中小企業診断士二次試験の解法を考える

このブログは、中小企業診断士二次試験にたった3ヶ月の独学で合格した筆者が、その合格ノウハウを公開し、試験解答解説を試みているものです。主に診断士二次試験受験者の皆様のご参考にしてもらえればと思っています。お気軽にご質問やご感想お寄せください。 仕事の契約の関係上、実名は公表しておりませんが、企業経営に携わっておられる方で、何かご相談ございましたら、ご遠慮なくお寄せください。 中小企業診断士 登録番号 409147

中小企業診断士 登録番号 409147

私は独学で診断士試験に合格しました。資格学校も、模擬試験も、一度も利用しませんでした。二次試験は一次試験後約3ヶ月間の学習しかしていません。それでも、一発で合格できました。運もあったと思いますが、それなりの方法論を身に付けたからだと思っています。

現在、経営者に近い立場で仕事をしていますが、診断士二次試験について、そして、コンサルティングについて、色々と述べてみたいと思っています。

H25年度事例Ⅱに進みましょう。第1問です。

「副社長着任以前のB社は売上の拡大は見込めないまでも、小規模企業でありながら存続することができた。その理由を80字以内で述べよ。」でした。

答案の書き出しを「理由は、・・・」として、「・・・ため(こと)である。」と結べば、問題に正対した答案になります。
ここまではもはやパターンです。

さて「売上の拡大は見込めないまでも」というのは、「一定の売上を維持することはできた」ということを示唆していると考えられます。その上で、「存続することができた。」ということですから、その一定の売上から、多少なりとも利益が出ていたということです。

与件文で、「副社長就任以前」のB社の様子を探ってみると、「これまでの社長の方針は『代々の味を守る』という点にあった。」とあります。また、生産方法に関する記述として、「生産を効率化するための設備の機械化を実現した」とあります。生産方法を変えると味が変わり易いのですが、「B社では機械化後も味わいがほとんど変わらず結果として顧客離れは発生しなかった。」とあります。

つまり、『代々の味』を求める一定数の顧客により売上が立ち、設備の機械化によって効率的な生産を行うことができたので、多少なりとも利益が出て、存続することができた、ということになります。

「理由は、①B社の代々の味を求める顧客から継続的に支持されることで売上を維持し、②機械化によって味わいを変えることなく生産を効率的に行うことができたためである。」(79字)

これは、基本的に「副社長着任以前のB社」のSWOT分析をさせるということが題意だ考えて良いでしょう。戦略策定の前提となるものです。第1問であることも、題意を見極める際の参考になります。

根強いファンがいるということが、外部環境の機会であり、代々の味を効率的に提供できるというのが内部的な強みです。

いかがでしょうか。みなさまのご感想をお待ちしております。

それでは、第4問です。

「A社では、ICTの専門業者に委託して構築した顧客データベースを活用している。しかし、そこで得られた情報は、必ずしも新商品開発に結び付いていない。そうした状況が生じる理由について、80字以内で答えよ。」でした。

答案の書き出しは、「理由は、・・・・」として、「・・・ため(こと)である。」と結ぶことができれば、設問に正対した答案になります。

与件文でICT関係の記述は、「その結果、取扱い件数が増加すると、ICT専門業者に顧客データベースの構築を外注しただけでなく、」というところです。これは、A社の「外注」に関する文脈においてのものです。引き続き、「ただし、宣伝広告については、広告代理店任せにするのではなく、・・・A社が主導的に行っている。」とあります。ここから、「顧客データベースの構築」は「専門業者任せ」であるということを論理的に推定することは一応可能です。

従って、「顧客データベース」において、「そこで得られた情報」そのものが、新商品開発に結び付くような情報ではないことも想定できます。例えば、「顧客の潜在的なニーズ」に相当する情報が得られていないというようなことです。この場合は、「収集するデータ項目の見直し」ということが、解答の方向性になります。これは、「顧客データベース」という「情報システム」そのものに問題があるとする考え方です。

ただし、これはあくまで「推定」を前提とした答案ですので、この線だけで答案を書き上げてしまうのは危険です。

「顧客データベース」そのものは、「専門業者任せ」で構築したものの、特に大きも問題もない、という推定も成り立ちます。与件文にそういう記述は直接にはありませんから、直ちに「データベースが悪い」という結論を出すのは危険ということです。

そうすると、「顧客データベース」そのものの問題ではなく、つまり、道具の問題ではなく、それを使う人の問題という線でも検討しないといけないということです。データは豊富にあるものの、その活用方法の方に問題があり、「新商品開発」が進まないという解釈もできます。

さて、こういう場合、「顧客データベース」か「データ活用方法」のどちらかにフォーカスした答案にすべきか、悩む場合も多いと思います。

しかし、もう少し引いて考えると(敢えてここではこのように表現しておきます)、少し違った見方もできます。そもそも、「顧客データベース」を「新商品開発」に結び付けないといけないという考えはA社にはあるのでしょうか?

こうした判断根拠が少ない中で、「理由」を探さなければならない場合、実際の診断においてもそうですが、「思い込み」とか、「先入観」とか、「常識」ということを疑ってかからなければなりません。思わぬところに真因が潜んでいるからです。しかし、基本的には、人間は「主観的」な動物ですので、なかなか「先入観」を捨てることはできません。

そこで、「論理の力」を使って「客観化」しないといけないということです。

今回の場合は、論理ツールの一つである"Why So(なぜそうなんだ)?"を使って考えていきます。"So What (それでどうなんだ)?"の逆流です。

経営学においては、「問題」とは「理想とする姿」と「実態」との「差異」のことを意味しています。「顧客データベース」を「新商品開発」に結び付けることが理想(設問文からはこう読み取れる)であって、実態はそうなっていないから、それは「問題」であるということです。

一般的には、「理想とする姿」は、様々なレベルがあります。経営ビジョンであったり、経営方針であったり、個人業務の目標であったりします。

ここで、この問題が「事例Ⅰ」であること、つまり、一次試験の経営情報系の問題ではなく、組織・人事の事例問題であるということを考えると、「そもそもA社内に新商品開発が経営課題である」という認識があるのか?ということに気が付くはずです。

「A社社長は、新商品開発が進んでいないことに懸念を感じている。」というような記述は、与件文のどこにも出てこないわけです。ということは、A社社内でも、新商品開発をしないといけないな、という認識が広まっているはずはありません。

つまり、新商品開発が経営課題であり、それに対する経営方針や計画を明らかにして、従業員の意識の統一を図り、勤労意欲や業務スキルを向上させるというリーダーシップが欠如している可能性だってある訳です。

どこに問題の原因(発生理由)があるかを断定できない場合に、どこか一か所に焦点を当てた答案は危険です。「どこに原因であるか」がはっきりしない段階では、「いろんなところに原因がある可能性がある」というのが正解のはずです。

そこで、次のような答案としました。

「理由は、①新商品開発がA社の経営課題であることが社内で浸透していないこと、②新商品開発に結び付けるデータ活用方法が組織的に確立されていないこと、などである。(78字)」


いかがでしょうか。みなさまのご感想をお待ちしております。

それでは、第3問です。

「A社では、最近になって大学新卒の正規社員を採用し始めた。従来、中途採用しか行わなかった同社が新卒正規社員を採用するようになった理由として、どのようなことが考えられるか。80字以内で答えよ。」でした。

設問条件を整理すると、
・「最近」になって大学新卒の正規社員を採用し始めた。
・「従来」、中途採用しか行わなかった
・新卒正規社員を採用するようになった理由
・80字以内
ということです。

答案の書き出しは、「理由は、・・・・」として、「・・・ためである。」と結ぶことができれば、設問に正対した答案になります。

さて、「最近」と「従来」の対比構造で設問が構成されていることは明らかです。「従来」というのは、パートを中心に「骨・関節サポート向けサプリメント」が伸びてきた状況を指し、「最近」とは、「ここ2年、大学新卒の正規社員を若干名採用するようにもなったが、」というところから、「A社も今後岐路に立つことになるかもしれない。」ということを懸念しはじめた時期という解釈で間違いないでしょう。

つまり、「骨・関節サポート向けサプリメント」の売上規模が拡大し始め軌道に乗り出したが、「次世代を担うような新商品が登場しているわけではない。」という経営課題が経営課題として認識され、解決策なり対策の検討に着手したということです。こうした時間軸での対比はよくあるパターンです。A社としては、「骨・関節サポート向けサプリメント」以外の商品を開発・投入して、経営を発展させたい訳です。そのため、これを「成長戦略」としました。

もうひとつの対比は、「新卒」と「中途」です。「新卒」は長期的な視点や、固定観念がなく若いところから「新規性」というようなこと狙いとしてあるはずです。一方、「中途」は短期的な即戦力や、安定性が狙いという解釈で良いでしょう。

このため、本設問に対しては、「最近」と「従来」との対比により明らかになること、「新卒」と「中途」採用の狙いとするところの違いについて検討を行えばよいでしょう。

そうすると、
「理由は、長期的な視点で成長戦略の展開を開始したためである。具体的には、次世代を担う新商品の継続的な開発などによる事業規模拡大を支える人材を確保するためである。」(79字)

いかがでしょうか。みなさまのご感想をお待ちしております。

それでは、第2問の設問2に進みましょう。

「A社のオペレーターの離職率は、同業他社と比べて低水準を保っている。今後、その水準を維持していくために、賃金制度以外に、どのような具体的施策を講じるべきか。中小企業診断士として、100字以内で助言せよ。」というものでした。

設問条件を整理すると、
・「A社のオペレーターの離職率は、同業他社と比べて低水準を保っている。
・「離職率を低水準で維持していくために賃金制度以外にどのような具体的施策を講じるべきか」
・「中小企業診断士として、100字以内で助言せよ。」
ということになります。

答案の書き出しは、「講じるべき施策は、・・・・」として、「・・・。具体的には、①~、②~などであると助言する。」と結ぶことができれば、設問に正対した答案になります。

さて、離職率が低いということは、勤務意欲が高いと解釈して間違いないでしょう。いや、そこまでは読み取れず、本当は、高い時給が魅力で仕事そのものについてはあまり魅力がないかもしれないと考えてみたとしても、賃金制度以外の施策で、勤労意欲を高めていくためにはどうしたら良いか、という方向で答案を作成して間違いないでしょう。

ここで一次知識から、「ハーズバーグの衛生理論」や「バーナードの公式組織論」などを持ち出して答案を作成することもできます。あるいは、もっと実務的な観点から、「職務充実・拡大」や「目標管理・公平な考課制度」、そして「表彰制度」など、色々な具体策を指摘することはできると思います。

そういうことが、事例問題である二次試験で本当に問われているのでしょうか。

私は「中小企業診断士として」という設問条件は、大いなるヒントであり、解答の方向性を示唆するものであると解釈しています。

つまり、「A社の強み・弱みから生じるA社の文脈の上で」ということが求められているものと解釈します。二次試験は事例問題であり、「紙上経営診断テスト」であるという立場からも、相当明確に「一次知識が問われている」ことが明らかな場合を除き、事例企業の診断コメントとして「答案」を作成するべきである、ということです。これはつまり、SWOT分析・クロス分析に基づいた「A社の経営戦略構築との一貫性」ということの線上に答案を乗せないといけないということです。

「施策は、経営参画により勤労意欲を引き出すものとする。具体的には、①既存商品の改善案や新規商品開発など商品力を高めたり、②顧客関係を強化する対応法、などに関する提案・表彰制度を設けるよう助言する。」(97字)


いかがでしょうか。みなさまのご感想をお待ちしております。















それでは、第2問の設問1に進みましょう。

「A社の従業員の大半を占める非正規社員の管理について、以下の設問に答えよ。」という導入文があり、設問1は、「A社は、同業他社と比べて時給が多少高くても、勤務経験がある中高年層の主婦をオペレーターとして採用している。それには、どのような理由が考えられるか。80字以内で答えよ。」というものでした。

設問条件を整理すると、
・「A社は、同業他社と比べて時給が多少高くても、勤務経験がある中高年層の主婦をオペレーターとして採用している。」
・「それには、どのような理由が考えられるか。」
・「80字以内で答えよ。」
ということになります。

答案の書き出しは、「理由は、・・・・」として、「・・・ためである(と考えられる)。」と結ぶことができれば、設問に正対した答案になります。

また、80字ですから、最初の検討段階では、切り口は2つかな、ということになります。1文約30字から40字と考えています。あまり長くなると、解釈しにくい文となりますので、このくらいが適切でということです。

さて、設問には、先ず「同業他社と比べて」とあります。「若年層のオペレーターと比べて」ではなく、「同業他社」との比較の視点から、ということがこの設問の大前提です。つまり、「A社の差別化を図る策」としての答案を求めている、ということになります。

それでは、どうして「差別化策」となるのでしょうか。ここが、「理由が考えられるか」という設問の意図です。

また、答案の切り口ですが、「勤務経験がある」、「中高年層」、そして、「主婦」という切り口を、設問から引き出します。
A社のサプリメント事業の顧客は、「団塊シニアを中心とする中高年層」でした。そして顧客対応を行うオペレーターも、「勤務経験がある(同じ)中高年の主婦」ということです。「勤務経験がある」場合と「勤務経験がない」場合とではどういうところが異なるのでしょうか。「中高年」と「若年」ではどういうところが異なるのでしょうか。こうしたところが、答案の核心になります。
残りの「主婦」という切り口ですが、これは、男性と女性の場合でどう異なるかということになりますが、この点については、今回の解答では触れないことにしました。字数制限の問題もあるのですが、もし答案に盛り込むとすると、男性オペレータの優位性と女性オペレータの優位性との比較論を展開することになりますが、与件文及び設問文からも、それについて答案を展開する情報が、はっきり言って全くなく、説得力のある答案にならないという判断です。

そうしたことから、、「勤務経験がある」、「中高年層」の2つについて、答案を作成することにします。ここで、説得力のある答案にするために、So What?を活用します。「勤務経験があるから、だからどうなんだ。」の「どうなんだ」まで答案で示すということです。

こうしたことから、私の解答例は次のものとしました。

「理由は他社との差別化である。具体的には、①勤務経験があるため顧客対応の質が高く、②中高年であるため健康の維持・増進に理解があり顧客関係が構築しやすいためである。」(80字)

結果的には、「抽象結論」+「具体根拠①+②」型の答案になりました。

先ず、「理由は、差別化を図るためですよ。」という抽象結論を伝えます。その上で、「どうして勤務経験があることと、中高年ということで差別化になるの?単に他社と違うだけで、それだけでは優位性があるとは言えないのでは?」ということになります。そこで、「勤務経験があること」と「中高年であること」の具体的根拠を示します。ここで採用しているのが、「So What?」です。

「勤務経験がある」のはわかりますが、だからどうなんですか?の「だからどう」を示せ、というのが「So What?」です。これを上手に答案に盛り込むのは重要です。これを使って、「勤務経験がある」から「顧客対応の質が高く」なるのですよ、という答案にしました。顧客対応というのは、本文中に「電話やFAXによる注文の受付、商品に関する問い合わせの対応」という表現があったので、「顧客対応」という用語を用いました。

A社のオペレーターの条件は、①勤務経験がある、②中高年、ということでした(設問文より)。
そのため答案では、この2点を具体的根拠の切り口とし、設問に内容的にも正対します。つまり、減点しにくい訳です。

いかがでしょうか。みなさまのご感想をお待ちしております。















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