第二十回「床山」

長かった「ZIPANG PUNK〜五右衛門ロックIII」公演も無事に終わりました。たくさんのご来場ありがとうございました。確かに長かったのですが、長いといえば、私の髪も長くなる一方です。切るタイミングを失いました。うっとうしい!

さて、その「GR3」での私の役は石田三成でした。太閤豊臣秀吉政権の五奉行の一人で、後年には天下分け目の関ヶ原の合戦で西軍の実質的中心となって敗れ、斬首された実在の人物です。徳川政権にとっては最大の政敵でありましたので、江戸時代に書かれた歴史書ではとにかく悪者に描かれており、それがために現在でも嫌われがちな人物ですが、多分そんなに悪い人では無かったと思うんですよ。
確かに相当に神経質で傲慢な人だったようですが、秀吉への忠誠心のあまり、成り行きで西軍の中心になっちゃっただけで、単に真面目な人だっただけだと思うんですよ。

さて、そんな石田三成の髪型はいわゆる「ちょんまげ」です。そう、時代劇なのでよく見る、頭のてっぺん辺りが剃ってあって、その上に束ねた髪が乗っかっているヤツ。正確には、「ちょんまげ」とは数多くある「髷(まげ)」の一種に過ぎず、老人の短い髷のコトを差すのですが、今では江戸時代の男性髪型の総称のようになってしまいましたね。
「髷」には数多くの種類があります。もちろん男女でそれぞれ違いがあるのですが、身分や年齢による違い、さらに時代ごとの流行の髪型など、相当な数の種類があったようです。今と同じですね。私の髪型は代わり映えしませんが。
なので、時代劇のドラマや映画の現場に行くと、やたらと沢山のカツラが用意されていて、その役のイメージのカツラをいくつか被らされて、サイズが合うモノを探すコトになります。そして、そんな大量のカツラを管理する部署を「床山(とこやま)」さんというのです。

舞台(や映画やテレビ)には「ヘアメイク」と呼ばれるスタッフ部門があります。名前の通り、メイクアップや髪型、カツラなどを管理する部門ですが、ここにいわゆる時代劇の要素が入ってくると「床山」さんの出番となります。同じカツラを扱う場合でも、洋カツラと和ガツラではその扱いが全く違うのです。
大まかに言って、洋カツラはネット状のモノに毛を結びつけたタイプ。皆さんがイメージするカツラはこちらではないでしょうか。ほら、パーティーグッズ屋さんで売っているアレです、アレ。装着する時には、まず地毛をストッキングのような細かいネットでまとめ、カツラを載せた後、ピンで固定します。
対して、和ガツラのベースは金属でできています。頭の形に合わせて曲げられた板金に、髪を生やしたネットが固定されています。装着する時には、まず地毛を「羽二重(はぶたえ)」と呼ばれる布でまとめ、カツラを載せるだけ。こちらは金属が固定を兼ねているので載せるだけで固定されます。

この羽二重というのが和ガツラの特徴でしょう。長方形の布に細長い「手」と呼ばれる固定具が付いていて・・・ええと、よく判らないと思うし私も説明しにくいので写真をご覧下さい。

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このT字状の上部を額に当てて、バンダナの様に縛り上げていくとこうなります。

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この「手」には「鬢付け油(びんつけあぶら)」というロウ状の油が塗られていて、それで固定します。なお、現代ではさらに透明テープで補強することもあります。
もうお判りのように肌色に塗ってありますね。これは「ドーラン」という化粧道具で塗られており、これが頭の色になります。頭頂部は髪を剃っているテイなのですこし黒めになっています。
ちなみにこの剃っている部分を「月代(さかやき)」というのですが、床山さんは「中剃り(なかぞり)」なんていったりもします。時代劇の鬘でも月代を剃らずに普通に全部生えていて、それをまとめて髷を結っている場合もありますが、こちらは「総髪(そうはつ)」といいまして、学者や町医者に多く見られました。現代風の時代劇の舞台ではこちらの方が多いでしょうかね。
新感線でも創作時代劇であることから総髪が多いのですが、私は実在の人物である石田三成役であることから、今回は久しぶりに中剃りのカツラでした。

あの羽二重の中には私のうっとうしく長い髪がギュッとまとめて入っているのです。それでも中剃りができちゃうなんて凄いね、羽二重! ええと、床山さんに関してはまだまだご説明したいこともありますので、いつかまた続きを書きたいと思います。今日の所はこんなかんじで。じゃ。

粟根まこと

粟根80

あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。
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次回予定◇東京ハートブレイカーズ『サイレント・フェスタ』4/25〜29◎吉祥寺 STAR PINE’S CAFE


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