建物修復支援ネットワーク  新潟県中越地震・能登半島地震・中越沖地震・岩手宮城内陸地震から学ぶもの

歴史を経た古民家をはじめとする古い建物、愛着ある建物を守り生かす私たちの活動は、阪神淡路大震災以来の思いを重ねて、新潟県中越の被災地から始まって、11年を数えております。 建物修復の智慧のバトンは、その後能登半島、中越沖、岩手宮城へとリレーされ、東日本では同時多発の広域複合災害でありながら、公費による建物解体の一方で、地域の歴史文化の記憶をとどめるべく広がりました。 そして津波被災地も含めた東北各地で、御堂から古民家まで様々な古建築が再生されました。 一方持続可能な世の中であるためには、災害時の家屋保全のみならず、平時より住まい・家屋の修復の道理にかなった正しい手当が求められます。 
 大規模な地震災害が起こるたびに「木造建築は弱い、古い建物ほど危ない」という風説に近い情報が流されますが、はたして本当なのでしょうか? このサイトではそんな疑念を抱く方々とともに、また平時・災害時を問わず、古民家・町屋・土蔵・神社・寺院などの伝統木造建築、一般住宅から学校校舎・倉庫まで古い建物再生にチャレンジしようという方々に、多岐にわたる建築保全に関する見識と技術の継承のために情報共有と発信ができればと思っています。
 2015年4月からは、建物と同時に大量廃棄されかねない、地域の長年の歴史を受け継いできた、文化財・史料のレスキューを言わば車の両輪として位置づけるべく、被災建物・史料救援ネットも始動いたしました。 建物の保全再生や修復のほか、整理・解体する場合など、そこにある文化遺産(古文書、民具等)の調査レスキュー解読などもご相談に応じます。
 建物と地域の歴史文化を担ってきたものを、持て余して捨てたり、意味のないものと決めつけてゴミとして廃棄したりする前にちょっと立ちどまってご連絡ご相談下さい。
 なお古い建物や歴史文化遺産を生かすための活動は、皆様の心あるお力添えによって支えられております。 多くの皆様のご理解とお支えを賜りながら、古いもの、災害によって手ひどい被害を負った建物と生活文化保全への支援を続けてまいりたいと思いますのでよろしくお願いします。

【ご支援いただける場合の寄付金口座】
建造物救援 : 三井住友銀行 新潟支店 (普通)癸沓隠毅牽坑僑院〃物修復支援ネットワーク 
文化財救援 : ゆうちょ銀行 記号番号11220−11740051 被災建物・史料救援ネット

地震、雨漏り、そしてカビ。 苦悩が滲む熊本被災地へ向けて(下)

熊本震災発生から5週間を越えて、ようやくニュースでも屋根対策の遅々として進まない状況がアップされた。 
屋根修復の瓦職人足りず 県外の業者に派遣要請 熊本 NHKニュースWEB 5月22日 16時27分

 修復すれば安全に戻ることの出来る家を、雨漏りが容赦なく襲う熊本。 対策を誤れば雨漏りが修復対象範囲を広げるばかりか、対応を誤れば後々の腐朽被害、シロアリによる蝕害(食害)を呼んだり、電気系統の腐食・錆びによるトラブル、最悪は漏電火災を呼ぶ。 梅雨、台風襲来の季節を前にしての雨漏り対策が、待ってもなかなか来てくれない屋根工事以前の急務であることを改めて訴えたい。

さて今日は雨漏り対策の続編、カビ対策についてである。 カビは既述の建物被害に加え、深刻な健康被害を呼びかねない。 雨漏り対策を施したら、早急にカビ対策を施したいものである。

以下にカビ対策の手順をざっくり記述するが、作業前には、長袖ズボン&シャツ、ゴム手袋(ホームセンターの園芸用品コーナーで安価で売っている)と、マスク、防塵メガネなどで、吸入しないようにしっかり防護装備すること。 

➀ カビた部屋と屋外を天候をみながら換気する(雨の日の換気は、却ってカビを呼ぶこともある)。 換気の際に、カビていない部屋とカビた部屋を通気すると、カビの胞子が拡散するので注意し、状況をみながら行う)。
➁ 濡れた石膏ボード(プラスターボード)は、再使用不能となるので、撤去処分する(濡れたまま集積させると硫化水素を発生させることもあるので要注意)。 なお石膏ボードの廃棄処分に関しては法令遵守のこと(国の通達 http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/recycle/pdf/recyclehou/manual/sekkou_syousai.pdf#search='%E7%9F%B3%E8%86%8F%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%89%E5%87%A6%E5%88%86%E6%96%B9%E6%B3%95' )
➂ 雨漏り水を貯め込んだ、グラスウールなどの繊維系断熱材は剥ぎ取って捨てる(天井裏・壁など要所要所を剥がして確認し、撤去範囲を決める)。なおグラスウールは細かいガラス繊維でできているので、触っているとチクチクしてきます。 特大なポり袋などに回収して圧縮し密閉処分。 処分取り扱いには注意する(処分方法は自治体へ尋ねる)こと。
➃ ダクトファン、扇風機や送風機等で乾燥させる(最下段写真参照)。 ダクトファンならば、別売りのダクトを使って、狙った場所を集中的に乾燥させることも可能。
➄ 消毒用エタノール(薬局、ホームセンター等で入手可能)を噴霧する。 狭い範囲ならばこれを塗って、カビを拭きとる。 なお周辺火気厳禁・要注意!
➅ オスバンという殺菌消毒薬品もある。 しかし含水率が高く、また換気の悪い場所での使用はお薦めできません。
➆ カビはとにかく原因を元から絶つということ大切だが、実際はなかなか困難。 それでもまずは雨漏りをとめることから(本編前記事参照)はじめて、お天気の良い日には換気、通気をせっせと行うこと。 被害拡大を止めるためにもそれ以外にありません。

雨漏り熊本 6485
雨漏り大津町6475
雨漏り熊本益城6580
ダクト送風ファン


なお本記事作成にあたっては、長岡技術科学大学の木村悟隆准教授ならびに、常総水害などで現地被災建物対応の第一線で取り組まれた小林直樹さんと、情報・意見交換をさせていただきました。

地震、雨漏り、そしてカビ。 苦悩が滲む熊本被災地へ向けて(上)

 震災1ヶ月と1週間を経た昨日から、ようやく益城町での罹災証明の交付が始まったらしい。 罹災証明は仮設入居を含めた公的支援の前提条件になるもので、それがやっと交付にこぎ着くことができたことで、一応の安堵と納得を得た方もあるだろう。 ところで、罹災証明のための調査は、最初は外観目視で行われるもので、判定(全壊>大規模半壊>半壊>一部損壊>無被害)結果に不服がある場合は、居住地を所轄する役所、役場の税務窓口に申し出ることで再調査を受ける権利があることを忘れずにいただきたい。 
 さて、今日は一昨日熊本より相談を受けた、屋根の雨漏りを原因とするカビの発生のことである。 建物の倒壊防止策と雨漏り対策のことは、前記事でも触れたことだが、広範で膨大な件数に及ぶ被害に、ほとんど打つべき手が打たれていない厳しい現実が窺える。 屋根の養生は中の家財や貴重な思い出の品さえも傷めるが、何より被災した建物の修復の際に大きな足かせとなる。 工事施工範囲は広がり、修復コストにも大きく影響するのだ。
 具体的対策についてであるが、まずは屋根や、壁、サッシュなどの隙間からの雨漏りを止めることが大前提となる。 雨漏り被害が静かに深刻化しているとはいえ、今からでも遅くはないと思うので、支援者、被災者の皆様はまず、雨漏りをストップさせることから実践して欲しい(過去の経験則から、熊本全域の屋根補修には、おおむね1年半から2年かかると推定される)。
屋根養生シート養生のススメDSC06422
屋根養生シートはすっぽり覆わず、できるだけ小さくかけてSDSC06316


 まず屋根養生であるが屋根瓦がところどころ飛んでいる、あるいは割れている箇所があれば、まず他所の瓦、下屋などの差し支えないところの健全な瓦を抜いてでも補修して、シート養生範囲を限定させることである。 シートを屋根全面に掛けていても風で煽られ、その手直しだけでも大変である。 また土葺きの瓦であれば、まばらに壊れた箇所の補修は、新しい瓦でなくてもサイズさえ合えば既存の瓦を差すことで対応可能である(上段写真では、実際には壊れていませんが、平瓦と呼ばれる補修のしやすい部分を図示)。 また鈑金屋さんに屋根瓦の割れたところに鋼板(日曜大工での修繕ならば、ブリキ缶を切ってでも可能)を差しこむことで雨漏りを止めることは可能である。 とくにこの屋根の平面を直すことで、屋根養生範囲を狭くすることは、これからの梅雨どき、そして台風シーズンを前にして極めて重要である。
 そして養生シートの素材であるが、ブルーシートではなく、紫外線にも強い厚手の「シルバー耐候性シート」での養生をお薦めする。 これを壊れた屋根の棟上から、土嚢、番線などできるだけコンパクトに巻くのである。 雨や風に吹かれる屋根のなかで、熊本でもしっかりした屋根養生のお手本はきっと身近にあると思われるので、見倣ってやってみてほしい。

 カビ対策については、これ以上濡らさないことが前提である。 小屋裏(屋根裏)にグラスウールなどの繊維系断熱材が入っている場合には、そこからジュクジュクと雨沁みが広がるので、その撤去が必須である。 一両日中にその具体的対策について、少しご紹介したいと思います。 

熊本地震から明日で1ヶ月、命と財産を守る対策はできているか?

熊本地震から明日で1ヶ月。 熊本県熊本・阿蘇地方と大分県中・西部地方では5月7日時点で震度1以上の揺れが1300回を超えた。 今日は人命と財産が重大な危機にさらされていないかという話である。 
 5年前の東日本大震災では、震災発生1ヶ月を前にして震度6強の最大余震が襲った。 そのことを熊本に重ね合わせると、安心できない状況があちこちで散見される。 写真は今や知られた益城町の最も交通量の多い交差点だが、建物はいつ倒壊してもおかしくないところ、その脇を車や人が絶え間なく通り過ぎていく。 規制線は有形無実化し、道路の脇に押しやられているだけで、倒壊防止処置は施されていない。 このように傾斜した先が道路であるにもかかわらず、注意喚起の紙は剥がれ、倒壊防止処置がとられていない家屋は意外に多い。 空き家が増えている社会的背景を色濃く映すというべきか、ノーコントロール状態があちこちで散見される事態に加え、被災地行政の機能不全が依然として続いていることを思い知らされる。 行政が「手続き」「目配り」できないのなら、ガテン系のボランティアの力にも頼りたいところだが、それにも限界はある。 調査視察に入ったお偉いさんであろうか? 倒れかけた建物の前、ガレキの山となった町を背景に記念撮影をするという光景には、正直唖然とした。
倒れてきたら大変!SSDSC07046
身近な危険を見直し適切な処置を!SDSC07101
落ちてきたら大変!SDSC07024

もうひとつが雨対策。 熊本は来月前半には梅雨を迎えるが、雨漏り対策は十分だろうか? 東日本大震災でも、膨大な数におよぶ瓦屋根の日本家屋が被害を受けたが、その修繕にはおおむね1年半を要していた。 熊本でも同様の事態が予想されるにもかかわらず、屋根修理までの応急対策が十分とは言い難い。 所有者自らが屋根に登りシート養生。 そして風でシートはめくれる度に、危険な作業を繰り返す。 しかもブルーシートでは厚さなどにより耐久性が異なり、紫外線が強くなるこれからの季節をこのまま乗り越えることは難しいだろう。 おまけに夏から秋には毎年強烈な台風が襲う熊本・大分県地方。 屋根壁の雨対策はこれからの家屋再生復興の生命線となるだろう。 厚手のシルバーテント地のシートで覆いしっかりと土嚢とロープで押さえ込んでいる家はまだまだ少ない。  雨漏りを繰り返すうちに、家屋の修繕対象範囲は広がり、このままでは修復コストにも大きな影響を与えかねない状況だ。  
間もなく梅雨、対策は大丈夫?SSDSC07016
梅雨入り対策は大丈夫?SDSC06668
雨漏りが・・・。SDSC06580


余震対策、雨対策に緩みはないか? 震災1ヶ月を前にしての重大な懸念事項である。

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復興の一歩を踏み出すために

昨日は熊本県建築士会青年部会のご主催による被災家屋対応説明と、日中は同宇土支部の主催による、被災建物の検証と修復に向けたワークショップでした。 熊本の建築専門家の皆様の志高く、心熱きさまにも触れることができ、またご被災された方の復興への道に一筋の光が見えてきたようでもあり、嬉しい出会いの日となりました。

さて東日本大震災から5年2か月の月命日の今日、5月11日(水)午後7時からですが、熊本市のまちづくり関係者のご主催で、急きょ一般向けに生活と身近で文化的な街並みを守る、被災建物の対処に関する説明会が開催されることになりました。

過去の被災地における様々な取り組みを含めて、地域の皆様とどこまで深いお話ができるかわかりませんが、被災建物の修復に関する情報から、まちににぎわいを取り戻すためのタウンミーティングになればと思います。 なお明日12日(木)は被災家屋の現地調査相談も予定されているようですので、詳しくは「くまもと新町古町復興プロジェクト」委員宮本さん(電話090-4512-0225)までお尋ねのうえご参加ください。
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写真は昨夜の熊本県建設会館での建築専門家向け説明会の様子です。 ワークショップの写真はアップしておりませんが、かなり技術者として難度の高い取り組みになっていることも再認識する一日になりました。 今日のお話も地域の皆様の復興に向けた軸足をしっかり持つための一歩になればと思います。

会場:熊本市中央区細工町2丁目25 熊本市 五福まちづくり交流センター2階会議室
日時:5月11日午後7時〜午後9時
主催:くまもと新町古町復興プロジェクト
参加費:無料

被災建物対処に関する技術情報アーカイブス

熊本地震における被災建物のうち、半壊以上の建物への公費による解体方針が打ち出されて今日で一週間が経ちます。 一方で建築技術者のマンパワー不足と、危険判定された建物数が阪神淡路大震災の2倍を超えたとの報道 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160507-00000003-kobenext-soci もなされました。 罹災調査と仮設住宅入居や応急修理制度適用の根拠となる罹災証明の発行の停滞、仮住まい対策の遅れなど、庁舎建物被災もあって行政機能不全の深まる中、避難所閉鎖、避難生活者の集約化など、被災地の状況は一層混迷を深めているとと言わざるを得ません。 

 今日はこれまで蓄積されてきた建物対処法に関する情報提供アーカイブス。 余震が続く中で傾きかけたまま放置されている建物。 また風雨も容赦なく見舞う状況の中で、なすすべもなく被災当時の危険な状況のままで放置されている建物の姿に状況の深刻さが窺われます。 建物修復支援ネットワークのブログの、カテゴライズ機能を使って、情報を以下にまとめてみましたのでご活用下さい。 
 なお明日5月10日は熊本県建設会館にて19:00より、被災建造物への対処法と、未指定非登録の文化財をまもるための知見をお届けする勉強会です。 詳しくは熊本県建築士会 青年部会(☎096-383-3200)へお問い合わせください。

被災建造物の応急対応
http://blog.livedoor.jp/niigata_sumai/archives/cat_50035719.html
被災建物倒壊防止サポート1


地盤災害
http://blog.livedoor.jp/niigata_sumai/archives/cat_50027940.html
DSC02366矢板市ss


修復工法
http://blog.livedoor.jp/niigata_sumai/archives/cat_50030143.html
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なお地盤災害の対応技法については、曳き家、アンダーピニング、グラウトなどの技法名で検索すると、当ネットワークメンバーを含む様々な会社のホームページにたどり着くことができますので、ご参考下さい。

擁壁地盤被害の修復技術情報(不同沈下した建物、がけ崩れなどで傾いた建物等)
http://civil-engineer.jimdo.com/%E4%BF%AE%E5%BE%A9%E6%8A%80%E8%A1%93-%E4%BA%8B%E4%BE%8B/

曳き家、揚げ家、建て起こし等に関する技術情報
http://www.ondagumi.co.jp/on/gyoumu.html

http://www.hikiei.jp/hikiya/

日本曳家協会
http://www.nihon-hikiya.or.jp/chinka.html
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ポスト3.11のひとのあり方、生き方を模索しています。 原点は新潟県中越地震以来、災害後に起こってきた「人災の減災」にあります。 建物・地盤地質の両側面からの建築医として、直せばまだ安全に使うことのできる建物の修復支援情報を発信をしています。
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