年初来、国に近いある耐震・建築防災研究機関の委託で行ってきた、中越・能登・中越沖地震における地震被害・無被害建物抽出調査をこのほど終えることができた。 終えたとはいっても、中越地震から数えれば5年半以上、中越沖から数えても約3年の月日が流れたこの時期ではあるが、今も建ち残る伝統構法の民家とその他の民家(在来木造〜RC、S造など)の状況を把握し、その被害概況をとりまとめる準備調査。 まずはこの場を借りて、調査に寄せていただいた地域の皆様、また被災当時を物語る写真などの資料をご提供いただいた方々には改めて感謝の言葉を申し上げる次第である。
 調査は中越および中越沖地震で甚大な被害を受けた17地区を抽出し、約400棟の住宅をセグメントしていく手法をとった。 調査の主目的である伝統構法の民家の戸数は62例に及んだ。 うち本震震源からの水平距離700mという集落でも、その約1割にあたる5棟の伝統構法の民家が現存。 また同2000mの集落では、1割以上にあたる4棟が現存していることが判明した。
 調査抽出した伝統構法の民家の中には、コンクリートブロックで基礎を立ち上げ、浴室や台所部分などを改造したり、中門(新潟近辺の民家の特徴のひとつで、本屋の落雪を考慮して、桁行き方向と直交しカギの手状に配置された玄関・うまや)を中途改変した建物など、純粋性(構法の混用がないこと)において、ややモデルとして的確さを欠くものもあった。 また修復して居住する必要性から、増築、減築がなされるなど、震災当時の状況を窺うに困難な建物も当然のことながらあった。 しかしその一方で、農作業の拠点として壊すに忍びなく、簡単な補強だけで再利用されているものも少なくなく、なかでも金属板外被に覆われたある茅葺民家では、礎石の上から地振動の突き上げで跳躍した痕跡が、当時の状況そのままで残っている建物が数棟現存しているのは、驚きでもあった。
そして、二室続きでカギの手に縁側を配置した極めて開放性の高い伝統の日本家屋でありながら、壁にほとんどヒビが入らず、修復せずに家に帰ることができたというものも数棟。 被災区分では「一部損壊」であるから、これはまさに震源に近い激震地における無被害伝統木造建物ではないか。

1.中途改変が少なく、
2.整形(架構の構成、間取りが複雑でない)で、
3.構法の混用がなく、
4.強震動に見舞われて、
5.保存性(被災当時の姿そのままである)が高い

5年を経た中ではあるが、この5点をクリアした建物が10棟弱。「伝統構法を次につなげるために」今後の詳細調査を待っている。