建物修復支援ネットワーク  新潟県中越地震・能登半島地震・中越沖地震・岩手宮城内陸地震から学ぶもの

歴史を経た古民家をはじめとする古い建物、愛着ある建物を守り生かす私たちの活動は、阪神淡路大震災以来の思いを重ねて、新潟県中越の被災地から始まり12年を数えております。 建物修復の智慧のバトンは、その後能登半島、中越沖、岩手宮城へとリレーされ、東日本では同時多発の広域複合災害でありながら、公費による建物解体の一方で、地域の歴史文化の記憶をとどめるべく広がり、建物再生の取り組みがなされました。 一方持続可能な世の中であるためには、災害時の家屋保全のみならず、平時より住まい・家屋の修復の道理にかなった正しい手当が求められます。 
 大規模な地震災害が起こるたびに「木造建築は弱い、古い建物ほど危ない」という風説に近い情報が流されます。 このサイトではそんな風説に負けることなく、また平時・災害時を問わず、古民家・町屋・土蔵・神社・寺院などの伝統木造建築、一般住宅から学校校舎・倉庫まで古い建物再生にチャレンジしようという方々に、多岐にわたる建築保全に関する見識と技術の継承のために情報共有と発信ができればと思っています。
 2015年4月からは、建物と同時に大量廃棄されかねない、地域の長年の歴史を受け継いできた、文化財・史料のレスキューを言わば車の両輪として位置づけるべく、被災建物・史料救援ネットも始動いたしました。 建物の保全再生や修復のほか、整理・解体する場合など、そこにある文化遺産(古文書、民具等)の調査レスキュー解読なども建築医たる建築専門家、博物館学芸員等の専門家がご相談に応じます。
 建物と地域の歴史文化を担ってきたものを、持て余して捨てたり、意味のないものと決めつけてゴミとして廃棄したりする前にちょっと立ちどまってご連絡ご相談下さい。
 なお建物や歴史文化遺産を生かすための私たちの活動は、心ある方々のお支えによって継続が可能となります。 皆様のご理解とご協力・ご支援を賜ることができれば幸いです。

【ご支援いただける場合の寄付金口座】
建造物救援 : 三井住友銀行 新潟支店 (普通)癸沓隠毅牽坑僑院〃物修復支援ネットワーク 
文化財救援 : ゆうちょ銀行 記号番号11220−11740051 被災建物・史料救援ネット

近代和風建築総合調査≧文化財ドクター派遣≒登録有形文化財という特例図式で、一軒でも多くの歴史的建造物を救う熊本での試み

2017年2月15日の熊本日日新聞で報じられて久しい、未指定非登録の文化財建造物の保全復旧支援。
参照:http://blog.livedoor.jp/niigata_sumai/archives/2017-02.html
 それが先月末あたりからようやく具体的な動きとなり、熊本県行政による建物所有者へのアナウンスと制度説明が戸別訪問方式ではじめられたようだ。 これは震災復興基金による支援メニューのひとつだが、現時点で未指定非登録であっても、登録有形文化財相当と判断され、被災建造物所有者の登録への同意があれば、修復工事費の2/3にあたる金額が補助されるという。
 2011年東日本大震災被災地のひとつである茨城県桜川市真壁でも、歴史的建造物の保全への補助率較差補てんの意味合いから、登録有形文化財に対しても修理費補助率がかなり引き上げられ、歴史的街並みが守られたことは記憶に新しい。 今震災では財政事情や救済すべき建物の多さから、補助率こそやや低いものの、登録も指定もされていない歴史的建造物への支援策が具体的に示されたことは、「熊本発」の災害復興支援の指標として今後の行方が注目されることになると思う。
被災文化財建造物等復旧事業について
文化財ドクター(文化財的価値ある建造物のレスキュー)事業
被災文化財建造物復旧事業の申請フローチャート

 熊本県では震災発生の半年前、全国で実施された文化庁主導の近代和風建築総合調査(第一次調査)がなされた。 本制度適用判断にあたって、そのリストを基にしながら災害後文化財ドクターという建造物支援の網をかぶせたことも画期的である。 これも今回の熊本で承継されたことで、災害非常時の文化財行政のありようとして、東日本大震災以来の被災地における新たなトレンドとして定着しつつあるといえるのかもしれない。
近代和風総合調査の抽出対象建物選定基準一本だけで十分であるかという課題は残るものの、文化財ドクター派遣を、近代和風調査対象であるかを問わずオンデマンドでできるようになるならば、大きな取りこぼしも起きにくいように思う。
 まさに兵庫の教訓を得て発足したヘリテイジマネージャー制度運用の成果ともいえる、熊本での動き。 平時からのヘリマネのあり方が今回の災害後フォローあってこそのものといえよう。 それでも古建築修理に通じた建築専門家の絶対数が限られている中、建物の修復に向けた詳細調査や意向調査、さらに修復見積もりなど、これからなすべき課題は山積している。 一方で公費による被災建物解体がここへきて70%に近づいているという事情も看過できない。 保全修復への具体的道筋がつけられなければ、解体の憂き目に遭うことになりかねない状況は変わっていないのだ。

上のチャートでもおわかりいただける通り、近代和風建築総合調査≧文化財ドクター派遣≒登録有形文化財と例えてもよいかともみえるこの特例はまさに画期的。 ここからでも一軒でも多くの歴史的建造物が救われることを祈るばかりである。

6月25日は、長野県小谷村にて「杣仕事」を見る学ぶ講演会へ

永井家棟札脚注入りVDSC01038
20170621小谷村セミナーチラシ

6月25日(日)午後、長野県北安曇郡小谷村中土において、同村最後の杣棟梁と言われる、山本国弥さんの杣仕事実演を拝見し、お話を聞く講演会が開催されます。 2014年長野神城断層地震では多くの伝統的な建物が消えて行ったが、その多くに残されていた棟札には、もれなく「大工棟梁」にならんで「杣棟梁」の名前が墨書されていました。
古民家再生の技術者やヘリテイジマネージャーの方々にさえ、あまりその実態を知られることのない「杣=そま」という仕事。 まさに山に暮らし、山で生業を得ていた小谷村ならではの杣という山仕事は、それがなかったら大工仕事も成り立たないというまさに建築大工とともに双璧をなすもう一方の大工でもあります。 
チェンソーの普及とともに、全国的に昭和30年代から急速に消えて行ってしまった今では幻ともいえる「杣」の仕事とはどのようなものであったか? まさに現役の職人でもあるその生き証人からお話を伺わせていただく企画。 皆様お誘いあわせの上、初夏の信州小谷村へお越しください。
小谷村最後の杣棟梁 山本国弥氏_SDSC03133



NHK 視点・論点のアーカイブ記事

先日放送されたNHK-Gの「視点・論点」アーカイブ記事が閲覧できるようになりました。 今や自然災害の被災地のみならず、各地で建物の維持・保全・利活用が課題となっていますが、災害はまさに社会の弱いところを突いてくる。 しかも期限を切って解体・保全の判断を迫ってくるという点で、もしそれが保全利活用という方向に道が切り拓かれるなら、逆にそれが全国各地に点在する身近な文化財保全の曙光をみるということにつながるのかもしれません。
NHKページ >>>
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/268896.html 

新町古町SDSC07467
新町古町SDSCF3065

熊本地震から一年。文化財の復旧復興に向けて

2017年4月21日(金)さきほど4:20〜NHK総合TVで「熊本地震 文化財の復旧復興に向けて」という番組が放送されましたが、その再放送が本日午後1:50〜2:00 NHKーEテレにてされますのでお知らせします。
番組では、熊本城を頂点にしながらその広大な裾野をなす無名の文化的価値の高いもの、地域の歴史文化を語るものが地震という災害によって一気に失われつつある中で、我々はいかに心を砕き現実に対峙していくべきかについてのお話でした。
城下新町古町の町屋・清永本店、肥後芍薬、肥後菖蒲などの栽培を行ってきた熊本南区の武家屋敷・木村家住宅など、すでに公費解体の申し込みもなされ、解体か存続かの狭間に揺れる建物についてもご紹介いただきました。 
調査建物・熊本市SDSC05969
益城町木山神宮SDSC06289

また地域の心の拠りどころとなっている多くの神社の修復が、コミュニティーの維持存続において重要であること、近代和風建築調査が始まっていて、地域の文化遺産を守るために平時からの存在把握と所有者との意思疎通が重要であること、あるいは京都では全国に先駆けて暫定文化財登録制度が創設され、これらが事前に備えることにつながると期待される等。 また高齢化と受け継ぎ手の課題があるなか、古い建物の転用利活用がポイントになるというお話など、今まさに全国で考え取り組むべきこととして提起もいただきました。
大規模災害後、とかく後順位に送られがちな身近な文化財保全。 保全を呼びかけた頃には「わからないもの」は要らない、※「借金の証文でも出てきたら困る」などと言って捨てられてしまう古い文書、危険の赤紙が張られた建物の話など、震災から一年以上が経った今でも、失われる懸念の消えない「身近な文化財」の保全について、みんなで考えるにとてもよい10分番組です。 
番組サイト >>> 
http://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2017-04-21&ch=31&eid=22252&f=758

御船町SDSC05961
甲佐町身近な文化財SDSC06336

上記4点の写真は番組内容と直接関係のあるものではありません。

※「借金の証文でも出てきたら困る」
「借金の証文」というのは、通常貸した側が持っているもので、百年前の証文を借りた側が仮に持っていたとしても、それによって何か法的拘束が発生したり、困るものではないのです。

熊本地震から間もなく一年、見えてきたか?”地盤リスク”

熊本地震発生からこの週末で一年と言うところ、本日4月9日(日)NHK総合テレビにて
大地震 あなたの家はどうなる?〜見えてきた“地盤リスク”〜
と題した番組が放映されるようです。
以下はNHKホームページです。 >>>
http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20170409

NHK Special 20160409地盤災害


前例のない大地震だけに被害態様も様々でしたが、地盤災害絡みとしては、個人的には早いころに見た西原村の黒々とした火山灰地上で、地盤変状によりねじれた真新しい住宅、最近見たところでは益城町の赤い軽石でできた山の滑落崖など、被害の現状と対策上でも改めて未知部分が多いことを思い知らされました。 とくに益城町では、地震発生当初から様々な研究者。実務者が集中調査したことからもわかる通り、秋津川沿いの液状化など、これまで沿岸特有とも思えていた内陸河道沿いの地盤被害から、中山間地、また都市型の典型でもあるひな壇造成団地まで様々な地盤災害がありました。
熊本では被災家屋対応の目途もみえない中で、一年の日を迎えようとしていらっしゃる方も多いことと思いますが、ここに番組をご紹介させていただきます。

J-SHIS Map熊本表層地盤の揺れやすさ地図

J-SHIS Map熊本微地形区分拡大図
地盤関係ではたびたびご紹介させていただいているJ-SHISマップより、熊本地方の表層地盤の揺れやすさ=地盤増幅率(Vs=400m/sから地表)&微地形地図を表したものです(防災科学技術研究所ホームページ= http://www.j-shis.bosai.go.jp/map/ にて閲覧可能)
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ポスト3.11のひとのあり方、生き方を模索しています。 原点は新潟県中越地震以来、災害後に起こってきた「人災の減災」にあります。 建物・地盤地質の両側面からの建築医として、直せばまだ安全に使うことのできる建物の修復支援情報を発信をしています。
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