「ダブルキャスト・ダブルチーム」

三ヶ月に及ぶ「ツキドクロ」が始まりました! ダブルチームによる一日交代の公演ですので、公演があった次の日は必ず休み。そんなスケジュールでやったことがないのでなんだか不安です。体に優しくて体調が崩れにくいとなるのか、逆にリズムが作りにくいとなるのか。三ヶ月で検証したいと思います。


で、さっきもう書いちゃいましたけど、今回ご紹介したい用語は「ダブルキャスト・ダブルチーム」です。この二つは微妙に違うのですが、まずはダブルキャストからご説明いたしましょうか。

ダブルキャストはDouble Cast、つまり、一つの役を二人の俳優が公演ごとに交代で演じるというコトです。交代でといっても、きっちり一回ずつという場合に限りません。何公演かごとに交代する場合もありますし、公演会場によって替わる場合もあります。ちなみに三人で一役を回す場合は「トリプルキャスト」、四人の場合は「クアッド(クアッドプル)キャスト」といいます。
帝国劇場でのミュージカルなどではよく見られますよね。チラシの配役表で、一つの役に何人もの俳優が書かれているのを。公演期間が長いので、スケジュールの関係でそうなる場合もあれば、俳優の体調管理を考えてという場合もあるでしょう。
噂では、アメリカの協定で、同じ俳優が週8ステージを越えてはいけないという規定があって、それに合わせているという話もありましたが、真偽の程は確かではありません。

このような場合、俳優が交代するのはそれぞれの都合によりますので、例えばAさんの○○役とBさんの○○役が同時に見られるのは数日しかない、なんてスケジュールになるコトもあって、ファンには堪らないけれど悩ましい事態も起こるワケですよ。
そして我々はもっと大変なんです。同じ演出でもキャストによって若干は違いますから、共演者もスタッフもそれに合わせなくてはなりません。いや、帝劇のミュージカルなどではそれも考えて、出来るだけ同じになるようにしているとは思いますが、それでもやはり微妙は違いは出るでしょうから、なかなかに気は抜けませんよね。
ちょっとしたセリフの間が違ったり動きが違ったり。共演者もスタッフもそれに対応しなくてはなりません。もちろん衣裳や小道具もそれぞれのキャスト用に作らなくてはならないので手間も掛かります。このように、ダブルキャストの場合は共演者もスタッフも結構大変なのです。

新感線でも過去に何度かダブルキャストシステムでやりました。「スサノオ〜武流転生」の時には話の中心となる数人は固定で、周りのメンバーがダブルキャストでした。その時に私はニニギノミコトという役をやったのですが、私と対になったのはやっぱり河野まさとくんでした。いっつも対なんだよね。
他の舞台でもダブルキャストの経験があります。「冬の絵空」では、吉良上野介役を松尾貴史さんと交代でやりましたが、二人が全然違うアプローチだったので、相手役だった橋本じゅんさんや伊達暁さんは苦労したんじゃないでしょうか。

このように、一部のキャストが交代制なのをダブルキャストといいますが、今回のツキドクロのように全ての役が交代制の場合は「ダブルチーム」といいます。まあ、なかなかそんな演目はありませんから、私も聞き慣れない用語ですけどね。
これならそれぞれのチームで相手役(共演者)は同じだから、比較的連携が取りやすい。それぞれの役者間の関係性は固定されますから色が出しやすくなりますね。まあ、結局衣裳や小道具は二倍用意しなくてはならないんですけど。だからスタッフが大変なのは変わりません。いや、むしろもっと大変ですよ。色々とご迷惑をお掛けしておりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

そんなダブルチーム制のツキドクロ。それぞれ35人の出演者の中で、唯一どちらにも出ているのが服部半蔵役の安田桃太郎くん。最近の新感線ではお馴染みの若手凄腕アクションマンでして、アクション監督・川原正嗣さんの信頼も篤いのです。今回は現場のアクション調整役としての役目もありますので全公演出演です。一日二公演の連発ですから、身体に気をつけて頑張って欲しいと思います。


てなワケで、上弦の月・下弦の月というダブルチーム制のツキドクロ。どっちも頑張ってます。どちらも怪我無く無事に進んでいければと思います。みんな! 頑張っていこうぜ!


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豊洲の夕焼けに輝く上弦の月。見にくくてすみません。

粟根まこと


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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。


【出演情報】

ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月 Produced by TBS
2017年11月23日(木・祝)~2018年2月21日(水)
会場:IHIステージアラウンド東京(豊洲)

◇コラム「粟根まことの人物ウォッチング」掲載の「えんぶ12月号」は、全国書店で発売中!


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「前室」

11/3でカゼドクロもついに終了。台風が何度も来たり、機材トラブルで止まったりして、色々と大変だったようですが、なんとか最後まで風を吹ききって頂きたいと思います。カゼが終わるってコトは次はツキドクロですよ。上弦・下弦のダブルチームで三ヶ月! 年をまたいで長々と上演されますよ。

さて、前回は稽古場について書きました。規模の小さい小劇場公演では、場合によっては公民館の会議室を渡り歩きながら稽古したりして大変だって話でした。予算やスケジュールの関係でそうなっちゃうのね。今まで私が経験した変わった稽古場としては、知り合いの倉庫の二階とか、オフィスビルの開いている部屋とかがありましたが、もっとも狭かったのは、新規入居者が入るまで空いているワンルームマンションの一室。大家さんが知り合いだったんですって。いろいろ大変なのよ、演劇の稽古って。

規模が大きい公演では人数もセットも小道具も多くなりますから、結構広い稽古場を通しで借りることになります。有り難いことだなあと今更ながらに思いますが、今回のツキドクロではダブルチームのせいで出演者がいつもの倍おります。全員揃えば69人! スタッフも含めると100人を越えますので、広い稽古場でも居場所がなくなったりして困っております。

そんな大人数で溢れてしまった場合、どうするのか。そういう時には「前室(ぜんしつ)」に逃げ出したりします。前室。これが今回ご紹介したい専門用語で、前回に引き続き稽古場関係の用語ですね。
意味としては文字通り「前の部屋」です。広い稽古場の手前にある、ちょっとしたスペースのコトですね。おそらくはテレビ業界から伝わってきた用語だと思います。
テレビのトーク番組などで、時々「前室」という単語が出てきますよね。芸人さんが「いや、さっき前室でも話してたんやけど」とか「前室で話してたコトと全然ちゃうやないですか!」とか言っていたりします。テレビスタジオでは楽屋とは別に、収録スタジオの隣にみんなが集まれるサロンのような小部屋があるコトが多く、収録をモニターで眺めたりメイクを直したりお茶を飲みながら談笑したりできるのです。まあ、直前控え室みたいなカンジでしょうか。
みんなのスペースといえばなにやら楽しそうですが、実は楽屋がない人のたまり場でもあります。局によっては楽屋が足りなくて、メインキャストにはそれぞれ個室の楽屋が与えられても、ちょい役の俳優には私物を入れるロッカーしか用意されておらず、着替えた後は前室でスタンバイさせられたりするんです。長時間、雑談とかしながらただただ待たされるんですよね。いや、そんなグチはいいんです。

同様に、演劇の稽古場でも広いスタジオならば前室がついていることもありまして、これが実に重宝なのです。製作チームが常駐して色々な業務や連絡をしたり、お茶やお菓子のあるケータリングコーナーがあって休憩できたりします。それ以外にも、出番ではない俳優がセリフを覚えたり、同じシーンの人々がセリフを合わせたり、ダンスの確認をしたり、稽古動画を確認したり、スタッフさんが打ち合わせをしたり、小道具を作ったり、衣裳の採寸をしたり、溢れた資材を置いておいたり、食事をしたり、もうとにかく便利な部屋なんです。
稽古場では当然稽古をしていますので、あまり大きな声を出したり出来ないんですね。なので、セリフ合わせをするために外の駐車場に出たりしたこともありました。でも、前室があれば大丈夫。稽古場と前室の間には大抵分厚い扉がついていますから、多少大きな声でセリフを合わせたり談笑したりしていても問題ありません。でも制作さんが大事な電話をしていたりして怒られたりはしますけどね。

前室は、大規模公演の時には必ずあるというワケではありませんが、まあ用意されるコトが多いですかね。新感線では大抵用意されていますが、それはとにかく人も物も多いので居場所がないから。でも、先ほども書いた通りの便利さで、前室は重宝しております。
そして、私に限ってはある恩恵がありまして、それは原稿の筆がはかどるコト。特に稽古場レポートなんかは顕著です。なんででしょうねえ。この稽古場の空気がそうさせるんですかね。私の場合、周りがちょっとザワザワしている方が書きやすいのかもしれません。
そして実はこの原稿もこうして稽古終わりに前室で書いております。モニターからは振付稽古の音楽が聞こえております。みんな何やら楽しそうに踊っております。その楽しそうな空気に包まれながら今回の原稿を書き上げました。ダブルチームで人が溢れかえる稽古場ってのもいいもんですよ。
あ、次回はその「ダブルチーム・ダブルキャスト」という用語について解説したいと思います。という予告を残して、ではさようなら。また来月に。その頃にはツキドクロも始まってますぜ!

minka

本文とは関係ありませんが、先日、門前仲町あたりで見つけた風情のある民家。何でしょうね、こういう古い建物に対する郷愁は。しかし、なんとも素晴らしい風情です。


粟根まこと


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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。


【出演情報】

ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月 Produced by TBS
2017年11月23日(木・祝)~2018年2月21日(水)
会場:IHIステージアラウンド東京(豊洲)

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「稽古場」

東京ハートブレイカーズ「サブマリン」も無事に終えることができました。久しぶりにベースも弾いて、指先がやたらと痛い粟根です。そして今はツキドクロの稽古中でして、ある理由で内ももが痛い粟根です。


さて、いきなり言いますが今回ご紹介したい演劇用語は「稽古場」です。読んで字の如く、「稽古する場所」のコトでして、それ以上でもそれ以下でもありません。つまり、演劇用語というよりはほぼ一般名詞でありまして、用語として解説するコトは何も無いのですが、演劇に於いてこの稽古場が非常に重要かつ難点であるという話をしたいと思います。

演劇に限らず、人前で何かをパフォーマンスとして発表するためには何らかの稽古が必要でして、音楽でもお笑いでも演説でもダンスでも、少なからず練習が必要です。ギターの弾き語りや落語など、少人数で静かな作品の場合ならば、自宅の部屋とか公園とか夜道とか、まあまあ周りの人に迷惑の掛からない練習場所というのが比較的簡単に見つかります。
歌唱とか演説などの多少うるさめの作品でも、カラオケボックスなどの防音個室があればなんとかなりますし、相当うるさいバンドでも街中にたくさんある音楽スタジオで事足ります。まあ、少人数で小さな部屋で済むものならばなんとかなるって話ですよ。
ダンス公演も大変なのですが、ダンス教室などの場合は専用のスタジオがある場合が多く、というか専用スタジオがなければ教室を開くのも難しくなりますので、そこを稽古場にすれば良いので比較的ハードルは低いのではないでしょうか。

問題なのが、大人数でうるさい場合。例えば合唱や管弦楽やブラスバンドなどの場合は大変です。学生さんの部活ならば教室が使えますからなんとかなります。それでも近隣住民への迷惑を考えて窓を閉め切る必要があり、真夏などは苦労した記憶がある方も多いのではないでしょうか。
同様に、演劇の場合も稽古場確保が死活問題になります。楽団や劇団が専用の稽古場を持っているなら一気に楽になりますが、そういう恵まれた団体はごく僅かです。となれば、結構なサイズの大型スタジオを借りなくてはならず、費用がかさむ上に、交通の便の良いスタジオの場合は予約の取り合いになったりします。

特に市民劇団や市民楽団、また小劇団や個人教室などの場合は予算が限られていますので、稽古場確保が大変なんです。そういう場合はどうするか。そこで頼られるのが公共施設です。つまり、公民館や区民ホール、市民会館などに用意されている音楽室やリハーサルルームや会議室です。メンバーにそこの市民や区民がいる場合、比較的安価でこれらの施設を借りることができるのです。
となればコレを利用しない手はありませんよね。そうなんです。みんな狙っているんです。詩吟教室も和太鼓の会も勉強会も町内会も、みんなみんな狙っているのです。なのでそれなりの問題点もあるのです。

まず、人気なので取りにくい。希望者殺到のため、抽選の場合が多いのですね。しかもかなりエグい倍率です。それほどまでに魅力的というワケです。また、公共施設なのでルールが厳しい。色々と細かい規則があるのです。飲食禁止や床に貼るテープの制限がある場合もあります。会議室などでは設置された椅子や机を端に寄せて稽古し、終わる時には原状復帰で返すのは当然のルールです。
それよりも! 何よりも! とにかく問題となるのが騒音の問題なんです。音楽室や運動室が借りられた場合はいいんです。うるさくしても問題がありません。ただ、会議室などの場合、隣で会議や勉強会などが行われている場合も多いのですよ。当然です。だって会議室なんですから。しかも壁が薄い。大声を出せば丸聞こえです。稽古中、事務所から内線電話で「お隣からうるさいとクレームが来ています」なんて怒られるのもしょっちゅうです。その途端、俳優陣は囁き声で喋り始めるのです。例え白熱したシーンでも急にウィスパーで喋り始めます。でも顔だけは白熱したままです。
でも、しばらくすると忘れちゃうんですね。のど元過ぎればなんとやら。そして徐々に声が大きくなっていき、またクレームの電話が入る。そのループです。すみません。ワザとじゃないんです。ただ、熱が入ると大きな声になっちゃうんです。ホントすみません。

また、長期で同じ部屋を借りることができません。演劇の場合、仮のセットがあったり衣裳や小道具も多いので、同じ部屋でそれらを置きっぱなしにできればとても楽なのです。しかし、公共施設を渡り歩く稽古の場合、全てを持ち帰り全てを持ち込む必要があります。毎日大量の小道具や稽古着を持ち歩き、大きなカバンで通います。しかも、駅前の便利な施設ほど競争率が高いので、結果として駅から遠い施設までえっちらおっちら歩くわけです。これが地味にキツイ。

大阪時代の劇団☆新感線には稽古場と呼ばれる場所がありました。今はなき扇町ミュージアムスクエアという、劇場や雑貨店やミニシアターのあるビルの二階。八畳くらいの狭い部屋でしたが、そこで稽古も小道具作りも音楽編集もやっておりました。今思えば実に狭い部屋でしたが、パーマネントな稽古場があるというのは本当に幸せなコトだったのだなあと今更ながらに実感します。
ただ、そのスペースでは足りなくなった場合は、例によって公共施設巡りです。今日はあの公民館、明日はあの青年館。メンバーの持っている車に小道具やら何やら詰め込んで、人も詰め込んでギュユギュウで移動します。今にして思えば若かったからできたんだなあと感慨深くもなってしまいますね。


規模の大きい公演ならばちゃんとした広いスタジオの稽古場が用意されていますが、小規模の劇団の場合は稽古場だけでも色々と大変なんだよという裏事情をお話しして今回は終わります。では、今日もツキドクロの稽古場に行って参ります。ええと、完全ダブルキャストでの稽古なので人がいつもの倍いるので、広い稽古場でも溢れるほどの人数です。コレはコレで大変なんですよ。


nakanojutaku

JR中野駅のホームから見える古びたアパート。東京都住宅供給公社の中野駅前住宅なのですが、とても良い佇まいです。築65年以上ですよ。


粟根まこと


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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。


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