしろ嘆きの心情で眺め、そればかりか批判の
意を表していたように見えます。

でも、こんな大出世をなぜ批判するの?
そこにはもちろん力ある者に対するやっかみもあったのでしょうが、
どうもそれだけではないようです

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例によって、以下の会話は、日本史探検隊の
史)=姫隊長/史乃(しの)歴)=古参隊員/歴三(れきぞう)です。
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史) かつては「木下藤吉郎」と呼ばれていた足軽が、見事に
   関白にまで上り詰めたということなら、これはある意味、
   アメリカン・ドリームならぬ「ジャパニーズ・ドリーム」の実現で、
   世間様にだって、もっと歓迎ムードが湧いてもよさそうなのにね。


歴)
 そうした「歓迎ムード」が芽生えなかったことは、身分意識を
   持たなくなった現代人の感性からすれば、ちょっとばかり
   不思議にも感じられるが、当時には当時の「時代の常識」って
   ものもあるわけだ。


史) なによそれ? みんながサバイバル競争をしていた戦国の世
   なのよ。
   だったら、その時代を勝ち抜き、最終勝者、いわばチャンピオンに
   なった豊臣秀吉こそ称えられる資格があるってことになるわけ
   じゃん。

歴)
 そのパワーは認めるにせよ、世間が問題にしたのは、その
   「正当性」なのだ。 簡単に言うなら、
   ~ケンカの強さは認めてやるが、天下人たる資格・資質の面、
    つまり「正当性」においては、一片の合理性がない~って
   ことなのだ。

史)
 何かしら、ワケの分からないイチャモンを付けているような
   感じで、そんなもんは、言うならば、
   「力無き者の負け犬の遠吠え」ってことに過ぎないのでは?
 
   toyotomi_hideyoshi_52 豊臣秀吉
          

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そうとも言えない。
たとえば武家社会でも「征夷大将軍」になるには、「源氏」の血統で
あることが必須の条件だ。
つまり、いかに実力を備えていようが、源氏以外の者は、その地位に
就く「正当性」がないことになる。
また「天皇」についてもその通りだ。
自由競争?の戦国時代にあって、織田信長(1534-1582年)にせよ、
その後の徳川家康(1543-1616年)にせよ、確かに天下を把握した
とはいうものの、じつは「天皇」にはなっていないし、なれなかった。
この国では、天皇家以外の人間が「天皇」になることには「正当性」が
ないって言っているわけだ。
これらと同じで、当時の世間は、豊臣秀吉の関白就任に「正当性」を
見出せなかったということだろう。
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史)
 ああ、なるほど、そういうことね。 
   だから、元はと言えば「賀茂氏」当たりの出だった徳川家康が、
   いつの間にか「源氏」を名乗るようになったのも、征夷大将軍に
   就任するための「正当性」の演出?ね。
   いわば、出自における「アリバイ工作」?ってわけね。

歴) さよう、ご明察!
   その意味では、豊臣秀吉には、そうした「アリバイ工作」をする
   だけの時間的余裕がなかったことになる。
   なにせ、織田信長の優秀な家臣として昨日まで行動していた
   秀吉が、今日になったらいきなり「関白」を名乗っているわけ
   だから、世間様とて、その「正当性」を素直に認められるもの
   じゃないゾ。
 
史) 正当性のない者が関白に就任し天下を治める。
   こんな見方になれば、やっぱり世間様が「世も末だ」って
   叫びたくなるのは無理もないことか。
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う~ん、この「正当性」って概念は、デジタル表示できないから、
現代人にとっても、案外に理解が困難なのかもしれないね。





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日本史探検隊
 姫隊長・史乃古参隊員・歴三研修隊員・記録係
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