建物修復支援ネットワーク

歴史を経た古民家・土蔵などの建造物、愛着ある建物を守り生かす私たちの活動は、阪神淡路大震災以来の思いを重ねて、新潟県中越の被災地から始まり13年を数えてきました。 建物修復の智慧のバトンは、その後能登半島、中越沖、岩手宮城へとリレーされ、東日本では同時多発の広域複合災害でありながら、公費による建物解体の一方で、地域の歴史文化の記憶をとどめるべく広がり、建物再生の取り組みがなされました。 一方持続可能な世の中であるためには、災害時の家屋保全のみならず、平時より住まい・家屋の修復の道理にかなった正しい手当が求められます。 
 大規模な地震災害が起こるたびに「木造建築は弱い、古い建物ほど危ない」という風説に近い情報が流されます。 このサイトではそんな風説に負けることなく、また平時・災害時を問わず、古民家・町屋・土蔵・神社・寺院などの伝統木造建築、一般住宅から学校校舎・倉庫まで古い建物再生にチャレンジしようという方々に、多岐にわたる建築保全に関する見識と技術の継承のために情報共有と発信ができればと思っています。
 2015年4月からは、建物と同時に大量廃棄されかねない、地域の長年の歴史を受け継いできた、文化財・史料のレスキューを言わば車の両輪として位置づけるべく、被災建物・史料救援ネットも始動いたしました。 建物の保全再生や修復のほか、整理・解体する場合など、そこにある文化遺産(古文書、民具等)の調査レスキュー解読なども建築医たる建築専門家、博物館学芸員等の専門家がご相談に応じます。
 建物と地域の歴史文化を担ってきたものを、持て余して捨てたり、意味のないものと決めつけてゴミとして廃棄したりする前にちょっと立ちどまってご連絡ご相談下さい。
これまでタイトルについていた「ー新潟県中越地震・能登半島地震・中越沖地震・岩手宮城内陸地震から学ぶもの」を、東日本大震災7年の節目を前にして、外させていただきます。 被災地における過去の知見を次の被災地に生かす試みが広がりますように!

東日本大震災9年。間もなく震災4年の熊本から吉報2題

COVID-19の感染拡大を受けて、災害支援も大きくは手を止めなくてはならない世相となり二週間。 災害被災地から嬉しい便りが届いたので、紹介させていただきます。

ひとつは2016年4月13日、揺れの収まらない中で熊本市内の事務所と電話でつながった、伝統木造建築の実務と学術見識に明るい大先輩、古川さんらの粘り強いお取り組みがひとつの結実を見せたというこの記事。
熊本20200129_熊本川尻


もう一つは熊本県建築士会のみんなで、「被災家屋の修復」ケーススタディとして講習会場とさせていただいた、この家からの報告です。
2020.02.05熊本市南区W邸
 
熊本市南区の明治前期の建物所有者からLINEで送られた写真付き「間もなく修復完了です!」のご報告。 当時は「危険」の張り紙が張られ、被災判定も「全壊」とされた建物でしたが、熊本で逆風の中からカスタマイズ&成立した手厚い支援制度と伝統構法に通じたヘリテージマネージャー協議会のメンバーの働きが功を奏したものです。
震災3年目を経たあたりから、当方との往き来が増えてというのも意外なことでしたが、仔細はともかくとして、とにかくハードや制度だけ整えてもダメ! それを運用する施主と、それに乗っかる専門業者が、きっちりと現場に通い、被災者の思いを汲んでスクラムを組むことで成しえた建物修復。 それを実感させられた2題でした。

東日本9年、熊本4年の鎮魂、そしてCOVID-19の終息を願いつつのアップロード。


優先順位をつけた要望提出で、再建・復興への不安を減らす試み

昨日は台風19号被災地のひとつである、埼玉県川越市の被災住民・町内会有志合計8名の手により、内水氾濫防止のための排水機能強化や調整池の増設などを求める要望書・質問書が川越市長に提出されました(私たちも微力ながら相談対応と側方支援をさせていただきました)。

寺尾自治会・川越市長要望質問_20200218埼玉新聞
埼玉新聞2020年2月19日付




動画はあと数日のみ視聴可能と思われます。↓ 
Yahoo japan ニュース (テレ玉ニュース)より https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200218-00010000-teletamav-soci
川越市寺尾地区住民 川合善明川越市長に要望書提出_20200218


台風19号関連では、あまり報道に出ることのない川越市の水害ですが、今回水害のわずか2年前の2017年10月にも台風21号による浸水被害を受けたため、多くの世帯がいわゆる二重被災の状態となりました。
1000万円を超える費用をかけて修繕してようやく我が家に戻ったら、一年も経たないうちにまた同じような浸水被害を受けたという方に、自治体対応は淡々としていたという事実にも驚かされますが、もっと気になったのは、国の災害救助法適用があったにもかかわらず、応急修理制度の周知が十分になされなかったという話を耳にしたことです。 

 水害発生から4ヶ月を越えて今は渇水期の冬ですが、あと半年もしないうちに梅雨〜台風シーズンはやって来ます。 しかし国や自治体など様々なレベルでなされる河川管理も、傷んだ堤防などの修理で手一杯の様子で、大量の土砂によって河床(川底)の上がったところまでは、次の豪雨シーズンまでに、対処どころか手がつけられるのか微妙な状況です。 
川越市寺尾の自治会長はじめ8人は、この二重災害を受けて「三度目はあってはならない」と、放水ポンプの能力アップ、河床の浚渫および新たな調整池の設置などを求めましたが、実は川越のみにとどまらない、全国各地での河川浚渫対策という共通事項を取り組むべき急務として訴えました。 そして平野部のみならず、中山間地では砂防ダム堰堤内がすでに土砂で埋まり、本来の機能を喪失しているところがたくさんあります。

長野でも、福島でも住民集会がいま盛んに開かれているようですが、行政に要望すべき優先順位は、河川堤防を応急復旧させるとともに、川底、調整池の底が上がってしまったところへの対処を求めることではないでしょうか? 昨年よりも湛水能力が落ちている調整池や河川。 その手当てが十分になされぬまま、家屋や田畑、果樹園を修復して、また梅雨時、台風シーズンに被災をしてしまったらこれ以上の悲劇はありません。

安心して地域に戻ることが出来るかどうか? 被災した建物の修復には、これらの心理的不安要素を取り除くことが国および被災関係自治体に求められていることを、川越での取り組みから強く感じたので、一筆起こした次第です。 住民としてどのような声を上げるか? 要望はたくさんあるとは思いますが、時系列で待ってくれるものとそうでないもの。出来ることと出来ないこと。 それらをよく整理して、優先順位をつけて、早期に行政に対して陳情要請の声を上げたいものです。


川越市寺尾地区住民陳情20200218_朝日新聞

朝日新聞2020年2月19日付


 自治体は住民被災者の声があってこそ、その裏付けのもと、さらに上(都道府県や国)に対して要望を上げることができます。 要望する側も自治体と協調路線をとりながらの臆することなく声上げすることが大切です。 行政との信頼関係を堅固に築くという住民の信念があればこそ思いは通じ、必ずや復興のスタートラインとなると信じて!


論考/被災地における大工・工務店の立ちまわり

東日本広域にわたって同時多発被害を受けた台風19号災害対応で気になるのが、被災した家屋の養生・保全〜乾燥・カビ対策の一方で、大工・工務店の被災地における立ちまわりである。 
今回の水害には、注意すべき点が二つある。 ひとつはここのところ更新ごとに申し上げている通り「乾燥」の問題。 もうひとつが、地震と異なり水害では、高床式(ピロティ形式)を除いて、地域一帯がおしなべて等しい被災状況になり、対応要請の集中度は地震災害以上であろうということである。 
地域で働く大工が、おおむね一生のうちに建てる建物が仮に100棟として、その半分が浸水被害にあったとするとおよそ50棟。 被災地では、お抱え大工として、修繕依頼を受けた膨大な数にのぼる建物をどう面倒を見るかという課題に直面している。 年月をかけて得てきた信頼を、その立ちまわり如何では失いかけない、あるいは順番がいつ回ってくるかわからない修繕をあきらめ、ハウスメーカーに鞍替えされてしまう事態も容易に推測される。
さて様々にある大工・工務店の中で、社長・親方から手許大工までおおむね4〜5人の経営規模を仮定し、その立ちまわりの2パターンを想定したものが下記の図表である。 
災害対応シミュレーションモデル 大工・工務店

かなり乱暴な推論であるというお叱りも覚悟のうえであるが、現実に見積もりと予算の折り合いがついたところから取り掛かるのは、平時であればごく当たり前のこと。 しかしお客様本位の長い目で見れば、乾燥状況を見極めて進めるというのが道理であると考えるなら、この二つのモデル比較は、当たらずとも遠からずではないだろうか?
(※但し書追加 = ここでいう応急修理は、http://blog.livedoor.jp/niigata_sumai/archives/52277391.htmlに示すように、二階居室ありを前提に、一階出入り口、キッチン、浴室、トイレ等の最低限水廻りを使えるようにする(キッチン、トイレ等は仮設置、浴室のみ本設置)ことを指します。 実際に正味稼働5日、仮留めした荒板(構造用合板等)で床壁面を構成し、浴室ユニットのみ靴を脱いで使用するスタイルで仮住まいしている家があります)
水分計で乾燥度チェック!DSC05367

水分計で乾燥度合いを測りながら仮復旧から本復旧へと進む

応急修理開始DSC05272
家屋の中で仮復旧する範囲を決めて、集中的に乾燥させる


すべてを応急修理制度でというのではない。 被災された方が仮設住宅に入っていれば、応急修理制度は使えないが、それでも被災した我が家と地域のことは気になるし、馴染みのご近所の顔を合わせることは、お互い何よりの励みにもなり、地域の元気の素ともなるだろう。 そのための仮住まい、前回ブログで紹介した、シェルター・イン・ハウスである。
春に向かうこの季節。 多少の不自由はあっても、仮復旧で被災した我が家でお茶を飲むことができ、地域とのつながりを保つことができるのだとしたらありがたいはずである。 ましてや農業などの生業をそこで営んでいるのだとしたら、その仮復旧はお茶のみ以上の意味がある。 そして何より高齢の被災者にとっては、見ず知らずの町内での仮住まいはなによりつらいはずである。
そんな状況を慮っての、「仮(応急)復旧〜本復旧」という二段構え。 
今こそ、大工・工務店としての災害時における取り組みスタンスを見直してはと思うのだが、実際のところはどうだろうか?

職人不足解消、完全乾燥を待ちながら「シェルター・イン・ハウス」という仮住まい提案

令和元年台風19号水害から3ヶ月、阪神淡路大震災から25年の節目の先週。様々な思いでこの時期をすごされたことと思います。
地震・水害など同じ災害のジャンル、異なるジャンルにかかわらず、ひとつとして同じ災害がないと言われる中ですが、こと生活と家屋の再建、あるいは地域コミュニティの保全・活性化維持となると、その手当て方策にはいくつかの共通項があると考えます。


それはシンプルにひとこと、残っている建物を壊さないことと。 そして水害に特化して言うならば、残っている建物の一部を使って、その場所で仮住まい「シェルター・イン・ハウス=Shelter in House」をつくることです。

語るより先に今回、このシェルター・イン・ハウス、言わば水害対応の仮設〜本設の二段階で復旧工事を行うという考え方を、下図で見ていただきましょう。

農家(延床面積60坪〜90坪クラス)の仮住まい間取り例
仮住まいの考え方_(例)

一般住宅の間取り例
仮住まいの間取り_(例2)

同時多発災害に遭った水損家屋にはご存じの通り、「乾燥を待たなくてはならない」ということと、「絶対数が不足している大工職人の手をどうやりくりするか」というふたつの課題が立ちはだかっています。 上の事例提案は、そこに対するソリューション=回答です。

この時期台風19号被災地で相談を受けて感じるのは、地域に日常の暮らしが戻るまで、どれ位かかるかという不安が、ひしひしと感じられるところ、いち早く我が家に戻られた方には、実際にそのおかげで、日々の生活リズムが保たれているという事実があります。
【参考:11月14日既報「大規模水害発生から1ヶ月。(続)ここからの対処」】
http://blog.livedoor.jp/niigata_sumai/archives/52274009.html

また昨年末の長野松代での被災家屋修復説明・相談会でも紹介したことでもありますが、穂保、長沼、津野、赤沼など、リンゴ農家を中心とする地域では、我が家の灯かりが燈るということは、生活だけでなく、地域コミュニティの中での意思疎通、そして何よりそこでの生業の再建につながります。 そういった考えを裏付けるように、過去の被災地2016年熊本や2018年北海道の農村部では、我が家の敷地内にトレーラーハウス型仮設住宅が設置された結果、生活と生業が切り離されることなく日々営むことが出来て、とても好評であったという話がありました。
今の季節、リンゴ畑に人影は見えなくても、農家のバックヤードである農舎では冬も営まれる農作業があることを考えると、このシェルター・イン・ハウスという、仮住まいの考え方が広がってくれればと願うばかりです。
(編集中)

【印刷用】
仮住まいの考え方(例)

仮住まいの間取り(例2)

1月13日(月・祝)は、長野市スポーツレクリエーションパークへ!

来る1月13日(月・祝)三連休の最終日、長野市北部スポーツレクリエーションパークにて開催予定の、長沼発福幸(復興)イベント「明日に向かって踏み出す集い」の相談コーナーに、たてもの修復支援ネットワークのブース出展がなされることになりました。
修復に向けて順調に乾燥が進む水損建物の朗報の一方で、水害後依然として続く家屋対応に関する不安や様々な悩みごと、何回拭いても白く薄汚れたままの木部の手入れ方法、そしてここのところ深刻なカビの発生に伴う相談も増えてきています。
1月13日は午前10時〜13時までの時間限定ですが、ご都合の許す方は、長野市北部スポーツレクリエーションパーク(長野市 三才1981−1)の相談コーナーへお越しください。 被災家屋の修復事例などを紹介しながら、それぞれの被災状況を踏まえた相談・助言をさせていただきたいと思います。
20200113長野市スポーツレクリエーションパークイベント


 


Profile

【 事務局 】住まい空間研究所 内 (新潟市中央区)

 地震災害の被災地支援や、これまでの様々なご相談・現場体験などから得られた知見をもとに、建物の修復に関する情報を発信しています。

【支援業務内容】

/□震災被災建物の修復ご相談
/□気候風土に根ざした住まいづくり
/□古民家再生・住宅再生
  リフォーム(修復リノベーション)
/□建物の耐震診断と耐震補強
 (市町村の公的補助相談含む)
/□高齢者・障害者のための住宅
  改修
/□建築と住まいに関するご相談
  コンサルティング

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ポスト3.11のひとのあり方、生き方を模索しています。 原点は新潟県中越地震以来、災害後に起こってきた「人災の減災」にあります。 建物・地盤地質の両側面からの建築医として、直せばまだ安全に使うことのできる建物の修復支援情報を発信をしています。
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