いやー、終わりました! やっと終わりましたよ「トリドクロ」! 色んなコトがありました。そりゃもう色んなコトが。でもまあ、なんとか無事に終わってホッとしております。でも、すぐに「サブマリン」の稽古が始まって本番があって、その後すぐに「ツキドクロ」の稽古も始まります。相変わらずのバタバタです。


さて、そんなこんなの「トリドクロ」ですが、行われていたのは出来たばかりの新劇場・IHIステージアラウンド東京。客席が回転するという画期的な劇場です。
ステージアラウンドシステムの劇場はオランダのアムステルダムが第一号。そして、世界で二番目、アジア初となるのがこのIHIステージアラウンド東京なのです。

真ん中の軸を中心に回転する円形の客席を取り巻くように舞台が配置されています。四角いドーナツというか、食パンにハムを載せたようになっているワケです。外周部分にある舞台をいくつかに区切って、それぞれにセットを組み、いくつかのシーンを作ります。そして、客席を回転させてそれぞれの方向に向ければ、それぞれのシーンになるっていう寸法です。これがこのステージアラウンドシステムの最大の特徴ですね。
通常の演劇では、たいてい舞台面は一つです。一つの舞台でセットチェンジをしてシーンを切り替えるのですが、転換の時間を短くするためにセットが簡略化(もしくは抽象化)されるコトが多いのですね。まあ、それが演劇の面白いトコロでもあるのですが、あまり複雑な仕掛けを設置しにくいという難点もあります。
しかし、ステージアラウンドならばセットの組み替えが必要ないため、かなり凝った造りのセットを作り置きにできるのです。しかも様々な仕掛けもふんだんに使用することができます。
今回使用した様々な仕掛けの中に「本水(ほんみず)」ってのがありまして、それが本日ご紹介したい演劇用語というか、歌舞伎用語なのです。では本水って何でしょう?

演劇で水を表現したい場合、様々な方法があります。青や銀の布をひらひらとさせたり、ゆらゆらと揺れる照明で表現したり。いずれも本物の水を使わずに水を表現する伝統的技法です。なぜならば、舞台上で本当の水を使うのは大変だから。
舞台上で本物の水を使う場合、防水対策が大変なのですね。万が一、水が漏れてしまった場合、劇場を汚してしまう可能性があるからです。汚すだけならまだしも、電気を使う照明や音響システムに悪影響を与えてしまう場合もあります。なので、舞台で本物の水を使う時には細心の注意を払う必要があるのです。
だからこそ、日本の歌舞伎だけでなく、海外の演劇においても、本物の水を使わずに水を表現する技法が進化してきたのです。いってみればニセモノの水、つまりニセ水です。

しかし! やっぱり演目によっては本物の水を使った方がよい場合があるのですね。「東海道四谷怪談」の隠亡堀の場とか。そういう場合には万難を排して本物の水を使うワケです。これが本物の水、つまり「本水」です。演劇で本水を使う場合、相当の苦労をして使っているのだとご理解下さい。

で、先ほども書いた通り、IHIステージアラウンドでは様々な仕掛けを仕込んだセットを作り置きにできます。ですので、本水が使いやすいってワケ。
しかも、ただ単に水を水槽に溜めて池として使うのではなく、水を循環させた小川や、傾斜を付けた複雑な地形を流れる川として使うコトができるのです。さらに、天井部分にパイプを通して雨を降らせることもできちゃうんです。もちろん、普通の劇場でもこれらの演出はできるのですが、その仕掛けが他のシーンへの制約となる場合もあり、気軽には採り入れることはできません。それなりの予算と準備と覚悟が必要なのです。
その点、ステージアラウンドでは他のシーンへの影響を考えなくてもいいので、比較的採り入れやすいと言えます。
「ハナドクロ、トリドクロ」をご覧頂いた方々なら、ああ、あのシーンだなと思い当たるのではないでしょうか。しっとりとした小川があったり、雨が降る中、派手にバシャバシャと水を跳ね散らかしながら暴れるシーンがありましたよね。あれです。あれが本水です。

本水を使う場合、漏水対策などの他に、水の衛生にも気を使う必要があります。特に俳優が水の中に入ったり被ったりする場合には特に注意が必要です。今回使用した本水には、除菌力が強いうえに安全な特殊な水が含まれています。ですので、我々俳優部も安心して水の中に入ることができるのですね。
更に大変なのが衣裳部さん。正直、俳優部はビショビショに濡れます。なので、替えの衣裳を用意しなくてはならないのです。当然、洗濯すべき衣裳の数は倍になるし、履き物も倍になるし、舞台裏でも衣裳をタオルで拭いたり、床をモップで拭いたり。音響さんもマイクに水が入らないように注意したりと、全スタッフが大忙しです。ことほど左様に本水を使うというのは大変なんです。その分、演出効果は絶大なのです。


トリドクロは真夏でしたから比較的マシでしたが、年末から上演されるツキドクロは真冬の公演となります。きっと寒いぜ! 冷たいぜ! 私も出演しますので、どうぞよろしくお願いいたします! 11月末からです! あ、その前に! 東京ハートブレイカーズ「サブマリン」もよろしくお願いいたします! 9/19〜25に、吉祥寺STAR PINE'S CAFEですよ!


wire

本文とは関係ありませんが、こういう電線っていいよね。


粟根まこと


72110e08.jpg

あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。


【出演情報】

東京ハートブレイカーズ「サブマリン」
 sub
9/19(火)~25(月)
吉祥寺STAR PINE’S CAFE

◇コラム「粟根まことの人物ウォッチング」掲載の「えんぶ10月号」は9/8、全国書店で発売!



話題の舞台を“お得に”観る!割引チケット販売中!
4bbb344f