「タッパ」

既に春から初夏へと移りゆく昨今。ハナドクロが現在公演中ですが、トリドクロの稽古も始まりつつあります。ハナドクロのキャスト・スタッフに聞くと、実に大変だという話ですから不安にもなりますが、まあキッチリ稽古していきましょう。
そして、このゴールデンウィークに上演しておりますNAPPOS PRODUCE「スキップ」も終盤。ていうか、もう終わりましたか? とりあえず、無事に終われれば良いなとか思いながらこの原稿を書いております。


演劇の稽古では、途中で稽古場が変わる場合があります。まあ様々なケースがありますが、大抵の場合は狭い稽古場から広い稽古場に移動することが多いですね。つまり、劇場舞台よりもちょっと小さいけど場所代の安い稽古場から、劇場舞台とほぼ同じサイズだけど場所代の高い稽古場に移動するワケです。一ヶ月を超えることの多い稽古期間ですから、このような手法を用いて支出を抑えるカンパニーも多いのです。

稽古場のサイズってとても重要なのです。狭い稽古場では、もうちょっと広いつもりで稽古をするわけですが、移動距離も相手との距離感も変わりますし、何よりダンスやアクションが本番通りにできません。ですから、稽古期間の後半は劇場のサイズとほぼ同じ広さの稽古場に移動してみっちり詰めるワケです。これを「実尺(じっしゃく)の取れる」とか「実寸(じっすん)の取れる」稽古場とか言ったりします。

実尺が取れる稽古場ならダンスやアクションもきちんと稽古できますし、俳優の位置関係(ミザンス)http://blog.livedoor.jp/nikkann-awane/archives/33830004.htmlもハッキリします。舞台装置やちょっとした段差も本番と同じように作れますし、従って数々の導線も本番と同じようにできます。このように、広い稽古場に移るのには大変な意義があるのです。

「スキップ」でも稽古場が途中で変わりましたが、実は、一つ目の稽古場でも割と本番に近いサイズが取れていたのです。では何故変更になったのか。それは「タッパ」が足りなかったから。そして、今回ご紹介したい舞台用語がこの「タッパ」なのです。

タッパは「立端」とか「建端」とも書かれ、元々は建築用語です。要するに「高さ」ですね。稽古場のタッパが高い、と言えば天井が高いという意味ですし、このパネルのタッパ、と言えばパネルの高さという意味です。日常でも「君、結構タッパあるよね」と言えば身長が高いという意味になります。あと、料理が余っちゃったらタッパーに入れて冷蔵しておくと明日も食べられますよね。うん、もう別の話だよね。

「スキップ」では舞台上に小振りの盆(回り舞台)が置かれており、その一部にジャングルジムのようなセットが組まれていて、その上に登って演技する演出があったのですが、二階部分のある盆は結構な高さなので、タッパのある稽古場が必要だったのです。しかも手動で回す盆ですから、回す段取りも回りながらの演技も、実物を使って稽古ができたので大変助かりました。
演劇では二階建てのセットなどを組む場合も多いので、稽古場には結構なタッパが必要なのです。二階部分や階段を使った演技も、本番に近いセットが組まれた稽古場なら安心して稽古ができるってワケです。

またしても建築用語由来の舞台用語でしたが、このタッパには「立端」以外の由来の説があります。ウソかマコトか、それは「top」だと言うのです。「トップ」からの「タッパ」。へー、としか言いようがありませんが、あながち全否定できないのも事実です。


そんなこんなで終わりつつある「スキップ」ですが、52歳にして高校生役もやっておりますよ。いやあ、高校生って楽しいですねえ。


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本文とは関係ありませんが、消しゴムが欲しくてセブンイレブンで見つけたMONO消しゴム。超可愛いミニサイズ。


粟根まこと


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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。


【出演情報】

ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season鳥 Produced by TBS

髑髏城PR

作◇中島かずき 
演出◇いのうえひでのり
出演◇阿部サダヲ 森山未來 早乙女太一/松雪泰子/粟根まこと 福田転球 少路勇介 清水葉月/梶原善/池田成志 ほか
6/27~9/1◎IHIステージアラウンド東京
<お問合せ>0570-084-617(10時~20時)


◇コラム「粟根まことの人物ウォッチング」掲載の「えんぶ6月号」は全国書店で5/9発売予定!



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「エチュード」

三月末を越えて「春宵・読ミビトツドイテ」が無事に終わり、「ハナドクロ」が無事に幕を開けました。実は「ハナドクロ」をもう見ちゃったんですけど、いやあ、凄いよ。回転する劇場。大変だよ、回転する劇場。「トリドクロ」が心配だよ。そんな私は今は「スキップ」の稽古中です。春になって、ホントに急に忙しくなってきました。

演劇の稽古ってのも様々です。基本的には上演する戯曲を覚えて繰り返しトライし、演出家と話し合いながら精度を上げていくのが稽古です。つまり、戯曲が第一。その戯曲を立体的に立ち上げていくのが演劇の稽古なのです。

しかし、劇団や演出家によってはそれ以外の稽古をすることも多くあります。やり方は様々。数日掛けて戯曲を読み合わせながらディスカッションをする場合もあれば、いきなり立ち稽古になる場合もあります。原作小説や映画をみんなで見たりする場合もあります。いきなり飲み会を開いて親睦を図る場合もあります。遊んでいるようですが、これもまた稽古の一つのカタチです。
親睦を図るといえば、稽古開始時に全員でストレッチや筋トレをする場合もあります。全員で一緒にすることによってチームワークを高めるのですね。他には、ちょっとしたゲームをする場合もあります。お互いの名前を呼び合ったり、その順番を変えていったりするとか。プロデュース公演などでまだお互いの名前を覚えていない場合などに有効です。あるいは鬼ごっことか、ボールを投げ合うとか。いずれにしても、出演者同士がお互いに慣れたり、率直に意見を言い合ったりする為の布石です。遊びながら関係性を作っていく。要するに、カンパニーの人間関係を良くするのが目的ですね。

そんな演劇の稽古手段の一つに「エチュード」というモノがありまして、コレが今回ご紹介したい演劇用語なのですが、音楽や絵画でも使われる専門用語です。
音楽では「練習曲」という意味ですし、絵画では「習作」という意味です。「技術を高めるために既存の作品を模倣・練習する」といったトコロでしょうか。
これが、演劇においては「即興訓練」という意味になります。例えば「俳優陣にあるシチュエーションや役柄を与えて、自由に即興で演技をさせる」という様な訓練です。様々なやり方やパターンがありますが、その場で即興で作り上げていくのが基本です。

例えば、今手がけている作品の役柄で、戯曲には書かれていないシーンを作り上げていく。もちろんそれは上演されるシーンではありませんが、それぞれの役柄を掘り下げる一助になります。このキャラクターはどんな人なのか、そしてそれぞれの登場人物はどんな関係なのか。役柄になりきって即興で関係性を作るコトで役柄に対する理解が深まるってワケです。

あるいは役柄とは関係なく、もっと自由な設定でエチュードをする場合もあり、それによってお互いの性格を知る役にも立ちます。しばしば、自分自身でも予想しなかった人格が現れてきて、自分の演技や人格を再確認するコトもあります。あ、自分にはこんな一面もあるんだ、あの人は意外にもこんな人なんだ。そうすることによって、感情を開放したり、演技に自由度を増していったりするのです。

中にはエチュードで作品を作っていく団体もあります。全員で設定を考え、全員でセリフを構成し、全員で演出する。かつて「劇団青い鳥」ではそのようなエチュードによる創作手段を採っていたため、作・演出のクレジットが「市堂令」であり、カーテンコールで「作・演出、市堂令」と言いながら一同が礼をするのが名物でした。そういう団体もあるってコトです。
これほど端的ではなくとも、作劇にエチュードを採り入れる劇団も多く、演劇においては有効な訓練手法なのですよ。

そんな風に広く用いられているエチュードという手法ですが、実は、エチュードの好きな演劇人なんてそんなにいないのよね。大変だし面倒くさいし、何よりあまり面白くない。学生時代にエチュードを経験したことがある方ならお判り頂けると思います。訓練の一環ですから当然なのですが、とはいえ有効な訓練であるコトも確かなのです。まあ、できるだけ楽しくやっちゃいますけどね。

そんなエチュードっぽいコトもしながら「スキップ」の稽古は進んでいますよ。ええと、絶対に楽しい作品になると思いますので、お時間のある方はぜひともお越し下さいませ。4/26〜5/5にサンシャイン劇場ですよ。私自身も久しぶりのサンシャイン劇場での公演です。楽しみにしております。


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現在「髑髏城の七人」が上演されているIHIステージアラウンド東京の外観。夏にはここに通います。


粟根まこと


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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。


【出演情報】

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『スキップ』
原作◇北村薫
脚本・演出◇成井豊
出演◇霧矢大夢 深川麻衣 岡田達也 粟根まこと 木村玲衣 ほか
4/26〜5/5◎サンシャイン劇場
ホームページ:http://napposunited.com/skip/



◇コラム「粟根まことの人物ウォッチング」掲載の「えんぶ4月号」は全国書店で3/9発売中!



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第69回「物販」

昨年の「VBB」から早四ヶ月。演劇の現場から離れていた私ですが、とはいえ色んな舞台を見には行っていた私ですが、この三月末には「春宵・読ミビトツドイテ」に、ゴールデンウィークには「スキップ」に、夏には「トリドクロ」に出演いたします。急に忙しくなってきました。やはり演劇は見るよりもやる方が楽しいよね。


さて、そんな演劇公演に行くと、つい寄ってしまうのが「物販コーナー」。パンフレットなどのその作品世界を拡げてくれるグッズがいっぱい並んでいて、気に入った作品ほど多くのグッズを買ってしまうという魔のコーナー、それが物販。
いや、「魔のコーナー」ではありませんよ。むしろ「夢のコーナー」です。その作品の全ての言葉が収録された戯曲本、作り手の思いを深く掘り下げるパンフレット、美麗なポスター、作品世界をイメージしたTシャツやスマホケース、さらには過去作品のDVDなど、まさに夢のコーナーです。
私は演劇人ですので、演劇を見に行ってグッズを買うことはあまりありません。いや、だって、ほら、作品に関する思いとか裏話とかは出演者から詳細に聞けますし。でも、映画を見に行ったらパンフレットを買っちゃうんですよね。スタッフ・キャストの細かいデータとか裏話とか載ってるし。気に入った作品だと、更にフィギュアとかキーホルダーとかも買っちゃうんだよなあ。まあ、好きなモノに対する反応ってみんな同じってコトでしょう。

でね、この「物販」ってのが今回ご紹介したい業界用語なのですが、そもそもコレって業界用語なのかな。要するに「物品販売」の略なんですけども、普通のお店ではこうは言わないよね。八百屋さんが「ウチでは野菜を物販してます」とか言いませんものね。演劇とかコンサートとか、そういった催し物でグッズを売る。そういった業界用語なんじゃないかと思います。

演劇公演において(コンサートとかでも同じだと思うのですが)悩みどころなのが、この物販なんです。何を売るのか、どれくらい作るのか、どうやって売るのか。コレ、結構な悩みどころなのです。

まず、何を売るのか。パンフレットはまあ定番として、他に何を売りましょう。戯曲はいい、過去作DVDもいい。問題なのは公演限定グッズです。Tシャツとかタオルなんてのも定番でしょうか。日常的に使えて、そんなに嵩張らなくて、手頃な値段。まあ、何枚あっても困りませんしね。
問題はココからです。もうちょっと凝ったものも出したい。スマホケースはどうか。クリアファイルはどうか。ハンカチ、しおり、ブックカバー。いずれも上演する作品のテーマや客層に合わせてスタッフが熟慮した結果です。
そうやって熟慮に熟慮を重ねて、結果としてあまりにも奇抜で突飛なグッズができてしまうこともママあるコトでして、そういう妙なモノを見つけた場合には、まあ笑って頂いて、その上で気に入ったら買って下さい。

更に問題なのが、どれくらい作るのかってコトですよ。まず、どれくらい売れるか判らない。パンフレットなどならば過去のデータからある程度は予測できます。予定動員人数の何パーセントとかね。戯曲本や過去DVDなどは次回公演や店舗でも売れますからいいでしょう。
問題は、またしても公演限定グッズです。公演のタイトルや出演者写真の入ったグッズは、基本的にはその公演でしか売れません。つまり、売れ残っちゃったらもうどうしようもないワケです。ツブシがきかない。きかなすぎる。コレがねえ、悩みどころなんです。
欲しがっているお客様がいらっしゃる限り、なるべく売り切れは避けたい。かといって、大量に売れ残るのも困る。特に奇抜なグッズの場合ほど売れ行きが読めませんからね。
かつて新感線で、名物キャラ「轟天」のストラップ(結構な大きさ)を作ったところ、フィギュア製作の最低ロット数が大きくて、大量の轟天フィギュア在庫が発生したことがあります。後にボールペンとシャープペン(ノックの所に巨大な轟天フィギュア付き)に再利用してなんとか売りさばきましたが、あの時は大変でした。

どうやって売るのかというのも大変なんです。販売時間が限られていて忙しいので物販専用のスタッフが必要ですし、お金を扱う関係からちゃんとした人にお願いしたい。新感線の場合はグッズの種類が多く、ワンステージのお客様数も多いので特に大変です。十数人の物販スタッフが、朝から在庫を確認したり品出しをしたりと大忙しなのです。まあ、その横で我々はストレッチなどをしているんですけどね。

ことほど左様に、物販というのは大変なんですよ。では何故そんな大変な思いをしてまで物販をするのか。それはもちろんお客様により楽しんで頂くためなのですが、それに加えて重要な収入源でもあるのです。
小劇場公演の場合、チケット収入は全て製作費に廻ります。というか、弱小劇団では大抵の場合、ギリギリか赤字です。となればグッズの販売利益が重要になるワケですよ。もちろん大した収入ではありませんが、それでも重要なのです。


春の「春宵・読ミビトツドイテ」は、まさに弱小劇団。カフェスペースでの公演です。多分、何らかのグッズ物販もあるかと思います。ええと、もしも公演が面白くて、もしも何か気になるグッズとかがございましたら、お買い求め頂ければ幸いです。


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本文とは関係ありませんが、目黒辺りで見つけた素敵な階段(谷戸前川の暗渠沿い)


粟根まこと


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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。


【出演情報】

ゼータクチク vol.2
『春宵・読ミビトツドイテ』
【構成/演出】わかぎゑふ
【出演】草彅智文 亀山ゆうみ 植本潤 粟根まこと
3/22(水)~26(日)
cafe&bar 木星劇場



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