「トリドクロ」も半分終わりました。一ヶ月以上もやって、まだ半分。うひゃあ、先は長いなあ。とりあえず身体に気をつけて頑張っていきたいと思います。
さて、先月のえんぶ本誌での連載「人物ウォッチング」では演出助手の山﨑総司くんを書きました。長いつきあいの総司くんを褒めたり貶したり。まあ、それはいいんですが、さて、演出助手って何をしている人なのか。具体的にご存じの方は少ないのではないでしょうか。
演出助手、我々は略して「演助」と呼んでいますが、要するに読んで字の如く「演出家の助手」です。これで説明が終わってしまうのですが、もうちょっと詳しくご説明いたしましょうか。
まず、演出家の仕事をまとめましょう。この連載でも以前に「演出家」について書きました。→http://blog.livedoor.jp/nikkann-awane/archives/41618104.html
長いので無理して短くまとめますと「脚本を読み込み、それに則って美術、照明、音効、小道具などのスタッフに指示を出して作品世界を立体化する。俳優には演技指導し、ダメ出しをして作品世界を構築する」のが演出家。これらによって作品を完成させるのが仕事です。映画でいうところの監督に当たります。
このように演出家の仕事は多岐に渡り、多忙なのですね。決めるべきコトが山ほどあります。なので、それを補佐する人が必要になりまして、それが演出助手なんです。
公演の規模やスタッフの人数によって演助の仕事は変わってきますが、基本的に、演出家の助手として演出家を支え、また、スタッフやキャストとのパイプ役になるのが主な仕事となります。
演出家がスタッフと打ち合わせをする時、演出助手も必ず同席します。というのは、演出家はだいたい無茶を言います。無理難題をふっかけます。予算や物理的制限を無視したりもします。夢を見るのです。もちろん良い舞台にしようとしてのコトですが、無理なものは無理です。
演出助手と舞台監督と制作チーフは、その無茶を説得してやめさせます。予算と現実を言い含めます。そして実現可能な代替案を提案して丸く収めるのです。
ああ、しまった。これはスタッフ全体の悩みでしたね。もうちょっと演出助手個人の実務をご紹介いたしましょう。
稽古中、演出家は突然色々なコトを言います。セリフの変更やミザンス(動きや立ち位置)の変更、スタッフへの要求などを突然言い出すのです。もちろんキャスト・スタッフはすぐにそれに対応するワケですが、バタバタして忘れちゃうこともあるのね。ですので、演助はすぐにそれを台本に書き込みます。我々俳優は変更されたセリフや動きが判らなくなったら演助さんに教えてもらいに行くのです。ホント、バタバタするから忘れちゃったりするのね。
また、稽古中に俳優がセリフを忘れた場合は即座にセリフを言って思い出させます。コレを「プロンプ(またはプロンプト)」と言います。たまに、俳優がワザと間を取っている時にも忘れたと思ってプロンプして、怒られたりもします。
各俳優の出番をシーンごとに書き出した「香盤表(こうばんひょう)」を作るのも大事な仕事です。そこにはストップウォッチで計った所要時間も書き込まれていきます。なので演助はストップウォッチを常備しているのです。それを見て衣裳の早替えが可能かどうかを考えたりもします。また、キャストのNGを把握して、香盤表とすりあわせて稽古スケジュールを立てるのも演助です。場合によっては演助が代役として稽古に参加する場合もあります。台本を持ちながら、ちょっとたどたどしくセリフを言って動いたりします。
現場によっては本物の音効さんが来るまでは稽古中に音楽を出したりもします。暗転や明転など、重要な照明変化のキッカケを声に出すのも仕事です。だって稽古場はずっと明るいですからね。
そんな稽古中、休憩になれば再開時間を発表し、そこまでの稽古の問題点などをまとめ、スタッフとも打ち合わせ、次のシーンの準備をし、そして急いでトイレに行ってきます。忙しいのです。
ほらもう、演出家の助手というよりも、何でも屋みたいに忙しく働いているでしょ。とにかく、稽古を円滑に進行させるのが演出助手の仕事なのです。
そして、稽古が終わって劇場に入ってからも、舞台稽古からゲネプロでも数多くの修整を調整し、初日が開いてから数日間は問題点を洗い出していくのです。ああ、なんて忙しい!
こんなに忙しいのに、演出家からは矢継ぎ早に指示を出され、スタッフからは早くしろとせっつかれ、キャストからは口うるさいんだよと怒られ、中間管理職のように板挟みになりながらも、より良い舞台を作るために頑張っているのです。ガンバレ演助! 負けるな演助!
初日が開いて数日して舞台が落ち着くと、演助の仕事は終わりです。そして次の現場へと移動します。苦労して作り上げた舞台を後にして去って行くのです。我々は、あんなに邪険にしていた演助を、実は頼りにしていたんだなあと確認しながら、感謝の気持ちをこめて送り出していくのです。また次回もよろしくね、演助!
本文とは関係ありませんが、ゆりかもめ新豊洲駅そばのゆりかもめ上空で首都高速10号晴海線が繋がりました。毎日工事の様子を見ていましたからね。
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。
作◇中島かずき
演出◇いのうえひでのり
出演◇阿部サダヲ 森山未來 早乙女太一/松雪泰子/粟根まこと 福田転球 少路勇介 清水葉月/梶原善/池田成志 ほか
6/27~9/1◎IHIステージアラウンド東京
<お問合せ>0570-084-617(10時~20時)
★話題の舞台を“お得に”観る!割引チケット販売中!
さて、先月のえんぶ本誌での連載「人物ウォッチング」では演出助手の山﨑総司くんを書きました。長いつきあいの総司くんを褒めたり貶したり。まあ、それはいいんですが、さて、演出助手って何をしている人なのか。具体的にご存じの方は少ないのではないでしょうか。
演出助手、我々は略して「演助」と呼んでいますが、要するに読んで字の如く「演出家の助手」です。これで説明が終わってしまうのですが、もうちょっと詳しくご説明いたしましょうか。
まず、演出家の仕事をまとめましょう。この連載でも以前に「演出家」について書きました。→http://blog.livedoor.jp/nikkann-awane/archives/41618104.html
長いので無理して短くまとめますと「脚本を読み込み、それに則って美術、照明、音効、小道具などのスタッフに指示を出して作品世界を立体化する。俳優には演技指導し、ダメ出しをして作品世界を構築する」のが演出家。これらによって作品を完成させるのが仕事です。映画でいうところの監督に当たります。
このように演出家の仕事は多岐に渡り、多忙なのですね。決めるべきコトが山ほどあります。なので、それを補佐する人が必要になりまして、それが演出助手なんです。
公演の規模やスタッフの人数によって演助の仕事は変わってきますが、基本的に、演出家の助手として演出家を支え、また、スタッフやキャストとのパイプ役になるのが主な仕事となります。
演出家がスタッフと打ち合わせをする時、演出助手も必ず同席します。というのは、演出家はだいたい無茶を言います。無理難題をふっかけます。予算や物理的制限を無視したりもします。夢を見るのです。もちろん良い舞台にしようとしてのコトですが、無理なものは無理です。
演出助手と舞台監督と制作チーフは、その無茶を説得してやめさせます。予算と現実を言い含めます。そして実現可能な代替案を提案して丸く収めるのです。
ああ、しまった。これはスタッフ全体の悩みでしたね。もうちょっと演出助手個人の実務をご紹介いたしましょう。
稽古中、演出家は突然色々なコトを言います。セリフの変更やミザンス(動きや立ち位置)の変更、スタッフへの要求などを突然言い出すのです。もちろんキャスト・スタッフはすぐにそれに対応するワケですが、バタバタして忘れちゃうこともあるのね。ですので、演助はすぐにそれを台本に書き込みます。我々俳優は変更されたセリフや動きが判らなくなったら演助さんに教えてもらいに行くのです。ホント、バタバタするから忘れちゃったりするのね。
また、稽古中に俳優がセリフを忘れた場合は即座にセリフを言って思い出させます。コレを「プロンプ(またはプロンプト)」と言います。たまに、俳優がワザと間を取っている時にも忘れたと思ってプロンプして、怒られたりもします。
各俳優の出番をシーンごとに書き出した「香盤表(こうばんひょう)」を作るのも大事な仕事です。そこにはストップウォッチで計った所要時間も書き込まれていきます。なので演助はストップウォッチを常備しているのです。それを見て衣裳の早替えが可能かどうかを考えたりもします。また、キャストのNGを把握して、香盤表とすりあわせて稽古スケジュールを立てるのも演助です。場合によっては演助が代役として稽古に参加する場合もあります。台本を持ちながら、ちょっとたどたどしくセリフを言って動いたりします。
現場によっては本物の音効さんが来るまでは稽古中に音楽を出したりもします。暗転や明転など、重要な照明変化のキッカケを声に出すのも仕事です。だって稽古場はずっと明るいですからね。
そんな稽古中、休憩になれば再開時間を発表し、そこまでの稽古の問題点などをまとめ、スタッフとも打ち合わせ、次のシーンの準備をし、そして急いでトイレに行ってきます。忙しいのです。
ほらもう、演出家の助手というよりも、何でも屋みたいに忙しく働いているでしょ。とにかく、稽古を円滑に進行させるのが演出助手の仕事なのです。
そして、稽古が終わって劇場に入ってからも、舞台稽古からゲネプロでも数多くの修整を調整し、初日が開いてから数日間は問題点を洗い出していくのです。ああ、なんて忙しい!
こんなに忙しいのに、演出家からは矢継ぎ早に指示を出され、スタッフからは早くしろとせっつかれ、キャストからは口うるさいんだよと怒られ、中間管理職のように板挟みになりながらも、より良い舞台を作るために頑張っているのです。ガンバレ演助! 負けるな演助!
初日が開いて数日して舞台が落ち着くと、演助の仕事は終わりです。そして次の現場へと移動します。苦労して作り上げた舞台を後にして去って行くのです。我々は、あんなに邪険にしていた演助を、実は頼りにしていたんだなあと確認しながら、感謝の気持ちをこめて送り出していくのです。また次回もよろしくね、演助!
本文とは関係ありませんが、ゆりかもめ新豊洲駅そばのゆりかもめ上空で首都高速10号晴海線が繋がりました。毎日工事の様子を見ていましたからね。
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。
【出演情報】
ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season鳥 Produced by TBS作◇中島かずき
演出◇いのうえひでのり
出演◇阿部サダヲ 森山未來 早乙女太一/松雪泰子/粟根まこと 福田転球 少路勇介 清水葉月/梶原善/池田成志 ほか
6/27~9/1◎IHIステージアラウンド東京
<お問合せ>0570-084-617(10時~20時)
◇コラム「粟根まことの人物ウォッチング」掲載の「えんぶ6月号」は全国書店で発売中!
★話題の舞台を“お得に”観る!割引チケット販売中!