第86回「バンド生演奏付き舞台」

今、豊洲六丁目のIHIステージアラウンド東京で新感線☆RS「メタルマクベスdisc1」上演中の粟根です。グルグル劇場も二作品目。今回は髑髏城シリーズとはちょっと違った使い方にも挑戦しています。皆さんもレッツグルグル!


さて、メタルマクベスは新感線☆RSと銘打っております。RSとはRock Shakespeareのコトでして、全編生バンドによるロックというかヘヴィーメタルの生演奏で構成されています。公式にはミュージカルと謳ってはいませんが、まあかなりメタルミュージカルです。
以前にも「生演奏付き舞台」について書きました。その時には生ピアノ演奏付きだった「若様組まいる 〜アイスクリン強し〜」の上演中だったんですね。生演奏が付いた舞台とはどういうモノなのかを解説致しました。→http://blog.livedoor.jp/nikkann-awane/archives/51924170.html
で、今回はバンド生演奏付き舞台についてお話し致しましょう。ピアノ一台の生演奏とロックバンドの生演奏では色々と違いがあるのですよ。

新感線では音楽にロックを使うことが多いですよね。いやいや、今更わざわざ書くコトではないのですが、そりゃまあ主宰で演出家のいのうえさんがロック大好き少年なんだからしょうがない。特にいのうえさんと同世代で、これまたロック大好き少年の岡崎司さんに音楽を作って頂くようになってからは、いのうえさんのイメージに合った音楽を自由に使えるようになったワケですから、そりゃもう楽しいだろうと思います。
逆に、司さんに作って頂くようになってからの方がシンフォニックな曲や民俗音楽風の音楽が増えたのも面白いですね。これも細かく注文を付けたりすぐに修整して頂けたりする理想的な制作現場があってこそです。まあ、ワガママを聴く方の司さんは大変だと思いますが。

しかし、やはり新感線といえばロックでしょう。ロックといえばライブでしょう。新感線には「Rシリーズ」と呼ばれる生バンド演奏によるラインナップがありまして、生演奏と生歌唱によるライブ感満載の公演をかなり昔から行ってきました。
昔のキャバレーなどで生演奏ショーが行われる場合、バンドは「箱バン」と呼ばれまして、バンドブースが舞台の端っこや裏手の見えにくい場所に設置されていました。そこから派生して、演奏のある舞台公演でもバンドは見えにくい場所に置いて、箱バンと呼ばれるコトがあります。
しかし、いのうえさんはこの状態があんまり好きじゃないんですよね。バンドさんにも衣装を着てもらい、バンドブースを見えやすい位置に置いたり、舞台に出てきて演奏してもらったり、時には一緒に芝居に参加してもらったりしたこともありました。

また、音楽だけではなく、効果音的な使い方もよくします。特にドラマーが大変。アクションシーンにはタム回し(ドコドコドンってヤツ)、キメどころにスネアシンバル(パーンってヤツ)、オチにはカウベル(コンッってヤツ)。芝居に絡んだキッカケが多くて大変なんです。また、キーボードにも芝居に合わせて叙情的な曲を弾いてもらったりして、何て言うか芝居心の必要な難しいキッカケが多いのです。

それもこれも、芝居心のある信頼できるバンドメンバーがいるからこそ。いやもう、毎回心強い限りです。相当無茶な注文をしていると思うのですが、ホントに上手くてミスがない。いつも頼りにしております。

と、ここまでライブ演奏の良い面ばかりを書いてきましたが、今回のIHIステージアラウンド東京は特殊な劇場です。舞台面がいくつもあるのです。しかし、バンドブースが置ける場所は一カ所だけ。ということは、演奏している舞台と歌っている舞台が別であるシーンがあるワケです。これが中々難しい。バンドさんも音響さんも、色々と試しながらベストを探しました。ギタリストが前に出てくるシーンもあります。是非とも豊洲六丁目でその成果をお確かめ下さいませ!

ちなみに、初演版では私も所々でドラムを演奏していました。長短合わせて四曲ほど叩いておりましたが、今回は一曲だけ、しかも20秒くらいだけ。後はほとんど当て振りなんですよねー。


toyosu

久しぶりだぜ、豊洲! 帰ってきたぜ、豊洲! 遠いぜ、豊洲!


粟根まこと

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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。


【出演情報】

ONWARD presents
新感線☆RS『メタルマクベス』disc1
Produced by TBS
7/23(月)~8/31(金)◎IHI ステージアラウンド東京(豊洲)


◇コラム「粟根まことの人物ウォッチング」掲載の「えんぶ8月号」は全国書店で7/9より発売!



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第85回「小説原作の舞台」

いよいよ「メタルマクベス disc1」の初日が近づいて参りました。髑髏城シリーズに続き、豊洲のIHIステージアラウンド東京での第二弾となります。昨年から一年半、稽古とか本番とか観劇とかの様々な演劇の現場に行く度に皆から「どうですか、グルグル回るのは」とかよく聞かれますが、グルグル回るのはお客様ですからね。我々出演者は全然回りません。舞台裏を自力で走り回っているのです。まあ、これも確かにある意味ではグルグル走り回ってはいますけどね。

さて、先日上演された「若様組まいる ~アイスクリン強し~」は畠中恵さんの小説が原作でした。昨年の「スキップ」とか「サブマリン」もそうですし、小説が原作の舞台に出演することも増えてきました。
出演しておいてなんですが、小説原作の舞台って結構難しいんですよね。まず、簡単に言いますと、小説の方が長いんです。中編小説でも結構な文字数ですから、それを二~三時間の舞台にする場合、どうしても内容を省略しなければならないんです。しかも物語が破綻しないように。つまり脚本の段階でハードルが上がります。
そして、原作があるのでセリフなども大幅には変更できません。また、既に刊行されているのでストーリーの流れや結末までもが既にバレているため、どんでん返しや意外性を武器にはできません。もちろん原作を読まずにご覧になる方も多いとは思いますが。あるいは、設定だけ原作から頂いて、展開や結末をオリジナルのものにするという手もありますが、これも相当に上手くやらないと良いモノにはなりません。

マンガやアニメやゲームが原作で、ビジュアルまでもが確定している2.5次元舞台の場合はもっと大変だと思います。とはいえ、2.5次元舞台の場合、少なくともビジュアルに関しては正解があるワケです。そこに近づける努力をするのです。もちろんそれには相当な研究と努力が必要だとは思いますが。

ところが、小説原作の場合は正解がないのです。というか、読者それぞれの正解があるのです。私はこれが正解だと思って出してはいるものの、別の読者にとってそれは正解ではない。ココが難しい。文中でどれだけ細かく描写されていても、登場人物のビジュアルや雰囲気、場面設定から想像される世界は読む人によって違います。それが小説の良いところ。読み手の自由なのです。それを具象化しなくてはならないのですから大変です。
こうなれば力尽くでねじ伏せていくしかありません。逆手にとって「我々はこう読んだ」とねじ伏せていくワケです。これまた相当な研究と努力をもって。これが苦しくもあり楽しくもあるのですよ。

ただ、原作があると助かる場合もあります。既に完成した原作があるワケですから、困ったら原作を頼りにすれば良いのです。つまり、キャラクター造りに悩んだら原作を読み返して、舞台では削除されたエピソードなどを参考にするコトができるのです。
演劇ではよく「サブテキスト」という手法を用います。明確に書かれてはいないが、行間に暗示されているキャラクター像や行動のコトですね。通常の演劇の場合は、このサブテキストを演出家と相談したりして自分で用意しなければなりませんが、原作小説がある場合は既に大量のサブテキストが用意されているワケです。そりゃ利用しない手はないでしょ。

また、舞台の場合、例えばセットは抽象化したり簡略化したりするコトができます。外国人の役柄を日本人で演じたりもできます。ジョンとかメアリーとか呼び合いながら。これは舞台がウソを前提としているからであって、想像力の余地があるからです。これが舞台の良いところ。ちょっと小説にも近い、想像する楽しみ。そこが魅力なんです。

このようにリスクもメリットもある小説原作の舞台ですが、なんといっても最大のメリットは、既に刊行されている良質で人気のあるコンテンツだというコト。面白いから舞台化されるのです。原作ファンの方も見にいらっしゃいますから、原作をないがしろにはできません。最大限のリスペクトを持って舞台化する。その姿勢が一番大事なのではないかと思います。その上でさらに良いモノにしていくという努力が必要なのです。

今回は演劇用語ではありませんが、小説の舞台化についてお話ししました。世間には色々なタイプの演劇があります。それぞれの良さをお楽しみ頂ければと思います。まあ、「メタルマクベス」の場合はそういうのを超越した、かなりハチャメチャな面白さなんですけどね。


kannonyama

本文とは関係ありませんが、群馬県高崎市で見た観音山古墳。群馬に有力豪族がいたことを示す史跡です。実に綺麗な前方後円墳でした。


粟根まこと

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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。


【出演情報】

ONWARD presents
新感線☆RS『メタルマクベス』disc1
Produced by TBS
7/23(月)~8/31(金)◎IHI ステージアラウンド東京(豊洲)


◇コラム「粟根まことの人物ウォッチング」掲載の「えんぶ8月号」は全国書店で7/9より発売!



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「チラ束」

一年三ヶ月に及んだ「髑髏城の七人」シリーズがやっと終わり、そして六ヶ月に及ぶ「メタルマクベス」シリーズの稽古が始まりました。大晦日までの長い旅です。最後まで気をつけて頑張りたいと思います。

そんな髑髏城も含めて、昨年から今年に掛けては舞台が続いておりまして、物理的にも精神的にも余裕がなくてあまり舞台を見に行っておりませんでした。しかし、この五月の後半はオフ。チョコチョコと仕事したりネタを探したりはしていましたが、いくつか舞台を見に行くことができました。舞台って本番をやっているとツラくなるけど、オフの時に見るとやりたくなるから不思議ですね。

舞台を見に行くとよくもらうのがチラシの束。もらうっていうか配られるというか、半強制的に渡されるアレね。今後行われる色んな舞台のチラシがまとまってるヤツ。結構な枚数で、かなりな厚さで、意外と重いアレ。人によっては、アレいらないわーって思っているかもしれません。
しかし! あのチラシの束には我々演劇人の思いが詰まっているのですよ。思いが詰まって重いのです。それぞれおもいおもいの思いが。なんつって。おっ、もーいいか。すみません、駄洒落を思いついちゃったもんで。

既に高度情報化社会です。IT時代です。大抵の演劇の情報も、テレビの情報番組やネットで集められますよね。SNSではオススメの舞台情報がRTされたり、いいね!されたりしています。実際、私もほとんどの舞台情報はSNSで知ることの方が多いです。あとはクチコミ。まあ、SNSもクチコミの一種ではありますが。
そんな情報化社会でも、偶然の出会いは必要なんです。いかに音楽の情報がネットに溢れていても、やっぱりタワレコに行って試聴したりジャケ買いしちゃいますし、いかに書籍の情報が溢れていても、やっぱりジュンク堂に行ってパラパラ見買いしちゃうんですよ。もうね、必ず買うね。目当てのCDや本はハッキリしているのに、ついでに色々見て回って、そんで予定外の買い物を山ほどしちゃうんだよね。

演劇のチラシも同じです。おっ、こんな舞台やるんだ。あっ、あの人も出るんだ。そんな出会いがあのチラシの束の中には詰まっているのです。
私は舞台を手ぶらで見に行くことが多いんです。冬場は釣りベストで、夏場はヒップバッグで。そんな時、あのチラシの束は結構邪魔になるんですよね。でも、偶然の出会いを求めて持って帰ります。釣りベストの背中部分に入れて。ヒップバッグに押し込んで。重いんだけど、それはしょうがない。
そして持ち帰ったら、一枚一枚眺めながら、気になるチラシをピックアップして、出演者と日程をリストアップしていきます。そしてメモにまとめておくんです。休みの日に見に行くために。
また、見に行く気はないけど、デザインの気に入ったチラシも取っておきます。一応、今でも細々とチラシデザインの仕事もしておりますので、最近の流行が気になるんです。最近では、色味の少ないザラッとしたシンプルなのが流行っているみたいですよ。

このように、あのチラシの束には様々な出会いがあるんです。今では多くのチラシ折り込み代行サービスがありまして、機械で大量の束を作って配布していますが、昔はみんな劇場の前に行って自分の劇団のチラシを配っていたんですよ。それが後に、色んな劇団の人が劇場のロビーに集まってグルグル回りながらチラシの束を作るようになり(挟み込みといいます)、それが今では代行業者が主流になったってワケ。

演じる側としても、デザインする側としても、挟み込む側としても、あのチラシの束には色んな思いが詰まっております。ぜひお持ち帰り頂いて、今後のご観劇の参考にして頂ければと思います。
とかいいながら、作ったリストを見ながら細かい情報を集めるのはネットでなんだけど。ま、いいよね。
そして最後に演劇用語をお教えしようと思いますが、このチラシの束を「チラ束」と呼ぶのは私だけ? どう? 私はそう言うんだけど、これが正式な演劇用語かどうかは判りません。なんじゃそりゃ。


gunma

群馬県高崎市の歴史博物館に行ったんだけど、エントランスには縦横5mくらいある群馬の立体模型がありました。しかもプロジェクションマッピング。


粟根まこと

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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。


【出演情報】

ONWARD presents
新感線☆RS『メタルマクベス』disc1
Produced by TBS
7/23(月)~8/31(金)◎IHI ステージアラウンド東京(豊洲)


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