東京ハートブレイカーズ「サブマリン」も無事に終えることができました。久しぶりにベースも弾いて、指先がやたらと痛い粟根です。そして今はツキドクロの稽古中でして、ある理由で内ももが痛い粟根です。


さて、いきなり言いますが今回ご紹介したい演劇用語は「稽古場」です。読んで字の如く、「稽古する場所」のコトでして、それ以上でもそれ以下でもありません。つまり、演劇用語というよりはほぼ一般名詞でありまして、用語として解説するコトは何も無いのですが、演劇に於いてこの稽古場が非常に重要かつ難点であるという話をしたいと思います。

演劇に限らず、人前で何かをパフォーマンスとして発表するためには何らかの稽古が必要でして、音楽でもお笑いでも演説でもダンスでも、少なからず練習が必要です。ギターの弾き語りや落語など、少人数で静かな作品の場合ならば、自宅の部屋とか公園とか夜道とか、まあまあ周りの人に迷惑の掛からない練習場所というのが比較的簡単に見つかります。
歌唱とか演説などの多少うるさめの作品でも、カラオケボックスなどの防音個室があればなんとかなりますし、相当うるさいバンドでも街中にたくさんある音楽スタジオで事足ります。まあ、少人数で小さな部屋で済むものならばなんとかなるって話ですよ。
ダンス公演も大変なのですが、ダンス教室などの場合は専用のスタジオがある場合が多く、というか専用スタジオがなければ教室を開くのも難しくなりますので、そこを稽古場にすれば良いので比較的ハードルは低いのではないでしょうか。

問題なのが、大人数でうるさい場合。例えば合唱や管弦楽やブラスバンドなどの場合は大変です。学生さんの部活ならば教室が使えますからなんとかなります。それでも近隣住民への迷惑を考えて窓を閉め切る必要があり、真夏などは苦労した記憶がある方も多いのではないでしょうか。
同様に、演劇の場合も稽古場確保が死活問題になります。楽団や劇団が専用の稽古場を持っているなら一気に楽になりますが、そういう恵まれた団体はごく僅かです。となれば、結構なサイズの大型スタジオを借りなくてはならず、費用がかさむ上に、交通の便の良いスタジオの場合は予約の取り合いになったりします。

特に市民劇団や市民楽団、また小劇団や個人教室などの場合は予算が限られていますので、稽古場確保が大変なんです。そういう場合はどうするか。そこで頼られるのが公共施設です。つまり、公民館や区民ホール、市民会館などに用意されている音楽室やリハーサルルームや会議室です。メンバーにそこの市民や区民がいる場合、比較的安価でこれらの施設を借りることができるのです。
となればコレを利用しない手はありませんよね。そうなんです。みんな狙っているんです。詩吟教室も和太鼓の会も勉強会も町内会も、みんなみんな狙っているのです。なのでそれなりの問題点もあるのです。

まず、人気なので取りにくい。希望者殺到のため、抽選の場合が多いのですね。しかもかなりエグい倍率です。それほどまでに魅力的というワケです。また、公共施設なのでルールが厳しい。色々と細かい規則があるのです。飲食禁止や床に貼るテープの制限がある場合もあります。会議室などでは設置された椅子や机を端に寄せて稽古し、終わる時には原状復帰で返すのは当然のルールです。
それよりも! 何よりも! とにかく問題となるのが騒音の問題なんです。音楽室や運動室が借りられた場合はいいんです。うるさくしても問題がありません。ただ、会議室などの場合、隣で会議や勉強会などが行われている場合も多いのですよ。当然です。だって会議室なんですから。しかも壁が薄い。大声を出せば丸聞こえです。稽古中、事務所から内線電話で「お隣からうるさいとクレームが来ています」なんて怒られるのもしょっちゅうです。その途端、俳優陣は囁き声で喋り始めるのです。例え白熱したシーンでも急にウィスパーで喋り始めます。でも顔だけは白熱したままです。
でも、しばらくすると忘れちゃうんですね。のど元過ぎればなんとやら。そして徐々に声が大きくなっていき、またクレームの電話が入る。そのループです。すみません。ワザとじゃないんです。ただ、熱が入ると大きな声になっちゃうんです。ホントすみません。

また、長期で同じ部屋を借りることができません。演劇の場合、仮のセットがあったり衣裳や小道具も多いので、同じ部屋でそれらを置きっぱなしにできればとても楽なのです。しかし、公共施設を渡り歩く稽古の場合、全てを持ち帰り全てを持ち込む必要があります。毎日大量の小道具や稽古着を持ち歩き、大きなカバンで通います。しかも、駅前の便利な施設ほど競争率が高いので、結果として駅から遠い施設までえっちらおっちら歩くわけです。これが地味にキツイ。

大阪時代の劇団☆新感線には稽古場と呼ばれる場所がありました。今はなき扇町ミュージアムスクエアという、劇場や雑貨店やミニシアターのあるビルの二階。八畳くらいの狭い部屋でしたが、そこで稽古も小道具作りも音楽編集もやっておりました。今思えば実に狭い部屋でしたが、パーマネントな稽古場があるというのは本当に幸せなコトだったのだなあと今更ながらに実感します。
ただ、そのスペースでは足りなくなった場合は、例によって公共施設巡りです。今日はあの公民館、明日はあの青年館。メンバーの持っている車に小道具やら何やら詰め込んで、人も詰め込んでギュユギュウで移動します。今にして思えば若かったからできたんだなあと感慨深くもなってしまいますね。


規模の大きい公演ならばちゃんとした広いスタジオの稽古場が用意されていますが、小規模の劇団の場合は稽古場だけでも色々と大変なんだよという裏事情をお話しして今回は終わります。では、今日もツキドクロの稽古場に行って参ります。ええと、完全ダブルキャストでの稽古なので人がいつもの倍いるので、広い稽古場でも溢れるほどの人数です。コレはコレで大変なんですよ。


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JR中野駅のホームから見える古びたアパート。東京都住宅供給公社の中野駅前住宅なのですが、とても良い佇まいです。築65年以上ですよ。


粟根まこと


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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。


【出演情報】

ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月 Produced by TBS
2017年11月23日(木・祝)~2018年2月21日(水)
会場:IHIステージアラウンド東京(豊洲)

◇コラム「粟根まことの人物ウォッチング」掲載の「えんぶ10月号」は、全国書店で発売中!



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