日本史探検隊

日本史について思いつきの探検を繰り返しています。 |日本史探検隊| 姫隊長・史乃/古参隊員・歴三

年貢

探検結果のご報告もお楽しみに! 研修隊員

306 小さな政府・江戸幕府

一時期のことですが、この日本でも「大きな政府/小さな政府」と
いうテーマが話題になったことがあります。
もっとも、テーマになっただけで、確たる結論を出せないまま
現在に至り、昨今は「消費税UP」などが検討されているのです
から、ある意味では「大きな政府」を目指す傾向にあるというのが
現在の日本なのかもしれません。
「大きな政府」とは、国民に対して、行き届いた行政サービスを
提供する代わりに、その欧文負担も国民に求めようとする
考え方で、その逆が「小さな政府」ということになります。
では、江戸幕府はどちらの性格を帯びていたものか?
それが「小さな政府」だったことは間違いありません。
そもそも、農業に対する「年貢」という税はあったものの、商工業者に
対して「税」を納めよとは言わなかったのですから。
 

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例によって、以下の会話は、日本史探検隊の
史)=姫隊長/史乃(しの)歴)=古参隊員/歴三(れきぞう)です。
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史) アッチャー! そうすると商工業者には納税義務がなかった
   ということ? 現代の商工業者からすれば、江戸時代ってのは
   地上の楽園でありユートピアってことになりそうね。


歴)
 もっとも、「冥加金/運上金」ってものはあった。
   ただしこれは、年貢などの「税」という感覚ではなく、建前と
   しては、業者やその組合が納める「御礼金」の意味合いだ。
   ~毎日仕事に励むことができるのも、お上の計らいのお陰で
    あります。 やれ、感謝、感謝~
といった感じだ。


史) それを逆に言えば、予算自体が少ないわけだから、現代でいう
   行政サービスも大層なものではなかったということね。 
   そうした環境で、一般市民に不便・不都合はなかったのかしら?

歴)
 何かと行き届いたサービスを当たり前のことと捉えている
   現代人の感覚からしたら、そりゃあ不便・不都合なんぞは
   山ほどあったに違いない。 
   ただ、そうした現代の制度・サービスを知らない江戸時代の
   人間からしたら、それは「当たり前」のことであって、
   それほどの不平不満に結びつくことはなかった、というだけの
   ことなのかもしれん。

史)
 そう言えば、江戸時代の警察機構はメッチャ手薄な体制
   だったって、聞いたことがあるなぁ。
   そんな手薄な体制だったから、「ネズミ小僧」も繰り返し商家の
   蔵を狙えることができたのかもね。


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同心/容疑者/小物 
 
 
          

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先端の科学捜査さえお手のものとする警察機構を整えたとしても、
だからと言って、必ずしも犯罪が減るとは限らない。
それとは逆に、いたって小規模な警察機構だから、必ず犯罪が
増加する、というものでもないワケだ。
現在の「警察」に当たる機構が、江戸時代の「町奉行」だが、実は
その守備範囲が結構広範に渡り、現代言葉でいうなら、
警察はもちろん、消防・立法・裁判・行政面まで担当していた。
しかも、その中で、治安維持を担当するスタッフときたら、その人数は、
江戸の都市全体でせいぜいが数十人ということで、メッチャ少ない。
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史)
 それではさすがに少なすぎるでしょうに。
   なにしろ「ネズミ小僧」みたいな泥棒もいることだし、やっぱり
   それ以外の犯罪もあっただろうから。

歴) だから、足らざるところは民間の力を借りたわけだ。
   時代劇によく登場する「目明し」(岡っ引き)ってのも
、確かに
   犯罪捜査の身分証である十手を預ってはいるが、あくまでも
   役人(同心)に雇われた立場であって、決して「警察公務員」と
   いう身分ではないワケだ。
   
史) ははん、つまり「小さな政府」って、足らざるところは「民間」が
   補わなくてはならないわけか。
   つまり、その行政サービスの分を税金で払うか、国民自身が
   税金以外の形で補うか、っていうだけの話になりそうね。
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でもな、行政の一端を国民自身が直接に担うってことは、すなわち、
国民が主体の社会構造となち、文字通りに「民主主義」でもあるわけだ。
要するに、声高に「民主主義」を叫ぶのなら、「小さい政府」でなければ
ならない。
また、その場合は、警察や消防を初めとして、かなりの行政サービスは、
それこそ国民主体の形にならざるを得ないわけだ。
こうした場合には、日本人の好きなこのセリフは吐けない。
~お上(政府)のやり方が悪いッ!~
だから、本物の「民主主義」を維持することは、それなりに結構シンドイ
ものだということを、江戸時代の「無税国家」?が教えてくれている
のかもしれんなぁ。





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探検275 胡麻の油と百姓は

~胡麻の油と百姓は絞れば絞るほど出るものなり~
情け容赦なく「年貢」を取り立てようとする、こんなセリフを
吐いたのは、八代将軍・吉宗が「享保の改革」(1716年~)に
取り組んでいた頃の勘定奉行「神尾 春央」(1687-1753年)
だったといわれています。
ただし、これが事実だったとまでは断定できません。
しかし、少なくともこれよりおよそ半世紀後に出された本には、
そう書かれているとのことであり、そしてまた、幕府の
財政事情が好転したことも事実ですから、おそらくこれに
近いことは行われたのでしょう。

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例によって、以下の会話は、日本史探検隊の
史)=姫隊長/史乃(しの)歴)=古参隊員/歴三(れきぞう)です。
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史) ふえぇ、農民たちも窮したことでしょうに。 
   だって、いきなり「増税」なんて、話がムゴすぎるわ。


歴)
 このセリフ?だけを捉えるなら、実際そんな印象にもなるところだ。
   しかしダ、この「増税」と並行して「隠田」の摘発も行っている。
   つまり、それまでの農民側は、今で言うなら「申告していない田」、
   つまり「脱税田圃」をドッチャリ有していたことになる。
   だから、なにも一方的に「やられっぱなし」というわけでもない。

   

史) 早い話が、国家の財政が苦しいために、今まで見過ごしていた
   田圃を正式に帳簿に乗っけたってことになるの?

歴)
 そう。 現代ならさしずめ「マルサ」を動員して、「隠し財産」を
   見つけ出し、さらにそれに「課税」したってところだろうか。
   だから、幕府としては、法的にいえば、こんな感覚だったのかも
   しれん。 ~これからは「脱税」を許さんぞ~
   
史)
 そうか。 だったら、貧しい農民にさらに重い年貢を課したって
   見方も一面的に過ぎるのかもしれないわけね。

 
tokugawa_yoshimune_51
徳川吉宗
           

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そりゃあ、そうだろう。
その辺はシンプルに考えればわかることだ。
仮に、農民が「餓死」をするほどの「重税」を課したとせんか。
そのことで確かに「増税年」は一時的に税収増加が見込まれるかも
しれん。
ところが、翌年は餓死による農民減で生産力が低下することは
明らかで、そうすれば、それにともなって今度は一気に「税収激減」に
なってしまう。
いかに経済オンチの幕府だって、そんなことはしないというのが、
大人の常識・施政者の知恵ということだ。
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史)
 するってえと、この「胡麻の油と・・・」というセリフは、
   「増税」のことよりも、むしろ「隠田の摘発」に力点を置いて
   解釈しべき。 こうおっしゃっているわけね。

歴) そこまでは言わないが、少なくともこのセリフが必要以上に
   「貧農イメージ」を増幅させていることは事実と思えるゾ。
   だいたいが、このセリフを「増税」に意味で説明するのが普通で
   あって、そこに「隠田摘発」の意味での説明を加えることは、
   まあ稀だからなあ。

史) 考えてみれば、そうかもしれないわね。
   だって、この日本で、もしそこまでやったとしたら、さすがの
   「将軍様」とて無事では済まず、失脚は必至でしょうからね。
   この点は、現代の某国・将軍様とはエラい違いだね。
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某国の将軍様の件は別の機会に譲るとして、このセリフが
「貧農」のイメージを強化していることも一面の事実でしょう。
つまり、このセリフが増幅されて「江戸時代・暗黒史観」に結びついて
いると言えるのかもしれません。

もしそうなら、これはこれで結構人騒がせな「歴史セリフ」と言えそうです。
~胡麻の油と百姓は絞れば絞るほど出るものなり~




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