左は中越沖に被災地のある建物の劣化調査の様子である。 築８１年というこの建物の躯体、１０年前の調査では大きな心配はないとされたとのことだったが、それが今回の中越沖地震で被災した。四川大地震以来、世の関心は学校施設など鉄筋コンクリート（RC)造の建物の耐震性に向けられ始めた。 報道によれば日本の公立学校の５９％は、耐震上問題はないところまで行っているが、残り４割は未診断か、耐震性が不足している可能性があるという。 RC造の建物は、たしかに「中性化」「アルカリ骨材反応」「鉄筋コンクリートの爆発」など、いろいろな問題点を内包している。 しかし表層に見える所だけで、安易に判断し、直ちに「危ない！壊せ！」という風潮にならなければよいがとも心配されるところである。
閑話休題。 コンクリート建物の劣化も木造と同様、表層と躯体(骨組み）とに分けて考えなくてはならない。 現存する日本のRC造の建物の多くは、躯体コンクリートの上に、１〜２cm程度の厚さのモルタルが塗り込められているものが多い。 問題の焦点はその躯体にあるのか、表層モルタルのヒビや剥離現象なのか、その両方なのかということである。 そしてその両方に手当てするのが、コンクリートリハビリテーション技術である。 鉄筋も少なく、中性化も進んでボロボロというものは別としても、かなりのレベルで修復できるという。 ボンド注入をして、ポリマーセメントを充填したり、古いRC躯体を新たな補強シェルで包み込むなど、技術もさまざまあることを、専門家は広く知らせるべきであると思う。
震災で微細なひびの入った建物は、そのまま放置したときが最も怖い。小さなヒビから雨水が毛細管現象により引っ張り込まれるように浸入し、中の鉄筋を錆びさせる現象だ。 寒冷地では浸入した雨水が凍結し、コンクリートをさらに弱くする恐れもある。 弱くなったRC造の橋脚からコンクリート片が落下などという事故も後を絶たず、たとえモルタル塗の表層が剥落しても、下に人がいればアウトである。 小さな怪我を放置せず、しっかり治療すれば保持することが求められる。
戦後高度経済成長期に建てられた多くの鉄筋コンクリート建造物の劣化が、社会問題化するのはそう遠くないと言われる昨今、木造の建物のように修復が効かないという見方が一般的にあるようで、今回の震災でどのように見方が変わっていくのか気がかりだ。
新華社電（2008.05.17 06:00GMT)最新WEB情報
死者28.881名 負傷者198,347名
