第68回「オープンリール・テープデッキ」

先日オンエアされたテレビ朝日の「はくがぁる」にて劇団☆新感線のムチャブリ学が取り上げられました。公演の宣伝でもなんでもなく、普通の番組で特集して頂いてとても有り難かったです。高田聖子さんもトークに参加していて、まーきわどい裏話も沢山でて楽しかったですね。


さて、先日、成河さんがご出演の「わたしは真悟」を拝見いたしました。楳図かずおさんの漫画を原作にしたミュージカルです。作品も良かったのですが、何といっても成河さんの身体表現が素晴らしい。

その「わたしは真悟」で演奏を担当していたのがトウヤマタケオさんとOpen Reel Ensemble。この音楽もまた作品に合っていて興味深かったのですが、特に気になったのがOpen Reel Ensembleさんなのです。
このアーティストはちょっと変わっていて、普通の楽器を使うのではないのです。演奏するのはオープンリール・テープレコーダー。え? 何? オープンリール・テープレコーダー?

そう、オープンリール・テープレコーダーとはオープンリールテープを使うテープレコーダーのコトでして、ちょっと言い直しただけでまったく説明になっていませんが、かつては一般にも使われた、世代によってはまったく知らないオーディオ機器です。ご存じない方のために、先日行った「It's a Sony展」で撮影したソレをお見せしましょう。
It's a Sony展については私のBlogをご参照ください。
http://awanemacoto.blogspot.jp/2016/12/082its-sony.html


opendeck

ええと、コレです。カセットテープ(も判らない世代もいるか…)が出るまでは、テープレコーダーといえばコレだったのです。テープ幅も広く、回転も速かったため、カセットよりも高音質で録音でき、オーディオマニアの間では長く使われてきた製品です。
とはいえ、私が子供の頃には既にカセットが普及していましたから、オープンテープなんて使うことはなかったのですが、大人になってから使うこととなります。
それは、演劇の音効さんの現場でした。私は若い頃には舞台の音効さんもやっていたのです。

演劇の「音効さん」というのは、音響効果、つまりBGMや効果音を担当するスタッフ(ちなみに声や楽器のマイクの音を担当するのは「音響さん」です)。今でこそ音効さんはコンピュータで制御された機器でBGMを出しますが、かつてはこのオープンリール・テープレコーダー(以下オープンデッキ)で音を出していたのです。

演劇で使用するオープンテープでは、曲の頭にリーダーテープと呼ばれる白色の無音テープを付けておきます。そこにマジックで曲ナンバーを書いておくのね。オープンデッキではテープを引っ張りだして駆動部に巻き付けなければなりませんが、リールを手で回して微調整ができます。ですから、音を取り出す再生ヘッドと呼ばれる部分にこのリーダーテープの部分を当てておけば、再生ボタンを押すと同時に曲の頭からドンピシャ再生することができるのです。

当時の音効さんは数台のオープンデッキを並べ、一台から音楽を再生している間に、別のオープンデッキを操作して頭出しをしておきます。時には数台から同時に音を流しながら、数台のデッキの頭出しをしなくてはならず、しかも音量調整もしなくてはならず、忙しいったらありゃしない。ガンガンに曲を繋いでいる時のヒップホップDJみたいな状況です。

レコードの頃からCDの時代になっても、DATやMiniDiscの時代になっても、オープンリールの「簡単に切り貼り編集ができて、曲の頭が視認できて、手で回して微調整できる」という特徴ゆえに、長い間、音効さんが使うのはオープンデッキだったのです。
それが今では全ての曲と効果音をコンピュータに取り込んで、コンピュータ上で波形編集し、ボタン一発で頭出しができる時代になってしまいました。凄いですねえ。


Open Reel Ensembleさんは、機器のこういった特長を生かして、手でスクラッチしたり逆回転させたり回転速度を変えたりしながら演奏するグループ。時々テレビで紹介されたりしていたので気になっていたんですよ。初めて生で演奏する光景が見られて興奮しました。シーンによっては舞台上の演技を見たりバンドの演奏風景を見たりで忙しく楽しい舞台でした。
てなワケで、今回は「オープンリール・テープレコーダー」をご紹介しましたが、よく考えたらコレ、単にオーディオ機器の名称でしたね。


粟根まこと


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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。



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第67回「1ベルと本ベル」

明けました! 新年明けました! おめでとうございました! ありがとうございました! 昨年はなにかと大変な年でしたが、2017年はいよいよドクロイヤーが始まります。本当のドクロイヤー(七年ごと)は来年だけど、今年から来年に掛けてがドクロイヤーってコトですよ。今年も大変そうですが、頑張っていきましょう!

まあ、そうはいっても私自身の大変さはまだ先なのです。もう年が明けたんで情報が出ていると思いますが、私は「シーズン鳥」に出ますので、大変なのは初夏からです。その前に春にも舞台の予定がありますが、まだ言えないんですよ。とりあえずこの冬は結構暇にしていて、観劇の日々というワケ。色んな劇場の客席に出没しております。
普段は出演する側ですから、本番直前にはそれなりに緊張とかしておりますが、舞台を見る側になるとさすがに緊張はしません。緊張はしないのですが、客席について始まるまでの間にはそわそわしたりしますね。特にブザーが鳴ったりアナウンスが流れたりしていよいよ始まるとなった瞬間。そわそわワクワクしますよね。観劇好きな皆様にはお判り頂けると思います、この感覚。

で、今回ご紹介したい演劇用語はそのブザーについてです。まあ、ブザーだったりベルだったりしますが、最近の演劇ではあまり聞かれなくなりました。例えば劇団☆新感線の場合、5分前には「間もなく開演いたします」というアナウンスが流れ、本番前には例の「ズンッタンッ、ズンッタンッ」という曲が流れます。あれが約3分。そして開演直前には新幹線の発車ベルである「プルルルル」が鳴り響きます。そして開演。
このように、劇団によって、あるいは演目によって流れたり流れなかったりする直前のベルですが、クラシックのコンサートなどでは必ず流れますよね。昔はベルだったそうですが、最近では「ビーーー」というブザーです。コレにはもちろん専門用語がありまして、5分前に流れるのが「1ベル(いちべる)」または「予ベル(よべる)」、開幕直前に流れるのが「2ベル(にべる)」または「本ベル(ほんべる)」と言います。現場によって異なりますが、私にとって馴染みの深い言い方は「1ベルと本ベル」ですかね。
名前の由来はもちろん一回目のベルと二回目のベルだから、あるいは予告のベルと本番のベルだから。なぜだかゴッチャになって「1ベルと本ベル」と言っちゃうんですよね。ちなみに、このブザーの長さには実は決まりがありまして、基本的に15秒なんですよ。大抵の劇場にはこのブザーのボタンがありまして、舞台監督からの合図があると音効さんが腕時計を見ながら15秒間押すのです。

演目によって違いますが、この1ベルが鳴ったり5分前のアナウンスが流れたりすると、そろそろだなとオープニングから出番のある役者が楽屋を出て行きます。新感線では「オット」と呼ばれる気合い入れがあるのがこの5分前。そして体をほぐしたり小道具を準備したりしながら舞台ソデで本ベルを聞くワケです。そして照明が溶暗して、開演。みんなが一番緊張する瞬間ですが、客席にもなにやらワクワク感が流れる瞬間でもあります。

私だってたまには新感線の公演に出ない時だってあるんです。なのでその時には一観客として見に行くのですが、本番前に例の曲が流れるとやっぱりそわそわしちゃうんですよね。今日は観客、今日は出ない。判っているのにそわそわしちゃう。これはもうしょうがない。新感線劇団員のサガです。
今年から来年に掛けてのドクロイヤーではシーズン花鳥風月があり、その内の何回かは出演しませんので客席で見るワケですよね。その度にあのそわそわ感を体験しなくてはならないのです。出ないのに。出演してないのに。そわそわしちゃう。なにやら理不尽な気もしますが、コレはサガとして受け入れていくしかないのです。皆様におかれましては是非とも何度も豊洲でワクワクして頂けますれば幸いです。

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本文とは関係ありませんが、横浜・港の見える丘公園からのベイブリッジ。初めて行きましたが、結構小高いのね。クリスマスシーズンだから人で一杯でしたけど。


粟根まこと


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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。



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第66回「消えモノ」

「VBB」が終わって早一ヶ月。出演者たちもスタッフもそれぞれ別の現場で働いております。直近では高田聖子さんの個人プロジェクトである月影番外地「どどめ雪」が12/3から始まります。前作には私も出演しましたので、今作がどうなっているかが楽しみです。

さて、「VBB」の中ではバンドメンバーの紘毅さんと吉田メタルくんが、バンドの先行きを案じながらラーメンを食べるシーンがありました。また、今年前半の「乱鶯」は小料理屋が舞台でしたので、大勢の客たちがワイワイ騒ぎながら料理をつついていました。
これらのシーンでは実際に料理を食べています。まあ、食べているフリでも良いのですが、リアリティを考えるとやはり実際に食べている方が良いのですね。なんか、食べながら喋るという不自由な感じからもリアリティが醸し出されますし、小劇場の場合なんかは匂いまでも伝わってさらに面白みが増します。
このように、舞台上で消費されて消えていってしまう小道具のことを「消えモノ」といいまして、こちらが今回ご紹介したい演劇用語です。食べ物以外でも、例えば燃えて消えていくロウソクなんかも消えモノですね。これに近いのですが、舞台上で壊されてしまうモノ、例えば乱闘で壊されるビール瓶(もちろん壊れやすく作られたフェイクです)や、破られてしまう手紙なんかは「壊れモノ」と言ったりしますが、これらも総称して消えモノとまとめられたりするのが通常です。

しかし、舞台上での消えモノの代表はやはり食べ物でしょう。実は、新感線では昨年まで食べ物の消えモノを使うことはほぼありませんでした。つまりニセモノの食べ物を食べるフリだけしていたということですね。ですが「乱鶯」は今までとは違うリアルさがウリだったもので、本物の食べ物が用意され、その流れで「VBB」でも本物のラーメンが用意されたというワケです。
料理の消えモノというのは実は大変なのです。何故でしょう。もうお判りですね。だって、毎回用意しなくちゃいけないんだから。実際に食べられるものを毎ステージ用意する。そりゃ大変でしょ。食べやすくて美味しいモノを毎回用意しなくてはならないのです。小道具さんの手間が一気に増えます。味だけではなく衛生面にも気を配らなくてはなりませんからね。器や箸の準備もメンテナンスもしなくてはなりません。
消えモノは実際に調理する場合も、総菜屋さんで買ってくる場合もありますが、いずれにしろ手間は掛かります。また、ランニングコストもバカにはなりません。毎ステージ消えてしまうので、高価な料理は出せませんから。以前客演したプロデュース公演で、出演者が叙々苑の焼肉弁当を食べるシーンがあったのですが、本番での中身は安い牛丼をうまいこと盛り付けたものでした。ほら、だって叙々苑弁当は高いからさ。入れ物だけは本物の叙々苑弁当だったのですが、それを食べたのは小道具スタッフで、出演者は食べさせて貰えませんでした。

ことほど左様に消えモノというのは大変なのですが、その中でも大変なのは「食べ物ではないけど食べられる消えモノ」です。ええと、ちょっと判りにくいと思いますが、例えばWAHAHA本舗さんの場合です。放送作家である喰始さんが主催する劇団なのですが、その有名な演目に「嘔吐物を食べる」様に見えるというのがあります。この消えモノが秀逸なのですよ。パッと見、いわゆるゲロにしか見えません。未消化のニンジンとかコーンとかが垣間見えるドロッとした液体。しかし、これが美味しいんだそうです。見た目はひどいですが食べると美味しい消えモノ。そんな消えモノを作る凄腕職人の小道具さんがいるそうです。
また、現在公演中の阿佐ヶ谷スパイダース「はたらくおとこ」でも、終盤に何やら怪しいモノを食べるシーンがあるのですが、これまたパッと見は怪しさ満載ですが食べると美味しいんだそうです。そこには小道具スタッフの見えざる努力があるんですね。

このように、消えモノがある舞台にはスタッフによる努力があるのだと思いながら見て頂けますと、さらに楽しさが増すのではないかと思います。まあ、消えモノがなくたって小道具さんは大変なんですけどね。


ginzaline

本文とは関係ありませんが、先日行われた東京メトロ銀座線渋谷駅近辺での線路のちょい移動の模様。銀座線渋谷駅がJRとヒカリエの間に移動するための準備ですね。


粟根まこと


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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。



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