昨年の「VBB」から早四ヶ月。演劇の現場から離れていた私ですが、とはいえ色んな舞台を見には行っていた私ですが、この三月末には「春宵・読ミビトツドイテ」に、ゴールデンウィークには「スキップ」に、夏には「トリドクロ」に出演いたします。急に忙しくなってきました。やはり演劇は見るよりもやる方が楽しいよね。


さて、そんな演劇公演に行くと、つい寄ってしまうのが「物販コーナー」。パンフレットなどのその作品世界を拡げてくれるグッズがいっぱい並んでいて、気に入った作品ほど多くのグッズを買ってしまうという魔のコーナー、それが物販。
いや、「魔のコーナー」ではありませんよ。むしろ「夢のコーナー」です。その作品の全ての言葉が収録された戯曲本、作り手の思いを深く掘り下げるパンフレット、美麗なポスター、作品世界をイメージしたTシャツやスマホケース、さらには過去作品のDVDなど、まさに夢のコーナーです。
私は演劇人ですので、演劇を見に行ってグッズを買うことはあまりありません。いや、だって、ほら、作品に関する思いとか裏話とかは出演者から詳細に聞けますし。でも、映画を見に行ったらパンフレットを買っちゃうんですよね。スタッフ・キャストの細かいデータとか裏話とか載ってるし。気に入った作品だと、更にフィギュアとかキーホルダーとかも買っちゃうんだよなあ。まあ、好きなモノに対する反応ってみんな同じってコトでしょう。

でね、この「物販」ってのが今回ご紹介したい業界用語なのですが、そもそもコレって業界用語なのかな。要するに「物品販売」の略なんですけども、普通のお店ではこうは言わないよね。八百屋さんが「ウチでは野菜を物販してます」とか言いませんものね。演劇とかコンサートとか、そういった催し物でグッズを売る。そういった業界用語なんじゃないかと思います。

演劇公演において(コンサートとかでも同じだと思うのですが)悩みどころなのが、この物販なんです。何を売るのか、どれくらい作るのか、どうやって売るのか。コレ、結構な悩みどころなのです。

まず、何を売るのか。パンフレットはまあ定番として、他に何を売りましょう。戯曲はいい、過去作DVDもいい。問題なのは公演限定グッズです。Tシャツとかタオルなんてのも定番でしょうか。日常的に使えて、そんなに嵩張らなくて、手頃な値段。まあ、何枚あっても困りませんしね。
問題はココからです。もうちょっと凝ったものも出したい。スマホケースはどうか。クリアファイルはどうか。ハンカチ、しおり、ブックカバー。いずれも上演する作品のテーマや客層に合わせてスタッフが熟慮した結果です。
そうやって熟慮に熟慮を重ねて、結果としてあまりにも奇抜で突飛なグッズができてしまうこともママあるコトでして、そういう妙なモノを見つけた場合には、まあ笑って頂いて、その上で気に入ったら買って下さい。

更に問題なのが、どれくらい作るのかってコトですよ。まず、どれくらい売れるか判らない。パンフレットなどならば過去のデータからある程度は予測できます。予定動員人数の何パーセントとかね。戯曲本や過去DVDなどは次回公演や店舗でも売れますからいいでしょう。
問題は、またしても公演限定グッズです。公演のタイトルや出演者写真の入ったグッズは、基本的にはその公演でしか売れません。つまり、売れ残っちゃったらもうどうしようもないワケです。ツブシがきかない。きかなすぎる。コレがねえ、悩みどころなんです。
欲しがっているお客様がいらっしゃる限り、なるべく売り切れは避けたい。かといって、大量に売れ残るのも困る。特に奇抜なグッズの場合ほど売れ行きが読めませんからね。
かつて新感線で、名物キャラ「轟天」のストラップ(結構な大きさ)を作ったところ、フィギュア製作の最低ロット数が大きくて、大量の轟天フィギュア在庫が発生したことがあります。後にボールペンとシャープペン(ノックの所に巨大な轟天フィギュア付き)に再利用してなんとか売りさばきましたが、あの時は大変でした。

どうやって売るのかというのも大変なんです。販売時間が限られていて忙しいので物販専用のスタッフが必要ですし、お金を扱う関係からちゃんとした人にお願いしたい。新感線の場合はグッズの種類が多く、ワンステージのお客様数も多いので特に大変です。十数人の物販スタッフが、朝から在庫を確認したり品出しをしたりと大忙しなのです。まあ、その横で我々はストレッチなどをしているんですけどね。

ことほど左様に、物販というのは大変なんですよ。では何故そんな大変な思いをしてまで物販をするのか。それはもちろんお客様により楽しんで頂くためなのですが、それに加えて重要な収入源でもあるのです。
小劇場公演の場合、チケット収入は全て製作費に廻ります。というか、弱小劇団では大抵の場合、ギリギリか赤字です。となればグッズの販売利益が重要になるワケですよ。もちろん大した収入ではありませんが、それでも重要なのです。


春の「春宵・読ミビトツドイテ」は、まさに弱小劇団。カフェスペースでの公演です。多分、何らかのグッズ物販もあるかと思います。ええと、もしも公演が面白くて、もしも何か気になるグッズとかがございましたら、お買い求め頂ければ幸いです。


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本文とは関係ありませんが、目黒辺りで見つけた素敵な階段(谷戸前川の暗渠沿い)


粟根まこと


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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。


【出演情報】

ゼータクチク vol.2
『春宵・読ミビトツドイテ』
【構成/演出】わかぎゑふ
【出演】草彅智文 亀山ゆうみ 植本潤 粟根まこと
3/22(水)~26(日)
cafe&bar 木星劇場



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