最近は時代劇をあまり見なくなりましたが、昔はそれなりに
楽しんだもので、メッチャ古いところなら「東映時代劇」
なんかの鑑賞経験もあるくらいのものですが、さて、その
「東映時代劇」よく登場していたのが、いわゆる「渡世人」
でした。
「旅人(たびにん)」とか、「旅烏(たびがらす)」とか、他の
呼び方もあったようですが、要するに、その土地土地の
「親分」サンの方々に挨拶を通すことで、「一泊」と「一食」、
つまり「一宿一飯」を確保しながら、旅を続けた人達の
ことです。
こう書くと大変に「お気楽な稼業」に思えてきますが、ところが
世の中はそうそう甘いものでもなく、この世界にもそれこそ
「過酷な実態」がありました。
その中でも、もっとも重要とされた技術が「滑舌の良さ」でした。
「滑舌の良さ」って?
早い話が、「噛んだら即アウト」の世界だったのです。


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例によって、以下の会話は、日本史探検隊の
史)=姫隊長/史乃(しの)歴)=古参隊員/歴三(れきぞう)です。
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史) 「噛んだらアウト」って?
    ああ、「お控えなすって、お控えなすって!」のあれのことね。 
    「仁義を切る」ってのか、親分さんに挨拶を通すってのか、
    要するに「一宿一飯」にありつくためには通過しなければ
    ならない最初の一歩よね。
 

歴)
 その仁義に「合格」の判定を貰えれば、「一宿一飯」は確かに
    約束された。 
    ただしダ、すべてが決められた様式に叶っていることが必要で、
    ひょっこり言い間違えたり、所作に間違いがあった場合なんぞは
    「騙り(ニセ者)」と見做されて対象外にされた。


史) そうなると、その「旅人(たびにん)」サンは「野宿」するほか
   無いわね。

歴)
 そこが甘いッ!
    ひょっこり噛んだりしようものなら、つまりは「ニセ者が詐欺行為
    に及んだ」ということだから、再発を防ぐ意味からも親分さん側は
   当人を袋叩きにして追い出すのダ。
   中には、ボッコボコにされたに留まらず、殺されちゃった者もいた
   らしいゾ。

史)
 なにもそこまで厳しくやることも無かろうにねぇ。
   

sekino_yatappe_51
1963年「関の弥太ッぺ」 十朱幸代/中村錦之助 

          

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いいや、親分さん側からすれば、それくらいのハードるを設けることは
必要だったかもしれん。
だって、業界の相互扶助?として、「一宿一飯」の確保だけでなく、
当人が旅立ちする折には、それなりの「路銀(旅費)」まで持たせて
やるのだからね。
そこで、相手が「ニセ者」ってことにでもなったら、親分さんのメンツは
丸つぶれで、業界でも肩身が狭い思いをするばかりか笑い者にさえ
なってしまうから、自分の祖評判を守るためにも厳格にならざるを
得ないということだ。
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史)
 現代だって、言葉のプロであるはずの「アナウンサー」が噛むこと
   だってよくあることを思えば、業界内の自己規制とは言っても
   「噛んだら即アウト」「所作不適でまた即アウト」なんてルールは、
   少しばかり厳しすぎるんじゃないかしら。
   

歴) そこが現代人の「お気楽さ」かもしれん。
   当時の渡世人は自分を表現できる「名刺」なんぞは携帯して
   いないし、仮にあったとして、相手がそれを「読める保証」もない。
   すると
、「名乗り」が正しいことを証明するのは、自分自身の
   言葉と所作しかないわけだ。
   
史) でもさ、噛んだらダメってのはねぇ・・・。
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そんなことは現代だって同じだろう。
たとえばダ、就職試験を受けようってのに、誤字脱字の多い
「履歴書」を提出して、採用合格となるか?
まあ普通の会社なら「お引き取りください」ってことになるだろう。
街道の親分さん方だってその通りで、「瑕疵だらけの仁義」を
披露されて、「路銀を与えてやろう」なんて考えるわけもない。
なにせ、こういう業界だ。 
~そんな不覚悟な奴らは懲らしめるに限る~
こういう運びになるのは当然だ。





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日本史探検隊
 姫隊長・史乃古参隊員・歴三研修隊員・記録係
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