まだやってますよツキドクロ。もう二ヶ月以上やってるのにまだやってますよツキドクロ。でもそろそろ終わるよツキドクロ。なのでお見逃し無きよう!
前回、休憩時には舞台裏ではみんながバタバタと忙しいという話を書きましたが、なかでも一番忙しいのが衣裳さんです。脱がせて乾かして畳んで着せての連続です。特に新感線では衣裳の数が多いので天手古舞いですよ。
でね、今日ご紹介したい用語はその「衣裳部」なんですが、意味としては衣裳を担当する部署という意味で特に難しいコトはありません。しかし、その仕事の内容は意外と知られていないのではないでしょうか。
衣裳部の仕事は作品の内容や規模によって全く違ってきます。照明や音響だと、会場の規模によって量が変わっては来ますが、やることは大体同じなんですよ。しかし、衣裳部の場合は内容によって大きく異なるのです。
衣裳部を大別すると、衣装プランナーと、衣裳製作班と、衣装さんの三つに分かれます。プランナーは演出家と打ち合わせて全出演者の衣裳を考えます。既製の服を貸衣裳屋さんに手配する場合もあれば、デザインを書き起こして一から製作する場合もあります。そんな衣裳を製作するのが衣裳製作班。そして本番で毎日メンテナンスをしたり衣裳を着る手伝いをしたりするのが衣裳さんです。
まとめるとこういうことになるのですが、内容と規模によってこれらの作業が随分と変わって来ちゃうって話です。
例えば小劇場で現代劇をやる場合、予算があまりありませんので、みんなの持っている服を持ち寄ってそれで済ませたりします。専門の衣裳部がいないなんてこともありまして、劇団員の誰かが衣裳部を兼ねて差配したりします。劇場に洗濯機が無い場合は皆で持ち帰って家で洗濯してきたりします。
もう少し規模が大きくなるとプロの衣裳プランナーがついてくれて、知り合いの貸衣裳屋から安く大量に借りてくれたりします。しかし、それでも本番中には専任の衣裳さんが付いてくれない場合もありまして、そんな時には演出部の誰かが仕事の合間を縫ってアイロンを掛けたり洗濯してくれたりする現場もあります。
時代劇で使用する和服でも、一般的な着物ならば放送局関係の貸衣裳屋で借りられます。大量に借りれば安くなりますし、綺麗に使えば文句も言われません。
まあ、現場によって様々なケースがあるってコトですよ。歴史の長い劇団なら衣裳のストックが多くて使い回しが利くとか、礼服や燕尾服ならレンタルするよりも中古を買った方が断然安いなんて知識も蓄積されるワケです。
問題なのが、特殊な衣裳が出てくる場合。なにやら宇宙人が出てくるとか、物凄くサイケな柄の歌舞伎者が出るとか、まあとにかく既製の服では間に合わない場合は新たに作るコトになります。そこで登場するのが衣裳製作班。衣裳プランナーが書き起こしたデザインを衣装製作班が採寸して作ります。点数が少なければまだマシですが、多いと本当に大変なんです。
確かに、全員の衣装を考えるプランナーも大変だし、それを作る製作班も大変ですが、それを毎日メンテナンスする現場の衣裳さんが一番大変なのです。
着せたり脱がせたり、洗濯したりアイロン掛けたり。汚れれば染み抜きをするし、破れれば繕います。しかも大量に。衣装は毎日着るモノですから様々なトラブルが起こりまして、その度に衣裳さんにお願いしてなんとかしてもらいます。毎日大量の着物を着付けていると、手の脂が全部持って行かれて手がカサカサになるらしいです。申し訳ありません。我々俳優部にとって、一番身近で一番頼りにしているのが現場の衣裳さんなのです。正直言って頭が上がりません。
今回の髑髏城シリーズの場合、ご覧頂いた方ならお判りかと思いますが、終盤に多くの俳優が水浸しになります。となれば替えの衣装が必要になります。しかも二回公演が多いので、乾かす時間を考えると同じ衣装が最低三着は必要なんです。そのうえ、それぞれの俳優に何パターンも衣装があったり別の役もやったりするので、35人の出演者とはいえ、用意すべき衣裳は優に百を超えるわけです。しかも、ツキドクロに至ってはダブルチーム制ですから、それが倍になるんです。うひゃあ! 正直、今回はいったい何着の衣裳が用意されているのか見当がつきません。全部考えたプランナーさんも、全部作った製作班も、全部メンテナンスしている衣裳さんも、そりゃもう大変だと思います。
ほらもう頭が上がらないでしょ。
どの現場でも楽屋には大量の衣裳がありますし、廊下には大量の衣裳が干してあるし、アイロン台では大量の衣裳が平らにされていますし、洗濯機はグルグル回り続けています。汗を乾かすために扇風機は回るし乾燥機は回るし、なんだかもう色んなモノが回っています。ことほど左様に衣裳さんは大変なんだってコトですよ。
もう一つ頭が上がらないコト、それは旅公演では衣裳さんの洗濯機をお借りして我々俳優部の普段着も洗濯することがありまして、ていうか私がそうなんですが、全くもってお世話になりっぱなしです。今後ともよろしくお願いいたします。
本文とは関係ありませんが、去る1/22の大雪の翌日、IHIステージアラウンド東京の横の空地も綺麗な雪景色となりました。
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。
2017年11月23日(木・祝)~2018年2月21日(水)
会場:IHIステージアラウンド東京(豊洲)
★話題の舞台を“お得に”観る!割引チケット販売中!
前回、休憩時には舞台裏ではみんながバタバタと忙しいという話を書きましたが、なかでも一番忙しいのが衣裳さんです。脱がせて乾かして畳んで着せての連続です。特に新感線では衣裳の数が多いので天手古舞いですよ。
でね、今日ご紹介したい用語はその「衣裳部」なんですが、意味としては衣裳を担当する部署という意味で特に難しいコトはありません。しかし、その仕事の内容は意外と知られていないのではないでしょうか。
衣裳部の仕事は作品の内容や規模によって全く違ってきます。照明や音響だと、会場の規模によって量が変わっては来ますが、やることは大体同じなんですよ。しかし、衣裳部の場合は内容によって大きく異なるのです。
衣裳部を大別すると、衣装プランナーと、衣裳製作班と、衣装さんの三つに分かれます。プランナーは演出家と打ち合わせて全出演者の衣裳を考えます。既製の服を貸衣裳屋さんに手配する場合もあれば、デザインを書き起こして一から製作する場合もあります。そんな衣裳を製作するのが衣裳製作班。そして本番で毎日メンテナンスをしたり衣裳を着る手伝いをしたりするのが衣裳さんです。
まとめるとこういうことになるのですが、内容と規模によってこれらの作業が随分と変わって来ちゃうって話です。
例えば小劇場で現代劇をやる場合、予算があまりありませんので、みんなの持っている服を持ち寄ってそれで済ませたりします。専門の衣裳部がいないなんてこともありまして、劇団員の誰かが衣裳部を兼ねて差配したりします。劇場に洗濯機が無い場合は皆で持ち帰って家で洗濯してきたりします。
もう少し規模が大きくなるとプロの衣裳プランナーがついてくれて、知り合いの貸衣裳屋から安く大量に借りてくれたりします。しかし、それでも本番中には専任の衣裳さんが付いてくれない場合もありまして、そんな時には演出部の誰かが仕事の合間を縫ってアイロンを掛けたり洗濯してくれたりする現場もあります。
時代劇で使用する和服でも、一般的な着物ならば放送局関係の貸衣裳屋で借りられます。大量に借りれば安くなりますし、綺麗に使えば文句も言われません。
まあ、現場によって様々なケースがあるってコトですよ。歴史の長い劇団なら衣裳のストックが多くて使い回しが利くとか、礼服や燕尾服ならレンタルするよりも中古を買った方が断然安いなんて知識も蓄積されるワケです。
問題なのが、特殊な衣裳が出てくる場合。なにやら宇宙人が出てくるとか、物凄くサイケな柄の歌舞伎者が出るとか、まあとにかく既製の服では間に合わない場合は新たに作るコトになります。そこで登場するのが衣裳製作班。衣裳プランナーが書き起こしたデザインを衣装製作班が採寸して作ります。点数が少なければまだマシですが、多いと本当に大変なんです。
確かに、全員の衣装を考えるプランナーも大変だし、それを作る製作班も大変ですが、それを毎日メンテナンスする現場の衣裳さんが一番大変なのです。
着せたり脱がせたり、洗濯したりアイロン掛けたり。汚れれば染み抜きをするし、破れれば繕います。しかも大量に。衣装は毎日着るモノですから様々なトラブルが起こりまして、その度に衣裳さんにお願いしてなんとかしてもらいます。毎日大量の着物を着付けていると、手の脂が全部持って行かれて手がカサカサになるらしいです。申し訳ありません。我々俳優部にとって、一番身近で一番頼りにしているのが現場の衣裳さんなのです。正直言って頭が上がりません。
今回の髑髏城シリーズの場合、ご覧頂いた方ならお判りかと思いますが、終盤に多くの俳優が水浸しになります。となれば替えの衣装が必要になります。しかも二回公演が多いので、乾かす時間を考えると同じ衣装が最低三着は必要なんです。そのうえ、それぞれの俳優に何パターンも衣装があったり別の役もやったりするので、35人の出演者とはいえ、用意すべき衣裳は優に百を超えるわけです。しかも、ツキドクロに至ってはダブルチーム制ですから、それが倍になるんです。うひゃあ! 正直、今回はいったい何着の衣裳が用意されているのか見当がつきません。全部考えたプランナーさんも、全部作った製作班も、全部メンテナンスしている衣裳さんも、そりゃもう大変だと思います。
ほらもう頭が上がらないでしょ。
どの現場でも楽屋には大量の衣裳がありますし、廊下には大量の衣裳が干してあるし、アイロン台では大量の衣裳が平らにされていますし、洗濯機はグルグル回り続けています。汗を乾かすために扇風機は回るし乾燥機は回るし、なんだかもう色んなモノが回っています。ことほど左様に衣裳さんは大変なんだってコトですよ。
もう一つ頭が上がらないコト、それは旅公演では衣裳さんの洗濯機をお借りして我々俳優部の普段着も洗濯することがありまして、ていうか私がそうなんですが、全くもってお世話になりっぱなしです。今後ともよろしくお願いいたします。
本文とは関係ありませんが、去る1/22の大雪の翌日、IHIステージアラウンド東京の横の空地も綺麗な雪景色となりました。
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。
【出演情報】
ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月 Produced by TBS2017年11月23日(木・祝)~2018年2月21日(水)
会場:IHIステージアラウンド東京(豊洲)
◇コラム「粟根まことの人物ウォッチング」掲載の「えんぶ2月号」は全国書店で発売中!
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