11/3でカゼドクロもついに終了。台風が何度も来たり、機材トラブルで止まったりして、色々と大変だったようですが、なんとか最後まで風を吹ききって頂きたいと思います。カゼが終わるってコトは次はツキドクロですよ。上弦・下弦のダブルチームで三ヶ月! 年をまたいで長々と上演されますよ。

さて、前回は稽古場について書きました。規模の小さい小劇場公演では、場合によっては公民館の会議室を渡り歩きながら稽古したりして大変だって話でした。予算やスケジュールの関係でそうなっちゃうのね。今まで私が経験した変わった稽古場としては、知り合いの倉庫の二階とか、オフィスビルの開いている部屋とかがありましたが、もっとも狭かったのは、新規入居者が入るまで空いているワンルームマンションの一室。大家さんが知り合いだったんですって。いろいろ大変なのよ、演劇の稽古って。

規模が大きい公演では人数もセットも小道具も多くなりますから、結構広い稽古場を通しで借りることになります。有り難いことだなあと今更ながらに思いますが、今回のツキドクロではダブルチームのせいで出演者がいつもの倍おります。全員揃えば69人! スタッフも含めると100人を越えますので、広い稽古場でも居場所がなくなったりして困っております。

そんな大人数で溢れてしまった場合、どうするのか。そういう時には「前室(ぜんしつ)」に逃げ出したりします。前室。これが今回ご紹介したい専門用語で、前回に引き続き稽古場関係の用語ですね。
意味としては文字通り「前の部屋」です。広い稽古場の手前にある、ちょっとしたスペースのコトですね。おそらくはテレビ業界から伝わってきた用語だと思います。
テレビのトーク番組などで、時々「前室」という単語が出てきますよね。芸人さんが「いや、さっき前室でも話してたんやけど」とか「前室で話してたコトと全然ちゃうやないですか!」とか言っていたりします。テレビスタジオでは楽屋とは別に、収録スタジオの隣にみんなが集まれるサロンのような小部屋があるコトが多く、収録をモニターで眺めたりメイクを直したりお茶を飲みながら談笑したりできるのです。まあ、直前控え室みたいなカンジでしょうか。
みんなのスペースといえばなにやら楽しそうですが、実は楽屋がない人のたまり場でもあります。局によっては楽屋が足りなくて、メインキャストにはそれぞれ個室の楽屋が与えられても、ちょい役の俳優には私物を入れるロッカーしか用意されておらず、着替えた後は前室でスタンバイさせられたりするんです。長時間、雑談とかしながらただただ待たされるんですよね。いや、そんなグチはいいんです。

同様に、演劇の稽古場でも広いスタジオならば前室がついていることもありまして、これが実に重宝なのです。製作チームが常駐して色々な業務や連絡をしたり、お茶やお菓子のあるケータリングコーナーがあって休憩できたりします。それ以外にも、出番ではない俳優がセリフを覚えたり、同じシーンの人々がセリフを合わせたり、ダンスの確認をしたり、稽古動画を確認したり、スタッフさんが打ち合わせをしたり、小道具を作ったり、衣裳の採寸をしたり、溢れた資材を置いておいたり、食事をしたり、もうとにかく便利な部屋なんです。
稽古場では当然稽古をしていますので、あまり大きな声を出したり出来ないんですね。なので、セリフ合わせをするために外の駐車場に出たりしたこともありました。でも、前室があれば大丈夫。稽古場と前室の間には大抵分厚い扉がついていますから、多少大きな声でセリフを合わせたり談笑したりしていても問題ありません。でも制作さんが大事な電話をしていたりして怒られたりはしますけどね。

前室は、大規模公演の時には必ずあるというワケではありませんが、まあ用意されるコトが多いですかね。新感線では大抵用意されていますが、それはとにかく人も物も多いので居場所がないから。でも、先ほども書いた通りの便利さで、前室は重宝しております。
そして、私に限ってはある恩恵がありまして、それは原稿の筆がはかどるコト。特に稽古場レポートなんかは顕著です。なんででしょうねえ。この稽古場の空気がそうさせるんですかね。私の場合、周りがちょっとザワザワしている方が書きやすいのかもしれません。
そして実はこの原稿もこうして稽古終わりに前室で書いております。モニターからは振付稽古の音楽が聞こえております。みんな何やら楽しそうに踊っております。その楽しそうな空気に包まれながら今回の原稿を書き上げました。ダブルチームで人が溢れかえる稽古場ってのもいいもんですよ。
あ、次回はその「ダブルチーム・ダブルキャスト」という用語について解説したいと思います。という予告を残して、ではさようなら。また来月に。その頃にはツキドクロも始まってますぜ!

minka

本文とは関係ありませんが、先日、門前仲町あたりで見つけた風情のある民家。何でしょうね、こういう古い建物に対する郷愁は。しかし、なんとも素晴らしい風情です。


粟根まこと


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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。


【出演情報】

ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月 Produced by TBS
2017年11月23日(木・祝)~2018年2月21日(水)
会場:IHIステージアラウンド東京(豊洲)

◇コラム「粟根まことの人物ウォッチング」掲載の「えんぶ10月号」は、全国書店で発売中!



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